それは、未来からの悲鳴だった。
しかし、これ以上書くと絶対にくだるので、ここまでです。
もしかしたら続きを書くかも?
私は頑張った、
七十億人、この世全ての命を背負い、救った。
私1人ではないけど、沢山の人達……、英雄たちの助けがあったから走り、突き進み、成し遂げることが出来た。私は、ただ、彼らの足手まといにならないよう、必死にしがみついていただけだった。
けれど、頑張ったじゃないか!
本当は怖かった!
戦いたく無かった!
けど、私しかいなかった!
人類最後のマスター、人類最後の希望、人類を唯一助けられる存在
そんな、そんな私には重すぎるモノを背負い頑張って来たんだ!
そんな私を守って、支えてくれてたんだ!
私を慕い、信じてくれていた!
なのに、なのに!
これが、その報酬か?
いや、そもそも、彼女は……
報酬なんて望んで無かった
賞賛なんて望んで無かった
喝采なんて望んで無かった
もっと多くの空を見たい、
そんな、些細で小さな願いしか望んでいなかった!
なのに、なのに、なのに!
なんで?
なんで?
なんで?
わからない
わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない
なぜ、こんな事になったのかわからない。
私は認めない
認められない
けど、
だけど、
これは事実だ
ならば、ここで止まるわけにはいかない。
まだ助かる彼女を助けなきゃ
◆
「……い、」
なんだ?
「……ぱい…」
誰かが呼んでる。
誰だ?
「……起きてください!先輩!」
目を開けると、そこには心配そうな顔で私を見るマシュが居た。
どうして、そんな顔で見ているのだろうか?
「泣いているのですか?」
え?
自分の頬を手で拭ってみると確かに濡れていた。
どうしてだろうか?
「うなされていたようでしたが……。差し支えなければ、どのような夢だったか教えてくれませんか?」
ああ、そうだ。
夢を見たんだ。
淋しくて、狂わしいほど何かを憎み、そして、大切に想っている夢。
けれど、どうしてか、夢の雰囲気は思い出せても肝心の内容が思い出せない
「思い出せないのですか? 」
けれど、夢なんて覚めればすぐに忘れてしまう。
そういうものだろう?
「……そうですね。てすが、何かあった時は私に言ってください。全力で先輩の役に立ちます。」
そう言うマシュは力強いものだった。
いつも、私を支えて守ってくれる。
全ての特異点を乗り越えられたのは、間違えなくマシュのおかげだ。
ありがとう、マシュ。
「いえ、…私は先輩のサーヴァントとして、当然の事をしているだけです。……って、それどころではありません! 早く管制室に来てください! 緊急事態なんです!」
へ?
◆
いつも通り、と、言えばいつも通りなのだが、ゲーティアとの最終決戦以来はじめての事件だ。
それはつまり…、Dr.ロマン、彼無しで直面する問題に当たらなければならないという事だ。
いつもいる彼がいないのは心細いけど、やるしない。
「お、来たね。 立香。今回はロマニに代わり私が指揮を取る事になった。 と、前振りはこれくらいにしておこう。今回ばかりはシャレにならないからね。この、ダヴィンチちゃんもビックリな事案なんだ。」
管制室に行くと、既にダヴィンチちゃんが来ていた。
しかし、何処と無く慌てているような印象を受ける。
Dr.ロマンが居ないからだろうか?
違う、これは……。
「時間が無いから率直に言うよ。新たな特異点が発見された。」
新たな特異点?
しかし、ゲーティアを倒したのだから、そんなものが発生する訳がない……はずでは?
「そうだね、君の言う通りだ。けれど、特異点を作る
特異点の場所?
ダヴィンチちゃんがそこまで言うとということは、危険な場所なのだろう。
けど、それはいつもの事だ。
危険な旅など慣れているし、皆んなが一緒ならどうにかなる。
「流石は立香、頼もしい限りだ。けれど、悪いけど今回は何処にも行かないよ。レイシフトもしない。何せ、今回の特異点は西暦2017年のカルデア。ここなんだ」
え?
その時、女性職員の悲鳴のような声が私の驚きの声をかき消した。
「何者かが、カルデアに
その声と共に、カルデアの一種のシンボルとも言うべきカルデアスの目の前に1人の女性が現れた。
その女性は20歳ほどの年齢で、ボロボロではあるが、カルデアの制服を着ている。
破けた制服の下には他の滲んだ包帯が見え隠れしている。
腰まで伸びた赤毛はボサボサで、見るからに傷んでいる。
しかし、
「……うそ、なんで……」
マシュは驚きで、言葉を失っているようだ。
当然だ、私も驚いている。
だって、目の前の女性は……。包帯やガーゼで半分ほど彼女の顔を見ることは出来ないし、私と違い成熟した大人の身体をしているが、間違うはずがない。
彼女は…
「…………、先輩?」
私だ。
「クククク、ハハ。」
しかし、その笑顔は笑ってなどいない。泣いていた。
涙をながし、絶望し、怒っていた。
私にもあんな表情が出来るかと疑いたくなるほどの負の表情……。
「……
ダヴィンチちゃんはそう言うが、
レイシフトして来た、未来の
つまり、いつか私はああなる。
いったい、未来で何があった?
それが分からない。
「クク、それを聴くか? ダヴィンチちゃん。あなたほどの天才なら、もう、予想できてるだろ? いや、私が来る前からこうなる可能性として考えているはずだ。」
どう言うことだ?
ダヴィンチちゃんが何か知っているのか?
「……なにが、どう言うことなんですか? あなたが未来の先輩だとしたら、なぜ、私がそこに居ないのですか?」
ああ、そうだ、どうしてマシュがいない。
こんな
現に、今でも戦えない、英霊の力を使えない状態でも私を守ろうと前に出てくれた。驚きと恐怖で何もできない私を引っ張ってくれている。
マシュがいる限り私が折れることはない。私が折れない限りマシュは私を支えてくれる。なのに、未来のマシュはどこに…。
「マシュ……。久しぶり、マシュ。会いたかった。ずっと……。でも、君は私の知るマシュじゃないんた。そして、私も君の知る立香じゃない。 だから、私は君が私の知るマシュに、君のマスターが
どう言うことだ?
まさか、未来でマシュは……
「そうだ、正解だ。
封印指定……
平たく言えば、魔術協会がすごい魔術師や後継が無い一代限りの才能や体質を保存しておくこと。
つまり、標本にされること、と、孔明は言っていた。
けど、まさか、マシュが?
そんな……。
「あの日、ゲーティア討伐後、魔術協会から使節団が来た日だ。
多分、
カルデアの全システムがダウンしたんだ。すぐに復帰したのだけど。ダヴィンチちゃんや他のカルデアの職員達も、使節団への対応もあって大忙しだ。
いつも色々と助けてくれてたサーヴァント達も、討伐後、ほとんど退去してしまったからカルデアはいつも以上に尚更人手が足りなくてね……。
私とマシュの周りには誰も居なかった。
それがいけなかったんな。
私と、マシュは魔術協会に連れ去られ、封印指定を受けた。
その後のことは……聴く?」
そう言う
何をされたのかは分からない。けれど、想像を絶する苦痛を味わったのだろう。
そして、マシュは……。
「私も思い出したくないし、この話は此処までだ。けど、安心してほしい。私はそうさせない為に来た。」
え……
そうか、
でも、それって…。
「……立香、君とマシュの頑張りで世界は救われた。だから自分達のために、マシュを助ける程度の過去改変は許されるのかもしれないし。私も個人的にだが、2人にはそれぐらいのわがままを言うべきだと思っている。」
ダヴィンチちゃんはそう語った。
しかし、内容とは裏腹にカレは敵意とまではいかないが、警戒している様子だ。
対して
……はずだ。
なのに、私は背筋が凍るかと思ってしまった。
怖い、あの
「そう、思っててくれてたんだ。ダヴィンチちゃん…。
けどね、私はそんな我が儘なんて言うつもりは無かったんだ。
私は…私たちは当たり前を望んだだけ。いつもの日常を……。
それを望んでただけ。
報酬なんていらない。賞賛なんていらない。喝采なんていらない。
私たちはただ、一緒に、ささやかな幸せが欲しかっただけ。
だって、マシュの願いはもっと沢山の空が見たいだったんだ。
なのに!」
突如、
「なのに、なのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのに!」
叫び、涙を流し、同じ事を繰り返す。
ああ、この
私もこうなり得る。いや、本来ならこうなって居たんだ。
だから、怖いし、認められない。
私は
それと同時に、私は……。
「先輩! 落ち着いてください!」
マシュは、壊れた
それを、私は咄嗟に、マシュの腕を掴んで止めてしまった。
「先輩?」
理由は分からない。
ただ、マシュにはここに居て欲しかった。
どこにも行って欲しくない。
もしかしたら、私以外の誰かを先輩と呼ぶ事に嫉妬しただけかもしれない。けれど、その行動が功を奏した。
「人類は世界を救った私たちを否定したんだ。 それって、滅びたいって事だよね? ははっ、だったら望み通り滅ぼしてあげる。
マシュが苦しむ前に、世界を人類の望み通り、滅ぼしてあげるよ!
さぁ! 全聖杯よ! 私に力を!」
そう叫び、令呪か刻まれた右手を掲げた。
その瞬間、
彼らはかつてカルデアに居て、ともに戦った英霊達だ。
その全てを
しかし、その英霊達の目に光は無く。感情を感じさせない。
多分、心を聖杯で潰しているんだ。そうじゃなかったら彼らがあんな状態の
「立香!戦闘準備だ! マシュ、君は下がっているんだ。 今の状態では戦えない。」
そうだ、戦わないと。
アレは私だ。
だから、止めないと。
世界を滅ぼすなんて馬鹿みたいな事、私が認める訳にはいかない。
「みんな、力を貸して!」
私は大丈夫、みんなが支えてくれるから