ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜光を宿すもの〜 作:ロンドロ
ストーリーを練っているのですが、考えれば考えるほどオリキャラが多くなってしまって「これ聖戦の系譜でやらなくてもいいのでは?」と言う葛藤が起きてます。でも独身キャラがいればそれはそれで悲しい…。できればあと三人に留めたい…。原作をいい感じにアレンジできたらいいな。
今回はロトアート中心。結構短いです。
バーバラ城はいつにも増して慌ただしさが漂っている。国王の孫ユミルが行方不明になってから3日目のこと。クルトは各国に捜索隊を派遣したのだが、一向に見つからない。ユミルがわざわざ馬の進入が困難な森林から移動していることは誰も見当が付かなかったのだ。
「ああ、ユミル…」
グランベル国王アズムールはユミルの身を憂える。我が子が殺され、その次は孫が姿を消すなど聞くに耐えなかったのである。
「父上、あの子ならきっと大丈夫です。」
その側には長子のクルトが控えていた。
「クルト…ユミルはどうしていなくなってしまったのだろうか…」
「何か理由があるのかもしれません。考えなしに動くような子ではないですから。」
「…ワシはユミルがミーミルのように死んでしまうのではないかと…そう思ってしまうのだ。こんなこと、想像もしたくないのだがな…」
「ミーミルが亡くなってからユミルは閉じこもるようになりましたね。元々陽気な子だったのに、あの日から子どもとは思えないほど大人しくなってしまった。」
親子共々ユミルに亡くなったミーミルとヘスティアの面影を重ね合わせる。
親のように子が死んでしまったらなんと言う皮肉なのだろうか。
今はただ祈るばかりである。
「…ユミルにナーガの加護があらんことを…」
無事であることを願い、王室を退出したところでクルトはロトアートを見つけ呼び止める。拳を握りしめ苦々しい表情が窺えた。
「ロトアート、君のせいじゃないんだ。」
「クルト様…私は…」
「安心してくれ。ユミルはきっと戻ってくるさ。」
「しかし…」
「君はユミルの直属の臣下ではない、処罰もない筈だ。…そこまで思い悩むのは、ジークフリート将軍のことかい?」
ロトアートは自分の不徳とでも主張するような険しい顔を浮かべる。将軍候補とはいえ何故に一介の騎士が直属の主君でもないユミルを気にかけるのには理由があった。
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六年前。ロトアートが見習い騎士の頃である。国交を結ぶために各地を回っていたミーミル王子とヘスティア妃がイザーク王国で殺された際、二十人ほどの護衛が就いていた。
護衛隊長はグランベル王国の将軍ジークフリート。
ロトアートの父親である。
賊に襲われた王子夫妻の亡骸の傍には護衛兵たち、そして返り討ちにあった賊たちの死体。周辺の市民によって見つけられたその死体は、ある者は首と胴体が切り離され、またある者は背中に深々と斧が突き刺さっていた。夫妻と護衛兵は無惨にも蛮族の手によって最期を遂げたのだ。
たった一人、ジークフリート将軍を除いて。
死者を埋葬するためグランベル直属の騎士ヴァイスリッターを率いたところ、ミーミル王子とヘスティア妃、その他の護衛兵の骸は発見されたのだが、ジークフリート将軍の姿はどこにも存在せず。この六年間、行方がわかっていない。
__________護衛隊長が主君を守れず、あまつさえ部下までも見殺しにし、逃げた__________
誰もが口を揃えて言う言葉。
彼を『グランベルの恥晒し』とまで罵る者もいる。フィラート卿とロトアートも反逆者の身内として国民から酷く非難されたのだ。
一部の貴族に虐げられ、他の騎士からも冷遇されたロトアートだが、それまで以上に鍛錬を積み重ね、見習い騎士から将軍候補にまで名を上げる。
しかし一方でジークフリート将軍の汚名は晴れることはなかった。
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「私はジークフリート将軍の身は潔白だと信じている。それは君もだろう。」
「勿論でございます、クルト様。だからこそ私は父…将軍がお護りできなかったミーミル様とヘスティア様のご子息であるユミル様をこの身を賭してお護りすることが私自身の使命だと、そう思っています。」
「ロトアート…」
「クルト様、ユミル様は
私めにお任せください。このロトアート、誠心誠意努める所存でございます。」
それが騎士として、いや、この血を継いだ者としての贖罪ならば。
キャラ紹介
【ロトアート】
【挿絵表示】
バーハラ王家に仕える騎士。齢19でありながら将軍候補にまで選ばれるほどの実力を持つ。フィラート卿の孫であり、ジークフリート将軍の息子。自分にも他人にも厳しい性格で、整った顔立ちをしているが色恋沙汰に全くと言っていいほど縁がない。
父親の事もありフィラート卿共々、貴族から最も疎まれている存在。将軍候補まで登り上がったのもクルトの進言のおかげである。剣術と槍術を心得ているが、弓の腕だけは壊滅的。
兵種で言ったら多分パラディン辺りですかね。