ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜光を宿すもの〜   作:ロンドロ

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ちょっと今回文章を見直してないので誤字や表現がやらかしてるかもしれません。その時は指摘お願いします。


公女と器

宿場町での五日間の滞在で旅費はかなり貯めた方だと思う。闘技場は日ごとに相手が変わるため、五人抜きした時もあれば二人抜きで終わることもある。戦えない僕の代わりにデューが稼いでくれいてる。対戦が終了すれば僕が傷を治すのだけれど、軽いとはいえ怪我をさせてしまっているようなものだ。デューはいつも大丈夫と返すが本当に申し訳ない気持ちでいっぱいである。

 

 

「…ごめんね。」

 

「平気だよ、大したことないんだしさ。それにしても…今日は五人目の相手が手強そうだったんだよなぁ…四人抜きで切り上げてきたけど。」

 

「何でもいいけど無理だけはしないでよ。」

 

「はーい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

闘技場は各地にあるらしい。移動費分稼いで次の街に行くのも悪くない。今日は荷物をある程度揃えて馬車を借りよう。お金も有り余るほどあるので、目的地とまではいかないがイード砂漠近くまでは向かえるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬車がない?」

 

「ああ、今日はもう全て借りられててね。悪いが明日にしてくれないか?」

 

御者のところを訪れてみれば馬一匹いないと言う。元々宿場町ということもあって、旅人達がよく馬車を使うそうだ。馬の頭数も少なく、今日のように全て借り出されていることもある。今日こそはと思ったが無理だろう。

 

「遅かったみたいだねロキ。」

 

「困ったな…今夜はどの宿に泊まろうか。」

 

昨日の安い宿にしようかと悩んでいたところ…

 

 

 

 

「ねぇ、この揚げ菓子ちょうだい!」

 

露店の商品を指差す女の子が見えた。紫の混じったような銀髪を後ろで束ねている少女。年は僕と同じくらいだろうか。店の主人は女の子に問いかける。

 

「お嬢ちゃん、それは一袋70Gだよ。」

 

「…?70Gって?」

 

 

どうやら代金のことがよくわかっていないらしい。よく見れば貴族娘のような綺麗な服を着ているし。どこかの令嬢だろうか。

 

 

「えーっと、お金って知らないのかい?」

 

「おかね?あたし、そんなのよくわかんない。」

 

女の子はキョトンとして、主人は困り出した。これは相当な箱入り娘か。

 

見るに見かねたため、横に入り

「僕が代わりに払います。」

と代金の70Gを手渡した。

主人は「悪いね。」と一言言って揚げ菓子を包んだ袋を女の子に差し出す。貴族かもしれないあの女の子が何故こんなところにいるのかは知らないが、喜んでいるみたいなのでその場を立ち去ろうとする。

 

「あっ、ちょっと待って!」

 

「ん?」

 

不意に振り返る。女の子に呼び止められたら、

 

「さっきはありがとう!おかねって言うの?さっきの。あたしあまり物知りじゃないから助かっちゃった。」

 

「いえ、お気になさらず。」

 

「あなたたち、名前は?」

 

「僕ですか?」

 

「おいらも?何もしてないんだけど。」

 

「いーのいーの!あたしティルテュ!」

 

 

 

ティルテュ?どこかで聞いたような名前だ。それにこの髪色も何処かで見たことがある。まさかあの男の…

 

 

「この人がロキ。で、おいらはデューっていうの。」

 

「ロキにデューね。そういえば二人とも何してたの?」

 

 

 

どうやら御者との会話が聞こえていたみたいて気になっていたそうだ。

 

 

「う〜ん…話せば長くなるのだけれど…」

 

自分たちが旅をしていること、馬車に乗ろうとしたが借りられないということ、内容をすべて話した。

まぁ言ったところで解決しない問題ではあったが。

 

 

「馬車がなくて旅ができないの?」

 

「えーっと…歩けば何とかなるだろうけど、お金があるんだったら馬車をかりたいなって。目的地は遠いし。」

 

デューの言葉にティルテュは

「それだったらあたしの乗る馬車においでよ!ヴェルトマー城までなら行けるから!」

と申し立てるように言った。

 

 

「…ええぇっ!!??」

 

「いいの!?」

 

驚く僕とは反対にデューは目を開いて喜ぶ。

 

「良かったねロキ!乗せてってもらえるんだってさ。」

 

「ちょ、ちょっとデュー、ダメなんじゃないかな…」

 

「ロキは律儀すぎるんだよぉ〜。ねぇティルテュさん、おいら達が乗っても大丈夫かな?」

 

「うん!だってさっき助けてもらったもの。エンリョしないで!」

 

どうやらこの子…ティルテュには警戒心がないらしい。いくら生粋の箱入り娘とは言え、素性の全く知らない男を自らの所有する馬車に同乗させようとするものだから。馬を引いた使いの人間も最初は拒んだものの、ティルテュの頑固な意思により最終的には折れ、許可してもらった。

 

「いいかお前ら、ティルテュ様に手を出したら命はないと思えよ。」

まぁ勿論乗る前に強く釘を刺されたが。そんな命知らずなことする訳ないじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬車の中はやはり貴族の物だと分かるほど広く、それでいて質素ながらも綺麗である。ガラガラと車輪が土を踏む音が響く。ヴェルトマー城までの道のりを進むらしいが僕たちはその手前で降りる。

 

バーハラの人間以外で僕の顔を知っているのは少なくとも6公国の当主たち。その六人はよく城で顔を合わせることもあったし、僕の姿を見られてしまえば正体がバレるかもしれない。わざわざリスクを負ってまで楽したいとも思わないし。デューは少し不思議がっていたが。

 

 

「ティルテュさん…いえ、公女とお呼びした方がよろしいでしょうか。」

指を組みながらティルテュの目を見つめる。

 

「ん?公女?」

デューが首を傾けながら口に入れた携帯食を咀嚼する。

 

「貴方様はフリージ公国当主レプトール卿のご息女ですか?」

単刀直入に問う。ティルテュは少し驚いた顔をしてから口を開いた。

 

「あれ?言ってないのに分かるんだ!すごいねロキって。」

 

「公爵家の娘の名前は自国の人間なら知ってるはずですよ。」

 

「あっ!どうりでそんなにキレイな服着てたのか!」と納得したように頷くデュー。やっぱり気になってたか。でも馬車を持っている時点で気づかなかったんだね。

 

ここで素朴な疑問を投げかけてみる。

「そう言えば、どうしてヴェルトマー城に向かっているんですか?」

 

「幼なじみに会いに行くのよ、アゼルって知ってる?ヴェルトマー家の…」

 

「…アルヴィス卿のご令弟、ですよね。」

 

「そう!」

 

 

名前は聞いたことがあるけど、会ったことはないんだよな。

 

 

 

 

 

 

それでもアルヴィス卿のことなら知っている。

 

アルヴィス卿はヴェルトマー公国の若き当主だ。幼い頃、父親である当時のヴェルトマー公爵が自ら命を絶ったことで十にも満たずして家督を継いだ男。ファラの血を強く受け継ぎ、ヴェルトマー家の直系のみが使うことのできる神器『ファラフレイム』の継承者である。

 

傍系とはいえ、同じファラの血を継ぐ僕とは遠縁の親族。

 

何度か彼が魔法を使っているところを見たことがあるのだが、自分とは雲泥の差だ。劣等感は幾度となく沸いたこともあったっけか。自分がヘイムとファラの血を継いでいようが、追いつくことのできない実力の差を痛感した。

 

一言で言えば天才。国王であるお爺様を守る近衛軍指揮官を任されていて、その魔道の才は国で叔父上に次いでのほどである。

 

 

 

 

 

「どうして会いに行くのですか?そのアゼル公子に。」

 

「アゼルがね、久しぶりにバーハラの士官学校から帰ってくるの。休みになったから外出許可もらったんだって。」

 

 

「へぇ…」

 

「??」

 

デューの方はというと何が何だかちんぷんかんぷんみたいな顔をしている。貴族のことはただの難しい話とかではないから。挙句、雑談もしている間に僕の方にもたれ掛かって眠ってしまった。

 

 

「ねぇ、それよりもさ。」

 

「…?どうかしたんですか。」

ティルテュがこっちを指差す。

 

「その背中にあるのって”せいじゅん”?って言うんでしょ。ロキも魔法が使えたりするの?」

 

 

僕を魔道士だと思っているみたいだ。

 

 

「いいえ、一切使えませんよ。」

 

本来、魔道書を媒体に発せられる魔法と、聖杖を媒体に人を癒す治癒魔法は体内に存在する魔力を消費するというところは同じだが、発動の仕方や技は全くの別物である。僕のように治癒魔法は使えるがライトニングやファイアーなどの魔法は使えない人間もいれば、その逆に治癒魔法が使えない人間もいる。

 

 

「そーなの?使えないんだ。」

 

「ええ、何度も練習したんですが一向に…」

 

「えーっ、でも変なの。あたしは魔道士だからわかるんだけどさ。」

 

「へ、変?いったい何が…?」

 

「魔道士とか、プリーストとか、体のなかに魔力がある人はね。近くにいる人のそれぞれが持つ魔力の大きさを感じとることができるのよ。」

 

「それはまぁ、知っていますけど…」

 

俗にいう魔力感知。

現に僕もティルテュから魔力を感じ取っている。さすがはレプトール卿の娘、かなりの魔力の大きさだ。

 

きっと僕なんか比べるに値しないんだろうな…

 

 

 

 

「ロキからはね、お父様と同じくらい…いや、それ以上かもしれない。とんでもないくらいの量の魔力を感じるの。」

 

 

「………えっ?」














盛りすぎたかもしれない…

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