Fate Apocrypha学園   作:ただの名のないジャンプファン

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お久しぶりです。
何の関係もない事ですが福袋でApocrypha組を狙い引いてみたところ邪ンヌが出ました。

...白いジャンヌが来て欲しかった.......。


7ページ目

もう離さない。

 

 

ジークが突然発したこの言葉には一体どのような意味があるのだろうか?

雄が好意を抱いた雌に対しての支配欲からくる言葉なのか?

思春期特有の異性へ対する性欲からなるものなのか?

それとも初々しい心の元に発した言葉なのか?

 

それは本人にもわからない。

本人にすら誰もわからないのであれば誰もわからないだろう。

 

まして言われたジャンヌ本人もなぜこうなったのかという考えにいかないぐらい頭が一杯一杯になっている。

急に来た刺激‥‥ほんのりとしそうな温かみを帯びた体に自分を覆ってしまうぐらい大きい体躯。

男子としては少し劣るように見えるジークでもやはり彼は男なんだなと感じてしまいそうになるこの熱と力強さ。

でも、何だろう?

この心地良さは‥‥

ずっと彼にこのまま抱きしめられ続けたいと感じていたいと思うぐらいに気持ちよさについうっとりとしてしまいそうになるジークの抱擁は‥‥

だが、段々と自分の理性が戻って来て、この現状を理解したジャンヌはジークよりも熱を発するぐらい赤く染まってきた。

 

(どどど!どうすればこんな‥‥急に‥えっ?あっ、嫌じゃないのですが、とりあえず落ち着かせましょう。えっと、こういう時は‥‥そうです!!子守唄を歌えば良いのですよね?えーと、えーと‥‥確か頭を手で撫でながら子守唄お守り歌‥‥って違います!)

 

ジャンヌは目には見えない心中では物凄く焦っているご様子。

顔も耳まで真っ赤に染め上げている。

そんなジャンヌは自分の頭の中では否定していたが、体は思ったよりも正直で彼女は無意識のうちにジークの頭を撫でてあげていた。

 

「おおお、落ち着いてください。ジーク君。一体何かあったのですか?怖い夢とかを見ていたのですか?」

 

ジークは髪から伝わる感触とジャンヌの言葉にはっとなり勢いよく自分から離れた。

 

「す、すまない。」

 

ジークは頭を抑えながら自分のやった事に後悔している。

何故、どうしてなのか?理由も分からずに自分はジャンヌを抱きしめてしまったのだろうか?

これも自分の失われた記憶に何か関係しているのだろうか?

 

「い、いえ、気にしていません。でも、ジーク君。本当に大丈夫ですか?頭が痛いのですか?あっ、コレ‥スポーツドリンクですが飲みますか?」

 

ジャンヌは一応ジークの額に手をやり熱がないかどうかも確かめた。

幸い熱などはなく外傷は何もなく無傷だと思う。

 

「大丈夫だ。頭もさっきまでは痛みがあったが今は何も無い。済まないが飲み物を貰いたい。」

 

さっきまでとは倒れた時のことだろう。ジャンヌはモードレットが持ってきたスポーツドリンクの蓋を開けてジークに手渡した。

ジークはそれを受け取り二口飲むとジャンヌから蓋をもらって占める。

それからジークは下半身を掛け布団から出して上半身も動かす。

 

「ちょっと、ジーク君?もしかして授業に出るつもりですか?」

 

ジークは首を縦に振る。どうやらそのつもりらしい。

 

「テストの事もあるからな、こんな場所で無駄に時間は潰していられない。」

 

「それはそうですが...ジーク君。テスト前に無理をしてテスト時に体調を壊してしまったら本末転倒ですよ。今は体を休めてもいいと思います。最悪、早退して家で今日一日休むのも...」

 

ジャンヌはジークの身を案じて休む提案をする。

原因がはっきりしていようがしていまいが、無理をさせられない。

まずは自分の体を第一に考えさせなければ...

だが、ジークもジークで譲らない。

ふんわりとしているようだがジークは内心結構頑固だ。

1度決めた事は完全圧倒で論破しないと曲げないし、頭が回る分それが難しい。

でも、彼の精神は今不安定なんだと思う。

勿論確信はないし確証もない。でも、先程の行動から始まり今も無理している気がする。

顔色は良くなっても顔つきが沈んでいる。

『大丈夫だ』と言っている声はいつにも増して弱々しい。

 

(彼が不調はないと言えば誰もが鵜呑みにするが私はそう簡単に飲み込めない。)

 

(今ここで原因がわかるのは私しかいない。)

 

(彼の事をわかる私が弱気となり、彼の意思を尊重しているように見せかけて彼の無理に目を背けてしまえば彼の事を一体誰が気付くのだろうか?)

 

「やはり、ジーク君、今日は休むべきです。万が一無理して教室に戻っても身が入ってなければ身につきません。それどころか無理をしてしまいテストにまで響く恐れもありますし、クラスメイトにも不安を与えかねません。」

 

「ジャンヌ...先程も言ったが無理をしているつもりは現に今も体調は...」

 

ジークは良好だと告げることができなかった。

確かに体調は良くなっている気がしている。手足には力が篭もり身体中に熱い血液が滞りなく流れているのを感じられるぐらい感覚が冴えている。

でもまだ少し頭に引ききれない違和感が残っているのも確かだ。

この違和感が何なのかはわからないがそれがあると不快感も消えない。

 

「ジーク君‥貴方が無理していることは一目でわかります。ですので今日のところは家に帰って今日あった事をゆっくり思い返してください。これはジーク君に必要な事です。親代わりであるセルジュさんにも話しておいた方がいいでしょう。貴方が記憶を取り戻したいのならこれは必要なことです。‥‥大丈夫です。これからやる授業の内容は後でジーク君におつたえますから。」

 

にっこりと微笑むジャンヌ。誰もが思わず目を奪われる彼女の微笑み...何故かジークはこれを見ると心が落ち着く。

どんな心境であろうとこの微笑み1つで自分を取り戻せる様に思える。

 

彼女にこれ以上の心配をかけさせたくない。

 

「ありがとう‥‥それなら1つ頼みがあるのだが聞いてもらえるだろうか?」

 

ジークの頼みと聞くとジャンヌは首をかしげて尋ねる。

 

「何ですか?」

 

「今日学校が終わったら俺の家に来てくれないか?伝えたいことがある。」

 

真剣な眼差しでジークはジャンヌに頼み込んだ。

 

「いいですよ。わかりました今日ジーク君のお宅によらせてもらいますね。」

 

ジャンヌは柔らかくジークの誘いを受け止め明るく笑いかけた。だがすぐに顔色が青くなっていった。

 

「どうかしたのか?」

 

「あの、チャイムって聞こえましたか?」

 

そう言えば何だかんだあり、本鈴が間もなくなる時間帯であることをすっかり忘れていた。

ジャンヌは慌てて時計を見て飛び出した。

ジークも時計を確認したら確かに授業開始の時間からだいぶ過ぎていた。

だがジャンヌは一旦引き返してきてジークに尋ねる。

 

「ジーク君!早退の仕方はわかりますよね!?職員室には先生がいますので、先生の誰かに手続きをして下さい。家に帰ったら動けたとしても体調が良かったとしてもあまり無理をしないでくださいよ。それとまだちゃんとお昼ご飯を食べていませんよね?どこかに立ち寄るぐらいなら学校で何か購入してそれを食べてください。体調の悪さを言い訳に空腹を見過ごしたらそれが原因でさらに悪くなりますからね!後、どこにも寄らずに真っ直ぐ家に帰るのですよ。いいですね!!」

 

相変わらずの心配性にジークはタジタジになり一言しか返せなかったがジャンヌは満足気に頷く。

と言うか、あの長い言葉を息つく間もなく話通したジャンヌが凄い。

 

「子供か?俺は?」

 

「それでは!」

 

ジークの問いに答える前にジャンヌは教室へ猛ダッシュして戻って行った。

 

 

〜saidジャンヌ〜

 

保健室からジークに見送られ教室に戻ると既に授業が始まっておりジャンヌは担当の教師に頭を下げて謝罪し理由を述べ一応許され現在は授業に参加をしていた。

近くの人にどこをやっているのかを尋ね、ページを開き途中からとはいえジークにあのように言ったのだ。

一言一句聞き漏らさずにノートに書き留めてジークにしっかり説明できるように準備をしていく。

まだ数学ではないことが幸いな為にジャンヌでもまだ理解が追いつき頭で理解できる。

 

 

 

今日家に来て欲しい。

 

 

そんな時、急に彼の言葉を思い出した。

 

 

彼からの誘い。

 

ジークが積極的になった事を喜べばいいのだろうか?

ジャンヌはふと、何だろうと要件を考える。

昨日までならテスト勉強のダメなのだろうが今日はそれだけではないだろう。先程倒れた事が若しかしたら関係があるかもしれない。

もしかして記憶が戻った!?いや、そんなご都合よくはいかないだろう...だが少し思い出したかもしれない。

ジークは記憶を意識的に思い出そうとして今日倒れたのだ。

それから...その強い抱擁を自分にしてきた...何か混乱していたかもしれないが何か掴むことが出来たかもしれない。

混乱時には時々思いも寄れないヒントが湧いてくると言う。

1度頭がごちゃごちゃになると無意識の奥に...ジークに当てはめると記憶脳では失っていてもどこか違う所に眠っていた記憶が呼び覚まされたかも...

そういうケースは少なくないらしい。記憶喪失者が記憶を取り戻すきっかけなんて言うのは思いもよらないところかららしい。

これをきっかけに少しは記憶を...

 

 

記憶を取り戻した彼はどうなるのか?

 

今気がついた。

ジークは記憶が無いからここにいるのであって記憶が戻れば元の場所に戻らないといけない。

そうなれば折角友人となれたのに離れ離れになってしまう。

最悪もう二度とジークと会えないかもしれない。

ジークは少なくともこの国の人で私は一時ここで学ばせてもらっているに過ぎない。

彼がどうなるかわからないが私は3年後には国へ戻る選択肢しかない。

3年は長くもあっという間だ。急かしていたら長く感じるが...ゆっくりとしていたらあっという間に過ぎてしまう。

 

もう、会えないのかもしれない‥‥それを考えると自然に目尻が篤くなるのを感じた。

別れは何時でも人の都合を無視してやってくるもの...決意も決まっていないのに、別れたくもないと思っているのに無情にもやってくるそれを私はただ受け入れるしかない。

 

「それでも彼が幸せになるのなら...私は受け入れるしかない。」

 

主に盟い、私は約定を守る。

それが私の決意なのだ。

 

だから私は彼との約束を守る。

 

 

 

 

〜said放課後〜

 

時間はあれよあれよと過ぎていき、授業は終わり放課後となる。

ジャンヌは教科書を鞄へと仕舞う。

 

「ルーラー‥‥」

 

そんな時アストルフォが声をかけてきた。

 

「どうかしましたか?」

 

「ルーラー、もしかしてジークのとこに行くの?」

 

「はい‥‥えっ、でもなぜわかったのですか!?」

 

さも同然のような流れでこれからの予定は当てられた。アストルフォは鼻が高くなっている。

 

「だってルーラーの顔が弾んでいたんだもん。ルーラーがそういう顔をする時ってだいたいジークが関わっているんだよ。」

 

そう言われるとジャンヌは羞恥で顔が赤くなり両手で顔を抑えた。

自分では知らなくても無意識のうちにそんな事をしていたなんて...

 

「というのは冗談で!」

 

ジャンヌは本気でズッコケかけた。アストルフォは、はははと高笑いしながらジャンヌのそんな反応を本気で楽しんでいた。

 

「もう、からかわないでください!!」

 

「と言うのが冗談。」

 

ジャンヌは、アストルフォの発言でマジでコケてしまった。それを見たアストルフォは遂に腹を抱えて笑った。

ジャンヌは頭を抑えながら教室全体に響き渡る声で叫んだ。

 

「もうどっち何ですか!!?」

 

「はは、さあね?でも、ルーラー、自分から自白しているようなもんじゃん」

 

「はっ!?」

 

ジャンヌは慌てて口を閉じる。このからかいやすい反応がアストルフォにとってはとてもツボにはまったらしくそして小学生を可愛がっているように思えてきた。

 

「ルーラーって最近、イメージとギャップがあり過ぎるよね。何か色々可愛らしい。」

 

「えっ!?」

 

アストルフォは本当に面白そうにジャンヌの髪を思いっきり掻き回した。

ジャンヌはそれを強引に引きはがす。

 

「ちょ!?やめてください。」

 

「ははははは、じゃ頼んだよ。」

 

アストルフォが自分に何を頼んだのかジャンヌはわからなかった。

 

「ジークの所に行くんだろう?僕も行きたいんだけど...彼が必要としたのは君だ。今回の事は僕よりも彼自身よりも君の方がわかっているようだし...ね」

 

アストルフォはウインクを1回した。

まるで全てわかりきっているよと言いたげな意味深なウインクだ。

彼が本当に女子ではない事にやはりこの世の不条理を感じる。

 

「ちょ、アストル...」

 

彼を呼び止めようとしたらアストルフォは手をひらひらしもう帰る準備と帰る足を進め教室を駆け足で出て行っていた。

 

アストルフォが教室を出るとモードレットが廊下で待っていた

 

「いいのか?」

 

「君もわかっているだろう?今回、僕らはジークの件に関わらない方がよさそうだ。僕がやるのはジークが周りの心配を気にしないようにする方がいいに決まっている。」

 

アストルフォだってジークの事を心配をしていた。

ジークが倒れ原因は自分のせいだと思ったからだ。

だってあの状況を招いたのは自分の何気ない一言だった。普段はお茶ら気ている彼とて責任を感じないわけがない。何も知らなかったで済むとは思えないぐらいジークは苦しんでいたと思う。

保健室にも何度も足を運んだ。

授業中そこにはいない彼が座る席を何度も見た。意味の無い行為だけどそこにいてほしいという願いから何度も何度も何度も見ていた。

 

 

 

 

 

 

ただどの風景にも彼の隣には彼女がいた。

 

 

 

 

 

自分よりもたくさん悩んでいるように見えた。

自分よりもすごく彼を心配していた。

 

僕が霞むぐらい彼女の思いは強かった。

昼休みあの時、足を運びモードレットにジークの事を話し自分は外から見ていた。

 

 

彼がジャンヌを必要と言った事も...

 

その時僕は心配する気が完全になくなった。

僕は彼の負い目よりも彼が気兼ねなく休めるようにしてあげたうがいいんじゃないかと気が付いた。

 

 

 

 

そうアストルフォがそう言うとモードレットはニヤっと口角を吊り上げて言った。

 

「お前..ただのバカじゃないんだな。」

 

「今。気がついたの!?」

 

「お前は正面みたらバカか阿呆だよ。」

 

「えぇ、酷いなぁ~。」

 

2人は面白そうににこやかに笑いながら廊下を歩き帰っていった。

 

 

 

〜saidジーク〜

 

ジークはジャンヌの言いつけ通りにどこにもよることなく真っ直ぐ家に帰り現在、ジークは時間を一時も無駄にしないように机に向かって教科書を開き勉強をしていた。

ただジークは勉強をしていたが頭の中ではあまり教科書の内容が入っていなく他のことでいっぱいだった。

 

他のこととは倒れる瞬間にあった頭に浮かんできた微かなイメージの事。

あの時頭が割れるように痛みだし地割れのような裂け目ができたと思ったら裂け目から黒い絵の具のような液体がバケツを逆さまにしたように流れ込んだ。

 

身の毛がよだつぐらい悍ましくて鳥肌が立つぐらい恐ろしい体験をあの一瞬でした。

まるで俗に言うトラウマと言うものだろう。

二度と味わいたくないあの胸のあたりを知らない人に撫でられたよりも気持ちの悪い感覚、身体中に走ってくる悪寒。

喉元が冷たくなり凍りついた喉奥から悲鳴を押し出したくなるぐらい何か気持ち悪い。

 

ジークは一旦ため息を吐き、その意識は集中の海に沈めた。

 

今なら少し頑張ったら記憶が蘇りそうだったが...全く反応はない。

 

そんな時、インターホンが時間を知らせてくれた。時計を見るともう夕方になっていた。

ジークは時間を忘れていたようだ。もう外の太陽が傾いていた。

 

ジークは下に降りた。

 

ドアを開けるとジャンヌが来ていた。約束通りに来てくれたことにジークは顔が緩む。

 

「すまない。君にも予定があったかもしれなかったのに」

 

「いえ、大丈夫です。...あ、これつまらないものですが」

 

ジャンヌはどこかで買ってきたであろうお菓子をジークに手渡した。

 

「すまない、気を使わせて‥‥「ジーク君。」」

 

ジャンヌは人差し指でジークの謝罪を制した。

 

「こういう時は!」

 

「えっ?あ、ありがとう。」

 

ジークは一瞬言葉に詰まったがすぐ頭を整理してここにあう言葉が出てきた。

ジャンヌもそう聞けて満足そうに返事してくれた。

 

「どういたしまして。それで?今日セルジュさんは?」

 

「仕事。」

 

「そうですか」

 

「さぁ、上がってくれ。」

 

 

ジークに言われてジャンヌはお言葉に甘えて家に上がらせてもらった。

ジークの部屋に入れてもらうが正直現在気まずい空気になってきた。何故ならジークが誘ってなにか話したそうだったのだが、現在そのジークが黙りを決め込んでずっと黙っている。

こちらから話を切り出そうかと思ったがジークは何かを話したそうにずっと口をもごもごとして目線をあちこちにやっていた。

 

本当にどうしたものか...

 

「「あ、あの」」

 

余計変な空気になった。

 

「す、すまないジャンヌから...」

 

「いえ、大したことではないので」

 

2人とも唸りながらどうやろうか考え出す。

だが、ジャンヌはすぐにクスッと吹き出した。

 

「ジャンヌ?」

 

「いえ、失礼。特に意味はありません。」

 

この空気に2人が同じ事を考え、同じ様な行動し、同じように考えていったこの一過程が面白く、つい吹き出してしまった。

 

「大丈夫ですよ、ジーク君。焦らずに話せる時に話してください。私はずっと待っていますから」

 

ジャンヌはお菓子の包を取り外して箱から中身をジークと自分に分けてあげた。

 

 

 

「なぁ、ジャンヌ。聞いていいかな?」

 

「どうしました?」

 

「ジャンヌは人に悩みを聞き出す時どうするんだ?俺は悩みを相談したいのだがどうやって話し出せばいいかわからない。」

 

「そうですね...」

 

ジャンヌはお菓子を口に運ぶ手を止めてケースに一旦置いた。

さらにジャンヌは少しだけ深く考えだがすぐに答えを見つけた。

 

「私のやり方を教える前に貴方は貴方自身のやり方があるじゃないですか?」

 

「俺のやり方?」

 

「貴方はどうすればいいか、わからない時は素直に聞いてくるではありませんか?貴方の美点のひとつの『素直』これは他の人、私にもあるとは言いきれません。素直に人に聞き素直な答えをすぐに出す。」

 

ジャンヌはジークの髪の隙間に櫛を差し入れるように手を入れて頭を優しく撫でてあげた。

 

「そうか‥‥今日はずっと貴女に子供扱いされているな。」

 

今もずっとジャンヌに頭を撫でられていた。まるで子供に向けるような微笑みと頭の撫でたか。

頭の方は凄く気持ちいいのが少しむず痒く感じる。

 

「ジーク君は気が付いていないだけで色々子供っぽい所ありますよ。」

 

「そうなのかもしれないな。怖くなった時や弱気な時にどうすればいいかわからない。人に頼りたいのにどうやって頼ればいいかもわからない。そもそも俺はどうしたいかもわからない。自分の事が記されている教科書があればいいのにな。」

 

ふとジャンヌの耳に入ってきた言葉。

ジークが零した弱気な言葉。

ふと零したと言うよりは元々ジークにあったのだろう。だがどうすればいいかわからないから溜め込んでいたのだろう。それが今回をきっかけに漏れ出した...

 

「ジーク君...」

 

ジャンヌはより一層心配そうにジークを見つめる。

私は彼を強いとは思っていなかった。

責任感も強く我がそこまで強くなくとも彼は自分の通したいものは通しきる意志がある。

それを認めたから彼に心を許した人もいる。

でもそれはやはり表面だけだったようだ。一皮剥けた今は弱々しく人に縋り弱気な部分を私に見せている。

 

それが見えなかったのは殻がとても分厚かったからと今までは思っていたが隣にいる彼の声を聞いたらわかった。

彼は頼り方すら知らなかった。

人に迷惑をかけてはいけないと思う良心が彼を妨げ、彼に耐えさせる様に強いていた。

頼る=迷惑

彼の中の方程式がもう既にできていた。

 

ただこれはよかったのかもしれない。

早めに無くさないといけない彼にとっての決まりをここでなくして頼り方を教えてあげる。

 

そう思った。

 

 

 

「ジャンヌ正直に言うと俺は記憶を戻したいとは思っていない。」

 

「っ!?」

 

彼とのつながりを壊す一言を彼は呟いた。

彼は今、何といったか?

記憶を戻したくない。それって‥‥

 

「ジャンヌ、君には教えたな。俺には記憶はなくとも脳に焼き付いている言葉があると...」

 

誰からも焦がれることをなくとも、幾千の人がお前を望まなくとも、俺はお前に生きといてほしい。

 

ジークにとって今までの支えで精神を支える最後の柱である力強い言葉。

 

「ジャンヌ、これは何のために言われた言葉だと思う?」

 

そう聞かれると考える。

これを真に受け止めれば励ましの言葉、激励の言葉だろう。

 

「励ます為の言葉なら他にも言いようがある。でも俺はこう言われたという事は、記憶のある俺は人に嫌われていた、最悪人に存在することを忌み嫌われている可能性がある。」

 

ジークは自分を見つめる時間はほぼ無限にあった。ここに拾われ何もすることはなかった自分は退屈を紛らわすかのようにある時自分について考えた事があった。

 

この言葉とても力強く温かみを帯びてさ自分を支えてくれたが焦点を言われる状況に置き換えた時にその状況がジークから熱を奪った。

 

そうだに生きている限りこんな事言われるわけはないんだ。

お巫山戯で言われた言葉ならここまで心に突き刺さっていないだろう。これは真の自分に向かって言われた言葉何だ。

 

「俺は他人に‥いや大勢に消えて欲しいと思われた人物‥だったかもしれないんだ.‥‥」

 

ジャンヌもわかった彼が何に絶望したのかを...彼はそれに気がついたから彼は彼自身に興味を無くしたことも...

 

「だから俺は記憶を戻さ‥‥」

 

ジークは以前の自分を否定する言葉を言おうとしたらジャンヌに抱きしめられながら押し倒される。

 

抱きしめた手は少し震え力強く彼を離そうとしなかった。

 

「ジャンヌ?」

 

「…わないで...ください。」

 

「えっ?」

 

声も小さく耳元に口があるにもかかわらず聴き逃してしまった。

 

「それ以上先を言わないでください!」

 

「ジャンヌ苦しい。」

 

「駄目です。離しません。離さないからそれ以上先は言わないでください。」

 

ジークはどうすればいいかわからない。

でも何故かジャンヌの心境はわかった。

彼女は嘆いていた。自分よりも自分の事を悲しんでいる。

自分よりも彼女が何故傷ついているかジークはわからなかった。

 

「何でジャンヌが悲しんでいるんだ?」

 

「悲しいからにきまっているからです。」

 

「これは俺の問題だ。俺の事をなぜ自分の様に...」

 

「貴方の気持ちがそれぐらい強いのです。」

 

「俺の気持ち?」

 

「ジーク君、人は他人の存在を軽く人を否定します...ですか神は決して人を見捨てません。神は平等です。人に否定されたらその分人に望まれます。私は絶対に否定しません。貴方の友達も...セルジュさんもアストルフォも...モードレットも貴方を受け入れてくれます。大丈夫ですよ...どんな人だったとしても...嫌われ者だったとしても...私達にとっての貴方は変わらない。」

 

そう告げられた時ジークの目尻は熱くなり嬉しそうに目を閉じジャンヌの背に手を回してジークからもジャンヌを力強く抱きしめ返した。

 

「ジャンヌ、すまない俺のせいでこんなに悲しませて...」

 

「ジーク君、違いますよ。貴方が今思っている気持ち...それを口にしてください。」

 

「ありがとう」

 

そう言った彼の顔はこれまで見たどの顔よりも良くなっていた。

ジークは本当に恵まれているのだろうと思った。

こんなに優しくこんなに心を埋めてくれる優しい人に出会えた事に...

彼の紅い瞳から見受けられる喜び、無表情に近い口元を緩ませる幸せ...私はそれを見ただけでどれだけ嬉しかっただろうか...それと同時にかれをもっと知りたくなった。彼を知った上で受け入れてあげないと意味は無いのだから‥‥

 

 

 

 

 

 

そんなこんな、ジークとジャンヌの話はだいぶ長引いて夏だというのにもう日が沈んでいた。

うるさかった虫の声も静まり暑さこそ残るがそれでも昼よりはましだ。

ジークとジャンヌは時間を気にしないぐらいに話し込んでいたらしく、折角今日彼女が取ってくれたノートを見るのは明日になりそうだ。

彼女も帰り支度をすまそうとしていた。ホームズステイの身である彼女だ。できるだけ遅くならずに帰って夕食なども時間を合わせないと...

 

「今日は助かった。本当に俺は貴女に世話になって...何か返したくてもちょっとやそっとで返せるとは思えない。」

 

「ふふふ、いいですよ。そう思わなくても、私自身貴方の手を煩わせているのですから」

 

そんな時ジークの自宅用の電話のベルが鳴る。

ジークはそちらの対応のために部屋を出て階段から降りた。

それと同時にジャンヌの携帯電話にも電話がひとつ入った。

内容はホームステイ先の人からで、今日は色々用があり未だに夕食の用意ができていない。

なので外で食事を済ませてほしいと...まぁお財布はここにあるし少しならいけるだろう。

 

ジークも部屋に戻ってきた。

 

「電話誰からでしたか?」

 

ふと、気になったので聞いてみた。

 

「あぁ、お爺さんからだ。今日夕食の用意するのを忘れたからどこかで済ませてくれ...と。」

 

「そうでしたか、私の方も同じ内容です。何とも偶然というのはあるものですね。」

 

ジャンヌの方も似た状況となった。

すると、ジークが

 

「なら一緒に済まさないか?」

 

ジャンヌを夕食に誘った。

 

「えっ?」

 

「その‥‥これらか何処かに夕食でも食べに行こう」

 

ジャンヌの方は一瞬何を言われたのか理解出来ずにポカンとするが、徐々にジークとの言葉の意味を理解して、

 

「はい」

 

ジークのお誘いを受けた。

こうしてジークとジャンヌは夕食をとるために日が暮れかかる街へと繰り出した。

 




ではまた次回。
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