Fate Apocrypha学園 作:ただの名のないジャンプファン
時期は7月の中旬。
外は陽気な天気に恵まれ、学生にとってはこの後のイベント‥夏休みへの希望を魅せるかと思いきや、少年少女は鬱にもなりかねないぐらい暗く沈んでいる。あまりの暗さにお天道様も目を背けてしまいそうになっている。
特にジーク達の教室が一番暗い。
なぜ暗いかというとこのクラスのムードメーカーが最も沈んでいるからだ。
「くそ~もういいよ。もう僕、中卒で生きていくよ。もう学校にいられないよー!」
涙目になりながら諦めきった台詞を吐くアストルフォ。
「諦めるなよ!!アストルフォ。俺は嫌だぞ。俺はお前ともっと一緒に高校生活を送りたいぞ!!こんな事で諦めるな!!ガンバレ、やれば出来る!!」
一方でジークはアストルフォに諦めるなと強く応援していた。
「あ、ありがとうジーク、その気持ちだけで嬉しい。その思いだけで‥僕は‥‥僕は‥‥」
涙ぐむアストルフォは自分の腕でその温かい雫を力強くふき取るアストルフォであるが、まだ迷いを吹っ切れていないのかその目にいつもの光は宿っておらず、いつもの気迫も弱々しい。
「でも‥できないよ‥‥僕にはやっぱり‥‥」
「諦めるのか!?君がこんな事で諦めるのか!?」
諦めるなと力強く進言するジークはアストルフォの肩を揺らす。
アストルフォはその肩からぬくもりを感じ気持ちを何とかつなぎとめる。
潤んだ瞳でジークを見るアストルフォは近くにた男子達にまるで妹ができたような感じで、アストルフォを守ってあげたい感情がこみ上げてくる。
腐がつく貴婦人たちが見れば鼻血モノなシチュエーションである。
「僕に‥僕にできるのかな?」
「あぁ!!大丈夫だ!!君なら出来る!!」
「ジークぅ~‥ぼk、いだっ!」
光り輝く艶やかな瞳が戻ってくるとそこに間髪入れずに上から教科書が落ちてきた。
「アスファルト、いい加減にしてください!!そんなくだらない三文芝居をやっている暇があったら勉強しなさい!!もうすぐ期末テストなんですよ!?貴方この前の中間テストの成績も悪くてこの前、担任に警告されているのを見ましたよ!!」
アストルフォの行為をくだらない事だと吐き捨てるジャンヌであるがそれもその筈‥ごちゃごちゃと並べるだけ並べた薄っぺらいアストルフォの言葉はただ1つ‥テストという現実から逃げたいという一心に生まれた言動であった。
そう意外にも…いやお世辞にも勉強のできないアストルフォであった。
元々集中力皆無であり、興味を持った事には熱心になるが興味がわかないものには幼稚園児よりも集中力を出すことの出来ないというただの子供と言うだけであった。
しかもこの学校は近くじゃ有名な進学校テストもそれなりの難関であり勉強していないものは容赦なく補修地獄にたたき落とすという趣旨の元作られている。そのためにどう頑張っても勉強は避けられない試練だった。
そうでないとその後に控えるある学生すべてのゴールデン期間、夏休みの4分の3を補修で過ごさないといけなくなるという地獄への一ヶ月旅行チケットをもらうこととなる。
それなのに、それが嫌だと喚くのに今現在テスト勉強も嫌だと駄々をこねているアストルフォ。
じゃあ何故アストルフォがこの学校に入られたかってそれは後でわかることである。
ジークはそれに手を焼きながらもアストルフォに合わせてレベルを下げているのだが...もう限界らしい。
そんな子供の様な駄々っ子の甘えを許さないジャンヌはおかんパワー全力でアストルフォをシゴいている。
ジークに甘え、ジャンヌに食い下がっているアストルフォであった。
因みに今は選択教科だがやるべき内容は終わらされているために全クラス合わせての自習時間である。
「あぁ、もう嫌だよ!何だよ―――平安京に平城京って。何も変わってないじゃん安が城に変わっただけじゃん。ちょっと80年ばかりで変わっただけで、名前変えちゃってさ――。人間2000年の歴史のうちそんな小さいことなんていいじゃないか――――――!!」
駄々を捏ねるアストルフォは中学生レベルの問題で号泣していた。
「アストルフォ!逆だ。平城京から平安京に変わったんだ。」
ジークがさりげなく間違いを訂正するが駄々をこねるアストルフォにそんな事を言っても無意味に等しい。
「2000年のうち16年しか生きていない貴方が歴史の深さを語らないでほしいものです。というかこれは中学生レベルの問題ですよ!!!貴方は中学時代に一体何をしていたのですか!?」
声を荒らげているジャンヌもだいぶ興奮している。まぁ、無理もないこの説明ですら5回目なのだから。
だが、温厚な彼女がここまで興奮してしまうとは..とりあえず今のアストルフォに上から説教を入れても逆効果。ジークは必死に優しくアストルフォに語りかける。
「そうだぞ、アストルフォ。80年の歴史を教科書では僅か1ページで覚えられるんだ。そう考えるとだいぶ簡略化されたと思うだろう?」
「僕にとってはその1ページが般若心経よりも難解に見えるんだけれど?」
「「それは無い、それは幻覚だ(です。)」」
綺麗にハモるジークとジャンヌの意見に泣きながら今にも抱きついてきそうなアストルフォ。
「息を合わせて断言しないでよ〜〜余計辛くなってきちゃう。それよりもルーラーとジークはいいの?自分の勉強をしないで。」
そう言うとジークは淡々と答えた。
「人に教えるというのは中々復習になるものだ。丁度よかった」
「私は常に勉強していますから、そう慌てなくてもいいんです。貴方も普段から真面目授業に参加し家に帰って予習復習...くどくど」
「あぁ、分かったよ〜。なら歴史は家に帰ってからやるよ〜問題は数学何だよね。ワークが全然できてないんだよ。手伝ってよ2人共。」
ジャンヌのご高説を耳に入れる気のないアストルフォは一番片付けにくい数学の問題集をカバンから取り出す。
「君の代わりに解くことはしないが、教えることはできる。」
ジークは解き方ぐらいなら教えられると言ってくれた。それだけでもアストルフォにとっては嬉しいらしく満足げに頷く。
「うんうんお願い、ここのセンせーは意地悪だからちょびちょび解説を渡してきて中々進まないだよね。」
「解説を見ながらしていたら意味は無いぞ。」
「ふふ、僕レベルまでいったら提出しないと留年確定だから出すだけでも意味はあるのさ」
アストルフォに対して、留年の危機だと言うのに何故そんなに胸を張れるのか凄く不思議に思うジークだった。
「どうしてそこまで胸を張れるんだ?」
「こんな事は僕しか言えないからさ。」
ドヤ顔をし、勝ち誇った様なこの笑み。まぁ、ある意味誇ってはいるのだがこれを誇りにしていては前には全く進めない類の誇りである。
ジークはそんなアストルフォに大きく溜め息をしてどこがわからないのか聞いた。
「それで何処がわからないんだ?」
「えっとね。こことこことここもそれからこれも後こっから後ろ全部。」
満面の笑みでページを指定する‥と言うか、問題集の本を指さすアストルフォに若干呆れているジーク。
彼の表情や行動でどこまで本気なのか分からなくなる。
「わかった全部わからないんだな。」
沢山指示語が出ているが要するに全部解けないのである。
白紙のページを1つ1つ見ていくジーク、量が量だけに1人で教えられるか不安になってくる。
「ジャンヌ、少し手伝ってくれないか?‥‥ん?ジャンヌ?」
もう1度名前を呼ぶとジャンヌはビクッと体を震わせてまるで怯えた子犬のような反応をした。
それを怪しく思ったジークはジャンヌに、
「そう言えばジャンヌ、今日この前の数学の抜き打ちテストの結果が返ってきていたな。少し見せてくれないか?」
今度はさらにビクン!と跳ねる。
それからジャンヌは小鳥に囁きかけるように声を出した。
「い、いや‥です。」
「大丈夫だ、何もしない少し確認したいだけだ。」
「何も確認しなくていいですよ。大丈夫です、私は大丈夫ですからそっとしといてください。お願いします」
2回目の大丈夫から声が篭もり出して聞こえるか聞こえないかというレベルまで低くなっているジャンヌにジークは多分これ以上やっても解決しないだろう。
そう考えたジークは不自然な動きを見せるジャンヌの机の中に手を突っ込む。
ジャンヌは当然それに抵抗するがいつものような力を出せずにやられるがままジークに負けてしまいテストの答案を奪われてしまった。
「‥‥」
「そ、その‥‥」
ジークに数学のテストを見られ口篭るジャンヌ。
興味があるのかアストルフォは身を乗り出して見るがその好奇心顔はすぐに失せて顔を歪ませる。
「うわぁ、何コレ?僕より酷い点数だよ‥ルーラーって意外とバカ?」
アストルフォよりも酷いというのは余程のことと思い下さい。
そんなアストルフォの言葉にジャンヌの胸にはグサッと十字架が突き刺さる。
「ジャンヌ‥‥何か言いたいことは?」
「‥‥今は話しかけないで下さい。」
今にも泣きそうなジャンヌは机に伏せてしまってこちらを見ようとしない。
それから少しして気持ちの整理が落ち着くとジークによる軽い説教が始まる。
「何で今まで言わなかったんだ?数学が苦手だって‥‥」
「それは、その‥‥」
先程までの強気な姿勢はもう完全に溶けてなくなってしまい少女のように縮こまるジャンヌ。
「このまま言わなかったらジャンヌは補修送りになっていたんだぞ。それなのに何で言わなかったんだ?もしかして俺じゃ力不足と「い、いえそうではなくて...ですね」」
慌てて遮るジャンヌは下を向きながら小さい声で力無く呟いた。
「だって‥‥失望するかも‥‥と思ったので‥‥」
「失望?何故だ?」
「...私は1年で生徒会‥全校生徒から過度な期待を抱かれております。それがこの様な点数を取るなど‥‥知られる訳にはいかなかったんです」
彼女の言う通りジャンヌは先生からも生徒からも過度な期待を背負っている。
先生達からは優等生、生徒からは憧れの的であるジャンヌはその鉄のように重いプレッシャーの中を一切窮屈とは思わずにそのプレッシャーに答え続けてきた。
その過度な期待はジャンヌを鎖のように縛り付け、それは結果的にジャンヌは優等生で居続けないといけなくなった。
それでもジャンヌはそれを重りとは思わずに今も優等生ジャンヌとして学生をしているが、そんな彼女だって人間だし、彼女にだって弱点はある。
その1つが数学だ。
語学や社会系統ならいい結果を残せるが何故かジャンヌは数学がとてつもなく苦手なのである。
そんな自分の弱点が心の許せる自分の友からの信頼を無くさせ繋がりを壊す。
それとこれは勝手にジャンヌが気負っているのだがジークは記憶喪失の為にやはり年齢と知識が伴いきっていない。
知能指数は高いようだがおぼつかない部分が多々ある。
そんなジークを自分は手を引っ張ってやらないといけない。足を引っ張ってはいけないと...そういう風に考えている。
それなのに自分の弱い所を見せてジークがもし自分を頼りなく思ってお荷物に感じたりしたら...そう思うのが、彼女にとってとても怖いのだ。
望んでほしい人には見破られて、それでも優等生を演じ続けなければならない現実、なんと虚しく辛い事だろう。
だがジークはそんな事を思いもしない。
「別に、人には向き不向きがあるものではないのか?それにここで全教科できないことを誇っている人に呆れている所だ。」
そう言って隣で満面の笑みで手を振るアストルフォも全くそんな事を気にしていなかった。寧ろジークの言った言葉を褒め言葉として捉えている。
「へへ〜。褒めないでよ。」
「褒めていない。」
冷淡に余裕な心境に矢を思いっきりぶっ刺す。
「寧ろ、そんな事で失望しないと信頼してくれなかったことに驚いている。」
「うぅすいません。」
顔は更に下を向き、前を向こうとしないが、そんな彼女を見てジークは笑みを浮かべた‥まるで悪戯を成功させた子供のように
「冗談だ。少しからかってみたくなっただけだ‥いつものジャンヌがこんなにも落ち込んでいるなんて珍しいからな。」
弱みに漬け込んで、からかわれた事に頬を膨らますジャンヌ。
「なっ!?ジーク君!!」
「さて、どうするかな?困った事に俺1人で君達2人を見るのはだいぶ手に余る。少なくともこの限られた時間だけじゃ‥‥」
「だったらさっ!だったらさっ!僕の家に皆で来ない?どうせ明日は週末だから皆でお泊まりをして勉強会をしようよ!」
「お、お泊まり!?」
「勉強会?」
「そっ、一度やってみたかったんだよね~友達呼んで夜を越す事を。」
「あの趣旨が変わっていませんか?」
だんだん自分の要望を出してきているアストルフォ。
それに対してツッコミをいれるジャンヌ。
「いいじゃん、いいじゃん楽しくやろうよ。」
「でも、女子1人というのは心もとないし、それに...」
ジャンヌはチラッとジークを見る。
「大丈夫だって僕もジークもそんなの気にしないよ。それに君が襲ってきても僕が抑えるから」
「ちょ、何故私が襲う事が前提何ですか!?普通は逆でしょう!?」
「えっ?その心配じゃないの?」
「‥‥」
本気か冗談かわからない顔で言ってきたのでジャンヌはアストルフォの頭を叩いた。
「いっぅ〜。」
「わ・た・し・は・そのような事は致しません!!なので安心してくださいジーク君。」
「‥‥」
ニッコリと恐怖にじみ出る微笑みにジークは若干引いている。
だけどいつもの調子を取り戻したジャンヌに安堵する。
「それと、一緒に勉強をするというのは反対しませんが、やはりお泊まりというのは反対ですね。親御さんも心配しますし、何より校則違反です。」
こほん、と1つ咳を入れて間を開けて否定する所を入れた。
「えぇ、イイじゃんかぁ~ルーラーは固いなぁ~」
「俺も泊まりは反対だ。家にはお爺さんが1人しかいないからな家事を手伝わなければいけない。」
そう言ってジークも勉強会はいいが泊まりへの反対意見を言った。
またも反対意見が出たことに唇を尖らせるアストルフォは2人も反対した為に仕方なく納得する。
「まっ、いっか!んじゃ、放課後皆で僕の家に行こう」
だがすぐに気持ちを切り替え張り切ってバンザイをするアストルフォは子供のように喜んでいた。
~side放課後~
放課後、今日の分の仕事を片付けたいために少し待っていてと言ったジャンヌを待っているアストルフォとジーク、ちょっとした会話を楽しみながら時間を潰しているとそこに今帰りなのかモードレッドが前を通った。
「モードレッド」
「ん?ジークか?何してんだ?」
「ジャンヌを待っている。」
「へぇ~」
ジークはモードレッドに話しかけ、モードレッドもそれに違和感なく返答するが、その横でそんな違和感を飲み込めずあたふたしている人がいた。
「ちょ、ジーク!!何で剣道部の先輩と知り合いなの!?」
驚きを隠せないアストルフォはジークに詳しい説明を求める。
「『何で』って...前に少しな.....えっ?先輩?」
ジークは不思議そうにモードレットの方を見てモードレッドに聞いた。
「モードレッドって先輩だったのか?」
「今更かよ。俺は2年だ。」
前回ジークは聞きそびれたがモードレッドは1年上の先輩である。
「そうか、それは済まなかった。」
本当に気にしていないのかモードレッドはそれには目を瞑ってくれた。
モードレットはそんな事よりもジークの横でまだ状況を飲み込めてないアストルフォの方がきになっていた。
「別に気にしていない。つうかお前の連れの方が大丈夫かよ。」
「大丈夫じゃないよ!?この人の噂は1年の教室まで広まっているんだよ。そんな人とジークがどういう経緯で知り合ったのさ!?」
「色々あったんだ。」
そこまで詳しい説明をするのは面倒なので一言に纏めるジーク。
まぁ、ここで自分とモードレッドの繋がりを教える必要も無いだろう。
「お待たせしました!」
モードレッドジークを引き合わせた人が少し遅れてやって来た。
ジャンヌが来たタイミングはグッドタイミングであり、なんとも言えないバットタイミングであった。
「え、あ。モード...レッド何で貴女が此処にいるのですか?」
「ん?部活行く途中。」
ジャンヌは警戒した声と顔でモードレッドが此処に居る事を問うと、モードレッドはしれっと平然にこれから部活をやると言う。
「部活って今はテスト期間中何ですよ!全ての部活動は禁止のはずです。」
声を荒らげながらジャンヌはモードレッドを止める。モードレットはジャンヌの言い分に小さく舌打ちして...
「それはお前達生徒会が勝手に決めた事だろう?俺がそれに従ってやる必要は無い。」
物凄く勝手な言い分で反論した。
「生徒会ではありません。これは学生としての常識です。部活動に精を入れるのも学生だけの特権ですが、それだけに集中して勉学を疎かになっては本末転倒です。学生の本分は本来学業なのですよ!!」
モードレッドはよりいっそう不機嫌になりながら鞄に手をやりバッグを開けてそこから1枚のプリントをジャンヌに投げ渡した。
だがジャンヌから見たらただ叩きつけられただけだ。
「きゃ!?」
「それを見ろ。」
ジャンヌは言われる通りにプリントに目をやる。
ジークとアストルフォも何を渡されたのかが気になりおそるおそる覗き込んだら、ジャンヌとアストルフォは硬直した。
プリントの内容はこの前、2年生だけがやった抜き打ち実力テストの結果だった。
この学校は2年生以降になると定期テストだけでなく、本当の実力を知るためにたまに抜き打ちでテストを行う。
そのテストがこれだ。範囲も知らされずに知らされず今までやったことを疎かにしていたりしていたらすぐにわかってしまうのだ。
これには他の生徒はよく手をやかされる。範囲が広い上に知らされるのは3日前位に普段からやらないと補修させられてしまう。
そんな厳しいテストをモードレットは.....
「へ、...平均95点!!?」
ジークも思わず目を見開いて驚いてしまった。ジークも仮にもここで編入試験を受けた生徒...だからここのテストの難易度は知っているのだがここまでとれるとは...英語なんて100点だ。
「これで分かっただろう?別に抜き打ちだろうが定期だろうが俺にはテストなんて関係ないんだよ。これを持っていたらあの
モードレッドは鼻を鳴らしながら得意げに言っている。
ただ、コレで1つに腑に落ちたことがある。
生徒会が何でモードレットに手を焼いているかだ。
モードレットについては生徒会でも何度か剣道部に牽制を入れている。だが直接的な攻撃は無かったらしい、それは何故かモードレットの成績が良いからだ‥それも2学年でもトップクラスの‥‥
この学校は部活の成績が良くても、普段の生活態度や学業を疎かにしている部活は取り壊していくらしい。
ジャンヌの仕事はまさにそれだ。
例え部活や成績で結果を出せても学風を損ない風紀を乱す異分子を無くすためだとのこと、モードレッド何てすぐに目をつけられて最悪学校側と険悪になり、潰されて‥‥何て結果もあったかもしれない。
だが、それはなく1人しかいない部活を壊さずに小さい小競り合い程度の手しか出さなかったのはモードレットが人間性は兎も角として能力に関してはまさに文武両道を絵にかいたような生徒‥しかもこれぐらいの成績をだす生徒、少し優秀ではなくとてつもなく優秀なのだ。
余計な手を出して彼女を失った方が学校側として損失がデカい訳だ。
だからこそ出来るだけブレーキをかけながら自重を覚えさせようとしていたのか...
これはチャンスだ。
そう思ったジークは言うより前に行動した。
「モードレッド。」
「は?...は!?」
何とも大胆な行動、大来の前でジークはモードレットの手を掴んでがっしりと掴み離さない。
「なっ!?」
「ジーク!!?」
ジャンヌもアストルフォも開いた口が塞がらない。
何でこんな場所でこんな人の目のある前でよりにも寄って何故モードレッドの手を掴んだのか?
こんな行動‥ヒグマと対面しその手を握っているようなものだ。
いつ襲いかかってくるか分かったモノではない。
「て、テメェ、急になにしやがる!?」
案の定、モードレッドは驚き、不機嫌そうにジークから握られた手を振り払う。
「頼む!アストルフォに勉強を教えてくれ!!俺1人じゃ教えきれないかもしれないんだ。この通りだ。」
ジークの必死の頼み、モードレッドはそんな面倒なこと断ろうとしている。が
「お願いだ!何でもするから俺達に手を貸してくれ!!」
ここまでの必死な頼み、これを突き放したらまた変な噂がたってしまいかねない。
ただでさえジークのこんな大胆な行動、両手でモードレッドの手を握り締め、頭を下げている。
その上に終業のチャイムがなってそれほど経っていないのだ、帰ろうとしている生徒全てがこちらをガン見してあとに引けない状態となり、偶然が生んだこの状況がモードレッドを追い込んでいた。
当のアストルフォはそれに反対意見でジークの腰に手を回して止めようとしているがジークは止まらなかった。
この状況、1人が告白し、1人が好きな人がいると言って断り、そこに自分はこちらの方が好きなんだけど!!っと言っている構図にしか見えない。
ここにジャンヌまでもが加われば...モードレッドの頭にはさらに面倒にしかならないと言う想像だけが頭の中に浮かんでくる。
「わかった!わかった!わかったからいい加減離せ!!!」
もう完全にジークを蹴り飛ばして強引に2人を引きはがす。
「ただし、借りにしとくからいつか利子つけて返せよ!いいな!?」
モードレッドの返事にジークは満足そうに頷いた。
まぁ、その反面モードレッドに何をされるのか不安であるが‥‥
「あぁ、必ず。」
(モードレッドへの借り‥‥何だか心配です‥彼女がジーク君に変な事をしなければいいのですが‥‥)
ジークは納得しているが他の2人は未だ納得はしきっていない。
校門を出て、帰路を歩いている中でもジャンヌとアストルフォは不貞腐れていた。
自分達に学力がなく学校一の問題児であるモードレッドの力が必要なのは頭では理解していても警戒心がどうしても消えなかった。
今回の勉強場所であるアストルフォの家に着いた。
「んじゃ2階の部屋に行っといて、お茶とお菓子持っていくから、あっ、ジークは2人を案内しといて場所知っているでしょう?」
そう言ってリビングに入っていくアストルフォ。
ジークは了承し階段を登り2人を先導していく。
そんな時ジャンヌがジークに耳元で囁いてくる。
「あの、ジーク君。」
「ん?どうした?」
耳元にかかる声がジークを擽るようでこそばゆくなる。
「あの、さっきアストルフォが言っていた場所を知っているというのは...?」
「大丈夫だ。しっかりと場所を覚えているから安心していい。」
微笑むジーク、だがジャンヌが聞きたいのはそういう事ではなくもうちょっと違う所だ。
「いや、何故場所を知っているのですか?」
「前に1度家に来たことがあるからな。その時この家の構造は大体覚えた。」
「え!いつの間にそこまで...仲良く。」
確かに週末までは正直苦手意識はあったがこの前の調理実習でも見たはずだが...
予想より驚いているジャンヌに、ジークは不思議そうに首を傾げた。
別にそこまで驚かなくてもいいのではと思ったのだが口には出さずに代わりにジャンヌの質問に答えた。
「以前、休日に偶然会ってそのときに家にあげてもらったんだ‥‥さっ、着いた。」
ジークはドアノブを回してアストルフォの部屋を開ける。
この女子よりも女子らしい部屋‥個人的な予想なのだがモードレットの部屋よりは女の子っぽい気がする。
鞄を床に起き腰を下ろすとアストルフォも部屋に入ってきた。手には手から漏れてしまいそうな量もある。
「おっ待たせー!お菓子持ってきたよ――――!!」
アストルフォは自分の机にお菓子を置く。
それからジャンヌ達は鞄から勉強道具を取り出す。
「んで、何処がわからないんだ?」
モードレッドが自分達に教えて欲しい所を聞く。
まぁ、大抵はそれで十分なのだが、ここにはそんな構えじゃ意味の無い人間がここにいる。
「えっとね〜。全部‥かな!!」
ドサドサドサっとカバンの中から教科書だの、問題集、それからノートを雪崩のようにカバンから放り出す。
そこにはクリアファイルも混ざっておりぐしゃぐしゃとプリントが出る。
その馬鹿げた行為にモードレットは激しく激怒した。
「テメェ!バッグをぞんざいに扱ったらどうなるか考えろよ!!」
「そうですよ、アストルフォ!余計な手間をかけさせないでください!!」
とんでもない行為を行ったアストルフォに早くも2人もと説教モードに入った。
それでも『まぁ鞄の中をぶちまけた程度の事なのだが‥‥』とジークは思っていた。
だからジークは話を余計話に変な話題を入れさせないためにアストルフォのバッグの中身直して整理しておいた。
「はぁ~もういい‥おい、ピンク。」
呆れたモードレットは自分の髪の毛をガリガリと掻く。
「とりあえず、お前達も今までやった小テストとかあるだろう?テスト前だ、全部は無くても幾つかあるだろう?最もの問題児は自分の家だ。当然あんだろう?テスト用紙を全部出せ!!」
モードレッドから危険を察知したアストルフォは3歩下がり自分のベッドの毛布に包まろうとする。
だがそんな行く手をモードレッドはアストルフォを追い詰める壁として利用した。
「おっと、逃がさないぞ。俺も暇じゃないところをこうして態々来てやったんだ。まさか...捨てたなんて言わねぇよな。」
もう完全に女子高生にかつあげしている不良にしか見えない構図。
流石に絵面がヤバい。
これは街中では通報されてしまいそうなぐらい今のモードレットの顔は世間には見せられない...そんな顔で追い詰められているアストルフォはもう観念するしかなかった。
「いや〜その〜なんというか〜〜.....さ、最近リサイクルにはまっているんだよねぇ~僕。アハハ、資源を無駄なく使い分け最後の最後までものを大切にする精神の表れ、これを態度で‥‥「ごちゃごちゃうるせぇ!!いいから早く出せ!!」‥全部捨てました!!!」
どんなに言葉を並べても立場の上下関係が既に決まっている時点でアストルフォに勝ち目などないのだ。
アストルフォにあるのは大人しく従っていくことだけである。
「捨てただぁ〜。」
わなわなと震え始めるモードレッド。に半ベソかきながらアストルフォは謝った。
「だ、だってさ‥いい点数じゃなかったし、残していてもゴミになるだけだと思ってさ。」
「はぁ~もういい。で、それで何点だったんだ。もうおおよそでいいから教えろ。それぐらいは覚えてんだろう?」
もうあのテンションでいくとこっちが疲れるだけだということに気がついたモードレッドは、早めに息継ぎしてテンションを切り替えて冷静になった。
アストルフォも静かになってくれたために少し楽になれた。
「えっとねぇ〜とりあえず全部2桁いってたら嬉しいな~って点数かな。」
あっけらかんと自分の取った点数言うアストルフォに笑顔が戻っていた。
「...」
少々現実から離れていた思考がモードレットの元に戻ってくると...
「何でテメェは!」
最初はドロップキックを決めて、
「そんな態度で!!」
次はコブラツイストをかけて、
「言えんだよ!?」
フィニッシュは海老反り固め!!
「イダダダダタ ギブギブギブ〜...っていうか僕はレギュラーになってからなんか痛い目にあいすぎじゃない!!?」
何のレギュラーかはひとまず置いといて、こんな感じでモードレッドは溢れ出てくる怒りをそのままアストルフォにぶつけながらジークとジャンヌにも答案用紙を出させた。
こっちの方はすんなりと出てきた為にお咎めはなし。
「ふーん。ルーラー‥お前は見かけによらず、ぜってぇ頭悪い方だろう?」
「なっ!?」
急に前触れなく頭が悪いと言われたジャンヌは驚き反論する。
「な、何でそんな事を貴女に言われないと「ジーク、お前は結構頭が回るな」話を聞いてください。どうしてそんな事を貴女にわかるのですか?」
ジャンヌの質問はジークも抱いた。
正直ジャンヌが今回出されたテストの点数だけでそんな事がわかるとは思わない(数学は別として)...モードレットはその質問にちゃんと答えてくれた。
モードレッドはジークとジャンヌに見やすいように同じ答案用紙のテストを並べてくれた。
それからジャンヌのテストに指を指しながら説明する。
「いいか、テストのって言うのは点数だけじゃねぇんだよ。テスト一つあればそいつの学力や性格が見えてくんだよ。例えばこの化学のテスト一つ見てもわかる。ジークお前はここの問題にこの公式を当てはめたら化学式が成り立つ事をしっかりと理解している。に対してルーラーお前はそれを中途半端に理解しているのか似た公式を使う奴で正解したり間違ったりだ。大方復習とかの付け焼刃何だろうな。しっかりと理解しきれてないんだろ。無駄な努力しやがって」
反論したいがぐぅの音も出ない。モードレットの言っている事は正しい。
ジャンヌは握り拳を握り締めて悔しそうに唇を噛む。
「そんな言い方は‥‥」
そんなジャンヌを見かねてか...いや、そういう訳では無いだろう。ジークはモードレッドに反論しようとする。
だけどまたモードレッドの正論が冷たくジークの助け舟も沈めた。
「無駄だよ。全く活かしきれていない。別に努力とか根性とかは好きじゃねぇが認めないわけじゃない。俺も実際しているしな...けどな、努力何てのは結局自己満足を得るための行為でしかない。そこに結果すら付いてこないなんてのは時間の浪費以外なんて言えばいいんだよ。」
鋭いモードレッドの眼つきにジャンヌもジークも思わず怯んでしまう。
それは今までジャンヌが見てきてはいないものだったからだ。
いつも不機嫌を態度に出して不真面目に適当にしているモードレッドは何度も見たことがあったがこんな目は初めて見た。
だけどジークは以前に見たことがある。
それは自分がモードレッドと話す前の練習していた時、冷静に自分に剣道に興味はないかと尋ねた時の目と同じだった。
だからジークは反論しなかった。
この時のモードレッドは真剣に考えてくれている証拠なのだから‥‥
「確かに、無駄かもしれない。でもそれはまだ決まった訳じゃない。」
絞るような声でジークはモードレッドに意見した。
ジークは冷や汗を垂らしながらモードレッドの答えを待った。多分自分じゃ論破されてしまうだけだろうがそれでも引きたくないと強く自分に思ってしまう。
「やっぱお前、結構面白い奴だな。」
だがモードレッドはそんなジークに聞こえないように呟き口角を上げてにっと笑う。
「ならお前が証明して見せろ。俺はこのバカを教えるのに集中するからお前はルーラーの点数を...そうだな、5教科の合格点を100上げろ。そしたら認めてやるよ。」
モードレッドは床で伸びているアストルフォの首筋をつかみあげながらジークに条件を提示する。
「わかった。」
ジークもまたモードレッドが言い切ってすぐにOKする。
「えぇ」
ジャンヌは現在この急展開の空気についていけていなかった。
「そうだな。何か罰ゲームをつけよう。その方が面白い.......あぁ久しぶりに試合形式の練習がしたかったんだ。ジークお前もし無理なら夏休みずっと俺の練習相手として道場に来い。」
「ちょっ!?ちょっと待ってください!!!」
モードレッドの提示する罰ゲームの内容に異議を唱えたのは勿論ジャンヌだった。
・・・・続く
ではまた次回。