「ぽち様」
「朱里、どうかした?」
いつになく真剣な表情の孔明に何かあったかなとぽちは首を傾げた。先日、ぽちは袁紹に言われ曹犬軍の主だった将軍達を側室とした。勿論目の前の大陸屈指の幼女軍師もその一人である。但し、ぽちは皆に一つだけ約束している。それは袁紹との間に子が出来、産まれるまでは他の誰とも閨を共にしない事である。まあその辺はおいといて朱里の表情を見てぽちも顔付きを真剣な振りをして向かいあう。
「はい、以前より指示を頂いていた法、の基本的な枠組みが出来上がりました」
「ふむ」
ぽちは思う。何の話だろうと。袁紹に王になりたくないが為に誤魔化す為に適当言った事など覚えている筈がないのだ。
「そっか。出来たか」
「はい、書簡に纏めていますので後でお目通しをお願いします」
孔明がそう言うと書簡が次々にぽちの執務室に運ばれてきた。部屋の中がどんどん書簡で埋まっていく。その様子にぽちドン引きである。目を通す振りだけでもどれだけ時間かかるんだと思う量が運ばれてきたから仕方ない。
「……大変だったろう」
「いえ、お役目ですから」
ぽちは単純に量の事を嫌みを込めて言ったが、孔明は仕事をやり遂げた事に誇らしげであった。
「ぽち様。新たな国を主導する新たな政府の長、所謂国家元首を選ぶに辺りぽち様は民主導の形を望まれていましたが今回はどうしても時間が無く、各州の州牧や県令、王朝の将軍の中からの推薦、その中から投票という形で新たな国家元首を選ぶ事になりました」
国家元首って何? 王みたいなもん? ふむ、言ってる事が殆んど分からないぽちはとりあえず真剣な顔で頷いた。それを孔明は肯定と受け取り話を進める。
「つきましてはぽち様にも推薦をして頂きたいのです」
「推薦……、華琳姉? 麗羽さん?」
「いえ……お二方とも素晴らしい人物ですが違います」
「じゃあ誰を?」
「はい。その武勇天下に響きこの国一の名将と云われ負ける事を知らず、個人の武に置いても無手にて名高き武将を一騎討ちにて破る。その知略は未来をも見通すと言われ、州を民を救い、誰からも絶大な信頼を集めその方なら間違いなく国を泰平に導いて下さる、と我ら一同が信じている方を」
ぽちは思う。何その人凄い。
「……朱里はどう思う?」
「私もその方以外考えられません」
「じゃあ決まりだね」
「……宜しいのですか?」
「朱里がそう言うのなら、それが正しいのだろうさ」
「はい! ではぽち様は自薦という事にしておきますね!」
「え? あ、ちょっと待って……」
王にはならないと公言していたぽちの説得を買って出た孔明の罠に引っ掛ったぽち。選挙権を持つ人間全員からの推薦と自身の自薦で満票を集めた曹犬はこうして初代大統領となった。
曹犬の指示(と言っている袁紹の指示)により伏龍鳳雛を中心に曹操、ネコ耳、盧植、周瑜といった初代犬政権の中心となった賢人達が、曹犬の思想を基本とした(という事になっている)複数の州の集合体である所謂合衆国制の骨組みを千五百年くらい先取りして作り上げた。十三の州と五胡特別区で構成される連邦共和制国家である。それぞれの州は高度な自治権を持っているが、連邦政府の有する権限は非常に強大である。連邦政府は、立法、行政、司法の三権分立制をとるが、その分立の程度が徹底しているのが大きな特徴で、連邦政府の権力が州の権力に優先されるものらしい。
中華合衆国の初代大統領となった曹犬。初仕事は張三姉妹をバックダンサーとし全国を巡るライブツアーだったらしい。
以来千年を超え千八百年続く中華合衆国の初代大統領である、革命の代名詞とされる曹犬と言う人物の逸話は枚挙に遑がないが、その一部だけを挙げる。
その武、音より速い。
民を救う食物の普及に尽力する先見の明がある。
斉天大聖と呼ばれる程の人格者である。
自身より配下を大切にした逸話が多く、現在においても理想の上司の在り方として曹犬の様にあれと言われる。
中華において初めてカレーを食べた。
側室は多かったが、何より本妻を大切にした愛妻家であった。
曹犬に誉めて欲しくてローマ辺りまで涼州軍が攻めてしまい、意図せず世界最大国家となってしまったが、広がり過ぎた領土の統治を不安視し撤退させた(面倒臭がったとの説も在り)
天使の歌声を持ち、死人や毛根さえ生き返った。
泰平道は現在において世界最大の宗教であり、曹犬は農業の神とも武神とも毛髪の神とも言われている。
中華において初めてコーヒーを飲んだ。
中華において初めてナマコを食べた。
中華において初めてイカやタコを食べた。
曹犬は創作上の人物とも複数の人物の逸話とも言われる事が多いが、実在したという証拠も多数残っている。
以下後書き↓
最後まで読んで頂いた多数の読者様、感想を書いて下さった皆様、評価をして下さった皆様、感謝の語彙力が無くなるくらい感謝で一杯です。一部タグが息をしていなかったり突っ込みどころ満載となってしまいました。この話を書くに辺りチートでモテモテでも嫌われない主人公を目指すつもりが、作者が途中から主人公をどうでも良くなってしまうという問題が発生するとは李白の目を持っても(ry
また次の作品で会いましたらその時は宜しくお願いします。