■渋とマルチ
アズレン楽しい('ω')
キャラ解釈まだわかりみが少ないので多少は許して
「……イラストリアスお姉ちゃん?」
「訓練お疲れ様です、ユニコーン」
学園での訓練を終えたユニコーンが柔らかなタオルで汗を拭き取っているところに、エレガントの中に邪念を紛れ込ませた笑みを浮かべるイラストリアスが缶状の物を片手に訪ねてきて、それはまた胡散臭そうな響きをねぎらいの中に潜めさせていた。
ここまであからさまであると逆に自然に見えてきそうなものだが、ユニコーンの知るイラストリアスという姉貴分は、ロイヤルという由緒正しい国家に相応しい気品あふれた言動と周囲が息を呑むほどのオーラを纏った、まさしく聖女と例えるのが正しい空母である。そのイラストリアスが低俗とまではいわないが、少しばかり下卑た面持ちでいることは我慢ならないところでもあった。
「飲まない、よ?」
「いい加減わがままを言うのはやめたらどうですか? 指揮官様もおすすめになっていますし、それを無碍にするのもどうかと思いますが」
やはり、とユニコーンは顔をしかめるのを隠そうともしない。少しでもユニコーンを知る者であれば「まさかあの子があんな黒い表情ができるなんて」と驚愕待ったなしの渋さである。
そう、以上に始まる問答はこれが初めてではない。編入されたタイミングで言えばユニコーンが先であるからして、イラストリアスが艦隊入りしてから繰り返されるようになったものだが、この話の核はそれ以前から、指揮官との初遭遇が全ての元凶、特異点であったとユニコーンは記憶している。忘れもしない、最悪の遭遇がフラッシュバックし、静かに身を震わす。
この艦隊と指揮官の特異性、ユニコーンのキャラが崩壊してしまうような暗部、イラストリアスがユニコーンに押し付けようとしているものそれは。
「イラストリアスお姉ちゃん、レ◯ドブルだけは絶対飲まないからね?」
翼を授ける、魔法の飲料のことだった。
「私はただ訓練に精を出していた可愛い妹分に差し入れを持って生きただけだというのに……」
「レ◯ドブル以外だったら嬉しかったかな……」
「どうしてレ◯ドブルはダメなんですか? 戦闘で失ったエネルギーを手軽に補充できて、しかも糖分も補える。更には目覚ましにも似た効能がある万能飲料なんですよ?」
「私、炭酸コーラの方が好きなの」
「指揮官様も御愛飲ですのに……」
ユニコーンの脳裏に浮かんだのは人のよさそうな、それでいて軍人然とした眼差しを持ち、自分の命を預けるに値する尊敬するお兄ちゃん。時折見せる完璧でないところにも愛嬌があり、理想の上官である……レ◯ドブルの熱狂的信者であり、それを他人に押し付けてくるところ以外は。
イラストリアスは、指揮官の毒牙にかかってしまったのだ。彼女だけではない。指揮官に近しい船は皆、指揮官に感化されレ◯ドブル信者と化してしまっていた。勿論、味覚を完全に支配されてしまったわけではなく、ただ指揮官と同じものを愛でたいから飲んでいるだけという赤城のような存在もいるにはいるが、それは少数派に過ぎず、ユニコーンみたく洗脳じみた布教から逃れ続けている古参は更に数を減らす。レ◯ドブル派は日に日に勢力を増し続け、ユニコーンらの安息の日々はもはやどこにも存在しなかった。
「お姉ちゃん、ごめん!」
ユニコーンは持ち歩いていたペガサスをさらに強く抱き寄せ、踵を返して駆け出した。
「ま、待って……きゃっ」
慌ててイラストリアスも後を追おうとするが、足がもつれてその場に膝から崩れ落ちてしまう。イラストリアスは艦船であった時代からバランスが悪く、人の形を得た現在も尚その弱点を引き摺ってしまっていた。ユニコーンはそこを突いた。わずかな良心が胸を刺し、彼女の足を阻もうとしたが日頃の恨みつらみがこの場では勝る。
体躯は小さくともあっという間にイラストリアスを撒き、疾く安全な場所に戻らんと足早に港を後にした。
後は寮舎に戻りレ◯ドブルの話題を振られる前に天ぷらと炭酸コーラで口を塞ぎ腹を満たすだけだ。こうしてユニコーンは数か月もの間難を逃れ続けてきた。
しかし、今日に限っては、本当に巡り合わせが悪かったようだった。
「あら、ユニコーンではないですか」
「フ、フッドお姉ちゃん……」
寮舎の前に立ちふさがっていたのは、イラストリアスのそれとはまったく別方向の優雅さ、際立っているのは優しさではなく厳しさ、古風の貴族を思わせる美麗さ、その調和が神々しい戦艦フッドだ。
彼女もまた、レ◯ドブルに魅入られた悲しき艦なのである。
「部屋にレ◯ドブルを差し入れておきましたので」
「優雅さはどこに行っちゃったの……」
大英帝国の誇り高き英傑がこのザマ、ユニコーンの声色は震えていた。
「確かに忘れてはならないことです、ですが、停滞した歴史に発展は不可能ですので。時には新しい風を取り入れることも重要なのだと考えているのです」
「斬新すぎて原始時代に車で乗り込んでいったみたいな感じになってるよ」
フッドの錬度はユニコーンに比べると少しばかり後れを取っているが、それでもやはり戦艦を馬鹿にはできない。いかに裏をかいて逃げるべきか必死に模索している最中、更なる絶望がユニコーンの肩を叩いた。
「おや、エンタープライズではありませんか」
「フッドか……おはよう? こんにちは? 今晩は?」
「え、エンタープライズさん……」
この艦隊の最古参、指揮官と永遠の愛の契りを交わし、全艦娘のヒエラルキーの頂点に立つ絶対者、それがエンタープライズだった。圧倒的なパワーもさることながらその凛々しい美貌は女をして惚れたと言わしめるほどの輝きを持っているはずなのだが、今現在、ボサッとした銀髪や目に見えるほど濃いクマ、荒れに荒れた肌からはその面影は微塵も現存していなかった。
「今はまだ朝ですわね」
「ああ……すまない、最近時間感覚が狂い始めてきてだな」
「指揮官様、何をするにもあなたを連れ回しますものね」
「それだけ信頼してもらえているということだからな、なんとか応えなければ……」
左薬指を愛おしそうに撫でながら、頬を緩めるその仕草は妻として出来過ぎなほどであったが、生気の無い瞳が全てを台無しにしている。というか、エンタープライズは指揮官にそろそろキレてもいい頃なのではないだろうか。そのレベルの扱いな気がしないでもないが、当の本人が幸せそうなのでユニコーンはキュッと口を結び何も口に出さなかった。ユニコーンは周りが思ってるよりも遥かに大人なのだった。
「フッドたちはこんなところで何を?」
「いえ、日々精進するユニコーンにレ◯ドブルの贈り物を、と思いまして」
それを聞いた瞬間エンタープライズはユニコーンの肩を握る力を少しばかり強め、
「レ◯ドブルはいいぞ」
どこからか取り出したレ◯ドブルの缶を一気に煽った。
指揮官に最も近いということは、指揮官の影響を最も強く受けているというわけで、当艦隊において最も酷いヘビーユーザーという称号を持ち合わせるエンタープライズに捕まった時点で、ユニコーンの未来は確定していたのだ。
もはや、ユニコーンは巷での天使だの幼女最高だのという評判の愛らしさは残っていなかった。ただただ、この世の全てを恨み尽した、天使の残骸だけが寮舎の前に残り、それもまた二人の猛牛の使者によって回収され、儚く散った。
苦手なものは苦手なんだから、決して無理強いしてはダメ!
サンディエゴとのお約束だよ!
ちなみに私はモンエナ派です
ロイヤル陣営は同型艦でなくとも横でファミリーとしての繋がりがあるので微笑ましい。
……えっ、もしかして89(