隣の席の文学少女   作:ユウツ

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ひよりのキャラ崩壊。私の妄想全開。


俺はブラコンじゃない!

 特別試験も終了し、夏休みもあと数日というところ。俺はハルヒのように夏休みを繰り返したいと思うも、それはたんに2学期の授業を嫌ってのことなだけがする。ただ、新鮮な未来にわくわくする自分もいて何とも言えない気分だ。

 俺の夏休みの過ごし方はシンプルだ。基本部屋で何かをするに限る。これはひよりにも言えたことで今回の特別試験の期間を除いた日は9割方俺の部屋で過ごした。最初は俺も疑問を持ったものだが直に慣れ、ひよりが俺の部屋にいるのが定着していた。そしてすることは基本アニメを見るか本談義、またはお互いに黙って本を読むかたまに部屋のゲームで遊んだり、まあインドアの極みである。

 そんな日々を送るのが常だが今日はひよりが新しいゲームを持ってきた。

 

 『マリカ』だ。それもなつかしきWiiの8がついてない奴だ。

 

 今日は部屋に来た時からいつもと違う雰囲気だったがこれのことだったのだ。自分で買ったのだろうか、ひよりはそこまで節約に固執してるわけじゃないが不必要な出費は抑える人間のはずだが……。また何かに触発でもされたのだろうか。しかし、ひよりがゲームショップに1人で『マリカ』を買いに行っている光景が想像できない。

 

 「今日はこれで遊びましょう」

 「いいけど、何でマリカ?」

 「そうですね、私はいつも修永君のお部屋でお世話になっているのでそのお返し、でしょうか? ただ修永君の趣味的にはゲームが良いかと思ってそれでネットで調べたところこれなら私でも遊べそうだな、と」

 

 ん、ん? まあ、何となくはわかるが、確かにひよりは俺の部屋で俺の飯を食べるし世話してるといえばそうなんだろうか。ただしっかり食費は貰っているし、最近はひよりも料理を覚えようと一緒に作ってるからお返しの必要はないけど、まあせっかくの厚意だし、いいか。

 

 「じゃあ、やるか」

 「はい」

 

 俺はWiiを準備して『マリカ』のカセットを入れ、起動する。取扱説明書を読んで操作方法を理解した俺とひよりは軽く練習で操作の確認をした。

 そしてキャラクターを選択してグランプリで比較的簡単そうなキノコカップを選択した。ちなみに俺はヨッシーをひよりはマリオを選んだ。

 

 「修永君、負けませんよ」

 「え、あ、ああ」

 

 レースが始まる前にそう宣言される。ひよりは案外勝負にはこだわるタイプなのだろうか。

 すると1つ目のレースが始まる。彼女は勉強だけでなくゲームの才能もまあまああったようで余裕でCPUを抜いていき、1周目はマリオが1位、2周目はヨッシーが1位と接戦を繰り広げる。そして最後の3周目、俺のヨッシーが1位でゴール前まで来るもひよりのマリオが赤甲羅をヨッシーに当てて抜き去り、マリオが1位となった。

 

 「やりました!」

 「負けたー」

 

 ひよりはとても嬉しそうな顔をしてこちらを見る。とても楽しそうだ。

 その後も同じような展開で毎回ひよりが1位、俺が2位という結果になる。だが勝っているひよりはレースが進むごとに不機嫌になっていき、4レース目が終わるとリモコンを床に置いた。何やら怪訝なムードを感じ取った俺はひよりに視線を向けるとひよりは俺を睨んでいた。それは初めて見る顔で一発で怒っているのがわかった。

 

 「ひ、ひより?」

 「不愉快です」

 「え?」

 「この4レース、全てで最後の最後に私が修永君を抜いて勝つ展開でした」

 「……すごいんじゃないのか?」

 「それを本気で言ってるならより一層不愉快です。あなたはわざとこういう展開で私を勝たせていたのでしょう?」

 「いや、それは買い被りじゃないか? 第一、今日初めてプレイするんだ、そんなうまいことできないだろ」

 「4レース目で私がわざとバナナに引っかかるたびにスピードを落としたのもですか?」

 「……」

 

 俺が言い淀むとひよりははぁ、と溜め息を吐く。

 

 「無人島でも言いましたが、あなたに信頼されるまでは私は何も聞くつもりはありません。ですが、ゲームでまでそんな自分を殺すような生き方をするんですか?」

 「……」

 「私に気をつかって気持ちよく勝たせれば私が満足すると、そう考えたんですか?」

 「それは……」

 「でしたらそれは私への侮辱です。私は今とても満足とは程遠い気持ちです」

 

 俺はそれを聞いて茫然とし、後悔の念が俺を襲った。

 

 「ごめん……」

 

 俺がその言葉を絞り出すと彼女は一転してにこりと微笑んだ。

 

 「もう一回やりませんか?」

 「良いのか?」

 「はい。でも、今度は真剣にやって下さいね?」

 「……ああ、悪かった」

 

 俺とひよりはもう一度レースを始めた。結果は4レース全て俺の1位で終わった。今度はひよりはとても楽しそうだった。だが、同時にとても悔しそうだった。

 

 「楽しかったです。ですがとても悔しいです、もう一度やりましょう」

 「いいよ」

 「次は負けません」

 「おう、俺も負けない」

 

 ひよりは結構負けず嫌いなようだ。

 そして俺たちの表情は最初とうって変って笑顔で『マリカ』を楽しんだ。

 

 「さっき、ひよりは俺が自分を殺してる生き方をしてるっていったよな」

 「……あくまで例えです。私の主観にすぎません」

 

 『マリカ』をしながら唐突にそう言うとひよりもこちらを見ずにそう返してくる。

 

 「俺には1人、兄がいるんだが、兄はとても優秀で何でもできた。学校では1番の人気者で俺とは違って友達もたくさんいた」

 「修永君は昔から友達がいなかったんですか」

 「……んんっ。兄は俺をいつも連れまわした、どこに行く時もだ。多分家で1人でいる俺を見かねたんだろうな」

 「……」

 「サッカーにバスケ、野球といろんなスポーツをやって鬼ごっことかの遊びもした」

 「楽しそうですね」

 「ああ、楽しかった、ほんと。俺が凡人であったならな」

 「どういうことですか?」

 「簡単に言えば俺は才能の塊だった。自慢じゃないぞ、それに兄だって才能の塊みたいな人だ。前はこの学校で生徒会長をしていたらしいしな。だけど、兄は1度も1位になれなかった。かけっこでも何でも競い合うものなら何でもだ。全部において俺に負けた、4つも下の弟にだ。それに気づいたのが小5の時だな。それから俺は兄を避けるようになった。その後兄はこの学校に入学して俺はひよりが言うようなこんな生き方をするようになった」

 

 俺は昔を思い出すように話した。すると隣のひよりが俺の正面に来て両頬をむぎゅっとする。俺はリモコンを持っていて反応できなかった。

 

 「馬鹿ですね、すごい馬鹿です、真性の馬鹿です」

 

 なんかすごい罵倒されたんだが、ていうか顔が近い……鼻がすれすれな距離だ。

 

 「馬鹿ってひどくないか?」

 「ひどくありませんよ、修永君はお兄さんに自分が勝つのは申し訳ないとか考えていたんじゃないんですか?」

 「それは……そうかもしれない」

 「それが大間違いです。修永君は本当は怖かったんですよ」

 「怖かった?」

 「はい。自分が大好きなお兄さんに嫌われるのが怖かった。人気者のお兄さんよりも4つも下の弟の方が優れていて、それでお兄さんよりも自分がほめたたえられて恨まれることが嫌だったんですよ」

 「いや、大好きなって……それに俺は別にそんなこと……」

 「違いません。私は修永君のお兄さんに会ったことはないのでわかりませんがお兄さんは修永君を恨むことはないと思います。逆に私なら弟に気を使われる方がよっぽど嫌です。お兄さんも同じように考えてるでしょう」

 

 ひよりはいつもとは違った真面目な表情で俺の目をまっすぐと見て言った。

 

 「聞きますけど、お兄さんが一度でも修永君に恨みつらみを言っていましたか?」

 「……ない、な。悔しそうにはしてたけど、さっきのひよりと同じ感じだった」

 「そうでしょうね。でも話を聞いた感じだと修永君、一度もお兄さんにさっき私にしたようなやり方で勝負事をしたことがないでしょう?」

 

 言われてみれば、確かに。俺が兄と関わらなくなる前までは普通に本気で兄と競っていた。

 

 「恐らくですが、お兄さんも私と同じように、いえ、私よりも早く修永君がそんなくだらないことをしているのに気付き、それを咎めたでしょう。しかし、お兄さんはこの学校に来て関わりがなくなり、修永君は中学校でそんなやり方をしてる内にそれが定着してしまった。違いますか?」

 「そう、かな?」

 「勝って喜んでる人たちを見て自分は正しいことをしてるとか考えたんでしょうが、それは人を馬鹿にした行為です」

 「……」

 「でも誰も言ってくれなかったんですか? お兄さんじゃなくてもともだ……母親や父親とか」

 

 どうせ俺は友達いないよ、悲しくなんてない。

 

 「うちの家は両親とも共働きで父さんは会社の社長で母さんは父さんの秘書で基本家にはいない。だから家ではいつも兄と2人だった」

 「まあ、それは不幸だと思うしかないですね」

 「そうかな」

 「思ったんですけど、修永君がお兄さんより優秀でも人気者にはなれないですよね? 修永君、碌に友達できないほどコミュニケーション力ないですし、自主性も皆無ですし……」

 

 あってると思うけどこの子ひどくない? 俺の心を的確にえぐってくるんだけど。すごい真顔だしね。

 

 「でも良かったです」

 「何が?」

 「私も結構気にしていたのに修永君がそんなくだらない理由でこんなくだらないことをしていたことが判明して私の気苦労を返せ、って感じですが。無人島であんなくさいことまで言わせておいて結局は大好きなお兄さんに嫌われるのが怖かっただけなんて理由だったなんて、ねえ?」

 「目が怖いよひよりさん……」

 

 俺がぷるぷると震えているとひよりは頬から手を離して溜め息を吐いた。

 

 「ともかく、もうこんなくだらないことはしないでください」

 「……努力する」

 「し・な・い・で・く・だ・さ・い」

 「はい……」

 「じゃあ、仕切り直しです」

 「おう」

 

 ひよりは隣に座りなおしてまた『マリカ』を始める。

 

 「ひより……」

 「何ですか?」

 「ありが、とう?」

 「何で疑問形なんですか……。別に私は大切な人の話を聞いて少し叱っただけです」

 「あはは……ごめん、ありがとう」

 「良いです、今回は修永君の勝手な思い込みと不幸が招いたことです。でももう、やらないでしょう?」

 「もちろん、ひよりに嫌われたくないし、怒ってるひよりはあまり見たくない」

 「賢明です。それにしても私が怒るとそんなに怖いですか?」

 「ああ。本当に怖かった」

 

 あれはもう何だろうか、静かな怖さというか、気温が一気に下がる感覚を覚えたぞ。

 

 「では生涯見ないように努力して下さい」

 「ああ、あ?」

 

 今、なんかおかしかったような? そんなことないか。

 俺は首を傾げたが気になることがあったのでそれをひよりに聞く。

 

 「ちなみにさ、もし俺が手を抜いたらどうする?」

 

 そう聞くとひよりがにっこりと笑って、しかし目が笑っていない笑みでこちらを見た。

 

 「聞きたいですか?」

 「だ、大丈夫でーす」

 

 絶対やらないように気をつけよう。

 

 「でも、目立つのとか嫌なんだけど……体育祭とか」

 「勝つのは確定なんですか……まあ、そこは私がなんとかします」

 「まじか、よろしく」

 

 ひよりに任せておけばどうとでもなる気がする。

 

 「修永君はモテたいとか言うわりには目立つことが嫌いですよね。他人に話しかけられると警戒心むき出しですし……。だから友達いないんですよ」

 「いや、いるから、綾小路君とか。……っていうかそんなこと言ってるけどひよりだって友達いないじゃん」

 「とかとはなんですか、それ以外にいるんですか? それに私だって帆波さんと友達、で、す?」

 「疑問形になってるじゃん……」

 「都合の悪い部分をスル―しないでください。修永君本当は綾小路君以外友達いないでしょう?」

 「くっ、ちょっと待て。今思い出すから……」

 

 俺が考え込むとひよりは残念なものを見る目で見てくる。

 

 「もういいですよ……」

 「いや待て……あ、神埼君とか!」

 

 いや、でも神埼君は友達と言えるのだろうか、いやそもそも綾小路君すら友達なのだろうか。会話ができる仲、というだけで向こうは一切そんなことは感じてないとか……。

 

 「なあ、ひより。友達の定義って何だ?」

 「どうでしょう、人によって違うと思いますが、プライベートで遊べるような仲じゃないですか?」

 

 そうだったのか……てことは俺、友達いないじゃん……。

 

 「ひよりは一之瀬さんと遊んだことある?」

 「…………ありますよ?」

 「今の間はなんだ?」

 「いえ……あ、茶道部の方、は友達ではないですね」

 「俺たち、お互い寂しい高校生活だな」

 「はい……」

 

 ひよりが一緒だったから気づかなかったけど、俺ひよりいなかったらただのボッチじゃん。ん、待てよ?

 

 「俺とひよりはどういう関係になるんだ?」

 「ふむ……遊ぶ仲ではあるので友達、ということになるんじゃないですか?」

 「友達、か……」

 「友達、です……」

 

 俺は友達という言葉に何か違和感を覚え、複雑な気持ちになった。何でだ? 隣を見るとひよりもよくわからない表情をしていた。

 

 「俺とひよりの仲が友達なら、友達はその人の部屋で遊んだり、一緒に飯を食わなきゃいけないのか」

 「そういうことになりますね」

 「……」

 「……」

 「無理だな」

 「でしょうね」

 

 人の部屋に入るなんて俺には無理だ。綾小路君とかもできれば俺の部屋には入ってほしくない。

 

 「私たちの仲は友達よりももう1つ上のランクかもしれませんね」

 「おお、それは?」

 「とても仲が良い、信頼できる唯一無二の存在を世間では親友と呼ぶそうです」

 「あー、なるほど。あれか、岡崎と春原的な」

 

 確か岡崎は春原の部屋に入り浸っていたからあれが親友というなら確かに今の俺たちにはぴったりだな。

 

 「じゃあ、友達のハードルも下がって綾小路君と神崎君は俺の友達ということになるな」

 「では、私も帆波さんと友達ですね」

 「よし、解決した」

 「そもそも始まってたんですか?」

 「まあ、細かいことは良いじゃん」

 

 その後、『マリカ』を終えて、遅い昼食を食べた。ちなみに今日はお世話?になったということで俺が腕によりをかけて振る舞った。 

 その後、本を読んだ後、本談義をするとひよりがケヤキモールに夏休みの間だけ来ている有名な占い師が相当当たるらしいと評判になっているらしい。

 

 「占いか。俺はあまり意識したことはないな」

 「修永君は占いは信じないタイプですか?」

 「信じないっていうか、興味がないだけだな。ひよりは?」

 「そうですね、私も本では読んだことはありますが、よくてニュースで見る程度でしょうか」

 

 ひよりもどちらでもない系の人間か。あれはコールドリーディングとか当たり障りのないことを言ってるだけと否定してる人がいたりするからな。

 

 「そんなに当たるのか?」

 「らしいですよ。どうやら2人1組みで占ってるらしく毎日行列ができるらしいですよ」

 「リア充が……」

 「言うと思いました」

 「ま、俺には関係ないことだな。金払ってまで占いをしてもらいたくはないし、そもそも行列に並ぶなんて絶対嫌だし」

 「私も同じですかね。行列は食堂でもうこりごりです」

 

 懐かしい。あれはひよりと知り合ってすぐのことだろう。と言ってもあの時は20分も待ってないが占い師の方は1時間以上は待つことになるだろう。別に待つのは嫌いじゃないが俺は行列が嫌なのだ。

 

 「そうだ、占いやってみましょうよ。携帯のアプリならできるでしょう?」

 「おう、いいよ」

 

 ひよりは自分の携帯を取り出し、占いのサイトを開いた。どうせならと占い師と同じく2人の仲を占うことにした。ひよりは自分の名前と生年月日、血液型を入力し俺の名前を入力する。

 

 「安藤修永、と……生年月日と血液型は?」

 「ひよりと同じ年で8月25日、血液型はO型だよ」

 「はい、わかり……え?」

 「ん、なんか変だった?」

 

 するとひよりは30秒ほど停止した後、立ち上がり、帰り支度を始める。

 

 「今日は帰ります」

 「え、占い結果は?」

 「用事を思い出したので」

 「あ、うん、わかった」

 「それでは、おじゃましました」

 「じゃあな」

 

 そうしてひよりはさっさと帰ってしまった。

 何故帰ってしまったのだろう。何か気を悪くするようなことでもあったか?

 

 「占いの結果が悪かったから、とか?」

 

 そう思った俺は携帯で同じサイトを開いて情報を入力して占うと書かれたボタンを押す。すると10秒ほどして占い結果が表示された。結果にはまず上に2人の仲をパーセンテージで記されており、その下に説明が書いてあったのだが……。

 

 「-100%だと……」

 

 そこに記されていたのは0を通り越したマイナスという最悪の結果だった。これを見てひよりはショックを受けたのだろうか。というかマイナスがあって良いのだろうか。下の2人の説明を見ると、色々と書いてあったが要点を言えば水と油のような関係でしょうと書いてあった。

 

 占いが少し嫌いになった1日になった。

 

 




占い行かせるか迷ったけど、正直この2人を占い師に行かせるにはかなり強引になるなと思い、結局あきらめました。
誤字脱字、批判などありましたら報告お願いします。感想も待ってます!
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