ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜光を宿すもの〜   作:ロンドロ

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うおー平日に仕上げられました!!


盗賊の少年

バーハラ城から北上するため、森を抜けて早三日。干し肉や乾燥豆で食いつなぎ、川の水を飲んでここまでやって来れたのだ。

 

(もうしばらくは干し肉なんて食べたくないな…)

 

今はこうしてヴェルトマー領の宿場町の目の前にいる。

 

「うわぁ…すごく賑やかだなぁ…」

 

グランベルは元々物資の流通がさかんである。そのため各地で様々な商店が並んでおり果物の芳醇な香りや羊肉の焼ける匂いなどが町を満たしていく。

 

 

 

 

 

 

 

食料品を買ってから宿を借りようか。その前に町の外れにある道具屋を訪れた。王子が、しかも王の孫が金を持ってるわけもないので所持品を売ることにする。ユミルは鞄からブレスレットを取り出した。道具屋の主人はそのブレスレットを鑑定し、メモに書き出す。

 

「この腕飾り、相当な代物だな。50000Gはするぜ。なんでお前みたいな坊主がこんな物持ってんだか…。」

 

「ちょっと色々あってね。売れますか?」

 

このブレスレットは数年前にシレジア王国から友好の印としてグランベルに贈られた装飾品の一つで、形見のペンダントよりも見劣りはするが小さな宝石が埋め込まれている上等品である。お金にしたら旅費にはなるだろうと思い、城から持ち出して来たのだ。少し罪悪感はあったが。

 

 

「わーったよ。ほれ、キッカリ50000Gだ。」

 

主人は硬貨を詰めた小袋を差し出す。

 

「ありがとうございます。」

 

ユミルは金銭を受け取り店主に礼をすると、売り場の中央へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょいとそこのお兄さん!見かけない顔だね。」

 

食料品を探していていると小太りな女性が話しかけてくる。売っているのはどうやら魚類である。

 

「もしかして旅の人かい?」

 

「ええ、この街に来たのは初めてなもんで。」

 

「それだったらうちの品物買ってかない?うちは安さが売りなんだ。」

 

「そうしようかな…保存の効くようなものあったりしますかね?」

 

「保存食?だったら塩タラがいいよ。カビることがないから数年はもつ。ただ乾燥してて戻すのに木槌が何かで叩いて水につけなきゃいけないのがちょっと手間なんだけどね。」

 

「構いません。10尾頂けますか?」

 

「そいじゃ300Gだよ。」

 

「ちょっと待っててくださいね。えーっと300Gは…っと」

 

小袋から代金分の硬貨を取り出そうとすると腰に何かがぶつかったような衝撃を受ける。横を少年が走って行ったのできっと体でも当たったんだろう。店主が何かに気づき口を動かす。

 

「あ、アンタッ!!鞄が!!」

 

「え?どうかし…あっ!?鞄が無いっ!!!」

 

ユミルは腰に手をやり、肩から下げていた皮鞄がいつの間にか消え失せていたことに気づいた。まさかさっきの少年は…。

 

「物盗りか!!」

 

硬貨を素早くしまい、先ほどの少年を追いかける。一応人並みには足の速さはあるものの前方を走る少年とはかなりの距離感があった。少年の方もユミルを撒くまで体力が持つだろうか。

 

「待ってくれ!お願いだからその鞄だけは返して…」

 

ユミルは少年に向かって走りながら懇願する。鞄の中には形見の魔道書とペンダントが入っており無くなれば父と母に申し訳が立たなくなってしまう。

 

「やーだよっ!盗まれるような奴が悪いんだからな!」

 

少年の方はと言うと、ユミルを小馬鹿にしたような口調で挑発し始める。

二人の距離は全く埋まる気配がなくこのままでは埒があかない。長い王城生活のせいか体力のないユミルはどんどん息が上がり、少年を見失うのも時間の問題である。露店の主人たちも捕まえようとするが少年は素早くかわし続ける。

 

「あーもう…!!!」

 

痺れを切らしたユミルは近くの青果店の商品袋を掴む。中には十数個くらい入ったジャガイモ。この店の主人だろう男が止めにかかる。

 

「おい!ちょっとそれは大切な売り物の…」

 

「後で全部弁償しますから!!」

 

袋の口を少年のいる前方に向かってジャガイモを勢いよく転がす。ジャガイモはあっという間に道に散らばっていき、走っていた少年は足を滑らせて転倒した。頭を強打してないのが幸いだったが、怪我はしてるだろう。咄嗟の判断だったが居た堪れない気持ちになる。

 

「……くぅ〜っ……いったぁぁ……」

 

「だ、大丈夫?ごめんね、こんなことして…」

 

少年は膝に打ち身の跡と擦り傷を作り、悶絶する。いくら物盗りでもやり過ぎてしまった。

 

「ちょっと膝見せて。治してあげるから。」

 

背中に下げていた聖杖を掲げ魔力を込める。

 

「リライブ」

 

ユミルがそう唱えると聖杖は柔く光り、傷跡は段々と消えていく。

 

「あれっ?傷がない!」

 

少年は聖杖を初めて見たようでとても驚いている。怪我が治ったところでユミルは喋り出す。

 

「あのね、君がどうして僕の鞄を盗んだかは知らないけど、この中に入っているのは僕の大事な物なんだ。いくら困っていても残念だけどこの鞄は譲れない。」

 

少年は少しふてくされて口を尖らせた。

 

「失敗しちゃったなぁ〜、捕まったことだし煮るなり焼くなり好きにしなよ。」

 

「…どうして?なんで僕が君に何かするの?」

 

「だってあんたの所有物盗もうとしたんだよ?おいら。それなら何かしらの制裁は与えるんじゃない?」

 

「しないよ…さっき子どもなのに怪我させちゃったからこっちが悪いことしたし。」

「えっ?普通は殴ったり蹴ったりするのに…変なの。」

 

「…君もしかして物盗りの常習犯?」

 

少年はユミルの問いかけに答える。

 

「そうだよ。親もいないし、こうやって盗まなきゃ飢え死にしちゃうから。」

 

「子どもなのに?」

 

「子どもじゃないよ!もう11だからね。」

 

「まだまだ子どもじゃないか…11歳の子が盗みなんて…」

 

父母を失ったけれども叔父や祖父、家臣達が周りにいた自分には会って間もないこの子のことを同情する資格なんてない。可哀想だと思うだけでは単なる哀れみである。

少年を放っておけばまた盗みを繰り返すだろう。生きていくためとは言え罪を重ねれば後悔しようがしまいが消えない過去として残っていく。この子を救う方法は___。

 

 

 

「君……僕の旅に着いて来てくれるかな?」

 

「…へ?」

 

少年は拍子抜けしたかのように間抜けな声を出した。ユミルは少年の体に指差す。

 

「その腰に巻いてる短剣、少しは剣術でも習ったことがあるだろう?」

 

「え、まぁそうだけどさ。」

 

盗みをしていたからなのか多少は扱えるらしい。自分とは大違いだ。

 

「実は僕、いろいろあって長旅をしててね、戦う力もないし護衛を頼みたくってさ。もちろん報酬は出すつもりだよ。」

 

「おいらにその役目を?」

 

「そう、構わない?」

 

「普通は傭兵に頼むんだよそういうこと。」

 

「ん〜…じゃあ気まぐれ、かな?」

 

「…やっぱアンタ変だよ。」

少年は苦笑する。我ながら少々ベタだったか。

 

「いいよ、お金もらえるんなら。おいらもこれ以上盗賊紛いの事してたらいつ殺されるかわかったもんじゃないし。」

 

「お、了承してくれるってことかい?」

 

「うん、任せてよ。あっ、そういえば紹介がまだだったね。おいらデューって言うんだ、よろしく!」

 

デューと言うその少年は子ども特有の笑顔を見せる。

 

「そうだ、おにーさんの名前はなんて言うの?教えてよ。」

 

「えっ、僕?そうだね…」

 

 

 

(ここで実名教えるのはちょっとマズイよな…偽名でも名乗ろうか)

 

 

 

___________________________________________

 

 

 

 

遠い昔の記憶。母が妊娠したばかりの時に交わした会話を思い出す。生まれてくる子の名前を考えていたんだっけか。最終的に両親達が話し合って決め、父がその後教えてくれた。

 

「女の子だったらヨルズ、男の子だったら…___。」

 

 

_________________________________________

 

 

「…ロキ。」

 

「?」

 

「僕の名前はロキ。これからよろしくね、デュー。」

 

 

 

 

ユミルはデューに手を差し出すのであった。

 




この後めちゃくちゃジャガイモ弁償した。



デューとか出自の明らかになってないキャラって良いですよね。妄想捗るし。
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