ついに、新章が開幕します。
オリ主とE組の中学3年生、みんなが幸せを掴むための第二部を、一緒に追いかけてくださると嬉しいです。
見た事のあるあの場面が別視点になったり、カルマ、E組、教師陣、もちろんオリ主の分岐点となる選択が変わったりします。後書きに関係するお話のリンクを載せておくので、ぜひ第一部と読み比べていただけると嬉しいです!
今回もよろしくお願いします!
107話 死神の時間・3時間目’
カルマside
「────────ッ!?」
「あッ、カルマ君!目が覚めたんですね!」
「大丈夫?気分悪いとかない?」
「……え、は……、……え?奥田さんと原さん……?」
……誰かの声が聞こえた気がした瞬間、プツリと電源が切れたように真っ暗になった後、何も考えられなくなるくらい頭の中が真っ白になって……もしかしたら俺は声を上げた、のかもしれない。
気が付いたら周りに音や景色が戻ってきていて、目の前には心配そうな顔をした何人かのクラスメイトが俺の顔色を伺っていて……って、え、何事?
「……ここドコ……」
「んー、まぁ起きて景色変わってたらそうもなるわな。暫定:牢屋ってとこだ」
「私達が連れて来られた時にはもうあんた達はここに倒れてたわ……ピクリとも動きやしない」
「死んではないって聞いてたけどよ……一番戦闘慣れしてるカルマでさえ今起きたなら、他の奴らはこれからだな」
………………、……そうだ、俺達は『死神』に攫われたビッチ先生をE組全員で助けるために呼び出しに応じて来たんだ。呼び出された場所そのものが罠で閉じ込められて、そのままただ殺られるわけにはいかないから『死神』から逃げて、でも正面戦闘では全く反撃することも出来ずに……俺、気絶して……!
菅谷の説明に意識を失う前のことを思い出して、慌てて体を起こそうとしたところで両手が後ろ手に拘束されてることに……普通動揺しそうなものなのに、なんか逆に冷静になった。焦ったところで何にもできないわけだし?1度目を閉じて思考を切り替えてからもう一度目を開けつつゆっくりと体を起こす。それだけの動作しかしてないのに左頬が地味に痛むな……そういや殴られたんだっけ、気絶したってことは衝撃で脳でも揺れたか……でも大したダメージじゃない。超体育着を着てたおかげで、それに守られてる範囲は特に大きな外傷なし、と。
「あの、だいぶ魘されてましたけど……本当に大丈夫ですか?」
「あ、うん。なんか変な夢でも見てたみたいな……、」
そんなに調子を疑われるほど酷い顔色してんのか、俺……といっても自覚ないし、もうどんな夢だったのか全く思い出せないんだよね。A班とB班の奴等が目を覚まし始め、まだ上手く働かない頭のまま、そいつらをなんとなしに見てたけど、……なんだ、この、違和感は……
ぐるっと周りを確認してみれば、最初に閉じ込められたエレベーター部屋とはまた違って、向かい合った二方向が壁、残りの二方が鉄格子で塞がれた部屋……菅谷の言葉通り牢屋といっていいだろう、そんな場所に俺等は集められていることが分かる。
「……、夢……?その割には妙にリアルな感覚だったけど……夢だったのか……?」
「妙にリアルな変な夢?……もしかしてだけどアミサちゃんに迫られるようなものでも見て焦ってたとか」
「不破さんッ、」
「この状況でE組の頭脳なカルマがボーッとしたままとか最悪でしょ、さっさと回復してもらわなきゃ。……ほら、夢だからこそあのアミサちゃんでも大胆に来てくれた的な?」
「……?何そのご褒美みたいな夢。そんないいもんじゃなかった……、というかあの子ちょっと仕掛けたらやられっぱなしが悔しいってキスし返して来たり恋人つなぎを恥ずかしがるくせに頭撫でたらもっと撫でてって警戒心皆無で擦り寄って抱きついてきたりって普段から変にズレて大胆だからそんな夢に見るほど嬉しい大胆な行動とってきたなら覚えてるよ忘れんのもったいないじゃん」
「わおノンブレス」
「お前なぁ;」
「でもカルマのこの感じ……夏休みの時と同じでまだ覚醒しきってないでしょ。ねぇ、まだ気付いてないの?」
「……え、」
回らない思考のまま思ったことをそのまま声に出していれば、不破さんが真剣な顔で俺の前に来た。原さんが咎めるように止める声を聞きながら彼女の言ったことをそのまま考える。不破さんが言うようなアミーシャが出てくる夢だったら……しかも恋人になったばかりの彼女とのそんな都合のいい夢見てたんなら、忘れる気がしないんだけど。とりあえずまずはメモるよね、忘れる前に。……何のためにって?いつか実践してもらうために決まってるじゃん。
俺の返答に呆れた目を向けてくる奴等を後目に、何故か茶化すことなく俺に対して真剣な向き合い方をしてくる不破さん……彼女って基本変なところで変な暴走の仕方をするクラスメイトだけど、的を射るような発言も多いんだよね。そんな彼女が俺に伝えたいこと、俺に気付かせたいことって……?……あッ!?
「───待ってよ、アミーシャは?!」
「よかった気づいた……」
そうだ、それが違和感の原因だ。自惚れなくても何かあれば必ず俺を1番に頼るか近くに来るはずのアミーシャの姿がどこにもないことに、なんで気付かなかったんだろう。この状況が極限すぎて彼女のことを考える余裕がなかった……んだと思いたい。
原さんが名前をすぐに出さなかったり、止めようとしたりしたのは、言ったら俺がどう思うかって気を遣ったからなんだと思う……彼女は母親のような性格だから、きっと。逆に不破さんが名前を出してわざわざ話を広げに来たのは、下手に第三者から聞かされる前に俺自身に気付かせるためだ。
「最初から話してあげるから落ち着いて。さっき狭間さんが言った通り、C班が来た時にはもうB班の9人が倒れてたわ……次いでA班がビッチ先生と『死神』に運ばれてきて、その時点で私が見た限りアミサちゃんはいなかった。B班は多分薬で眠らされていて起きる様子もなかったからか、ビッチ先生がA班に戦闘できるメンツが集中してることを教えたからか、B班を拘束する前に2人とも出てっちゃったのよ」
「……つまりビッチ先生は」
「……うん、『死神』側よ」
「ふぅん、……またあの子の勘が当たってたってわけ」
そんなふうに話していれば、いつの間にか鉄格子の向こう側には『死神』がいて、牢屋の中にはビッチ先生が入ってくると足元にいくつもの金属の塊を投げ捨てていた。形状からして、俺等に付けられてる手枷と首輪ってとこか。聞けばB班は救出対象である先生によって眠らされたらしい……ビッチ先生が『死神』に誘拐された、なんて話は最初から茶番だったわけだ。
戦える俺等が既に無力化されていて、鉄格子の外には『死神』、中にはビッチ先生……B班は無抵抗で拘束を受け入れるしかなかった。このために俺等は先に縛られていたんだと思う……なす術なく仲間が拘束されていくところを見せつけられるしかない俺等と、動けない俺等を人質に言うことを聞くしかないB班……『死神』、そうだろうとは薄々思ってたけど性格悪くない?
「…………………………」
「……渚君?」
すぐ近くで渚君が茫然自失となったまま座り込んでいるのが目に入った。これは……『死神』によって自分の技よりもはるかに上を行く技術を目のあたりにしただけじゃなく、直接受けての衝撃、かな。この感じだと、話しかけてもまともな返事が返ってくる気がしないし、放置でいいや。
それより俺からしたらアミーシャの方が心配だ。この場に居なくて安否が確認できないってこともそうだけど、……多分、教室の時点で彼女は『死神』に目を付けられている。クラス全員が警戒できなかった『死神』に対して、唯一最初から気配を読み取り、警戒し、俺の後ろに隠れながらも最悪交戦も視野に入れた立ち振る舞いを見せていたのを、あいつが気付いてないはずがない。俺等の力じゃここから出られないのもあるだろうけど、見張りも付けずに27人を放置してまでわざわざ探しにいくとか……
「A班は『死神』に昏倒させられて全滅、B班は話を聞いた限りビッチ先生に眠らされて終わり……竹林、最初から起きてたっぽいけどC班はどうだったわけ?」
「一応C班は全員無傷だ……ただ、僕達をここまで連れてきたのは『死神』でもビッチ先生でもない」
「は?他に誰が……」
「……どこにもいなかったぞ」
「なっ……!」
「…………《銀》、彼は『死神』側だ」
俺達が揃っている牢屋の内部から見て鉄格子の向こうで空間がゆらりと歪んだかと思えば、その空間から現れたのは見覚えのある黒衣の人物、《銀》。……そっか、ビッチ先生経由で俺等に手を貸してくれたこともあって無条件に信用してたけど、ロヴロさんも言ってたっけ。『契約までが難しいけど金で動く暗殺者でもある』って。
基本的に仲間がいるわけじゃない彼が『死神』の近くで普通に報告をしている姿から考えて、《銀》は『死神』と契約したということなのだろう。俺等の力を把握してるメンツが向こうにいるのはだいぶ分が悪い……それにしても、〝いなかった〟?なにが……この場合、誰が、か……まさか。
「……いなかった?そんなはずは……」
「お前が探せと言ったのは『真尾有美紗』という女の子どもだろう?私が見て回れる限りは探したが、どこにも子どもの姿はなかったぞ」
やっぱり。彼等の会話にアミーシャの名前が出てきたのを聞いて確信した、あいつらは彼女がこの場にいないことを警戒している。
『死神』がビッチ先生と《銀》っていうE組の情報を落とせる人を味方につけているなら、
だけど、確実に無力化した
「……見られただけなら席が隣同士の仲のいい男女ってだけだけど、ビッチ先生経由で俺等の関係性がバレてる可能性もあるな……割り込まないほうが吉、か」
「何が?」
「教室に『死神』が来た時、寺坂の名前を把握してただけじゃなくて、
「……おけ、聞いてないフリしとくわ」
……正直、向こうがアミーシャのこと知ってるなら聞きに行きたいレベルだけどね。向こうが意外と計算違いしてるなら、修正させない為にも些細な情報も落としたくない……彼女のことならいつも1番に動く俺が一切動かないことでクラスメイトは何となく察したのか、俺を伺う視線はあってもあちらの会話に割り込もうとする奴は1人もいなかった。
それに、もしこれで俺等の『恋人』って関係性から揺さぶろうとしてきたら……心底不愉快でしかない。それに表面上は取り繕う自信はあるけど、もしも、万が一俺きっかけで捕らわれずに済んでいる彼女を危険に晒すことになったとしたら……そんなこと、考えたくもない。
〝……ごめんね、少し整理できた。……みんなのことは、私が守るから……〟
俺の意識が落ちる直前……確かに精神汚染によって錯乱させられ、気絶したはずのアミーシャが、ふらつくこと無くその場で立ち上がって、俺等を心配そうに振り返った後駆け出していく後ろ姿を、俺は確かに見たんだ。
いなくなる前に呟いた言葉が不穏だし、彼女が何を考えて俺等から離れたのかハッキリしないのが怖いけど。自力であそこまでの精神汚染から戻ってきたのは、彼女曰く『整理した』からだとして、何をもって俺等のことを守ろうとしてる……?まさかとは思うけど、1人で特攻かけようとしてないよね?……いや、そうだとしたらさすがに《銀》に見つかってるか。
「ふぅん、沈黙を選ぶなんて中学生にしては聡いね……ま、情報なんて不足して当然、ましてやあの怪物だったら……ね。例えどんなに予想外なことが起きても、情報不足でも結果を出す……それが世界一の殺し屋だよ」
「……世界一、か……フン、仮にも協力関係にある殺し屋がここに2人もいるというのに、随分と自分を高く評価しているんだな」
「何か不満かい?」
「いや?私は世界一というものに興味は無い。だが、あいにくお前と私は歴史が違う……新参者が、大きく出たものだと思っただけだ」
「……へぇ。言うじゃないか」
「……唯一無二、語り継がれる
「……契約時の言葉を返してあげる。『ご想像におまかせ』するよ」
やっぱり『死神』は俺、もしくはクラスメイトが割り込んでくることを想定してたな。でも『死神』からしたらこの程度は痛くも痒くもないんだろうけど。……もしもこれが本物の暗殺だったら、気絶した時点で俺等の命はなかったと見るべきだし、だからこそアミーシャには気絶させられたら回復を優先しろと指示したわけで。……まぁ、そこを突かれて精神攻撃されるまでは考えてあげられなかったわけだけど。
というかビッチ先生置いてけぼりにしてあの2人バッチバチじゃない?本トに協力関係にあるのあれ。
「さて、次は烏間先生だ。1度表の姿で会っておいたけど彼なら君達よりは良い練習台になるし、捕らえておけば色々メリットが多い」
色々引っかかるところはあるけど……話は終わったと態度で示すように、次は烏間先生を人質に迎えるための準備だとか『死神』は言っていて、なんとかできないかと静かに視線を巡らせていれば……目に入った監視カメラの映像を映すモニターの1つに変なものが映り込んでいた。
よく見るために鉄格子へ近付くと、その正体に自然と笑いがこぼれていた。何アレ、お得意の変装ってこと?
「……何かおかしいのかな?」
「『死神』さーん、モニター見てみ。あんた計算違いしたみたいよ?」
「……………、……なぜわかった?」
「「「烏間先生!と、…………なにあれ」」」
この建物の出入口を移したカメラには烏間先生、と……なんかよく分からないコスプレ……四つん這いだし、なんか地面の匂いを嗅いでるし、耳があるし、烏間先生がリード持ってるし……犬、か?何かの格好をした殺せんせーがいた。
殺そうとしてる奴がいるわけだから殺せんせーは来られても正直困るというか来ちゃダメなんだけど、烏間先生がここへ来てくれたことは素直にありがたい……でも殺せんせーがいなきゃ烏間先生がここに来れるまでもっと時間がかかったんだろうな。クラスメイト達も同じ気持ちなんだろう、さっきまでの不安そうな雰囲気から安心したような笑顔を見せている。
「……まいったな、かなり予定が狂ってしまった。仕方ない、
「……いや、私は子供達を見ていよう。お前が如何にして標的を捕らえるか……ふふ、お手並み拝見といこうか」
「うん、君らしいね……行くよ、イリーナ」
「ええ、私の出番ね」
まずい、烏間先生も殺せんせーも……ビッチ先生が裏切っているということを知らない!殺せんせーは言わずもがな、烏間先生も口では厳しいことを言いつつあの花束を捨てられずに取っておくような人だ……あのビッチが捕まっていると認識したら助けに行くに決まってる。鉄格子の外側に《銀》1人を残して、『死神』とビッチ先生はどこかへと歩いていった。
無言で2人を見送ったあの人は見張りとして残ったのだろうか……『死神』相手には色々言っていた彼ではあるけど、俺等に対してのコンタクトが少なすぎるせいで彼が何を考えているのか分からない。……こうなってみると、《銀》の得物が何なのかすら知らないのって、かなりまずい事なんじゃない?アーツはともかくとして、銃のように遠距離なのか、ナイフのように近距離なのか……どの位置にいれば安心なのかすら、検討もつかないから。そう、思っていた。
消えた2人の歩いて行った先を見つめていた《銀》がこちらを向いた瞬間に、俺等は全員で警戒を向けた、それなのに……動じてないというか、……仮面とフードで顔を隠しているのに、親しみのある雰囲気を感じるのは、何故なんだろう。
「ふふ……さて、行ったか」
◆
私が、この教室に来ることになったのは、意図してのことじゃない。ホントにただの偶然だった。
〝E組の全員に同じ説明をし、他のみんなは、既に任務に入っています。君たちも停学がとけたらE組に戻る……よって君たちにも、暗殺任務を依頼します〟
椚ヶ丘中学校3年E組……私がそこへ行くことになったのは、数少ない信じていた大人の自己保身のために切り捨てられたから。だから、自分からわざと殺せんせーを殺すために来たわけじゃない……それに、まさか日本に来て暗殺に関わることになるなんて、想定外もいいところだった。
当代の《銀》であるリーシャお姉ちゃんは、私がこの件に関わることになるとは夢にも思ってなかった。ただでさえクロスベルが荒れ、再独立に向けて協力している最中だったお姉ちゃんは、お姉ちゃんの身動きが取れない時に変わりに動く、同じ《銀》である私が巻き込まれないようにって、政府から依頼された『殺せんせーの暗殺』をアルカンシェルを理由に断ってくれていたのに……
それでも、依頼されて引き受けたからには。私は暗殺者としてではなく、ただの1人の中学生、政府から暗殺を依頼されただけの一生徒として、最後までこの依頼に向き合うつもりだったんだ。
でも、それができなくなる事態が立て続けに起きたことで、状況は変わってしまった。
……自衛隊、特殊部隊、軍人、傭兵、殺し屋、暗殺者……武力を持つことを良しとしない日本が積極的に様々な戦力を投入し、闇の世界で生きる存在を登用してまで殺そうとしている超破壊生物、通称:殺せんせー。地球を爆破させることを宣言していることから、地球上全ての国防を担う存在が命を狙っている殺せんせーを殺す上で、最も邪魔であり、反面最も有効な駒にできる存在……それが、何故か超破壊生物であり人間じゃない殺せんせーが担任を務める椚ヶ丘中学校3年E組の生徒達。
ほとんどは単身、もしくは徒党を組んで殺せんせーの命を狙っていたけど、一部の賞金目当てじゃなく純粋に殺せんせーの命の灯火を消すことだけを狙っている刺客は、E組の生徒達を巻き込んで利用して殺しにかかれば、難易度がぐっと低くなることを察していた。……私が、その事に気づいたのは夏のこと……プールという殺せんせーの弱点である水を利用した、シロさんによる暗殺があった、あの時。
〝大変な状況の中で本題に入るのも申し訳ないが、学校ではこの話ができん……単刀直入に言う、例の件について、考えてもらえただろうか?〟
私が初めてみんなの前でアーツを見せたあと、烏間先生にだけは私のホントの肩書きを明かしていた。私が当代《銀》の影であること……影の存在とはいえ私自身も《銀》であり既に凶手として仕事をしていること、つまり……ただの一般人じゃないことを。だけど、烏間先生は、この教室にいる限り私のことをただの中学生として扱うと言ってくれた。その代わり、直接ではなくてもいいから少しばかり地球を救うために力を貸してほしいとも頼まれていた。
リーシャお姉ちゃんの願いもあったから、《銀》としては積極的にかかわらないつもりで返事を保留にしていたけど……私はいつの間にか最初からは考えられないほど、E組のみんなのことが好きになっていたらしい。だから、シロさんの計画に寺坂くんが使われたことに腹が立って、平然と何人か死んでも問題ないとばかりにクラスメイトを巻き込んだシロさんに殺意が湧いて、ただの中学生と見られようと《銀》として動かなかったがために死にかけて何もできなかった私自身に嫌気がさした。
〝……、……私は、殺せんせーを暗殺するという協力はできません。それはもう『E組の真尾有美紗』として契約を結んでるから。……だけど、『《銀》であるアミーシャ・マオ』として、E組の生徒たちを守るために力を貸すのであれば……私は、日本政府と契約します〟
《銀》として殺せんせーを殺すために協力するのではなく、E組を守るために行動する。そのためだったら、E組に通う中学3年生である真尾有美紗としての顔と、E組のクラスメイトたちを守るアミーシャ・マオとしての顔の2足のわらじを履いてもいいと思った。
そして今、《
『死神』に仕事のパートナーを依頼されたのはこの暗殺計画が始動する少し前のこと。暗殺計画として殺せんせーを誘き寄せ、閉じ込めるまでの作戦は開示されたけど、決行日、時間、肝心の殺せんせーを暗殺する方法は一切明かしてくることはなかった。『《銀》には情報収集を主に任せるけどイレギュラーが起きれば適宜指示するからサポートして欲しい』、なんて内容で契約しようとしてきて……このことから、《
本来ならここまでフワッとした契約内容では絶対に受けない仕事。きちんと報酬を支払ってきたし、《銀》にとって全く難しいと思えない依頼ではあったけど、私は《銀》が国を動かすこともある存在である自負があるから……私のせいで《銀》という存在に、お姉ちゃんに、先代たちの顔に泥を塗るわけにはいかない。……それでも、この暗殺計画にE組のみんなが巻き込まれるというなら話は別だ。ここで依頼を断って『E組の生徒』として動きを制限されてしまうよりは、『凶手』として一緒に中へ入った方が手を貸すのに都合がいい。問題はみんなから離れるタイミングだったけど……なんとか離脱できてよかった。
「『死神』がここにいない以上声は出してもいい……ここの設備程度では音は拾えない」
「……は……?」
私のいる鉄格子の外側と、みんなの方の2箇所に視線を向けて監視カメラが付いていることを教える。最初にその存在に気づいたのはずっと私の方を注視していたカルマで、他のみんなも少しずつ状況を把握してくれてるみたいだ。
「……それを信じろっていうのか?」
「別に信じなくても構わない……何せ
「幻聴だと?馬鹿にしてんのか!?」
「待ってよ、寺坂。……多分、言葉通りに受け取っちゃダメだ」
「はァ?」
……みんななら打開策を思いついてくれるはず。そう信じての煽りが素直な寺坂くんにはバカにしてるように受け取られちゃったのは、正直予想通りだった。『私はここで何も言っていない』……そのまま受け取ればそう聞こえるかもしれないけど、裏を読めば、あくまでも見張りに徹している姿勢を見せているだけで、答えられることは答えるぞ、ということ。『死神』と仕事として契約を結んでいる以上直接助けることはできないけど、契約の穴をついて情報を落とすことくらいはできる。
普段から信じるために疑いから入るカルマは、私の監視カメラの所在を教えた態度も合わせてしっかりと言葉の裏を読んでくれたらしく、寺坂くんからこちらに視線を向けたあと、わざとらしくカエデちゃんに話しかけた。
「……ねぇ、茅野ちゃん。監視カメラの存在は今アイツが示した通り……他に、この場所には何があるんだろうね?」
「か、カルマ君……?いきなり何を」
「……ここの周辺には音声は拾えない監視カメラが2台、この建物内にあるカメラの映像全てを映すモニターがあるな……1つだけ砂嵐になっている画面があるな……ふふ、誰かが破壊したのかな?」
「……あんた、」
「……なるほど、そういうことか」
彼が不自然にならない程度に質問を投げかけ、私も自然な動きでモニターを見るように移動し、独り言のように必要な情報を落としていく。このやり取りは、カルマが作ってくれたみんなが私の言葉の意味を理解するためのデモンストレーションのようなもの……わかりやすくていい質問だ。あの砂嵐の画面は私が壊した奴、だよね……ふふ、久しぶりに誰にも見られないように
みんなの方を一切見ないで答えるソレは『独り言』。質問の期限は『死神』達が帰ってくるまで……そんなに時間はない。多分、押し隠した実力を見せていない烏間先生はともかく、殺せんせーはほぼ確実に捕まるとみていい。だって、檻の中に大切な生徒がいるんだもの。殺せんせーは、生徒のことを絶対に見捨てられないから。
「……ねぇ、……『死神』はスマホを持っていたわよね?あれって何なのかしら……誰かに連絡でもとってるとか?」
「……そういえば、私も確認していないがあの端末で基本的なコンピュータ制御はできるらしいな……モニターとも連動しているだろうし、離れた場所からでもカメラの映像を確認できそうだ」
「『死神』って強すぎるだろ……勝てるのか?」
「……『死神』は強い……だが、あくまでも世界一にこだわっているだけだ。1つ1つの技術が優れていても、な」
「もう、仲間はいないよな?ここで増えたら更にピンチだぞ……」
「……、……奴は個人主義だ……仲間と呼べるものはいないだろう」
……磯貝くん、いい質問投げてきたなぁ……仲間、か。正直イリーナ先生はほぼ
それでいて、私も契約上は仲間でいいんだけど……本来の契約先は烏間先生なわけで、今回のこれも契約を遂行する上での二重契約だから、仲間って言いきっていいのかな……?裏を読んでしまいそうな人たちには察せられちゃうかもしれないけど、とりあえず当たり障りのないあたりで返答はとどめておこう。とりあえず『死神』を中心とした一枚岩ってわけじゃないってことさえ伝わればいいかな。
「……ねぇ、《銀》。あんたさ、契約してるって本トなの?」
「カルマ……それ直接聞いてんぞ……」
「あ、これ独り言ね、独り言」
「取ってつけたように……」
……うん、あなたなら聞いてくると思ったよ。思考が口から出ちゃったんだろうけど、取り繕うのも忘れてるそれに思わず笑ってしまった。
「クク、面白い子どもだ……、大方この状況から気にしているんだろう。私は、凶手として契約分の働きは約束する……必要のない犠牲を出すような私の流儀に反した動きをしない限りは指示に従ってやるが、あくまでも契約してやっているのは私の方だからな、どうなるかは契約主次第だ」
「思ってたよりちゃんと答えてくれた……」
「おや、不思議なことを言う……お前達には何か聞こえたのか?」
「《銀》さん遊んでるでしょ……?」
『死神』にも契約時にちゃんと伝えてるからね、 〝
……それにしても、過去の《銀》もこういう場面ではこういう言い回しをしてたって口伝されてるからそれに倣ってるけど……お姉ちゃんも私もこの姿の時と普段を切り替えるために全然違う口調にしてるとはいえ、時々色々心配になるんだよね。これで煽られて向かってくる人もいるくらいだし……みんなにはこれでいいって言われてるから、いいんだろうけども。
なんて、別の所へ思考が逸れてたらふと顔を上げた彼がホントの独り言のようにポツリとこぼした言葉が耳に入ってきた。
「……本トにアミーシャのこと見てないわけ?俺、
「……!お前……見ていたのか……」
……しまった。全員意識を落とした頃を見計らってあの場所を離れたつもりだったのに、まさか見られてたなんて……
E組の人たちは、私が6時間ではあるけど船っていう狭い空間で特定の人から隠れて逃げ続けることができるってところを知っているから、自然と『アミーシャ・マオはA班が目覚める前に目を覚まして、『死神』に見つからないように逃げている』ってことにできると思ったのに。
「……そういえば、あの場所に隠してきた少女はそろそろ目を覚ましている頃か……恋人が心配していると伝えるべきだったかな?」
「「「!!」」」
しょうがない、みんなの近くから離脱する時にちょっと工夫しないといけないけど……完全に『死神』の味方をしているわけじゃないって立場に立つためには、『アミーシャ・マオを見つけているが隠してきた』ってことにしておいた方がよさそう、かな。見つけてないことにしてもいいけど、カルマの質問のおかげでE組全員にも所在というか安否に関心をもたれちゃったし、少しでも疑念は減らしておかないと。
E組の中で1人だけ行方不明って状況を全員が気にしてくれていたんだろう、私の言葉を聞いた瞬間そこかしこから安心したような息が漏れたのが聞こえて……勝手ばかりしてるっていうのに、私は、私が思っていた以上に、心配してもらえるクラスメイトになれていたんだろうか。
「……そろそろお帰りのようだ。中央部は開けておいた方がいい」
「……へ?中央って……うわぁぁっ!?」
……頭上から、何かが落ちてくるような音が聞こえる……タイムリミットだ、一言言っておけばみんななら避けれるだろう。いきなりではあるけど話を止めて鉄格子の外側にある扉の方へと歩き出し、扉の出入口付近の壁へ背を預ければ不思議そうに牢屋の中央を空けるみんな……が、移動した直後、天井が開いたかと思えば上から殺せんせーがすごい勢いで落ちてきた。
「せ、せんせー!?」
「大丈夫?!」
「……ハッ!皆さん、こんな所に……全員怪我はありませんか?」
「『死神』と戦った奴らが打撲して気絶したくらいかな……あとは眠らされた奴らが数名」
「ただ、アミサだけ行方不明なんだよね……《銀》さんが『死神』に黙って匿ってくれてるみたいなんだけど」
「……なるほど《銀》がいると」
「ほら、そこ……」
「……確かに。……契約以外では基本的に協力体制を取らないあの方でも、アミサさんなら保護するのも納得出来ます」
「……?アミサならって……」
「……いえ、なんでもありません。それよりも……」
落ちてきた直後はテンパってた殺せんせーもE組のみんなに気が付くとすぐに安否確認をし始めて、A班だけ体のどこそこに傷を負っているのが分かると、静かにその部分を触手で撫でている。……自分があと一歩で殺されるとこまで来てるっていうのに、どこまでも先生だね。
その後私1人だけがここにいないことを伝えられた殺せんせーは、心配するどころか《銀》が匿っていると話を聞いて何故か安心したように顔をほころばせている。……
言葉を途中で止めた先生は触手を1本檻に触れさせる……途端に溶けだす触手が、この檻は対先生物質で出来ているということを示していた。溶けた触手を再生させた所で、鉄格子の外側の扉がゆっくりと開き……『死神』とイリーナ先生、それに烏間先生が入ってくる。私を見た烏間先生が気取られない程度に、それでもハッキリと驚いた表情に変わったのがわかった。……事後報告とはいえ、『死神』と契約したって伝えてあるはずなんだけどなぁ……今だと思わなかった、何故潜入前に言わなかった、そのあたりかな。
……これで、この場で必要な役者が揃う。
あとは、烏間先生と協力してE組と殺せんせーの安全を確保しつつ、『死神』を無力化する方向へ持っていく……それでここでの任務完了だ。ああ、『死神』への契約破棄もしなくちゃね。
ループした元のお話はこちら
https://syosetu.org/novel/138458/83.html
烏間先生とオリ主が契約を結んだ場面はこちら
https://syosetu.org/novel/138458/41.html
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【第二部】開幕!です!
大きく起きた内容は変わりませんが、小さなことが変わってます。今回でいうと
・オリ主の不在に気付くタイミング
・『死神』と《銀》の会話に割り込まない
また、既に読者のみなさまには、この小説における《銀》=オリ主ということが明かされているので、オリ主視点で同じ場面を描いてみました。繰り返しの内容でも違って見えてたら幸いです。
次話も【第一部】で描写できなかった部分を中心に書いていこうと思うので、別の話として楽しんでいただけると嬉しいです。ぜひ、違い探しもしてみてください!