ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜光を宿すもの〜   作:ロンドロ

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珍しく筆が進んだ。



嘘です。
修理に出していたスマホが戻ってきてヒーローズを開いたんですが、聖戦の初回無料ガチャでレヴィンが出たら1日で書き終わらせたると個人ルール適用で回したところ、レヴィン が来ました。怖ぁ…


今回から過去の回想セリフのみ『』を使っていきます。以前の話のも時間があれば修正していきたいと思っています。

前話には言ってなかったんですが、この2章はユグドラルの人たちを中心とした短編集みたいなものになっています。ユミルが回想くらいにしか出てきません。言ってしまうと読まなくても大丈夫な章です。
今回は人を選ぶような内容(キャラ的に)になっているので不穏を感じたらブラウザバック推奨です。


閉まった感情

『ねぇ見て見て!!ガーベラで花かんむりを作ってみたんだ!』

 

そう言ってあの子は満面の笑みで綺麗に編み込んだ花かんむりを見せてきた。

 

『…ユミルって女の子みたいだわ。』

 

『えぇーっ!? なんでそんなこと言うの!?』

 

同年代の男の子よりは幾分か華奢な体つき、整った可愛らしい顔、肩まで届きそうな金の髪、ぱっちりとした大きな瞳に長い睫毛。

あの子は今思えば、まるで人形のようだった。

 

 

『だって本当のことよ。私の知ってる男の人はみーんな花かんむりなんか作らないもの。お父様はいつも机で大事なお手紙と睨めっこしているんだから。』

 

『ぼ、ぼくだってれっきとした男だよ!いつかヒルダよりも大きくなるんだ!」

 

『あら〜?じゃあこれは?』

 

ヒョイっと地面から拾い上げ、私はあの子にソレを投げつけた。

 

『ちょ、うわぁぁッ!!?』

 

投げたと同時にあの子はひっくり返る。その勢いで頭を打ち付け、悶絶の表情を浮かべた。

 

『ふふ、イモムシ程度で驚いてるようじゃ、まだまだ格好いい男じゃないみたいね。』

 

『いてて…なんでヒルダは平気なの…。』

 

『ユミルが弱虫なだけじゃない。これくらい平気よ。』

 

『だって、ウネウネしてるし…触るとブニブニしてて怖いんだよ…。』

 

『だったら触れるように慣れましょ、私が手伝ってあげるから!』

 

『え、待ってヒルダ、近づけてこな…うわぁぁぉぁああっ!!!』

 

『あーっ!待ちなさいってば!!』

 

 

イモムシを片手にあの子を執拗に追いかけ続けたのも、号泣されお父様に嫌と言うほど怒られたのも、今となってはいい思い出である。そう、今となっては。

 

 

 

 

あの子…ユミルに最後にあったのはもう一年前だ。以前はよくユミルのいるバーハラ城へと遊びに行った。私のお父様とユミルのお母様が兄妹で、私たちは従姉弟だからと私は城に足を踏み入れることを許された。

ユミルの両親が不慮の事故で亡くなられてからは毎日とはいかないものの、籠りがちになってしまったあの子の部屋を訪ねた。最初は会うことも出来ず部屋から泣き叫ぶような声が響いていた。次第に私だけが部屋に入れてようになった。

 

 

それでも

 

 

『ねぇ、ヒルダ。』

 

『…?どうかしたの、ユミル。』

 

『どうして…父上と母上は…死ななくちゃいけなかったんだろうね。』

 

すっかりとやつれ、いつも光り輝いていた瞳は曇り、悲しく呟くあの子の声だけが、今も耳にこびりついて離れない。

 

 

 

 

あれから2年後、私や周りの支えもあってユミルは立ち直ることが出来た。以前のようにお城の花畑で遊ぶことはなくなってしまったが、

 

それでも私は幸せだった。

 

 

 

 

 

 

『ヒルダ、フリージの公子とお前の縁談が決まった。』

 

『縁談…ですか。』

 

何年かしてお父様にそう言われた。

私も気づけば16歳。ヴェルトマー家の遠縁とはいえ、貴族である。この歳になればそういった話が無いわけではない。

それでも会ったことのない相手との縁談には多少抵抗があった。

同年代で会話できるのは、姉弟のように遊んできたユミルだけだったから。

 

 

縁談を断ることも出来ず、その夜、私はユミルに会いに行き、バーハラ城の裏庭でこのことを話した。

 

 

 

『えっ、結婚するの? ヒルダ。』

 

『まだそう決まったわけじゃないわ、あくまでも縁談ってだけ。』

 

『そっか…じゃあこうして喋ることも出来なくなってしまうんだね、寂しく…なっちゃうな。』

 

『……』

 

『ねぇ、ヒルダはいいの?その話断ることは出来ない?』

 

『無理よ、お父様が決めた縁談だもの。娘の私が口答えなんて出来るわけがないわ。』

 

『…親思いのヒルダだからそう言うと思った。でも僕は…ヒルダが幸せならそれでいいよ。』

 

悲しそうな顔をしてあの子はそう言った。

言えば良かった。あの子が王家の遠縁の娘と結婚することになっていようとも、言ってしまえば良かった。

 

貴方が好きだということを。

 

 

結果的に私は臆病で、その一言が口から出てこなかった。

 

 

 

『あっ、そうだ!』

 

『えっ?ちょっと、どうかしたの?』

 

『ちょっと待っててヒルダ、渡したいものがあるから!』

 

思い出したかのようにユミルは花畑の方へかけて行った。しばらく待っていると、暗がりからユミルが白い花束を持って息切れしながら走ってくる。

 

『ごめん遅くなって。はい、ヒルダにあげる。』

 

そうやって花束を手渡された。

 

 

『これ、ポインセチアの花?』

 

『うん、僕からのプレゼント。花かんむりなんて渡したらヒルダにまたからわれちゃうから、包んで花束にしてみたよ。』

 

『あら、私にとってはユミルはいつまでも可愛い女の子だけど?』

 

『えぇっ!? 酷いよヒルダ!』

 

『冗談だってば。………ありがとう。』

 

『どういたしまして。』

 

 

普段礼を言うようなこともなかったので、照れ臭そうに私たちは笑った。

 

 

馬車で屋敷へと戻る途中、私は貰ったポインセチアを見つめていた。ユミルからの受け売りのせいか、私も城の花畑に咲く花には少し詳しい。名前や咲く季節、その花が持つ言葉なども。

ユミルはそれを知っていてこの花を贈ってくれた。勿論私も知っていた。

白いポインセチアが持つ言葉は……。

 

 

『………』

 

私は馬車の中でポインセチアの花弁を引きちぎっていた。

いつもユミルから貰った花は花瓶に飾ったり、押し花にして大事に取っていたが、こればかりはどうしても許せなかった。

 

 

『…馬鹿みたい……貴方がいなければ私は幸せじゃないのに。』

 

素直になれなかったばかりに、誰にも聞こえてしまわないよう私は声を押し殺して泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、私はフリージのブルーム公子と結婚することになり、ユミルとはそれが最後の会話となってしまった。夫がいる身となってから、いくら仲の良いあの子でも異性と会うことは如何なものかということで、今では月に一度手紙を交わす程度の付き合いとなっている。

二人の義妹たちと会話することは少なく、夫とも全てを話す仲でもない。

 

用意された部屋で書庫の本を読むことが私の習慣である。

今読んでいた本を書庫に戻そうと部屋のドアノブに触れようとしたが、ドアの向こうから声が聞こえた。どうやら侍女たちが

 

 

「ちょっと聞いた!? ユミル様っているじゃない。」

 

「えっ? ユミル様ってヒルダ様の従弟の方でしょ?それがどうかしたの?」

 

「なんでも、先日から急にいなくなったらしくって。」

 

「はぁ? いなくなったってどういう………!? ひ、ヒルダ様!?」

 

 

気づけばドアを開け、侍女たちの前に詰め寄っていた。

 

「ねぇ、何を話していたの? ユミルがいなくなったって。詳しく聞かせてくれるかしら。」

 

「それはその……兵士から聞いた話で私も詳しくは知りませんが、バーハラ城からユミル様の姿が消えてしまったようなのです。」

 

「ユミルが? 一体それはどういうことなの?」

 

「将軍がユミル様の捜索を始めたようなのですが……すみません、これ以上は……。」

 

「そう、ありがとう。話してくれて。」

 

 

曖昧な話だったと思う。この城の兵士が知っていることに確証なんてものはないし、侍女ごときが詳しいわけがないのだから。

 

 

 

 

それでも嬉しかった。次期当主の夫人となってからもうあの城で会うこともなくなってしまうのかと思っていたけれど。

 

「ユミル、また貴方に会えるのかもしれないわ。」

 

 

言いたいことがたくさんあるの。

そして今度こそ、私は貴方にこの気持ちを伝えたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




白いポインセチアの花言葉:貴方の祝福を祈る

内容が内容だったので、批判は受け付けます。
でも書いてる時めちゃくちゃ楽しかったです。恋愛小説とかあまり読んだことないんですけどね。

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