ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜光を宿すもの〜 作:ロンドロ
出国のために荷物を用意する。
水は1日分あれば十分だろう。外には川もあるが、雨が降ると泥と掻き混ぜられ茶色く濁ってしまうので飲めたものではない。雨が落ち着いて混ざった泥が沈むか、街に出たらいくらでも水が手に入るので、足りなければ雨水を集めて飲めば足りそうだ。
木で作られた筒に蒸留水を注ぐ。王族のために用意された水だ。
この旅でしばらく飲むことはないだろう。馴染みがあるものは水だろうがなんだろうが名残惜しいものだ。あまり味わいながら飲んだことはないので、ユミルは水をグラスに注ぎ、口につける。
「…美味しい、のかな?」
他と比べたことがないのでなんとも言えない。
次は食料だ。以前、狩によく行く兵たちから保存のきく干し肉の作り方を教わった。食べてみると固すぎて王族のユミルの口に合わなかったが、これが今、役に立つとは思わなかった。三日前から作り始めて今日完成した。肉を丁寧に紙に包み、鞄に詰める。他にも乾燥豆を入れる。意外と腹持ちがいいからだ。
「あとは…聖杖と、魔道書…それにペンダントか…」
ユミルは自室の隅に傾けられているリライブと机の上に置かれた魔道書を手に取る。握った聖杖にはほのかな温かみを感じた。
「母上…」
このリライブは母がユミルの誕生日に送った聖杖だ。『困っている人を見つけたら助けて上げなさい』という意味を込めて。
魔道書には新しくはないものの、特にこれといった損傷はなく、使い込まれた形跡はない。ライトニング、バーハラ王家が得意とする光魔法の一つだ。父が生前扱っていたもので、所々に装飾が施されており少しばかり重い。荷物は極力軽くしていきたいがこればかりは形見であるから手元に置きたい。
「やっぱりこれがあると落ち着くや」
魔道書は鞄に入れ、聖杖は大きいので背中から下げることにする。
そして魔道書の置かれていた横の小箱に目をやる。小箱は質素なもので、いたって普通の木製の箱だ。蓋を開けると小箱とは対照的に金の鎖に繋がれたペンダントが入っている。蒼く輝く宝石の中にバーハラの家紋が彫られていて、知らぬ者でも高価な物だと一瞬でわかるような代物である。
ユミルはペンダントを握りしめて磨き出し、首に通す。首元から見える鎖が光る。
「お祖父様、叔父上、申し訳ございません。」
1人だけの部屋でその声はだれにも拾われることはなかった。
(きっと長い旅になりそうだ。それでも僕は行かなければ…。確かめたいんだ。)
そう、父と母の死の理由を知るために。