何度目の失敗だろうか。爆発の回数が二桁に達した所から数えるのをやめてしまった。無我夢中であった。必死になっていた。
使い魔を呼び出せなければ留年が決まる。留年が決まればこの身は役立たずの烙印を押され、実家に呼び戻されるだろう。それだけは絶対に嫌だ。
再び召喚失敗の爆音が鳴る。
――ゼロのルイズ!!もう諦めろよ!!
魔法成功率が0%という意味から付けられた不名誉な通り名でルイズを罵倒する声がする辺りに、雑音をかき消すように一際大きな爆発を起こした。
――いい気味よ。
爆発が間近で起きた生徒は爆音に驚いて気絶していた。
一人の生徒が気絶したことにより辺りは静寂に包まれたが、それも一瞬であった。罵倒は激しさを増していく。
何故自分がこんな目に合わなければならないのか。父と母は優秀なメイジであり、姉二人も問題なく魔法を行使することが出来る――なのに、何故私だけ。最初は魔法を使えるようにと努力した。毎日のように行われる親や厳しい姉からの叱責にも耐え、魔法の練習をした。やがて、厳しい鍛錬を行う自分に使用人達は哀れみの目を向けるようになった。
――そんな目で私を見るな。
魔法が使えないことによって他者へ苛立ちを覚えたのはその時が初めてだろうか。次第に自分や周りの人間ルイズの苛立ちは募っていき、もはや誰へ向けたものでもない憎しみへと変化していた。トリステイン魔法学院にきてからはより顕著になっていった。
――魔法なんてどうでもいい。魔法が使えるから何だ。私を馬鹿にする者は誰であっても許さない。親も姉も先生も同級生も平民も――世界すらも。
本来ならば、伝説の使い魔の力を操る平民を召喚し、虚無の力を操り、救国の英雄となり得る素質を持っていたにも関わらず、ルイズはどうしようもなく歪んでしまっていた。
――汝、復讐を望む者ですか?
鋭い痛みと同時に左手に赤い紋章が浮かび上がった。そして、確信した。この声は召喚されようとしている使い魔のものである。もう一度この杖を振り、召喚魔法を行えば自分の運命は変わる。今までの人生とは比べようにもならない何かが待ち受けている。
恐れは無かった。例え、悪魔が呼ばれようともこの召喚をやめる訳にはいかない。
「来なさい、私の使い魔!!」
不思議と爆発は起こらなかった。そして、いつの間にか広場に出現した魔方陣を中心に、光の奔流と共にそれは召喚された。雑音はいつの間にか聞こえなくなっていた。
「サーヴァント、アヴェンジャー。召喚に応じ、参上しました」
己を見捨てた祖国、民、世界の全てに絶望し、復讐を誓い全身を漆黒に包んだ竜の魔女は、微笑みながら、――否、それが微笑みに見えたものはルイズだけであり、その他の者にはどう見えたかはわからないが、確かにルイズにとっては微笑みながら、「私を召喚したあなたには、神がいるのならば、必ずや天罰が下るでしょう」と言い放ったのである。
「上等よ」
――to be continued