提督をみつけたら   作:源治

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わたしには……できなかったんです。
この二人の間に提督を挟むなんて……できなかったんですよ!

※結果的に長くなってしまった系の長編回
 約三万文字(通常の3話分)あります、ご注意ください。
 


『雷巡:北上』と『雷巡:大井』

 

「ねえ大井っち、本当にアタシたちにできると思う?」

 

「なに言ってるんですか北上さん、できるできないじゃなくて、やるんです」

 

「いや~、そういう言葉遊びはいいからさぁ~」

 

「しっかりしてください北上さん。このためにわたしたちは、めんどうな手続きを終えて夫婦になったんですよ?」

 

「うっ……それを言われると……」

 

「そもそも、ここで帰るなんて選択肢はないんですから、覚悟を決めてください!」

 

「まぁ、そりゃそうなんだけどねぇ……ほら、そもそもうまくいくかわからないしさー」

 

「そこは正直わたしも不安がないといえば嘘になりますけど……でも、わたしと北上さんならきっとうまくやれるから大丈夫ですよ!」

 

「でもさぁ~……あ、ついちゃった……この部屋だよね?」

 

「そうですね……あの、入らないんですか?」

 

「いや、なんだか緊張しちゃって。大井っち、ドア……開けてくれない?」

 

「もうっ、しょうがないですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『雷巡:北上』と『雷巡:大井』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……親ってなんだよ?」

 

「中々シンプルに核心つく質問がきたね……はい、大井っちどうぞ」

 

「ええ!? えっと……そうですね。世間の一般的な意味だと、養育する子供の優先順位をなににおいても高く扱う存在でしょうか」

 

「ゆうせんじゅんい?」

 

「他の誰より、アンタのことを一番に考えて行動してあげるってことよ」

 

「……よくわかんねえ」

 

「まあそれはおいおい知っていけばいいってことで~。そんなわけですさんだ目をしている少年。今日からアタシたちがあんたの身元引受人改め保護者、つまり『親』よ。よろしくね~」

 

「……なんでだよ」

 

「理由はいろいろありますけど、一番はあなたと血の繋がったおじいさんに頼まれたからですよ」

 

「そういうこと、普通なら断るんだけどね~」

 

「あなたのおじいさんね、わたしたちの“提督”だったの」

 

「提督?」

 

「まあそのへんも家に帰ってからおいおい教えてあげるわ~」

 

「大丈夫、えらい人たちからの許可だったりはちゃんと取ってありますから。わたしたちと一緒に行きましょう」

 

「ここよりもマシなところなのか?」

 

「ここの暮らしはよく知らないけどねー。まあお望みとあらば、ここよりもおいしいご飯とふかふかの寝床を用意してあげようじゃないの」

 

「……わかった、あんたらについて行くよ」

 

 

 

 ■□■□■

 

 

 

「そんなわけで、アタシらが看護婦として働いてた病院に運ばれてきたのが、あんたのおじいちゃんだったわけさ~」

 

「あなたの祖父にあたるその方が、艦娘である、わたしと北上さんの提督だったわけですけど、入院した時点ですでに認知症が随分と進行されててね……」

 

「まーともかく、あんたの祖父でおじいさん……長いからこれからは提督って言うけど、若い頃は結構なろくでなしだったらしくてねー。飲む打つ買うを体現したみたいな人だったんだって」

 

「一応あなたのお母さんが生まれてしばらくは真面目に頑張っていたみたいですけど、結局借金もあって、妻と娘を捨てて逃げちゃったみたいですね。まあ家族を借金取りから守るためだったのかもしれませんけど」

 

「その後もろくでもない生活してたみたいなんだけど。風の便りで、娘が父親のわからない子供……あんたを産んだって聞いたらしくてね。せめて仕送りをってことで、老体にむち打って頑張って働いた……結果、まあ、いろいろあってうちの病院に担ぎ込まれてねぇ……そこでアタシら二人と出会って、提督として適合したのよ」

 

「さっきも言ったように、出会ったときには認知症が進んでいて、ほとんど意思疎通もできませんでしたし。一ヶ月もたたずに亡くなってしまったので、一緒にいられたのはほんのわずかだったんですけど……最後にあなたのことを頼むって、その瞬間だけは、はっきりと口にされてね……」

 

「まあこっちは寝耳に水だったけどね~。それから仕事やめて、あんたたちがいるらしい外地に行って必死に探したんだけど。ようやく見つけたあんたのお母さんは亡くなってたし、あんたは路地裏の悪党どもにいいように使われてたしで焦ったわ。まあさんざん走り回った末に、方々手を回してあんたを保護してもらったわけよ」

 

「……なんかよくわからないとこもあるけど、朝に食わせてくれた飯みたいなのをもらえるならなんでもいいよ。あの泥水みたいなやつとかうまかった」

 

「おっ、北上様が作ったみそ汁のよさがわかるとは、いい舌してんじゃん」

 

「そりゃまあご飯くらいはしっかりと食べさせてあげますし、寝床だってキチンと用意してあげますよ。だから安心してくださいね」

 

「うんうん、じゃあ事情のすりあわせが終わったところで、まず最初にお互い呼び方を決めようじゃないの。アタシはあんたのことを……そうねぇ、『マイサン』って呼ぼうかしらね~。別の国の言葉で自分の息子って意味。あとはまあ……『あんた』って呼ぶことにしますか。そしてマイサンはアタシのことを『母様』って呼ぶように、よろしくね~」

 

「わたしは『あなた』や『息子』って呼ばせてもらいますね。あとわたしも母様だとわかりにくいので『ママ様』って呼んでください」

 

「……変な呼び方だな、そんなややこしいことしなくてもおれの名前……はともかく、北上に大井だっけ、その名前で呼んだらいいじゃん」

 

「いろいろあんのよ、いろいろね。それになによりマイサン、あんた自分の名前だいッ嫌いでしょ?」

 

「名前を呼ばれるたびに、心底嫌そうにして顔を背けてましたから、バレバレですよ?」

 

「……勝手にしろよ」

 

 

 ---

 --

 -

 

 

「しっかし欲のない子だねほんと。一緒に暮らし始めて一ヶ月もたつのに、アレしたいコレしたいって聞いたことないわ。こっちはアレして欲しいコレして欲しいっていっぱいあるのに」

 

「安全な寝床と食事が毎日ちゃんと得られる。それ以上が望めない環境に長くいたからでしょうけど……そのせいでになにをしたらいいか、なにが欲しいかわからなくなってる感じでしょうか……因みにわたしは一度くらいママ様と呼んで欲しいんですけど」

 

「本はよく読んでるみたいだけどね~。まあアタシの漫画とかだけど。しっかしそろそろアタシらがある程度勉強教えて、年相応の学校に行けるようにしてあげないといけないわねぇ。読み書きも満足にできないようじゃ、漫画くらいしか読めないだろうし。それとアタシもさ~、そろそろ母様って呼んで欲しいな~」

 

「……」

 

「てなわけでマイサンよ、あんたなんか欲しいものとか、やりたいこととかないわけ?」

 

「──……別にない」

 

「あれ、なんか妙に間があったね。もしかしてなんかあるわけ? よし、この母様に言ってみなさい」

 

「別にないって言ってるだろ」

 

「おうおう、口にするのもはばかられるような望みかな~? さてはアタシや大井っちのおっぱいでも揉みたいのかこのこの~」

 

「違うよ……ていうか言ってるそばから押しつけるなよ……」

 

「なら言いなさいよ~、このこの~」

 

「しつけえな……いやだって!」

 

「あらあら、あんまり強情にならないほうが人生幸せに生きてけると思うけどねぇ」

 

「……いいえ、強情でいいですよ」

 

「大井っち?」

 

「意地が強いことはいいことです、なにかをなすときの力となりますから。ですが……わたしたちはあなたの親です。なにかして欲しかったら、わたしたちにはきちんと言ったほうがいいです。なぜなら、その願いをしっかりと聞いてあげるのが親というものですから」

 

「ほほう、なるほどなるほど……というわけだマイサン、大井っちもこう言ってくれてることだし、ここはひとつ素直にゲロってみないかね?」

 

「……なに言っても怒らないか?」

 

「まあよっぽど酷いことや無理難題は叶えてあげられませんけど、可能な限り叶えられるよう頑張ってみますよ」

 

「……海賊になってみたい」

 

「…………マジか、海の守護者たるアタシらにそれを言うのか」

 

「もしかして北上さんが集めてる、あの海賊漫画の影響ですか?」

 

「そう、ノコギリザメの海賊が好き」

 

「しかもよりによってあのクソ野郎かい。アンタの将来が心配だわ」

 

「違う、アー○ンはサメ海賊らしく生きようとしただけだ」

 

「サメらしくってなによ」

 

「違う、サメ海賊らしく」

 

「ゴメンちょっと違いがわかんない」

 

「でも海賊をやるなら、小型のクルーザーやヨットじゃカッコつきませんね。ツテと貯金を使えば、中古の哨戒艇くらいなら買えるかもしれませんが……外装はどうしましょう? 木板を張るわけにも……木目のシート……ペイント? マストや帆、海賊旗とかも必要ですよね……こういうのってアカシや夕張重工みたいなところに相談した方がいいかしら……」

 

「なんで前向きなの大井っち!? いや、それよりアタシら自前ので海を走る免許はあるけど。普通の船の免許持ってないでしょ!?」

 

「法規は免除されるので、そこまで難しくないかと思いますよ? 銀行の定期解約してきますね」

 

「いや大井っち親バカすぎじゃない!?」

 

「できないなら別にいいよ……」

 

「で、できらぁ!!」

 

 

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 -

 

 

「いやー、免許とって船を用意して海に出たまではよかったけど。ほんとに略奪したり、村を支配下に置いたり、航海士脅して海図描かせるわけにはいかないからさ~」

 

「同じ海賊なら好き放題できるんですが、艦夢守島の周りで海賊行為しようものなら、お祭り騒ぎみたいに艦連軍基地から艦娘軍人たちがとびだして乱獲してしまうので、このあたりには海賊がいないんですよ」

 

「そーゆーわけでさ、悪いけど木曾、ちょっと海賊になってよ」

 

「見た目もそのものですから適任です♪」

 

「すまねぇ姉貴たち……なにを言ってるのかさっぱりわからねえ!!」

 

「……誰だよこの人」

 

「ああ、この人は木曾って名前の艦娘で、わたしたちの妹ですよ」

 

「血縁はともかく、立場的にはマイサンの叔母さんにあたるひとだね~」

 

「眼帯してる……あんたは……海賊なのか?」

 

「なんでそんな期待した目でみるんだ、んなわきゃねえだろ。おれは看護婦だっつーの」

 

「海賊じゃないのかよ……」

 

「え、なんでこんなに落ち込んでるんだコイツ?」

 

「あんたうちの子になんて顔させてるのよ」(低音平坦声)

 

「うへ? なんで北上の姉貴真顔でキレてるんだ!? こええよ!!」

 

「ねえ木曾、うちの子は海賊になってみたいらしいの。だからお願い、叔母さんでしょ?」

 

「そんな『役目でしょ?』みたいなノリで言うなよ!? ~~~ッ!! わかったよ、やりゃいいんだよやりゃあ!!」(ヤケクソ気味で艤装展開しながら海上ダイブ&着水)

 

「おお、改二の戦装束をまとって艤装まで装着してくれるとは……やるじゃん木曾」

 

「さすがわたしたちの妹ですね」

 

「俺に勝負を挑むバカはどいつだぁ? この真の海賊であるこの俺がぁあああああ!! 本当の戦闘ってヤツを、教えてやるよぉおおおおおお!!」(ヤケクソ×大盛り)

 

 

「……かっこいい」(ボソ)

 

 

「「は?」」

 

「なんだあれ、海の上に立ってる、見た目もヤバイ、黒いマントに金色の刺繍、サーベルとか、すごくかっこいい」(熱い眼差し)

 

「ふ~~~ん、マイサンはああいうのが好きなのか~。男の子だねぇ……ふーん」

 

「ふふふ、わたしや北上さんの前で息子の視線を独り占めしようだなんて。うふふふ」

 

「え……なんだよ姉貴ら、目が怖いぞ?」

 

「(略奪)やっちゃいましょー」

 

「はい、北上さん♪」

 

「いやまて、やめろ、眼帯をむしるな!! サーベルを、マントをとらないでくれえええええ!!」

 

「──……母様とママ様もかっこいい」

 

 

 

 ■□■□■

 

 

 

「は~、今年の海賊記念日改め、マイサン誕生日会も楽しかったわ~」

 

「今年は球磨姉さんと多摩姉さんも参加してくれましたから、にぎやかでしたね」

 

「いつの間にか毎年恒例のイベントになっちゃったわね~」

 

「誕生日がわからなかったこの子の、誕生日にした日ですから。お祝いになって、楽しんでくれたなら嬉しいんですけど……」

 

「大丈夫大丈夫、今年も楽しそうにしてたし。まあこの子が自分も海面に立とうとして海に飛び込んで、ギリギリのところで球磨姉さんに首根っこ掴まれたときは焦ったけど……でもほら、はしゃぎすぎて体力使い果たしたんでしょ、よく寝てるじゃん」

 

「いくつになっても楽しんでくれるように、来年はもっとがんばりたいですね。最近はこうして川の字になって寝るのも微妙にいやがるようになってきましたから……」

 

「そうね~……って、いまさらだけどさ。アタシも大井っちも、ずいぶんと親っぽくなってきたわ」

 

「なに言ってるんですか。あの扉を開けたときから、わたしたちはずっと親でしたよ」

 

「まあそうなんだけどさ……」

 

「…………」

 

「…………」

 

「いまなに考えてました?」

 

「え~、夫婦だからって頭の中まで共有するのはちょっと恥ずかしいかな~」

 

「あら? 一応法律上はそうだけど、なんか恥ずかしいから夫婦って言葉を使いたくないって言ってた北上さんが……珍しいですね」

 

「ぬぅ~……」

 

「ふふふ、変な顔してますよ北上さん……それで、なにを?」

 

「そう、まあ……そうね……眠ってるこの子を見てると、ちょっと提督のこと思い出しちゃって……一回くらいこんなふうに、提督とも一緒に寝てみたかったなって、ちょっとね~」

 

「……そうですね、わたしもです」

 

「まともに意思疎通なんかできたことなかったけどさ。なに言ってるのか全くわからなくても、しっかり目を見てるとね、なんとなくして欲しいことがわかったりするときがあったんだ」

 

「確かにそんなときがありましたね……そうそう、わたしは食事介助のたびに、何度も何度も謝られたのを覚えてます」

 

「あはは、アタシも覚えてるわ。必ず暴れながら謝ってたね~」

 

「随分と酷い環境で長い間働いてたせいか、ちょっとでも怖いことがあると必死で謝って──」

 

「……」

 

「……」

 

「……たぶん耐えきれなくなって逃げ出して、艦夢守市にたどり着いたんでしょうけど。ゴミみたいに道ばたに横たわっていたところを、病院に担ぎ込まれてなかったら、きっと出会うこともなかったって考えると……ははは、ままならないもんね~」

 

「もっと早く提督をみつけてあげられたらよかった、そうしたら……」

 

「提督ってさ、あの見た目でアタシたちより年下だったじゃん。なのに身体は実年齢よりも何十歳もボロボロになってて、どんな環境にいたのか想像もつかないけどさ……そんなひどい状態でも、仕送りだけはしっかりしてたみたいだし……まあ大したもんよね~」

 

「それだけ……大切だった……いえ、それしかなかったのかもしれませんけど。寿命を削るように働いて……正気を失って……それでも最後までこの子のことを思ってたんですから……立派でした」

 

「まぁ、臨終の前日に『ワシの……ぁ~孫! 娘と孫をたのむ!』って、いきなり叫んだときはびっくらこいたけど……あのときだけは、やけにはっきりと喋ってたからもしかしたらって調べたら、本当だったからね~」

 

「……ふふふ、そうでしたそうでした……でも、最後にそう命令してくれてよかったです。もしそれがなかったら……」

 

「なかったら?」

 

「……きっとあんなになるまで提督をこき使った誰かを探し出して……刑務所に入るようなことしてたかもしれません……」

 

「おお怖い怖い……まあ、その気持ちもわかるけどね……」

 

「……」

 

「……」

 

「この子がいてくれてよかった……この子は……必ず守ってみせる……」

 

「うんそう、そうねぇ……それは間違いなく……そうだねぇ……」

 

 

 

「…………」

 

 

 

 ■□■□■

 

 

 

「おいおまえ」

 

「……なんだ」

 

「おまえんちって、両親とも母親なんだろ?」

 

「……だったらなんだよ」

 

「なにそれ、おっかしー」

 

「百合ってヤツだ、やーい! やーい!」

 

「……」

 

「グフォ!? なんだこの野郎やんのかこの野郎!」

 

「この野郎バカ野郎この野郎んほぉ!?」

 

「だいたい二対一で勝てると思って……いてッ!?」

 

「いててててえてッ! 意外とつええぞこいつ!?」

 

「誰か残ってるの? もう下校の時間はとっくに……あんたたちなにしてるの!?」

 

 

 ---

 --

 -

 

 

「で、喧嘩して事情を聞いた先生に怒られて、二人はわたしたちに謝りに来たと」

 

「「お、大井様だ……」」

 

「あら、わたしのこと知ってるのかしら?」

 

「まあ艦夢守市育ちならそういうこともあるよねー。とりあえずお菓子でも食べて行きなよ、北上様特製の魚雷エクレアだぞ~」

 

「……魚雷」

 

「駄目ですよ北上さん、子供たちの前で魚雷なんか出しちゃ」

 

「エクレアッつってんでしょ!?」

 

「「き、北上様だ……」」

 

「……母様とママ様のこと知ってんの?」

 

「しッ、知ってるにきまってんだろ!? 戦史時代の提督たちが信じ崇めてた、まさに完璧で究極の雷巡!! 天才的で弱点なんて見当たらない、無敵で最強のハイパーズだぞ!? むしろなんで息子のお前がしらねえんだよ!?」

 

「雷巡? ハイパーズ?」

 

「雷巡ってのは重雷装巡洋艦って魚雷攻撃特化の艦種の略称で、ハイパーズってのは戦史時代を駆け抜けた球磨型軽巡洋艦の3番艦と4番艦の艦娘である、北上様と大井様の二人組を指す異名だよ。実際記録に残ってるだけでも、ものすごい戦果を上げてる最強の艦娘なんだぞ!」

 

「無敵でもないし弱点も結構あるけどね~。まあ天才的で最強の一角なのは事実だけど」

 

「というかこの子たちやけに詳しいですね……」

 

「初めて聞いた……二人って最強の艦娘なんだな……」

 

「ええ!? 大河戦史ドラマとかで見たことないのかよ、たとえば『双雷がゆく』の38話とかマジで最高なのに」

 

「わかる、大井様の雷撃でひるんだ深海棲艦を、北上様がゼロ距離から『ぶっ散れええええ!』って叫びながら魚雷発射するシーンとかな」

 

「あー、あれねー……大井っちと一緒に見たわ。やってやれないこともないけど、あの距離から魚雷発射はさすがにないって」

 

「ですが普段はひょうひょうとした北上さんとのギャップもあって、なかなか心躍るシーンでしたね。俳優の娘もなかなかいい演技してました。まぁ実物のほうが百倍格好良くてステキですけど♪」

 

「……おれだけ見たことねえ」

 

「おおう、そんな顔すんなって」

 

「うちに録画したのあるから今度見せてやるよ」

 

「……いいのか?」

 

「いいんだよ、なんせおれら今日からマブダチだからな」

 

「そうそう、生まれた日は違うけど死ぬときは一緒だぜ」

 

「……あれ、この子たち喧嘩して謝りに来たんですよね?」

 

「子供はすぐ喧嘩するけど、仲良くなるのも早いわね~」

 

「ほんとですねえ。でも友達ができたようで嬉しいです」

 

「アタシも嬉しいけどさ、変な影響受けないか心配だわ……」

 

 

 

 ■□■□■

 

 

 

「この場所はこっちが先に使ってたんだよ!!」

 

「なんだてめぇ……年下のくせに生意気だぞ……」

 

「うるせえ! 一学年しか違わないのにいばってんじゃねえ!!」

 

「っち、生意気なガキが……潰すぞ!!」

 

「アニキ!! やっちまってください!!」

 

「やれやれしょうがありませんね……ああ、ちなみにわたしの親は金剛連合会の関係者です。ですがもちろんフルパワー(親の権力込み)で戦う気はありませんからご心配なく……」

 

「でたぜアニキの得意技!! 初手で親の権力を自慢して相手の戦意を削ぐ作戦!!」

 

「一応言っとくと、アニキの親はマジで金剛連合会の関係者だぞ!!」

 

「おうおう、親の立場でマウント合戦か?」

 

「上等だぁ、受けて立つぜ……コイツがなッ!!」

 

「……え、普通に殴っちゃダメなのか?」

 

「ダメッ! さすがに二学年上はキツイ!!」

 

「それに見てわかるようにやつは重量級、衝突は避けるのが……得策!!」

 

「おれたちの頭脳担当がこう言ってるんだ、ここはまず権力勝負が最善!!」(裏方担当)

 

「そうかなぁ……多分膝あたり狙えばいけるぞ? それに……母様とママ様の名前気出すと、あとがめんどくさいんだよ……」(戦闘担当)

 

「おやおや、戦う前からママに泣きつく算段などとは、男の風上にも置けませんねぇ」

 

「さすがアニキ!! 初手で親の権力自慢しといて、いざとなったら泣きつくつもり満々なのにその言動ゥッ!!」

 

「自分に都合のいい解釈しかしないそのスタイル、そこに痺れる憧れるぅ!!」

 

「ふふふ、おだてすぎです二人とも。ですが……これ以上逆らうようなら、母様だかママ様だか知りませんが、わたしの力(親の権力)であなたもろとも土下座することになりますよ?」

 

「あ、ちょ」

 

「おま、ば」

 

「…………」

 

 

 ---

 --

 -

 

 

「ほんと──────に、この度はうちの馬鹿が申し訳ございませんでした……」(土下座)

 

「いやいや、こちらこそうちの息子が、そちらのお子さんに怪我をさせちゃって」

 

「い、いえ、それはこちらもですし……それに二学年も上だっていうのに、年下相手に喧嘩売ってこの有様、もうその時点で本当にお恥ずかしいかぎりで……ほら、お前も謝りなさい!」

 

「す、すみませんでした……」

 

「はい、ご丁寧にありがとうございます……というわけでほら、あんたも謝りなさい」

 

「は? なんでだよ」

 

「切っ掛けや結果がどうあれ、あんたにも多少なりとも非があった。だけどこうしてお相手の親御さんと本人が誠意持って謝罪してくれたんだから、あんたも頭を下げるのがスジなの」

 

「スジって……おれが勝ったんだから、謝る必要なんてないだろ」

 

「……そう、ならアタシが代わりに頭下げるわ」

 

「え?」

 

「……この度は当家の息子が、そちらのご子息に怪我をさせてしまい、大変申し訳ございませんでした。本日不在ではありますが、母親である大井のぶんもあわせて、いまここで謝罪させていただきます」

 

「きぅッ!? おおお、お顔をあげてください北上様!! 艦娘様のお子様に怪我をさせた時点で悪いのは全てこちら側、どうか、どうか……」

 

「いいえ、そういう訳にもいきません。確かにわたしは艦娘ですが、それ以前にこの子の親であります。よって当然ながら全ての責は親であるわたしにあるところ。わたしとしてはしつけが行き届いていなかったことを悔い反省しております」

 

「──これが北上様……わかりました、謝罪を受け入れさせていただきます。この度のことはお互い非のあるところであったということで、どうぞご放念ください」

 

「はい、ありがとうございます。それでは今後のことですが──」

 

 

「…………」

 

 

 ---

 --

 -

 

 

「……なんでだよ」

 

「なにが~?」

 

「なんで……母様が頭を下げる必要があったんだよ」

 

「あんたが下げなかったからでしょうが……いや、ちがうか。むかし大井っちが言ったでしょ? 親っていうのは、養育する子供の優先順位をなににおいても高く扱う存在だって。つまり普通親ってのは、子供を守るもんなのよ」

 

「……別に守ってもらわなくても、あれくらい自分でなんとかするよ」

 

「言っておくけど今日来た親、普通の家ならそれなりに厄介なことになってたわよー。まあこっちが艦娘だから向こうも下手に出てくれたけど」

 

「金剛連合会ってやつかよ」

 

「そう、艦夢守市で一番大きな組織のひとつよ。まあ堅気にどうこうってことはないだろうけど、それでもあそこに所属してる人たちは、表でも裏でも守らなきゃいけない面子ってのがあるのよ。だから普通はこっちから謝りに行くのがスジだったんだけど……あんたが黙ってたからややこしくなったの~」

 

「でかい組織だからってなんだよ、やってみなきゃわかんないだろ……」

 

「ははは、やらなくてもわかるもんもあるのよ。あんたは組織ってものの凄さも、自分の力の大きさも小ささもわかってないし、使い方もわかってない。まあ子供だから当然なんだけど」

 

「……だからってあんな奴らに頭下げなくたって」

 

「そう? 向こうの親御さんなかなか強かな人たちだったわよ? 最初は怒鳴り散らしそうな勢いだったけど、こっちが艦娘だってわかったとたんに態度が変わったでしょ。

あれはなんでかっていうと、子供を守る為よ。社会的な立場もあるけど……艦娘ってのは純粋に強いの。昔あんたが目にしてた悪党みたいなのが何百人いたとしても、まともに戦ったら絶対にアタシらには勝てない、それが艦娘なの。

だからあそこですぐに切り替えて、自分が持ってるもの全部捨ててでも、子供だけは絶対に守るために土下座したのよ……悪いことしちゃったわ」

 

「なんだよそれ……母様強いんだろ? じゃあやっぱり謝る必要ないじゃん」

 

「だから~、あそこで一番よかったのは、あんたが頭下げて、その後にアタシも軽く頭下げておしまいにすることだったのよ。でもあんたが下げないからこの北上様がめいいっぱい頭下げたの。

なんでかっていうと、まあ当然それだけじゃない部分もあるだろうけど、向こうは子供を守るためだったら、なんだってしかねないくらい追い詰められてたからよ。

対応を間違ったらあんたに危害が及ぶ可能性だってあったの。まあさすがにそこまではいかなくても、学校だったり普段の生活で厄介なことが増えたりとね。そしてそれは向こうも同じ。

だからこっちもちゃんと頭下げて、お互いこれで恨みっこ無しにしましょうって確認しあう必要があったの。お互いがお互いの子供を守るためにね」

 

「……わかんねえよ」

 

「まあちょっと難しかったかな?」

 

「わかんねえけど……わるかったよ。頭下げられなくて、おれのしりぬぐいさせて」

 

「いいのよ、アタシはあんたの親なんだから。まあとにかくほら、大井っちが帰ってくる前にお風呂に入ってきなさい。まだ泥が落ちてないでしょうに」

 

「……はい」

 

「あと、大井っちになんて説明するかも考えときなさいよ。一緒に怒られてあげるけど、なるべく怒らせないようにうまい感じのお願いね~……マジで、お願い」(まあまあ余裕のない表情)

 

「う、うん、がんばってみる」

 

 

 

 ■□■□■

 

 

 

「あ? 憲兵軍に入る方法?」

 

「なんでまたそんなのが知りたいんだよ?」

 

「……世界で一番強い力を持ってる組織だから」

 

「まあそらそうだけどさ」

 

「確かにそう考えると、入ってみたい気持ちもわかる」

 

「いちおう訂正しとくと、一番強い“人間の”組織だけどな」

(※憲兵軍は艦娘軍の下部組織で、両者をあわせて艦連軍と呼ばれている。また憲兵軍には基本的に艦娘は所属しておらず、艦娘は艦娘軍の所属となっている。例外:あきつ丸)

 

「でもお前には世界一強い艦娘のかーちゃんがいるんだから必要なくね?」

 

「二人はおれの親だけど、おれはあの人たちにとっての特別じゃないよ……あの人たちがおれの親なのは、おれのじいさんがそう命令したからだ」

 

「ん? それどういうこと?」

 

「どうでもいいだろ……それで、知ってるのかよ」

 

「んー……そもそも憲兵って、鳳翔街で育ったやつらか、憲兵軍のひとらの子供がなるのがほとんどだからなぁ……あーでも、艦連指定都市の市籍があればなれないこともないんだっけか?」

(※憲兵軍は思想や帰属意識の関係で、憲兵軍人の子供や鳳翔街出身者専用の採用枠があり、一般の採用枠は多くない。また鳳翔街とは艦連が運営する、孤児を養育する都市のこと)

 

「市籍があれば入隊試験が受けられるってだけだな。でもふつうに高等学校卒業してからとか、二十歳超えてからとかだと、特殊な資格とかない限り、入隊試験受けてもほとんど落とされるんだろ? ほら、なんかあの『憲兵人生』ってドラマでそんなシーンあっただろ。主人公が高等学校卒業してから入隊試験受けて、メチャクチャ大変そうだったじゃん」

 

「あー、あったあった、一回試験に落ちるんだっけ。で、特殊な組織だから入隊年齢がどうとかで焦るシーンが……アカンうろ覚えだ。もう一回あのドラマ見直さないと」

 

「しかも入隊してからも、ライバルで上官になるエリート憲兵様としょっちゅう比べられるんだよな。憲兵軍の専門の教育機関卒業してから入隊したえーっと、たしかあれだ……憲兵軍幼年学校だ!」

 

「そうそう、この学校でも十年に一人か二人進学する学校……あっ、そうだ! あそこに入学できればほぼほぼ憲兵軍に入れるんじゃね!? ……って、いや駄目だ。たしか入学試験がメチャクチャ難しいんだった」

 

「むずいな、激ムズだ。おまけに入学できたとしても、まわりは鳳翔街出身とか憲兵軍区画の出身者ばっかりで、肩身がめっちゃせまいらしい」

 

「そうか……わかった。いまから先生に相談しに行ってくる」

 

「は? いまの話聞いてた?」

 

「聞いてた、でも関係ねえよ」

 

「そんなに憲兵軍に入りたいのか?」

 

「……入らなきゃいけないんだ」

 

「そっか……ならしょうがねえなぁ、おれも一緒に行ってやるよ」

 

「あっ、おれもおれも。受験対策とか勉強ならまかせとけって」

 

「いいって、おまえらまで憲兵になる必要はないよ」

 

「なにいってんだ、おれらマブダチだろうが」

 

「死ぬときは一緒だって言っただろ?」

 

「……憲兵になったら、医者になれないだろ。将来の夢だって言ってたじゃん」

 

「あまいぞ親友。憲兵軍にはな、衛生兵というものがあってだね……さらに医官ってのになれれば、軍病院の医者としても働けるんだ。まあそれじゃなくても、おれ頭いいから別にどこだろうとやってけるし、気にすんなって」

 

「……そっちは、レーサーになりたいって言ってただろ」

 

「あー、じつは気がついたんだけどさ。おれって別にレーサーじゃなくて、なんか速い乗りもんを運転したいだけっぽいんだわ。ついでに裏方としてあちこち物を運んだり、サポートするみたいな? つまり憲兵軍に入れば、速い乗り物よりどりみどりで選び放題ってことよ」

 

「ほんとに……いいのかよ」

 

「おう。だけど覚悟しとけよ、マジで難しいらしいからな」

 

「まあ少なくとも一人でやるよりは絶対いいからよ」

 

「……ありがとう」

 

「いいってことよ」「うんうん」

 

 

 ---

 --

 -

 

 

「認めません、憲兵軍……憲兵軍幼年学校に入るなんて絶対ダメです」

 

「うぉ、マイサンの言うことならなんでもホイホイ聞いちゃう大井っちが、珍しく反対してる……まあ、その気持ちもわかるけどね~」

 

「……なんでダメなんだよ」

 

「ごめんね~……北上様はときどき人の話が聞こえないの」

 

「もうっ! 都合が悪くなるといつもわたしに説明させる! だいたいあなた海賊になりたいんじゃなかったの!? そりゃ海賊に比べたら憲兵軍のほうが……いえ、それでも反対です!!」

 

「そうだそうだー、海賊になって巨乳の航海士はべらせたいんじゃなかったのか~」

 

「海賊なら毎年なってるだろ! それに海賊はなってみたかっただけで、将来海賊になりたかったわけじゃない。あと航海士はどうでもいい。それよりなんでダメなんだよ!」

 

「……いろいろありますけど、一番の理由は憲兵軍だろうと入隊すれば軍人になるからです。もちろん自国や地域の財産を守ってくれる軍人の方々には敬意を払うべきですが……でもそれは、あの人たちの職務の中に、いざというときは死ななければならない、ということも含まれるからですよ」

 

「別に軍人じゃなくても死ぬときは死ぬだろ」

 

「もちろんどんな仕事だろうと、日常生活だろうと死ぬときは死ぬ。ですが……軍人は死ぬ可能性が高いとわかってなお、その職務を果たさなければいけないことがある。その機会が他の仕事に比べて圧倒的に多いの。わたしたちはあなたの親で、あなたを守るように提督から願われました。だから……あなたを死という一番怖いものから守らなきゃいけないのよ」

 

「……結局それかよ。あんたらがおれの親をやってるのは、提督の命令だからなんだろ。おれのじいさんがそう命令したからなんだろ!! おれはそんなの頼んでねえ!!」

 

「なっ!? なに言ってるの!!」

 

「……まぁ、そう、そうねぇ。アタシらがマイサンの親をやってるのはその通り。あんたのおじいさんがアタシたちの提督で、そう命令されたからだわ」

 

「北上さん!?」

 

「つまりあんたのおじいさんが、もしアタシたちの提督じゃなかったら、あんたはどこぞの裏路地でとっくにくたばってたでしょうね~……でもそうはならなかった。それのなにが不満なのさ?」

 

「別に不満なんかないよ。でも、もしじいさんが生きてて、家族捨てたじいさんが、おれも捨てるってなったら……あんたらそれでもおれの親だったのか?」

 

「……あんたの言いたいことはわかる。だからはっきり言ってあげる……提督がそう望んで命令したら、アタシたちはそれに従う。それが艦娘ってもんだからね」

 

「もちろん、わたしたちにも意思がありますし、艦娘によってはそういう考えや価値観では無い個体もいるわ。それにその命令が理不尽だったり間違っていれば説得します。なんなら力尽くで止めることだってある……ですが、基本的にわたしたちは提督の命令を優先する。でも、だからこそ……わたしたちはあなたを守るために親になったの」

 

「顔も見たことないだろうけど、あんたのおじいさんはあんたのことを大切に思ってた。こうだったなら、ああだったならってネガティブになるかもしれないけど……そこんとこは忘れて欲しくないかな~」

 

「……おれがじいさんのおかげで、二人のおかげでいまも生きてるってのはわかったよ」

 

「そう、なら……」

 

「でも、それでもおれは憲兵軍に入る」

 

「なんでそうなるのかな~。あの世でアタシらが提督……あんたのおじいさんに怒られちゃってもいいの~?」

 

「ッ~!! 入るったら入るんだ!! 決めたんだよ!! 邪魔すんなよ馬鹿!!」

 

「あっ、ちょっと!!」

 

「……いっちゃったね~。夕飯までに帰ってくるかな?」」

 

「はぁ……どうしてわかってくれないのかしら」

 

「保護者ってのは厄介だねぇ……」

 

「守ってるはずなのに、恨まれてしまうなんて……いえ、ともかくいまは追いかけないと」

 

「……ねぇ大井っち。憲兵軍幼年学校に入ったからってさ、別に必ず憲兵になるわけじゃないんでしょ?」

 

「え? ええまあ、任官拒否の自由はあるでしょうから」

 

「ならいいんじゃないかな、憲兵軍幼年学校にいかせるくらいさ」

 

「本気で言ってるんですか?」

 

「怖い怖い、顔が怖いよ大井っち。そもそもさ、憲兵軍幼年学校ってかなり難関でしょ? そんなところに合格できるかはわかんないし、合格できなかったらあの子も諦めるでしょ。それにできたらできたで、それだけ凄いってことじゃん」

 

「……そりゃあの歳でしっかりとした将来の目標を持って勉強に取り組んだなら、確かに得られるものも多くなるでしょうけど……」

 

「いろいろ複雑だけどさ、応援してあげてもいいんじゃなって思うわけよ。受験まであと二年くらいあるわけだし、それまでずっと喧嘩してるわけにもいかないでしょ。あの子頑固だし、割と平気で二年間アタシらと口きいてくれなくなるかもよ?」

 

「うっ……それは嫌ですけど……」

 

「でしょ~? 海賊記念日に、マイサンが木曾や球磨姉さんに多摩姉さんたちと仲良く話してるのに、アタシらとだけ話してくれないの想像してみ?」

 

「……ぁぁぁああぁああああ!!」(精神不安)

 

「アタシもきっついわ~。だからそんなわけで、そこんとこ含めて改めて話してみましょうか……あと、いきなり憲兵軍幼年学校だとか言い出したあたり、どうにも裏で糸引いてるのが(友達二人)いそうな気配がするのよね~」

 

「ああ、あの二人ですか……って、それはともかく、早く探しに行きますよ北上さん!!」

 

 

 

 ■□■□■

 

 

 

「日に30時間の勉強という矛盾のみを条件に存在する合格通知! それこそが……ああ、光が見える……これが……ララァ」

 

「クソッ! 裏方担当が勉強のしすぎで、またおかしくなった! ……ソォイ!」

 

「ぎゃふん!? ぶ、ぶったな!? 不特定多数にしかぶたれたことないのにッ! ……っは!?」

 

「正気に戻ったか、いいから次の問題に取りかかれって……ほら、落ち着いて一問ずつな。さてそっちはどんな感じになって──」

 

「数字とは算数、そして数学、つまりこの公式こそがアンサー。くそ、なんでこんな問題がわからなかったんだよおれは……つまり三次元の壁を越えるための方法はブツブツブツブツブツブツブツ」

 

「ちょ、まて! その先は地獄だぞ! というか進路が変わっちまう! 数学の井戸に沈むな、しっかりしろ! これが終わったらお前の大好きな体力トレーニングだぞ!!」

 

「もう……(頭脳的に)がんばらなくていいの……か?」

 

「そうだ、お前はよくがんばった。だから……もう lim x→0 n/x = ∞(ひと) 頑張りだ!」

 

「……そうか、あともう lim x→0 n/x = ∞(ひと) がんばりでおれは──」

 

「……」

 

「……」

 

「なんかさ~、あの頭脳担当の子。じつはものすごく優秀だったりしない?」

 

「運動はうちの子がみんなを引っ張ってるし、教材の確保や下調べは裏方担当の子が頑張ってくれてるみたいだし……絶妙に噛み合ってますね……」

 

「……」

 

「……」

 

「まさかほんとに合格しちゃったりしないわよね?」

 

「全国の艦連指定都市から受験者があつまってきますし、鳳翔街や憲兵軍区画出身の優秀な子供たちも受験しますから、そんなに甘くはないはずですけど……」

 

「……」

 

「……」

 

「でもさ、なんか締め切り前の漫画家くらいがんばってるよね~」

 

「追い詰められてると紙一重なようにも見えますけど、はい、必死ですね……」

 

「……」

 

「……」

 

「とりあえず、特製魚雷エクレアでも差し入れしてあげますか……」

 

「そうですね、わたしはお茶をいれますね……」

 

 

 ---

 --

 -

 

 

「まさか本当に合格するとは……しかもうちのムチュコたんはともかく、あんたら二人も一緒になんて……読めなかった、この北上様の目をもってしても……」

 

「……はい受かってしまいました」

 

「……ええ、受かってしまいました」

 

「三人同時に合否通知を開けて、全員合格してたのはさすがに……ビックリしましたね」

 

「……うん、三人とも受かった」

 

「マジでよかったよ、これで誰か落ちてたら空気最悪だったからな」

 

「全員落ちるよりつらいぞそれ。まあ、だからって全員受かるとは正直思わなかったけど」

 

「学校にも連絡いったらしくて、さっき壮行会するって電話がきた」

 

「そりゃ十年にひとり受かればいい超難関に、三人同時に受かったからな」

 

「ぶっちゃけ学校創設以来の快挙だろ。うちの親ぜったい泣くわ、もちろんいい意味で」

 

「ほんとにねぇ。あなたたちが一生懸命頑張ってたのは知っていますが、だったとしても可能性はかなり低かったでしょうし……」

 

「とりあえず、あんたら二人は家に帰って家族に伝えてきなさいな~」

 

「確かに、まずはしっかりとお話ししてきなさい、これからが本当に大変なんですから……」

 

「そう……そうですね、じゃあひとまずこれで」

 

「んじゃいったん帰ります、また明日学校でな」

 

「あ、うん……ありがと……また……」(心ここにあらず)

 

 

「……さてさて、じゃあうちはうちでお話ししましょうかね~」

 

「そうですね、大事なことですから」

 

「……はっ!? と、とにかくこれで文句ないだろ! 憲兵におれはなる! 絶対になるからな!」

 

「はいはい落ち着いて……しかし、まさかマイサンがそんなに憲兵にたいして熱い思いを秘めていたなんてねぇ……」

 

「思い直して欲しい気持ちもありますが……なにを言おうと絶対に変えないのでしょうね……」

 

「あたりまえだろ!」

 

「まあいいけどさ、一個だけ教えて欲しいことがあるんだ」

 

「……なんだよ? いっとくけど絶対行くからな」

 

「別にいまさら反対はしないけどさ……憲兵になりたい理由(わけ)を聞かせなさいな」

 

「理由? なんでだよ?」

 

「あんたも知っての通り、たとえ血が繋がってなくてもアタシたちはあんたの親。だから可能な限りあんたを守り育てる義務があんの。でも……あんたは憲兵、軍人になっちゃうかもしれないわけでしょ? だからあんたがもし実戦なんかに出て万が一にもなにかがあったとき、親としてはちゃんと、どういう理由があったのかっていうのを知っておきたいの」

 

「……べつに理由なんて」

 

「ないわけないでしょ。この二年、目的もなくあんなに必死に勉強できるわけない。あの二人はまあ、ちょっとわかりませんけど……あなたは目的があったはずです」

 

「アタシらは艦娘だから、身も蓋もない言い方だけど、生まれ持って戦えるようにできてる。だから生き残る術ってのは、ある程度知ってるつもり。

でね、その術っていうののひとつが理由なの。どうして理由が必要かっていうと、どうにもならない状況、武器も体力も仲間もなくて、敵に囲まれてる……そんな状況でさ、それでも頑張れるか頑張れないかどうかが生死を分ける……それを左右するのが“理由”なのよ」

 

「そんな状況なら誰だって生きようとするだろ……」

 

「自分の命が大事だからなんてのは当然だし、本当に大事なら軍人なんかやらない。そしてどうしようもない状況で、自分のためだけに頑張れる人は多くない。だから聞かせなさい、理由をさ。それを聞いておかないと、アタシたち安心できないのよ」

 

 

「……母様がまえに言っただろ、おれは組織の凄さも、自分の力の弱さも強さも使い方も知らないって……なら、世界一強い組織に入れば、強いから、強くなれて、できることも沢山ふえると思ったんだよ」

 

 

「……そう。あんたも男の子ってことか。まあ……しょうがないのかしらね」

 

「そもそも、合格したら認めると言ってしまった以上、認めないわけにもいきませんから……わかりました」

 

「それじゃあ!!」

 

「ただし! 最初の一年は寮生活が義務づけられていますが、二年目からはうちから通いなさい。あと、一年目も毎週必ず顔を見せなさい、いいわね?」

 

「……う、うん」

 

「よし、じゃあ一先ずお風呂に入ってきなさい。あがったらご飯にしましょ」

 

「わかった、入ってくる!」

 

 

「……」

 

「……」

 

「どう思う?」

 

「本当のことも言ってるけど、隠してることもありそうな感じでしたね」

 

「だよね~。男ががんばる理由って、基本的に女なんだろうけどさ……あの歳でそれが理由っていうのはちょっと考えにくいわ」

 

「あの子を見つける前に、あの子がどうやって生きてきたかを、わたしたちはしっかりと知りません。もしかしたら、そのあたりになにか理由があるのかもしれませんね……」

 

「いつか本当の理由を聞かせてくれるのかしらねぇ……ところで大井っち」

 

「なんですか北上さん?」

 

「最初の一年は寮生活ってこと、なんでしってたのさ~」

 

「……合格した場合に備えて、一応調べておいたんです。確率は低かったでしょうけど、合格するかもしれない……そう思えるくらいがんばってましたから」

 

「そっかー」

 

「はい」

 

「……ほんとはさ、すごくすごく褒めてあげるべきなんだろね」

 

「そうですね……憲兵軍幼年学校じゃなければ、すごくすごく褒めてあげたいです」

 

「ははは、そういえば卒業式もそうだけど、入学式に参列するのは、はじめてだね~」

 

「着物か洋服……どちらがいいんでしょうか……」

 

「そうねー。卒業式はアタシが洋服で、大井っちは着物。入学式はアタシが着物で大井っちは洋服とかどう?」

 

「……ふふふ、いいですね。そうしましょうか」

 

 

 

 ■□■□■

 

 

 

「ねー大井っち」

 

「なんですか北上さん?」

 

「あの子、何時に帰ってくるんだっけ?」

 

「予定では12時、お昼までには帰ってくるはずですよ」

 

「そっか~、あんがとねー」

 

「いえいえ」

 

「……」

 

「……」

 

「ねー大井っ――」

 

「予定では12時、いまは11時半ですよ」

 

「おおふ、なんでわかったのさ……」

 

「昨日からその質問、三十四回目ですよ北上さん」

 

「……だってさー、まさか最初の三ヶ月は帰宅禁止なんてさー、思わないじゃん」

 

「そうですね、電話も禁止でしたから」

 

「寮になんて入らないで、家から通えばいいのにねー」

 

「まあ、規則ですからしょうがないですよ」

 

「……しっかし、あの子がいないとこの家ってこんなに広かったんだね」

 

「広いというか……静かですよね」

 

「この家買ったときはさー。まさかこんなことになるなんて思わなかったわ」

 

「そうですね……まさか提督のお孫さんとだなんて」

 

「なにいってんの大井っち。提督の孫だけど、わたしたちの子供でしょー」

 

「あっ……そうでしたね」

 

「……」

 

「……」

 

「元気だといいけど、正直ちょっと心配だわ」

 

「そうですね……子供は目を離すとすぐに成長するというのは知ってますが……さすがに三ヶ月となると……」

 

「身長とか伸びてるかな?」

 

「伸びてるかもしれませんね……あっ」

 

「ん、どうしたの大井っち?」

 

「いえ、玄関のほうから気配が……帰ってきたかもしれません」

 

「……ッ!!」

 

「早っ!? ま、まってくださいよ北上さぁん!!」

 

 

 

「……おかえり~」

 

「……おかえりなさい」

 

 

 

「…………タダイマ、モドリ、マシタ。キタカミサマ、オオイサマ」

 

 

 

「「!!??」」

 

 

 ---

 --

 -

 

 

「あんた一年たって、ようやく自宅から通えるようになったんだからさ。せめて家にいるときくらい、そのかたっくるしいしゃべり方やめない?」

 

「……さすがにそれはできね、できません」

 

「ほら無理してる~。いいじゃん、誰も見てないんだしさ~」

 

「……できません」

 

「え~なんでさ~」

 

「自分は見習いとはいえ憲兵ですので。艦娘であるお二人には、常に敬意を持って接することが求められます」

 

「なにが敬意だ! アタシゃ艦娘の前に親だオラァ!」

 

「艦娘であり親であればなおさら敬意は必要かと思うのですが……」

 

「ふーん。バシバシ……ねえねえ、怒った?」

 

「いえ、ほとんど痛くないので怒っていませんが……なぜ自分は突然腹部を殴られたのでしょうか?」

 

「親子のコミュニケーション」

 

「そうですか……」

 

「バシバシ……ちょっと強めに叩いたから痛かったよね? ねえねえ、怒った?」

 

「……怒っていません」

 

「なんでよ、昔なら『なにすんだ、いってえなこの!』って言ったのに!」

 

「どうして母様が怒ってるんですか……」

 

「どうもこうもあるか! いまさらだけどさてはあれか、鳳翔街の連中の影響だなテメェ!」

 

「いや、あいつら……ゴホン、彼らほど狂信的ではありませんよ。ですがまあ……自分は、彼らと近い立場にいたこともあって、鳳翔街派閥……と呼べるほどのものではありませんが、ある程度彼らと親交があるのも事実ですので、全く影響を受けていないとは言いきれませんが」

 

「やっぱりかこの~。しっかし派閥ねぇ……他にはどんな派閥があるのさ」

 

「自分たちのように全国から集まった、艦連指定都市生まれの一般派閥に、憲兵軍の生活区画で育った、憲兵軍人の子息たちの派閥でしょうか。まあ、一般の派閥は普段はなれ合わず、必要になれば集まる程度の薄い関わりですので、実質はその2つの派閥で占められているといって差し障りないかと」

 

「てことは、憲兵軍人の子供らの派閥とは親交ないの?」

 

「授業の内容次第では、派閥をこえて協力しあうこともあります。ですが、とくに最初の一年は対立こそはありませんでしたが、なれ合うこともないといった空気でしたので、授業以外で関わることはありませんでしたね」

 

「あー、そういえば憲兵軍の中にもそういう派閥の違いがあるのを、聞いたことあるような気がするわ。なんか相容れないもんでもあるのかしらねぇ」

 

「そうですね……両派閥とも、艦連や艦娘に対する信仰に近いなにかが根底にあるのは感じます。それゆえに、必要であればすぐに協力し合える……のですが。少し誤解をまねく表現ではありますが、養殖物と天然物のような微妙な違いがあるように思えます」

 

「養殖物と天然物?」

 

「はい、そうであることを望まれた者たちと、そうであることを望んだ者たち……とでも言いましょうか……結果ではなく、過程が違った。そういった違いです。ただ……そもそも憲兵軍幼年学校に入れた者たちは、各派閥の中の生え抜き、さらにその上澄みですので……そういった思想が強いのでしょう。鳳翔街出身者も憲兵軍生活区画出身者も、その他大勢のその手の意識については、艦連指定都市生まれの人間に毛が生えた程度かと」

 

「……ふーん。その基準で言うとマイサンは、望んでそうなった者ってことなの?」

 

「……………………」

 

「なーんで黙るのさ~」

 

「いえ、なんとこたえたらよいものかと思案しておりました」

 

「そっか、まあ言いづらかったら別にいいけど。でもマイサンは鳳翔街の派閥と関係があるから大丈夫なんでしょうけど、あの二人はそんな環境でやっていけてるの?」

 

「意外に思われるかもしれないのですが、あの二人はそれぞれの方面で優秀ですので、派閥関係なく頼られている事が多いのです。ですので、自分などよりよほどうまくやっていますよ」

 

「おっふ、意外だけど……それなら確かにと思えなくもないわ……まあ、全員うまくやれてるならよかったわよ」

 

「はい、おかげさまで」

 

「といっても、そのガタイなら喧嘩売られることも早々ないか……って、いまさらだけど身長ずいぶん伸びたわね-。いつの間にかアタシや大井っちより高くなっちゃってまあ」

 

「はい、幼少の頃よりお二人に作っていただいた食事のおかげです」

 

「そっかそっかー……ふんッ!!」

 

「ごふぉ!? な、なにすんだ、いってえなこの!?」

 

 

 

 ■□■□■

 

 

 

「いよいよ卒業か~」

 

「ほんと、あっという間でしたね」

 

「あっ、大井っちあそこあそこ、卒業生に敬礼されてる着物姿のちっちゃい女の子……あれ多分、アタシらと同じ立場の艦娘だわ……駆逐艦かしらねぇ」

 

「ああ……ものすごく複雑な顔してますね……わたしたちと同じくらい」

 

「親の心子知らずとはよく言ったもんねぇ……」

 

「北上様に大井様、こんなところにいらしたんですか。この度我々三名、無事に憲兵軍幼年学校を卒業し、艦夢守市所属の軍団に配属されることになりました!」

(※憲兵軍には陸軍海軍空軍などの区分けがなく、各艦連指定都市の軍団or師団があり、その中で兵科ごとに分けて配属される)

 

「自分は衛生科に配属予定となってまして、この後専門の学校に進学し、学位を取った後は衛生科の医官になる予定です!」

 

「自分は航空科に配属になりました、適性があるみたいなのでヘリの操縦士になる予定ですが、ゆくゆくはホエールライダー(特殊大型飛行艇パイロットの愛称)になるつもりです!」

 

「おー、よく頑張ったわねあんたら」

 

「そうですね、はじめてうちに来たときはあんなにちっちゃかったのに。いまじゃいっぱしの軍人さんのしゃべり方まで身について……」

 

「で、マイサン。あんたはどこにいくの? 恥ずかしがらず母様にいってみなさいな~」

 

「事務科とか兵站科だと嬉しいんですけど……」

 

「自分は海兵科……強襲陸戦隊に配属されることとなりました」

 

「は? か、海兵科の強襲陸戦隊?」

 

「ちょちょちょ、殴り込み部隊に配属なんて聞いてない聞いてない。なんでよりによって死傷率が一番高い兵科の、そのまた死傷率が一番高い部隊に配属されることになってるのよ!?」

 

「海兵科のトップ直々の指名らしいですよ、なんでも現役海兵相手の模擬戦で、最後の一人になってからも諦めず、二十三時間戦い抜いたのを見込まれたみたいで」

 

「……ちょっとシバいてくるわソイツ」

 

「面子潰されたからって、危険な任務でうちの息子をすり潰すつもりですか……」

 

「お二人とも落ち着いてください、これは自分も望んだことです。それに危険も多く厳しい兵科ではありますが、それゆえ自身の能力を限界まで伸ばせますし、将来的に“必要”なことでもありますので」

 

「面子っていうより、本当に指名しない理由がないんですよ。自分もその模擬戦のときにいましたけど、教官も強襲陸戦隊員か特殊部隊員になるために生まれたような男だって言ってました。それに仕留めた海兵の狙撃手も、コイツがあと三人いたら負けてたかもしれん……ってこぼしてたみたいで、本当に凄い適性があるんですよ」

 

「ぐぬぬぬ……怖れていたことが起きてしまった……」

 

「ねえ、いまからでも配属を変えられないの?」

 

「……変えられませんし、変える気もありません」

 

「どうしても? ママ様がどれだけ頼んでも? あなたになにかあるかと思うと、わたしも北上さんも不安で不安で死んじゃいそうになるのに……それでも?」

 

「……お二人に親不孝者と呼ばれてしまうのは覚悟しております。ですが……すでに憲兵軍もまた、自分にとって大切な場所ですので」

 

「そう、ですか……正直納得できない気持ちが強いですが……あなたがそうなりたいと望んでしまったのなら、受け入れるしかありませんね……納得できませんが」

 

「アタシも正直反対っちゃ反対だけど……それだけ頑張って結果出して、あんたが望んでるなら……まあ、認めるしかないよねぇ……」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「でもさ~……これだけは覚えといてほしいんだ」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「アタシも、大井っちも……これからもずっと、あんたのことを思ってる。あんたの姿が見えないときは、いま誰といるんだろうな、いまどこにいるんだろうな、お腹空かせてないかな、怪我してないかなって、きっと、ずっとずっと、自分達の寿命が尽きるその瞬間までね……これでもかってくらい毎日あんたを心配してる存在がいる……それだけは忘れないで」

 

「……はい」

 

「あまり心配をかけないで……というのは無理かもしれませんけど。できるかぎりはうちに帰ってくるようにしてね……休日は当然ながら、最低月四日以上は顔を見せてくださいな」

 

「……善処いたします」

 

 

 ---

 --

 -

 

 

「はい、これも持って」

 

「……あの、まだ買われるのですか?」

 

「そうよ、まだ買うわ。この貯めてあった百貨店の金券を全部使いきるまで買うわ」

 

「自分は療養中なのですが……」

 

「いいのよ、傷の治りが遅くなれば戦場に戻されなくてすむでしょうに。いっそこのまま悪化して医療除隊したらいいのよ」

 

「それについては──」

 

「あなたが戦場で負傷したって連絡がきたとき。アタシと北上さんが、どれだけ、心配したと思ってるの?」

 

「……面目次第もございません」

 

「ふんッ!!」

 

「……」

 

「……」

 

「本当に心配したんですよ」

 

「……はい」

 

「そもそも、卒業して二年目で実戦に参加させられるなんて……早すぎでしょうに」

 

「それについては……自分が志願したからです」

 

「はぁ? ……どうしてよ」

 

「必要なことでした」

 

「……なにを焦ってるか知らないけど、死んだら元も子もないっていうこと……わかってないの?」

 

「臆病者はなにも手に入れることができません、特に自分がいる兵科においては」

 

「それについては……同意できる部分もありますけれど。だからって最前線に出ることはないでしょうに。欲しいものがあるなら、まずはコネとかを使いなさいよ」

 

「ママ様は本当に欲しいものを、それらの手段で手に入れられたのですか?」

 

「わたしは……まあ、自分の努力でどうにかしましたけれど」

 

「それは母様、北上様の心などでしょうか?」

 

「……そうよ。しょうがないじゃない、わたしは“大井”なんですから」(顔真っ赤)

 

「存じております。自分は憲兵、そうでなくとも、比翼連理であるお二人の関係は幼少のころより見てまいりましたので。もし機会があれば、お二人のなれ初めなども聞いてみたいものですね」

 

「そんなの聞いてどうしようっていうのよ……」

 

「母様とママ様が惹かれあうのは艦娘としての本能というべき部分なのでしょうが……だったとしても、お二人の仲がいいのは、息子である身としては喜ばしいことですので。その始まりを知っておきたいのかもしれません」

 

「……////」

 

「喉が渇きましたね。飲食フロアに移動して、適当な喫茶店に入りましょう」

 

「はぁ? わたしはまだ買うものが──」

 

「喉が渇きました……ママ様」

 

「……しょうがないわね」

 

 

「えっと、わたしはオレンジジュースをおねがい」

 

「自分はアイスコーヒーを」

 

「は、はい! ありがとうございます!」

 

「……可愛い子じゃない、あの店員の子」

 

「浮気は感心しませんが……」

 

「違うわよ!?」

 

「冗談ですよ」

 

「ずいぶんと生意気になったわね……それよりあなた、恋人とか作らないの? さっきの娘、あなた見て顔赤くしてたわよ? モテないわけでもないでしょうに」

 

「自分は憲兵ですので……いえ、それとは関係なく、いまは必要ありませんから」

 

「必要ないってことはないでしょうに、男なら溜まるものもあるでしょ?」

 

「それについてはまあ、訓練や薬でどうにでもなります」

 

「……そこまで行くと二周して不健全じゃない?」

 

「冗談ですよ。あまり母親に話す内容でもありませんが、憲兵軍の区画にも赤線(※公娼区画の隠語)はありますので」

 

「ふーん、まあそのあたりのことまで心配するつもりはないけど……北上さんも言っていたように、いざというときに踏ん張れる理由をつくるなら、やっぱり家族を持つのがいいと思いますよ……と、まあ、人生の先輩からのアドバイスです」

 

「はい、胸に刻んでおきます」

 

「うん、よろしい」

 

「お待たせしました、オレンジジュースとアイスコーヒーになります!」

 

「はい、ありがと」

 

「ありがとうございます」

 

「あっ、いえ……ご、ごゆっくりどうぞ!」

 

「……そういえばあなた、さっき別行動とったとき、どこにいってたのかしら?」

 

「トイレですが?」

 

「嘘おっしゃい、さすがに長すぎでしょ。それに腰ポケットの膨らみ、バレバレよ」

 

「……ママ様に隠し事はできませんね」

 

「べつになんでもかんでも話せとは言わないけど……」

 

「いえ、まあ、お二人が一緒のときにお渡ししようと思っていたのですが……これです」

 

「これって……指輪?」

 

「はい、そうです」

 

「なんで指輪なのよ?」

 

「初任給とはいえませんが……育てていただいた母様とママ様に、なにか給金で贈り物を買いたく思ったのです。お二人は夫婦なのに、指輪をされていない。なにか理由があるかとは思ったのですが……もし問題なければ、結婚指輪として身につけていただけたらと思い購入いたしました」

 

「…………」

 

「……あの、ママ様。やはり不味かったでしょうか?」

 

「その指輪……はめてくれる?」

 

「は? いえ、さすがにそれは母様に……」

 

「いいのよ、北上さんもきっと……あなたにはめてもらいたいでしょうから」

 

「では失礼して……よかった、サイズは合っていたようです」

 

「……ふふふ、そうね、確認するわけにもいかなかったでしょうから……ぴったりよ。でも結婚指輪か。わたしも北上さんも……考えもしなかったな。はは、結婚して十年以上たってたのに……なんでかしらねー」

 

「なるべく長くもつよう、頑丈な素材で作っていただいたのですが……もし気に入らなければ処分していただいてもよろしいので」

 

「なに言ってるの。息子が身体に穴開けて稼いだお金で買ってくれた、大事な大事なプレゼントよ……処分なんてするわけないでしょ。お墓まで持っていくわ」

 

「……光栄です」

 

「……きれいね。帰ったら……忘れず北上さんにもはめてあげてね?」

 

「喜んで……もらえますでしょうか?」

 

「喜んでくれるわ、きっとね」

 

「……」

 

「……」

 

「ありがと、大事にするわ」

 

「……はい」

 

 

 

 ■□■□■

 

 

 

「はい、お茶どうぞ。あの子はちょっと買い物に行ってるけど、すぐ戻ってくるからちょっと待っててね」

 

「しっかし幼年学校卒業してもう四年ちょっとか~。ギリギリ未成年っていっても、これだけ勤めたならもう立派な憲兵だねぇ……」

 

「はい、今日は来られないんですが、おれたちの頭脳担当だったあいつは学位も取得できて、予定通り衛生科に配属される予定みたいです。ただ在学中に書いた論文が軍病院の院長の目にとまったみたいで、脳外科への勧誘がきてるみたいですけど」

 

「あらまあ、今度会ったときは先生って呼ばなきゃいけないかもね~」

 

「そういえばあなたはホエールライダーになれたのかしら?」

 

「ははは、ちょっと試してみたんですが、小回りの利くヘリの方が性に合ってたみたいでして……もうヘリ一本でやっていくことになりそうです」

 

「ふーん、まあ自分に向いてることやるのが、一番結果出せるからいいんじゃない?」

 

「雷巡として特化された北上様にそう言ってもらえると、説得力がすごいですね。あっ、いまさらですが、今日は突然お邪魔して本当にすみません。その、用事が済んだらすぐ帰りますので……」

 

「そんな焦らなくても、あの子も喜ぶだろうし、別に泊まっていってもいいけどねー」

 

「外泊許可はとってきてないの?」

 

 

 

「いやいやいや、お二人があいつと過ごすせるのは、今日と明日で最後なのに……邪魔なんてできませんよ」

 

 

 

「……どういうことかしら?」

 

「なになに、なんなのさー……ちょっと穏やかじゃない雰囲気ね」

 

「え? だって、え?」

 

「……」

 

「……」

 

「……本当になにも……聞いてないんですか?」

 

「そうね……たぶん聞いてないと思うわ」

 

「そこまで深刻になるような話は……聞いていませんね」

 

「あの馬鹿……」

 

「もし話せるならさ、話してもらえる?」

 

「なんか嫌な予感がするから……あんまり聞きたくないけどさ」

 

「……おれから言っていいことなのかわからないんですが。いや、このままだとあいつ最後まで黙ってるかもしれないな……なら、なおさらのこと、お二人は知っておくべきだと思うので……言います。あいつ……申請が受理されて、試験に合格して……憲兵千鬼衆に配属されることが決まったんです」

 

 

【※憲兵千鬼衆:憲兵軍の特殊部門。主に艦連法を犯した重犯罪者、または艦娘や提督などが関わる犯罪捜査に捕縛任務。そして悪意を持って提督を殺害した存在に対して、徹底的な報復行動を取ることを最大の目的とした組織。その特殊性ゆえに機密が多く、隊員である“鬼”は、その経歴を消し、顔を変え、過去との関わり一切を絶つことが義務付けられている】

 

 

「……憲兵……千鬼衆?」

 

「あー……想像してたより百倍最悪だわ」

 

「元々……幼年学校時代から志願していたみたいで。適性試験も受けてたんですけど、結果は……教官も驚いてました。千鬼衆になる上で必要な素質をほとんど持っていて、適性が馬鹿みたいに高いって」

 

「幼年学校時代か……ら?」

 

「……鳳翔街の連中の影響って、そういうこと……ね」

 

「身体的なものは当然ながら、特に高かったのは精神的な部分だったらしいです。自分には信念や思考とか精神構造的な専門の説明はできないんですが、教官が言うには『善のために悪を成すことをいとわず、その悪がどれだけ身体にへばりついても、まったく意に介さない逸材』ってことらしいですけど。

あと部隊での連携は当然なんですけど、単独行動時において能力が跳ね上がる特性もあったらしくて……幼年学校のときの現役海兵との模擬戦のときにそのあたりも判明したみたいで……上層部もそのつもりで兵科の配置選定やキャリア(実戦経験)を積ませてたみたいです」

 

「……そんな、千鬼衆だなんて……そんな……」

 

「…………悪いけどさ、今日はもう帰ってちょうだいな。ちょっと、余所様には見せられないことになると思うからさー」

 

「……はい。その、こう言っちゃなんなんですけど、おれたちも止めました。だけど、あいつあの性格だから……三人での別れはもうすませたんですけど、どうしても最後に言いたかったことがあって。それだけ伝えてもらっても────」

 

「ただいま戻りました。ああ、靴があったからもしかしたらと思ったが……来てたんだな」

 

「……すみません。やっぱり自分で言います」

 

「……」

 

「……」

 

「もしかして……話したのか?」

 

「むしろなんで言ってなかったんだよ馬鹿。……だけど、よかったよ。おまえ最後まで黙っていくつもりだったんだろうからな……いろんな意味で……よかったよ」

 

「そうか……悪かった」

 

「まったくだ。まあ、いいさ……今日来たのは、この前言いそびれたことを言いにきたんだ。どうしても前に言えなかったことだ……だけど、これを言わずに別れたら、きっと後悔すると思ってな。あいつと相談して、おれが伝えに来た。あいつとおれから、最後の言葉だ……」

 

「……なんだ?」

 

 

「…………初めて会ったあのとき、お前にとって世界で一番大切な人たちのことを侮辱して……本当にすまなかった」

 

 

「……あのとき、おれも殴って悪かったな」

 

「はは、ありゃいいパンチだった……おれは最高のヘリパイロットだから、これからもあちこちの作戦で招集される。いつかお前と一緒の作戦にもかちあうだろうさ。でも、今度会うときはきっと……おれはお前のことをお前だってわからないだろう……けど、そのときはよろしくな」

 

「ああ……そのときはよろしく頼む」

 

「じゃあな、親友」

 

「……達者でな」

 

 

「……さて、あの子も帰ったことだし……しっかり聞かせてもらいましょうか」

 

「そこに座りなさい」

 

「……はい」

 

「憲兵千鬼衆になると聞きましたが……嘘ですよね?」

 

「嘘だったらいいな~……ほんと、嘘だったら」

 

「いいえ、本当のことです。自分はこの度、憲兵軍総司令部からの正式な辞令を受け、憲兵千鬼衆に就任することとなりました。お二人には、これまで育てていただきました恩をお返しで──」

 

「ふざけないでッ!!」

 

 

「……思えばママ様に叩かれたのは……はじめてですね」

 

 

「おっ、大井っち落ち着いて、落ち着いてって」

 

「これが落ち着いてられますか北上さん!! ともかく……あなた、憲兵千鬼衆ってのがどういうものなのか、本当にわかってるの!? あの人たちはね、文字通り『鬼』なの。自分から望んで、生きたまま鬼になることを選んだ人たちなの。

そりゃ世間じゃかっこよく語られることもあるかもしれない。実際千鬼衆には沢山の役目があるからね……でもそれはあくまで一つの側面にすぎない。あなたは千鬼衆の真の役割がなんだかわかってるの!?」

 

「……悪意を持って提督を殺害した者に完璧な報復を行い、世に究極の復讐装置である無数の鬼たちが実在することを知らしめ、そのようなことが二度と起こらぬよう抑止力として恐怖をまとい、破滅の象徴とまかりなることです」

 

「そうよ!! でもそれだけじゃない。報復や復讐っていうのは綺麗事じゃないの。その過程で他の誰かの大切な人を傷つけるし、終わらない憎しみの螺旋が生まれる。千鬼衆はその過程でうまれた恨み憎しみを全部引き受けて、誰からも怖れられて、つらくてつらくて普通の人じゃ耐えられないような役割を、わたしたち艦娘のために引き受ける鬼なのよ。

実際に千鬼衆は必要なら専門の思考訓練も積んで、提督たちを害し、艦娘たちを悲しませる人たちを殺し尽くしたくてしょうがないって、心のそこから本気で思うようになるときもあるの、それこそ本物の鬼……いえ、深海棲艦とかわらないような存在になっちゃうのよ!?」

 

「全て承知しております……そのうえで、自らそうなろうと決めましたので」

 

「どうして!? なんでなのよ!! 言っておきますけど、わたしたちは絶対に認めませんからね! あなたがどれだけ望もうと、相手が憲兵軍だろうと艦連だろうと、わたしたちの息子を鬼にするなんて絶対に許しませんから! そうですよね北上さん!?」

 

 

「──……アタシはさ……まあ、この子がそう望むなら……しょうがないかなって」

 

 

「なっ!? どうしてですか北上さん!? 千鬼衆になったら過去も現在も未来も消されて、わたしたちの息子じゃなくなってしまうんですよ!? この子はまだ二十歳にすらなってないのに!! この子はわたしたちの息子なのに!! この子にはまだ母親が必要なのに!!」

 

「それはまぁ、うん、そうねぇ……」

 

「もうこうなったら手段なんて選んでられません。親として艦娘として艦連に申請して、憲兵軍も除隊させましょう!! だってこの子には、親として愛して、守ってあげられる母親がまだ必要です!! それが提督の望みだったはずですよね!?」

 

「……うん、そうねぇ。でもさ……大井っちにさ、提督の願いをたてに、この子の望みを……人生を矯正する権利ってあるのかなって思うわけさ」

 

「そんな言い方!?」

 

「当然アタシにもあるのかなって……」

 

「あるにきまってます!! だってわたしたちは親なんですよ!? ……駄目なんですか? 幸せな人生を歩ませてあげたいって考えるのは……憲兵軍ならまだしも、千鬼衆だなんて……鬼にはなって欲しくないって、そう思っちゃ駄目なんですか!?」

 

「……昔、大井っち言ったよね。子供の願いをしっかりと聞いてあげるのが親というもの……だって」

 

「それとこれとは……」

 

「いまがそのときなんじゃないかなって、思うわけさ」

 

「ッ~!! そんなわけありません!! わかりません!! 絶対間違ってます!! 北上さんの馬鹿ッ!!」

 

「あっ……あ~……いっちゃった」

 

「……追いかけるべきでしょうか?」

 

「自分の部屋にこもっただけみたいだし、まあ、大丈夫でしょ……大丈夫じゃないでしょうけどさ……」

 

「……」

 

「……」

 

「まあ取りあえずさ、晩ご飯の準備しよっか。知ってるでしょ、あんたが帰ってくる前日には、大井っちがご馳走作るために凄い時間かけてさ、用意してるの」

 

「……はい」

 

 

「ん、冷蔵庫からお味噌とって」

 

「はい……どうぞ」

 

「ありがと。あとはそこのネギ切って、5ミリ刻みでね」

 

「了解いたしました」

 

「……」

 

「……」

 

「母様は……反対されないのでしょうか?」

 

「反対して欲しいの?」

 

「いえ……」

 

「でしょ。まぁ自分でもちょっと驚いてる。たぶんアタシはなんとなく……あんたが海兵隊の強襲陸戦隊に配属されるって話をしたときに、いつかこういう日が来るんじゃないかなって覚悟してたのかもね。勘違いならよかったんだけど……あはは、やっぱアタシって天才的だわ……」

 

「……」

 

「憲兵千鬼衆はさ……辞めることもできるけど、辞めたら特定の都市区画で住むことが決められてて、そこからは二度と出られないのは……知ってるでしょ。だから……北上様特製みそ汁もさ、もう飲ませてあげられないからさ……沢山飲んで……うっ……う、う、うッ……」

 

「はい……いただきます」

 

「……ゴメンゴメン、ちょっとタマネギが目に染みたわ。それと……今日は三人で川の字になって寝るから」

 

「ですがママ様は……」

 

「ああ、大井っちなら大丈夫大丈夫。ね……大井っち」

 

「……」

 

「ッ!? ……いらしたのですか」

 

「……北上さんはお菓子とお味噌汁しか作りませんから」

 

 

 ---

 --

 -

 

 

「んじゃお別れだね。たまには帰ってきなさい……って、そうだったそうだった。もう帰ってこれないんだったわ……ははは」

 

「はい、そうなります」

 

「まったく……この親不孝もんが」

 

「返す言葉もございません……」

 

「自分で決めたことでしょ、だったらそんな顔しなさんな」

 

「……はい」

 

「じつはさ、昨日からずっと考えてたんだ。文字通り鬼籍にはいるあんたにむけて、最後にどんな話をしようかってね。で、それをいまから話すからさ……聞いてくれる?」

 

「……はい、拝聴させていただきます」

 

「うむ、それでは母様である北上様が、最後にありがたいお話をしてあげようじゃないのさ」

 

「お願いいたします」

 

「……昔ある艦娘が絶体絶命のとき、提督に言ったらしいの。もはやこれまで、提督、一緒に深海に行きましょう……って

そしたらその提督はこう言った。馬鹿言え、深海に行くのはお前らだけだ、おれみたいな人間様が行くのは地獄だーってさ。

でね、それを聞いた艦娘はこう言い返したんだって。……ならわたしは深海棲艦の鬼になってでもお伴します。絶対離れません……ってね」

 

「……」

 

「こんなナリだけどアタシらはもう老人って歳だし。あんたはこれから鬼になって、この世のありとあらゆる争いの渦中に臨んで飛び込むような、ひどい闘いの日々を送ることになる。たぶん……そう遠くないうちに両方墓に入るでしょうよ。

そりゃできれば、親よりは長生きしてほしい、そう思ってるけどさ……。まあなにが言いたいかっていうと、さっき話したように、アタシも大井っちも、きっと死んだらろくでなしだった提督がいるであろう地獄に行く。

だから……あんたも来なさい、生きたまま鬼になるようなあんたは、死んだあとも鬼でいるのがお似合いよ」

 

「……はい。憲兵千鬼衆としての役目をまっとうした後には、必ずやお二人と祖父……提督殿の元にはせ参じさせていただきます」

 

「よろしい……ほら、大井っちもなんか言ってあげな。最後……なんだからさ」

 

「…………いまならまだ間に合います、考え直す気はありませんか?」

 

「……ありません」

 

「考え直して、憲兵軍にいられなくなったとしても……ずっとずっとわたしたちが守ってあげます。それでも絶対に絶対に絶対にありませんか?」

 

「はい、絶対にありません」

 

「考え直してくれるなら、千鬼衆なんかにならないって言ってくれるなら……わたしも北上さんもなんでもしてあげますよ?」

 

「……考え直しません、自分は憲兵千鬼衆になります」

 

「そう……そうですか……」

 

「大井っち……」

 

「なら……今日の別れは、あなたとわたしたちとの、今生の別れとなります」

 

「はい」

 

「……あなたは艦娘と提督たちの安寧のために、心身……そして文字通りこれまでの人生とこれからの人生、それら一切合切の全てを捧げることになるでしょう」

 

「覚悟しております」

 

「それだけではありません。生きて苦しむもの、老いに嘆くもの、さまざまな障害や病気の残酷さ、死を前にして絶望するもの。常人よりも遥かにたくさんたくさんの苦しみと死を目にして、自身もそれを味わうでしょう」

 

「……はい」

 

「愛するものと別離する者たちを目にし、ときに自らもそれと向き合うことになる。

誰かを怨み憎んでいる者と出会います、そしてあなたも怨み憎まれることでしょう。

どんなに力を手に入れても、求めるものが得られないことが付きまといます。

そして、自分自身のことだというのに、思うがままにならないことばかりなはずです」

 

「すべて……幼少の頃、そしていままで生きてきて、人一倍経験してきたことですので」

 

「だとしても、もう一度……いえ、これから何度も何度も経験することになる、それがいいわけがない。まさに生きて地獄を見る……それでもですか?」

 

「それでもです」

 

「そうですか……なにがあろうと、あなたは鬼になるのですね」

 

「はい」

 

「…………わかりました、ならもうわたしは止めません。あなたは……鬼に“なってくれる”。であれば、足を引っ張るようなことはもう言えません。なぜなら……忌むべき大義を掲げ、憎むべき役目を果たすために鬼になってくれる。あなたが、あなたたちがいてくれるからこそ、わたしたち艦娘はこれからも人類を憎み滅ぼそうとした深海棲艦のようになることなく、人類を愛する側でいることができるからです」

 

「……」

 

「どうか現在と未来の提督と艦娘たちの平穏のために、提督を害した者たちをひとり残らず殺しつくし、世にこれより恐ろしい存在はないと知らしめ、恐怖を振りまく存在となってください。

わたしたち艦娘は、その献身を輪廻の先まで忘れません……そして、そして……ぅぅ……」

 

「……大井っち……ありがとね……アタシの代わりにいつも大切なことを言ってくれて……アタシもさ……同じ気持ちだよ……ほら、泣き止みなって。大井っちが……アタシらが愛した子との、最後のお別れなんだから、笑顔で見送ってあげなきゃ……ゆっくりでいいから、最後まで言ってあげな……」

 

「…………あい? あいした?」

 

「はい……北上さん……そして、そして願わくば、そんなつらい生を送ることになったとしても……どうか一日でも長く……生きてください。それが……あなたの……あなたを愛した母だったものたちの……最後の望みです────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ああ、そうか……おれは……おれはとっくに二人の特別になれてたんだな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なにいってんの。あんたはわたしたちの息子で、ずっと特別だったでしょうに」

 

「もう、なにあなたまで泣いてるのよ……言葉使いまで昔みたいになっちゃって……」

 

「………………失礼を。恥ずかしくも、自分は祖父の……お二人の提督に願われ、母様とママ様に子として“愛して”いただいていたことを理解しておらず……それがどれほどの“特別”であったかも……いまようやく……知ることができました」

 

「いまさらか、ようやくこの北上様の胸一杯の愛情を実感したのか、遅いぞこの~」

 

「……そうですよ、あなたのことを愛していました。北上さんと同じくらい……」

 

「はい、おのれの不明を恥じるばかりです……ですが、であるなら……もはやわたしにはこれ以上求めるものはない。自分という存在がなによりも欲していたであろう、この胸を満たすあたたかな想いさえあるなら、もうなにも……必要ない」

 

「もっと沢山あげたいものあったんだけどね~」

 

「……でも、あなたに必要だったものをあげられてよかったですよ」

 

「充分です、もうなにも望むものがないほどに……充分にいただきました。

……そして、もうなにも求ぬなら、わたしは自身の存在に執着する必要はもうありません。であれば、いまやこの身命がおのれのものであることへの未練はすでになく。世界を救いし艦娘という存在のためにこの身、魂魄の一片まで捧げるに一切の迷いも無し。その為であればいかなる残虐非道な行為をなすこといとわず……すなわち、この身は鬼と成るにふさわしい」

 

「……」

 

「……」

 

「最後にこれ以上ない手向けのお言葉をいただけたこと、ありがたく存じます。それでは母様、ママ様。……いえ、北上様、大井様。どうかお達者で」

 

「はいよ、あんたもね」

 

「ええ、さようなら」

 

 

 ---

 --

 -

 

 

「……いっちゃったね~」

 

「そうですね」

 

「ははは、なんていうか……ずいぶんとおっかないもんになっちゃったね、わたしたちの息子はさ」

 

「そうですね……でも、根っこのところは変わってませんよ」

 

「まあそう……そうねえ……あの強情さは最後まで変わることなく、日に日に強くなって、ついには憲兵千鬼衆になるに至っちゃったからねえ」

 

「はい、それに北上さんのお味噌汁がすきなところも……昨日の晩も朝も、鍋いっぱい作ってあったのに……全部飲み干して。正直ずっと気にしてたんですよ、北上さんの作るものばっかりおいしそうに食べるから」

 

「ははっ、そうねえ……マイサンは帰ってくるたび、アタシの味噌汁をおいしそうに飲んでたわ。でもさ、大井っちの作るご飯もおいしそうに食べてたじゃないのさ。それにさ、アタシも何度か大井っちがいないときにご飯作ったけど……見ててわかるんだ、大井っちのが作ったご飯のほうがおいしいんだろうなーって」

 

「えっ、ほんとうですか?」

 

「嘘言ってどうすんのさ~」

 

「そうか、そうだったんですね……」

 

「意外とさ、アタシたちあの子のことなんにもわかってなかったのかもねー」

 

「そうかも……しれません」

 

「……」

 

「……」

 

「これからどうしましょうか……」

 

「そうねぇ、いっそあの海賊船で世界一周旅行でもしちゃう?」

 

「それいいですね♪ 三人で……いえ、夫婦水入らずで世界一周旅行を──」

 

「大井っち?」

 

「でもやっぱり……この家にいましょう。必ずどちらかが、いるようにしましょう」

 

「……あーそう、そうねえ……あの子が……帰ってくるかもしれないもんね」

 

「ええ、そうなったときはきっと憲兵軍から追われる身になってることでしょうから。わたしたちが守ってあげないと……」

 

「そうね、守ってあげましょ」

 

「……」

 

「……」

 

「そうなったら……それはそれで嬉しいですね」

 

「……嬉しいね~、そうなったらこの街逃げ出して、三人で……本物の海賊にでもなっちゃおっか?」

 

「いいですね……海賊しながら世界一周旅行しちゃいましょう♪」

 

「ふふ……」

 

「はは……」

 

「……愛してるよ、大井っち」

 

「……はい、わたしも愛してますよ北上さん」

 

 

 

 

 

 

 -------

 

 ------

 

 -----

 

 ----

 

 ---

 

 --

 

 -

 

 

 

 

 

 

 いまか昔かあるところに、二人の艦娘に育てられた一人の子供がいた。

 子供はすくすくと育ち、一人の男になり、そして憲兵になった。

 

 だがある日、男は親代わりであった艦娘たちに別れを告げた。

 憲兵千鬼衆になるためだ。

 

 なぜ、どうして、なにが原因で男が鬼になろうと思ったのかはわからない。

 確かなのは、男は自らの意思で、鬼になると決めたということだけ。

 

 そうして男は名前と顔を変え、過去を消し、鬼になった。

 

 鬼は世界で最も過酷な心身の訓練と身体改造の日々を越え。

 数多の任務、作戦、戦闘をくぐり抜け。

 

 生きて味わうこの世の苦しみ、その全てを常人の何十倍も浴び。

 それでも忌むべき大義を掲げ、憎むべき役目を果たし続けた。

 

 やがてときがたち、歴戦の憲兵千鬼衆となった鬼に特殊任務の指令が下される。

 それは、とある提督を殺害した犯人の正体を握るとされる証人の捜索だった。

 

 鬼は艦連と協定を結んでいない敵地ともいえる国に、ナイフと無線機だけを手に潜入。

 そうして二年間潜伏したのち、証人を見つけ、その人物の確保に成功した。

 

 だが、鬼は回収に来た憲兵軍のヘリコプターに証人を護送する最中。

 それを妨害しようと追ってきた敵からの銃弾を頭部に受け、負傷してしまう。

 

 しかし鬼はその状態で証人をヘリまで運び、離陸の時間を確保するために戦闘を開始。

 そして離陸の成功と安全を確認したのち、機内で息を引き取った。

 

 鬼の最後の言葉は“次”の作戦への参加を告げるもの。

 そして“遅く”なってしまったことへの謝罪だったという。

 

 優秀な鬼を失った憲兵千鬼衆たちは、鬼の損失を惜しみ。

 報復戦の最終段階に参加できない鬼の無念を想った。

 

 だがその鬼の尽力で証人は確保され、その証言と証拠を基に報復作戦は完璧に遂行された。

 報復戦を指揮した艦娘は作戦終了後、鬼たちが眠る墓の前でずっと手を合わせていたという。

 

 憲兵千鬼衆が死亡した場合、鬼たちは共同の墓に葬られる。

 

 だが鬼になった時点で、人だった頃、過去の名前は存在しない。

 ゆえに、墓石に男の名前が彫られることはないし、男の死が誰かに伝わることもない。

 

 しかし鬼たちには、その存在を証明する認識番号が存在する。

 こうして憲兵千鬼衆の共同墓石に、新たな番号が刻まれた。

 

 それはいまか昔か、あるところ。

 

 とある雷巡の艦娘たちに愛された誰かの認識番号だった。 

 

 

 

 

 

 

『雷巡:北上』と『雷巡:大井』

 

おわり

 




 



読んでいただきありがとうございました。

いつ投稿できるかは不明ですが、憲兵千鬼衆が関係する話は幾つか書いていまして、他の話でも今回の鬼(息子)が登場する予定をしています。
また、今回の話は基本セリフのみの構成だったため、下記に補足を記載させていただきました。




※以下補足(読後の余韻を損なう可能性もあるので、ご注意ください)

■補足1 憲兵について
憲兵とは本来、軍警察的な役割を果たす兵士を指す言葉ですが、本作では艦連軍の人間が中心となって構成されている軍隊である憲兵軍、そこに所属する兵士のことを指しています。
名前の由来としては過去、戦史時代において艦娘を守るために反艦娘派の人間や、ときに提督や大本営ですら相手に戦ったのが憲兵であり、彼らは艦娘と共にあった存在でした。
その流れを汲んで、この世界では『憲兵軍』という名称が使われています。
そのため、この世界の他の軍隊とかでは、軍警察的な役割を果たしている兵士たちを憲兵(MP)と呼ぶとややこしいので、軍警兵とかそんな感じの呼び方をしていると思われます。

また、憲兵軍には陸軍海軍空軍などの区分けがなく、各艦連指定都市の軍団or師団があり、その中で兵科ごとに分けて配属される~的な説明が途中で入りました。
この辺詳しい人がみたらどういうこっちゃいと思われてしまいそうですが、よく考えず雰囲気で決めてます。(なので違和感はスルーしてください)
ただ、学校をイメージしてもらえたらわかりやすいかと思うのですが。

学校全体=艦娘連絡会(艦連軍)
各クラス=各艦連指定都市の軍団or師団
保健委員や図書委員、各クラブに所属してる生徒=憲兵軍の各兵科、兵士
学級委員長=憲兵軍の軍団or師団のトップ
生徒会や生徒会長=憲兵軍の統合本部や総司令官
教師=艦娘軍や艦娘軍人

みたいなイメージで考えてもらえるとわかりやすいかなと。


■補足2 艦娘は提督以外を愛することができるのか?
愛ってなんだ……という哲学的な話はともかく。
結論から言うと艦娘の個体差はあるものの、『愛する』ことはできるんじゃないかなと思う
(※ただし愛の種類による)
艦娘たちが提督を求めるのは、提督でしか埋められないなにかが彼女たちの中に存在するから。
北上さんと大井っちは、すでに提督をみつけていた状態だったので、多少それが満たされていた。
だからといって、やはり提督以外を愛せるのかというと、なんとも言えない(愛ってなんだpart2)
自分で書いといてなんだが、わからないことばかりである。
ただ、書いてる人的には、それでも北上さんと大井さんにとって息子は、提督とはまた別の、なにかすごく特別な存在だったんだろうなと、だったならいいなと思っている。


■補足3 北上さんと大井っちの提督について
二人の提督をこき使ってボロボロにしたと思われる人たちは、憲兵千鬼衆の報復対象にならなかったのか?という疑問をお持ちになった人もいるかもしれません。
これについては二人の提督になる前のこと、正確には『提督適性者免許』を取得する前のことなので、普通の法律で裁くことはできるかもしれないけど、報復行動を行うことはできませんでした。
(※ただし二人が強く望んだり、死亡に結びつく確かな証拠が確保できた場合は、報復行動が承認された可能性はあるかもしれない)
ただ、二人は提督の遺言である、娘と孫の保護を最優先で行わなければならない状況だったので、報復行動を要請しなかったと思われます。


■補足4 憲兵千鬼衆の身体改造について
身体改造って簡単にいうけど、どんなことしてるんですか?
ノリで書いたけど、おそらく戦史時代の呉鎮守府にいた『狂気の明石』と呼ばれた明石や、生き残りの科学者などが開発した、強化外骨格スーツを使うためのデバイスを取り付ける手術や、体の一部を機械に置き換えるサイボーグ技術だと思う。(妖精さんも絡むので、例外もあるけど基本的には艦連のみが扱える技術)

内容としては主に
・治癒機能の強化
・骨格強度の強化
・筋力の増強
・感覚神経の鋭敏化……等々がある模様。

たぶん雰囲気的には思想矯正なども含め『憲兵千鬼衆に属する者、その機能こそが存在の全てと知れ……』って感じだと思う。(ミカエルの眼かな?)


■補足5 憲兵千鬼衆の報復行動について
悪意を持って提督を殺害した存在に完璧な報復を行う……みたいなことを、ぼやっと書いているが、書いてる人もいまだ考えてる最中なので、詳しいことはわからない。
ただ、時代や相手によって報復の手順や、内容は変化しているものと思われる。(過去には族滅とかも実際やってた可能性がある)

基本的には、犯人と思われる人物を捕縛し、取り調べを行って証拠を固め、艦連の法廷で裁判をして判決をだし、刑を執行する流れのはず。
ただし人道的ではない恐ろしい刑罰が多く、殺害計画などを知った上で、間接的に荷担してただけだとしても容赦なく裁かれる。(抑止力として恐怖を広めるのが目的のひとつなので)

あと悪意が結構焦点となってくるのは、たとえば提督1人を殺せば一般人100人が助かるといった状況が起きた場合など、やはりどうしようもない事態が発生する可能性もあるから。
ただ、艦連的にはそういう事態になっても提督を優先したいので、やはり報復行動を承認する可能性もある。
ただし報復行動を行うかどうかは、殺害された提督の艦娘がまず行うか行わないかを決める。
(上記事例が起きた場合、艦娘によっては仕方なかったと思う可能性もあるし、自分たちが助かるために、よってたかって提督をなぶり殺しにしたと思う可能性もある)

ちなみに取り調べについては、憲兵千鬼衆や艦連の一部機関だけが保有する、妖精さん由来の技術で作られた、対象の記憶や心理状態だけでなく、未知のデータバンクにアクセスして真偽を判定する恐ろしい嘘発見器的な装置がある設定なので、関係者さえ確保してしまえば割と正確に犯人の特定や悪意の有無を判別できる。(なにげにこの装置が一番ヤバイ)

あと犯人を確保するため、もしくは報復を行うためなら、国家間戦争レベルの軍事行動を起こすこともある模様。
本来軍事行動は国益、または利益によって起こすものだが、艦連にとって最大の利益は提督の確保であり安全であることから、それらが損なわれると判断した場合、必要ならば本当にやる。(というか多分過去に何回かやってる)
基本的に艦連と協定を結んでる国は、報復行動については容認、もしくは全力で協力しているんじゃないかなと。

人類史的には復讐法や決闘裁判のようなものが存在したとはいえ、このような報復行為がシステムとして存在しているのはおかしいのではと感じるところもありますし、それに伴う社会の歪みのようなものも当然起こっていると思います。
ただ、人類と艦娘は共存はできるものの、根底の価値観が違うところもあり。ぶっちゃけこの世界観的に艦娘は人類よりも上位種族といっていい存在なので、そんな存在と共存する場合、こういった異質なシステムが存在する可能性もありなんじゃないかなと、はい。

そしてさらにぶっちゃけるなら、提督と艦娘が平和にキャッキャうふふと平穏に暮らしている世界観を作るために『ノリ』で考えた設定なので、そのツケでなんか説得力があるような説明を未だに必死で考えているのが現状です。


■補足6 艦娘信仰について
過去に世界を救ったのは事実だが、それは過去の艦娘であり、現代の艦娘は関係ないのでは?
であるなら、いつまでも憲兵軍のように艦娘に敬意を払い続ける理由は人類にはないでしょ。
という考えも、当然この世界にはある模様。

ただこれについては、いろいろと意見が割れていて、艦娘が過去の軍艦の記憶や魂を受け継ぎ宿した存在であるなら、戦史時代に戦った艦娘(例:雷巡北上)の記憶や魂を、現代に生まれた艦娘(例:雷巡北上)が受け継ぎ宿していないとは、とうてい言い切れない。
であるなら艦娘には未来永劫敬意を払い続けるべき、といった意見や学説もあるらしい。

この論争について艦連はノーコメントを貫いていて。真偽はともかく、ぶっちゃけ現状はどうでもいいと思っており、必要になったら主張してうまいこと利用しようと考えている気がする。 


■補足7 友人の頭脳担当について
鬼の最後の任務で回収に来たヘリのパイロットが誰だったかはともかく、鬼が撃たれた箇所が『頭』で、頭脳担当の友人は、彼が書いた論文が理由で軍病院の『脳外科』からオファーを受けていたことに、なにか伏線的なものを感じるのですが……これ関係あります?

答え:ある


 
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