英雄とヒーロー。
二人は特に交わるわけでも、絆を深めるわけでもなく、ただずっと橋の上に座っていた。
そこに今日も、一人の少女が通りすぎていく。

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昔ちょろっと設定だけ書いたメモ帳が出てきたんで、形にしてみました。
特に伏線があるとか、伝えたい想いがあるとか、そういう作品じゃないんで、どうぞ暇つぶしにでも見てってください。

注意点としては暴力的な描写があります。
苦手は人はバックしてね(´・ω・)



拝啓、ふたりの

ある所に、東條悟と言う青年がいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キチガイでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~完~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

失礼しました。

使ってはいけない言葉を使ってしまったことはお詫びします。

しかし、彼について語るのはやはり――、躊躇ってしまうものがあるのです。それこそここで終わりにできたらどれだけ良い事でしょうか。

 

ともあれ、語り始めた以上は説明の義務があります。

東條と言う青年は、孤独でした。欲しいものが今ひとつ自分でも分からないくせに、大きすぎる力を手にしてしまった彼は、欲望だけが刺激されてしまって、結果として考えることを止めてしまいました。

ただ与えられる役割に縋り、歪んだ解釈と夢を盾に瞳を閉じてしまったのです。前を見る事を止めてしまったのです。

それは眠っているのと変わりません。闇をむさぼり尽くすように眠り、そして全てが夢の中にいるように思ってしまいます。

 

そんな人間に、正常な思考などあるものでしょうか。

彼はその白い鎧を真っ赤に染めて、最後は自分の血溜まりに頬を沈めました。

東條と言う青年は、車に轢かれて死んだのです。

 

 

「先生……、次は――、誰を……」

 

 

これが最期の言葉でした。

そして東條はゆっくりと目を閉じ、その一生を終えたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある所に、平坂黄泉と言う男がいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあまあキチガイでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎完◎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

失礼しました。またも軽々しく使ってはいけない言葉を……。

しかしやはり、あまり進めたくないのです。きっと、ええ、この時間を。

彼は――、まっすぐでした。一直線、けれどもそれが逆に大きな歪みを齎す事もあります。自分の信じるものが正しいのか、貴方には確信が持てますでしょうか?

そして答えが出たからと言って世界は残酷です。世界は彼を主人公にはしてくれませんでした。だから彼は本物のキチ●イに殺されました。

 

 

「グッ! オマエ……、正義――、ダ……!」

 

 

それを言い残し、平坂黄泉は爆死しました。

そんな二人が目を覚ましたのは、ほぼ同時のことでした。

 

 

「!」「!」

 

 

先ほどまで全身を包んでいた倦怠感や耳鳴りはなく、東條悟はゆっくりと体を起こす。

痛みは――、綺麗サッパリとなくなっているではないか。頬に感じていた生温かく、生臭い血も消え去っている。

なんだ? どうなっているんだ? 薄れいく意識のなかで、東條は自分が死んでいくのだと僅かに理解していた。

全ては反射だった、親子に香川の面影を重ね、そして飛び込んだ。

 

あれは、夢だったのか? 東條は首を振り、辺りを見回す。

西洋風の町並みだった。中世、ファンタジーものでよくある。少なくとも日本とは思えない。

 

 

「え?」

 

 

すると、気づく。

同じくへたり込んでいる人物を見かけた。その男もまたポカンと口を開き、沈黙していたのだ。

 

 

「は、はじめまして」

 

 

男はなんとか言葉を搾り出したようだ。

東條は戸惑い、沈黙する。

汗を浮かべる男。

 

 

「挨拶できないヤツは悪人になるぞ!」

 

「ご、ごめんなさい……!」

 

 

その時、ふと、なんとなくだが察することができた。

お互い、同じような状況であることを。

 

 

「私は平坂(ひらさか)黄泉(よもつ)12th(トゥエルブス)だ」

 

 

遊具一つもない公園のベンチで、東條と黄泉は肩を並べて座っていた。

平坂は現在、そこらへんに落ちていた麻袋を頭にスッポリとかぶっている。

目を他人に見られるのはあまり好きではないらしい。と言うのも、黄泉は全盲だった。幼い時はまだ見えたらしいが、今はすっかり両目とも、である。

 

とは言え、人間の体は不思議なもので、光を失った黄泉に神が与えたのは究極の聴覚だった。

検査の結果、通常の人間の1000倍はあると言う。その結果、目が見えずとも黄泉は普通の人間とそれほど変わらない生活ができていた。

それを聞いて東條は『大変だなぁ』と思う。これ以上でも以下でもない。

むしろ今は他の点が気になっていた。

 

 

「トゥエルブスって……?」

 

「知らないのかい?」

 

「ごめんなさい。知らないかな」

 

「正義の味方の名さ!!」

 

 

声を張り上げる黄泉。

しかし東條は無表情&無言のままだ。

一応、東條と言う男は"ネコを被る"ことができる。愛想を良くして好青年を演じることはできたのだ。

ともあれ、今はそんな事はしない。疲れるし、する意味はあるのだろうかと迷う

一方で、黄泉は汗を浮かべながら一度咳払いを行った。

 

 

「き、君の名前は?」

 

「東條悟、かも」

 

「かも? かもとは?」

 

「自信がないんだ。自分が何者なのか。だって僕は――、死んだんだし」

 

「………」

 

 

頷く黄泉。それは彼も同じだった。

今でもその痛みと衝撃、ブラックアウトする感覚はしっかりと覚えている。あれが夢幻であるものか。

とは言え、今の状況は死の否定以外のなにものでもない。

 

 

「話を整理しようか」

 

 

軽い情報交換は既に行っていた。

だからこそなんとなく見えてくるものがある。

それはどうやら、二人が住む世界が別の時空にあったという点だ。

 

 

「パラレルワールド。映画じゃよくあるかも」

 

「ああ。私とキミが住んでいた世界は別々の可能性がある。信じられない話かもしれないが――」

 

「そうでもない、と、思う」

 

 

お互い、別世界と言う点では心当たりがあった。

たとえば現実世界のほかに、鏡の中に世界があるとか。

現実世界の他に、時空の神が住んでいる世界があるとか。

そして聞けばなにやら似たような戦いがあるらしいじゃないか。デッキ所有者によるサバイバルゲーム。日記所有者によるサバイバルゲーム。

 

 

「もしかすると似た性質を持つ我々の世界が、何らかの影響で交じり合ったのかもしれない」

 

「それはあるかも。夢で見たんだ。ディケイドと灰色のオーロラ」

 

 

いろいろと考察が続く。

とは言え、今が全てだ。死んだはずの自分達が生きている。

 

 

「なんとかして元の世界に帰る方法を探そうじゃないか。そうしたら生き返れるかもしれない」

 

「………」

 

「ん? 嬉しくないのかい?」

 

 

東條は曖昧に首を振った。

イエスともノーとも言えなかったのは、純粋に分からないからだ。

そう、分からない。何が? それも分からない。分からない事が何なのかが分からない。

もちろんそんな複雑な心境を理解できるわけもなく、黄泉は一旦深呼吸を行った。

 

 

「安心してくれ。私はともかく、キミだけはなんとしても元の世界に帰してあげるよ」

 

「………」

 

「それが、正義のヒーローとしての使命だからね」

 

「ヒーロー?」

 

「ああ。幼いときからの憧れなのさ」

 

 

誰もが昔は抱く、実に曖昧で抽象的な夢だ。

そんなものは成長するに従い、心の押入れにしまいこむか、グシャグシャに丸めて投げ捨てる。

空想神話(メソロギ)なのだ、誰もが夢から覚めるように、それが無であると自覚していく。

それが成長と言うものだ。しかし黄泉はそれを掴んだまま、放さなかった。

正義の味方に憧れ、日々善行を積んでいった。毎日毎日、世界が良くなるように行動を移していた。

 

 

「僕と似てるかも」

 

「なんとッ! と言うことは……!」

 

「僕は英雄に憧れてたんだ。英雄になったらみんなが僕を好きになってくれる。それに英雄は――、尊く、偉大な存在だ。だから僕は先生と一緒に世界がよりよくなるように戦ってきた」

 

 

先ほどの無言がウソのように、東條は一点を見つめたまま早口に言葉を並べていく。

 

 

「素晴らしいじゃないか! 未来の英雄と、未来のヒーロー。手を組めば事態の解決はすぐだ!!」

 

「でもッ、でも……! あの弁護士――ッッ!!」

 

「???」

 

 

ここで悪徳弁護士、北岡大先生のありがたいお言葉を頂戴しよう。

 

 

『英雄ってのはさぁ、英雄になろうとした瞬間に失格なのよ。お前、いきなりアウトってわけ』

 

「………」

 

 

俯く東條と、それを聞いて麻袋のうえにびっしりと汗を浮かべる黄泉。

あれ? そうすっと――ッ、俺もアウトじゃね?

一瞬、脳裏に浮かんだ言葉をかき消すため、黄泉は高速で首を振る。

 

 

「そ、そういう……、あの、まあなんて言うか。人の夢に茶々を入れるヤツは悪人になるんだぞ。気にしなくてよいんだぞ」

 

「……本当?」

 

「も、もちろんだとも。それは、ソイツの自論だろう? 世の中には沢山の意見がある。決め付けはよくないのだぞ」

 

 

それにまあ、結果はどうであれ正義のために動こうという意志を否定したくはなかった。

 

 

「キミは普段どんな活動を?」

 

「どんな? 英雄になるために、必要な人を消してるんだ」

 

「そうか、そうか、それは――……」

 

 

ん?

 

 

「ニャー!」

 

 

すると木陰から小さなシルエットが飛び出してくる。

 

 

「お、野良猫か。ははは、かわいいなぁ。キミもそう思うだろゥー?」

 

「猫、か。ネコの首を絞めて殺した時の感触は今も手に残ってる気がする。でもなぜか勃起したんだ。どうしてだろう?」

 

「………」

 

 

そうしていると犬の鳴き声。

子犬が黄泉の足元に擦り寄ってくる。

 

 

「い、犬の散歩を手伝ったこともあるんだ」

 

「そうなんだ。僕は野良犬にやかんで沸かしたお湯をかけたよ。あの時の鳴き声は聞いたことがなかったなぁ」

 

「………」

 

 

こいつヤバくね?

黄泉は天を仰ぎながら麻袋に大量の汗を浮かび上がらせる。

いや、や、や。首を振り、雑念を否定。英雄を目指そうというのだ。そんなサイコじみた行為を行うワケがない。

きっと何かの間違いだろう。捉え違い、そうそう、解釈の違いに決まっている。

こういう時は話題を変えるに限る。

そうだな、明るい話がいい……!

 

 

「とッ、とぅっ、東條くんだったね、キミ……、友人はいるのかい!?」

 

「いるよ。へへっ、佐野くんって言うんだ」

 

「そうかそうか。どういう事をして遊ぶんだい?」

 

「……分からない」

 

「ほへ?」

 

「僕が殺しちゃったし。仲村くんや、先生も僕が殺しちゃった」

 

 

黄泉のストレートが東條の頬にめり込んだのはその時だった。

 

 

「ジャスティス!!」

 

「ごはぁ!!」

 

 

きりもみ状に回転して地面に叩きつけられる東條。赤くなった頬を押さえ、涙を浮かべていた。

 

 

「な、なんで……!?」

 

「悪! オマエ悪ッッ! 紛れも無い巨悪!!」

 

「ひどい……! 酷いよ!! 酷いと思うんだけど……!」

 

「な、泣いてもダメだぞ! 待っていろ! 今その腐りきった性根を私が叩きなおして――」

 

 

数分後。涙をぬぐう東條の傍で、ボロ雑巾のようになった黄泉が転がっていた。

東條の背後には唸り声をあげているデストワイルダーが立っている。

契約したミラーモンスター。彼もまた世界を超えてきたのか、東條を守るために黄泉を引きずり回したというわけだ。

 

 

「ま、まさかトラを飼っていたなんて……!」

 

 

そこではたと気づく。

ノイズ。ノイズ。黄泉は沈黙し、ただ流れる音だけを聞いていた。

一方で東條は倒れている黄泉を睨みつける。

 

 

「酷い人だ。信頼させてから襲うなんてとてもじゃないが正義の味方のする事じゃないと思う……ッ!」

 

 

お前が言うな。である。

ともあれ状況は穏やかではない。デストワイルダーは鋭利な爪を構え、黄泉ににじり寄っていく。

言うて黄泉はただの人間、頭でも胸でも突かれればすぐに終わりだろう。

だが、本人に焦りは無かった。

 

 

「私を殺すのかい? それは無理だな。できやしないさ」

 

「?」

 

「私の死は、ここにある」

 

 

黄泉はポケットから、一つの『ボイスレコーダ』を取り出した。

そこには既に音声が記録されており、それを東條に聞かせてみせる。

 

 

『一週間後、17時17分、12th……「平坂黄泉」は死亡する……』

 

 

DEAD END

音声はそこで途切れた。

 

 

「え? なにそれ」

 

「東條くん。私はね、未来が予知できるんだよ」

 

 

つまり、予知能力者。

SFじみたと馬鹿にするだろうか? しかし本当だった。

東條としても、べつ否定するつもりはない。自分だっておかしな力を持っているのだ。

広い世界、そういった力を持っている人間がいてもなんらおかしくはない。

ましてや東條はどこか常に冷静だった。ある日突然毒虫に変わるお話が存在を許されるように、そう言った世界があるのは当たり前と考えをシフトさせるのは難しいことではなかった。

 

 

「デッドエンドフラグが立った……、これは不可避の死さ」

 

 

ボイスレコーダーからは黄泉の声で死の宣告がなされた。

DEAD・END、そのままの意味だ。死んで、おしまい。

 

 

「結局、この世界に来ても何も変わらないというわけか……」

 

 

死ぬことが確定している。

文字通り、死に物狂いでそれを回避しなければならないワケだが――、見たところ黄泉にそれを成し遂げようという気配はなかった。

東條もそれを察知し、特にこれ以上黄泉を痛めつけることはなかった。

 

 

「………」「………」

 

 

倒れている黄泉。体育座りでそれを見ている東條。異様な光景が続く。

だがその時だった。誰かの悲鳴が聞こえたのは。

 

 

「!」

 

 

東條には聞こえなかったが、超聴覚を持つ黄泉は音を拾うことができた。

まだ傷の残る体を叱咤させ、跳ね起きる。

 

 

「な、なに?」

 

「助けを求める声が聞こえる! 行かなければ!!」

 

「……意味不明なんだけど」

 

「?」

 

 

 

文字通り、理解ができなかった。

黄泉の言うことが正しければ、黄泉は一週間後に死ぬ。

それが分かっているにも関わらず、他者の為に苦労をしようなど東條には理解に苦しむ話だった。

 

 

「どうせ死ぬのに、意味ないよ」

 

「なぜだい?」

 

「え? だから――っ」

 

「キミは終わりが視えているから何もしないのか?」

 

「だって……、どうせ終わるんだし。死んだら何も残らないんじゃないかな。わかんないけど」

 

「残るさ」

 

「残らない。と、思う。たぶん」

 

「残る。残るんだ」

 

「???」

 

「残ると信じるのサ」

 

 

ボロボロになっても麻袋はかぶったまま。だから表情は分からないが、声色から笑っている気がした。

 

 

「さあゆくぞー♪ 正義のヒーロー参上だぁっはーん!!」

 

 

腕を振るい、全速力で走り出した黄泉。

東條はそれをポカンとした目で見つめていた。

 

 

 

 

 

800メートル先の森の中。子供達が走っていた。

三人ほどだろうか、男女が混じり、散らばっていく。

 

 

「助け――、ビャヒッッ!!」

 

 

逃げていた少年の頭部に銃弾が直撃した。

頭部が吹き飛び、中身がザクロのように披露される。脳や歯が飛び散り、木々にこべりついた。

 

 

「ぎああぁあああ! いだいよぉおぉお!!」

 

 

少しはなれたところでは女の子が足を抑えて号泣している。

ボウガンから発射された矢が脚に突き刺さっており、三秒後、首に、胸に、背中に次々と矢が突き刺さって、あっと言う間に女の子は動かなくなった。

気づけば逃げいる子供はただ一人。まだあどけなさが残る少女だった。

一方で後ろからはニヤニヤと笑みを浮かべている男が迫っている。手には左手にはボウガン。右手には拳銃を持って歩いていく。

 

 

「待てェエイ!」

 

「!」

 

「そこまでだ悪党めェ!」

 

「な、なんだ!」

 

「トォオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

そこからはスピード勝負だった。

そりゃあ目の前から突如、麻袋をかぶった男が奇声をあげて走ってきたのならばリアクションにも困るし、なによりも怯むだろう。

敵なのか、獣なのか、なんなのか。その答えが導き出されるまえに、黄泉は飛び蹴りで男のみぞおちを蹴った。

 

 

「ゴッ!」

 

 

怯み、後退していく男と、華麗に着地する黄泉。

既にアクションは起こしていた。回し蹴りで男の手からボウガンを弾くと、腕を掴み捻ることで拳銃を腕から放り落とす。

そしてすばやく手刀で喉を打つ。男が言葉を失ったと同時に、その腹部へ拳が突き刺さった。

男が蹲ると、黄泉の踵落としが男の脳天に直撃する。

鼻水を噴出しながら男は気絶して倒れた。

一方で、ホッと一息。黄泉は呼吸を荒げている少女へ近寄っていく。

 

 

「もう大丈夫だよお嬢ちゃん。悪は滅した」

 

 

周りは死体。間に合わなかったことに心痛めながらも、黄泉は少女に事情を――

 

 

「触るな!!」

 

「!?!?!?!?!」

 

 

少女の蹴りが、黄泉の『◎』に直撃した。

意味が分からない? では単刀直入に。

股間だ。股間。脚が黄泉の黄泉(下ネタ)にめり込む。麻袋を被っているから分からないだろうが、顔は青ざめ、唇は真っ白になり、脂汗まみれになりながら言葉も無く崩れ落ちる。

 

 

「これじゃあゲームにならないでしょ! 私は――」

 

 

違和感。

ふと、少女は後ろを見る。

 

 

「――酷いよ。せっかく助けてもらったのに蹴るなんてありえない」

 

「!」

 

 

いつの間にか、少女の背後に東條が立っていた。

ジットリと、ネットリと少女を見下ろしている。思わず息を呑む、そのまま絞め殺されそうだ。

だから少女は何も言わず、何も抵抗せず、その場に立ち尽くした。

 

 

「どういうことなの? ゲームって。ちょっと興味あるかも」

 

「ッ、そっちには関係ない!!」

 

「おしえてよ」

 

「だか――」

 

「教えてよ」

 

「!」

 

 

教えないと殺される気がした。

だから、少女はつい簡単に自分の事情を話してしまう。

名前は『クレイ・キリー』と言う12歳の少女は、大好きな父親が病気になってしまったようだ。

しかしこの街は格差が激しく、キリーは薬を買うお金もない。しかし父はそんな事情をお構いなしに具合が悪くなっていき、手術が必要までになってしまった。

ともあれ、幼いキリーでは働けたとしても手術費用を稼ぐのは不可能だった。

しかし一つだけ方法がある。それが『ゲーム』に参加することだった。それが先ほどの鬼ごっこと言うわけである。

尤も、それは一端でしかない。今日はたまたま鬼ごっこだったというだけで、そのゲームは日によって変わるし、明確なルールがあるわけでもない。

 

要するに『玩具』になれというだけである。

この街の富裕層が代表『ドン・ゲルポー』が考えた金持ちの道楽であり、飢えたモノ達へ刺激を提供するツールになることだ。

たとえば先程の例をあげるなら、森に玩具を放ち、それがどれだけ逃げられるかを賭けるというものだ。

逃げ切れば、大金がもらえるため、キリーは参加した次第である。

 

 

「いけない……! そんな狂ったゲームに参加するのは間違っている……!」

 

 

股間を押さえながらも、必死に説得を試みる黄泉。

けれども、そんな『軽い』言葉がキリーに届くわけが無かった。

 

 

「うるさい! アンタに何が分かるの!?」

 

 

尤もであると、東條は思った。

キリーは『じゃあ』と提案を一つ。簡単だ、ゲームを止めるのは金が手に入ればいい。だから父がよくなるだけの手術費用、薬代を払えというものだ。

お金さえあればいい。実に簡単なシステムだった。

 

 

「………」

 

 

麻袋に大量の汗がにじんでいた。

当然、無理である。この世界の住人ではない黄泉に持ち合わせの金など一銭もない。

それは東條も同じだ。むしろ何も持っていない漂流者、貧しいのは同じである。

そもそも黄泉に至っては元の世界でも貧乏だ。家賃もろくに払えない男に、他人の父親の手術費用など到底不可能な話である。

 

 

「私、あなたみたいな人が一番嫌い」

 

 

キリーの言葉は黄泉の心に突き刺さった。

 

 

「うわべだけの偽善者。適当に軽い言葉をかけて、でも深くは助けてくれない」

 

「……!」

 

「綺麗ごとなんてね、誰でも言えるのよ」

 

 

そう言ってキリーは歩き去ってしまった。

あらゆるショックが降りかかっているのだろう。辺りが暗くなるまで、黄泉は股間を抑えたままだった。

どれだけ経っただろうか。黄泉は立ち上がり、歩いていく。後ろについていく東條。

黄泉ははじめに目を覚ました公園のすぐ近くにある、石でできた橋の手すりにもたれかかり、座り込んだ。

東條も隣に座り、目を閉じる。

 

ただひたすら時間が過ぎるのを待った。

 

そうして朝が来た。

二人は座ったまま、どこを見つめるでもなく無言で過ごす。

退屈といえばそうだが、東條にはどこに行っていいのか、何をしていいのかサッパリ分からなかった。

だから黄泉が何かを与えてくれるかもしれないという淡い期待を抱いている。

 

 

「……正義なんてね、やっぱり、絵空事なんです」

 

 

黄泉が口を開いたのは、おそらく正午を過ぎた辺りだった。

 

 

「お年寄りの荷物を持ってあげようとしただけなんです。なのに追い剥ぎだの、強盗扱いされちゃって……」

 

 

東條は『だろうな』と思う。

黄泉のことだ、おそらくその時もおかしな格好で近づいたに違いない。今のように麻袋を被っているのだろうか?

顔を隠すのは多くの場合やましい人間だ。だから仕方ない。

 

 

「不審者を通報すると、なぜか逆に捕まるし」

 

「………」

 

「街を歩いていても子供に石投げられるんですよ……」

 

「………」

 

「折れそうになってしまいました。けれどもね、そこから少しは立ち直ったんですよ?」

 

 

そうやって平坂は『ジャスティス』を手に入れた。

けれどもそれは壊れてしまうものであると気づいたのは、死ぬ寸前だった。

 

 

「正義とは勝つ事。負ける者は全て悪。これが私の考えです」

 

 

しかし結果としてキチ●イみたいな女に負け、殺された。

普段ならばありえない、正義とは正反対のような女に負け、そちらを正義と認めた。

結局と、弱いものは正義にはなれない。何も分からぬ無知なやつは正義にはなれない。

 

黄泉の頭をフラッシュバックしていく過去。

まだ幼い時、学校からの帰り道、たくさんの人がザワついていた。笑うモノもいれば、恐怖しているようなものも沢山いた。

意味が分からず、家に帰ると、母が黄泉を抱きしめ、オウオウと泣いた。

黄泉の体中に『バカ』や『マヌケ』などと書かれた紙が貼り付けられていたのだ。悪意あるものたちにとっては、黄泉は玩具でしかなかった。

 

 

「弱者は、誰も救えない……!」

 

 

負けるものは、悪。

しかし今、一銭も払えない。

たまらなく惨めではないか。

 

 

「……向いてないなぁ。やっぱり私は」

 

 

麻袋が震えていた。

ポタポタと雫が垂れていた。

東條はそれをジッと、黙って見つめている。

愚かな姿かもしれないが、それは東條が目指したところでもあり、なんだか複雑な気分だった。

 

 

「あ」

 

 

まもなく、橋の上にキリーが通るのが見えた。

キリーも気づいたようで、小さく声をあげる。

超聴覚を持つ黄泉ならば、今わずかに漏れた声からキリーが来たと分かるだろうが、黄泉はまったく動かない。

かわりに東條が声をかけた。無視しても良かったが、まあなんとなく。

 

 

「どこに行くの?」

 

「………」

 

 

キリーは無言で遠くを指差した。

そこにはひときわ大きな屋敷が見える。

 

 

「この前の鬼ごっこで逃げ切ったから、"お気に入り"になったの」

 

 

どうやらあの屋敷にドン・ゲルポーが住んでいるらしい。

キリーは美人だ。それもあってか、ゲルポーにえらく気に入られて屋敷に招待されたのだと言う。

そこで特別な催しを行い、大金を与えると約束してくれた。

 

 

「そう、良かったね」

 

「………」

 

 

キリーは無言で歩き去っていった。

どれだけ時間が経ったろうか。東條と黄泉はひたすら橋の上で座り続けた。

そうしているとキリーが戻ってくるのが見えた。

 

 

「見て、こんなに貰っちゃった」

 

 

そう言うとキリーは札束を見せてくれた。

よく分からない紙幣だったが、きっと価値のあるものなのだろうと東條は思う。

同時に気づいた。キリーの両手の爪が剥がれていた。足も、靴が消え、両足の爪が無くなっている。

 

 

「痛くないの?」

 

「痛くないよ。そういうお薬使ってもらってるから」

 

 

キリーは嬉しそうに微笑んでいた。

 

 

「これで――ッ、お父さん……、喜んでくれる……!」

 

 

キリーはそう言ってフラフラと帰っていった。

麻酔が切れた後を想像して、東條はため息を漏らす。

そこでピクリと黄泉が動く。やはりなんだかんだ気になっているのだろう。

全盲である彼にはキリーの爪の様子は分からない。とは言え、東條の発言から、なんとなく予想はつけているのだろうて。

 

 

「彼女は――?」

 

「まだ、大丈夫だと思う」

 

「………」

 

「助けるの?」

 

「まさか。それは彼女の想いに反する」

 

 

彼女はそれを望んでいる。

それで父が救われるのだろう。

むやみに助けても意味はない。意味は……、ない。

 

 

「私は、正義は身勝手ではいけないと思っています」

 

「?」

 

「アフターケアがきちんとしていなければ――、できなければそれは正義ではなく、ただの自己満足ですよ」

 

 

黄泉には金がない。

そんな状況でキリーを救ったとしても、なんの解決にもならない。

 

 

「………」

 

 

ふと、東條は思う。

 

 

「じゃあ、ドン・ゲルポーのお金を盗めばいいんじゃないの?」

 

「それは……」

 

「爪を剥がして喜ぶようなサディストだ。まともなわけがないよ」

 

 

お前が――……。いや、なんでもない。

そうだ、そうかもしれない。しかし当たり前の事を言おう。

 

 

「人のものを取っては、それは泥棒だ」

 

 

そこで東條は察した。なんとなく、言い訳にしているのかもしれない。

黄泉はポツポツと自分の行動を呟いていく。

 

 

「ひったくりを捕まえるために、他人の自転車を盗ったことがありました」

 

「………」

 

「迷子になった人を結果的に10キロほど追い回したこともあります」

 

「………」

 

「私はそれを正しいと思っていた。しかし――」

 

 

キリーの言葉が胸を刺す。

麻袋は小刻みに震えていた。

 

 

「東條氏、貴方は何のために戦ってきましたか?」

 

「え?」

 

「人間、意味の無いもの為には戦えません」

 

 

たとえそれが50円ほどのアイスやガムのためだとしても、本人にとって価値があると思えば、そのために命を賭けて戦える。

 

 

「――なんて、そんな空虚な言葉を、過去の私は笑いながら口にしていたのでしょう」

 

 

だが、気づいた。

気づかされた。人間は神ではない。

ヒーローはフィクション。神のようなものだ。

その矛盾を、黄泉は超えられない。

 

 

「私はそれが正義だと思っていました。思ってきました。けれども……」

 

 

黄泉は正義の為に自己犠牲を選んだ。12thとして、6thを道連れにするつもりだった。

そのために刺し違えても良いと思っていた。

しかし結果としては2ndに殺されただけ。無駄死にだ。

無駄。それは過去もそうだったのではないだろうか。

 

 

「………」

 

 

馬鹿は死んでも治らない、それはイヤだったのだ。

ふと、東條は考える。自分はなんのために戦ってきたのだろうか?

戦ってきたのだろうか……。

 

 

「わかんない」

 

 

もはや正義のヒーローごっこが終わってしまったこの男に、中身などある訳が無かった。

 

 

 

 

 

 

翌日、キリーはまた橋の上を通って屋敷に向かっていく。

東條は体育座り、黄泉は袋を被ったまま、あぐらをかいている。

誰もが無言だった。無言で時間が過ぎていく。そうするとキリーが戻ってきた。

服の背中部分がごっそりと無くなっていて素肌がさらけ出されている。

その背中にはドン・ゲルポーの家紋が焼印されていた。高温で熱された焼き鏝を背中に押し付けられたのだろう。キリーは震えていたが、手には大金が握られていた。

 

 

「………」

 

 

東條は俯き、キリーは歩き去っていった。

 

 

「なぜ、ネコを殺したんだい?」

 

 

聞かれたので、答えることにする。

 

 

「病気で苦しんでたんだ。愛していたから、楽にしてあげた」

 

「犬を苛めたのは?」

 

「あの野良犬は近所に住んでいた飼い犬をかみ殺したんだ。飼い主の女の子は泣いてた。だから復讐してほしいって頼まれたんだ」

 

「……なぜ」

 

「なぜって、罪には相応しい罰が必要だよ。なによりも――」

 

 

誰かの役に立ちたかった。

 

 

次の日、東條はぼんやりと正面を見ていた。

この世界に来てから、まともに食事をしていない。水は雨水を多少口にしたくらいか。

それは黄泉も同じだろう。たまに通り過ぎる人々が自分達を哀れみ、パンを落としてくれた。

東條はそれを齧った。別に齧らなくても良かったが、なんとなく齧ってみた。それは黄泉も同じだった。

 

東條は理解する。

黄泉が聞いたデッドエンドの宣告。あれはおそらく餓死だろう。

まあ、でも別にどうでもよかった。キリーが見えた。辛そうだった。

いろいろ体に不調が出ているのかもしれない。脂汗を浮かべて、熱に苦しんでいた。

右耳が無くなっていた。

四日目のことだった。

 

 

五日目の昼過ぎ、キリーが橋を通っていくのが見えた。

 

 

「怖くないの?」

 

 

なんとなく聞いてみた。

キリーは鼻を鳴らし、東條をにらみつけた。

 

 

「麻酔、してくれるから」

 

「それでいいの?」

 

「これしかない」

 

「お父さんの具合は良くなった?」

 

 

キリーの表情は曇り、表情には焦りと怒りが浮かんでいた。

どうやらあまりよくないらしい。難しい手術になるかもしれない。

街の医者では無理だった。しかしドン・ゲルポーなら良い医者を紹介してくれるらしい。もう少し耐えればいいとキリーは小さな声で言っていた。

 

 

「心臓の鼓動が早い」

 

 

ポツリと黄泉が呟いた。

 

 

「だから?」

 

「いや……」

 

 

黄泉はうな垂れた。

ボイスレコーダーからは様々な音が聞こえていたが、黄泉は全て無視した。

そうしていると夜になる。ペタ、ペタ、ペタ。はだしのキリーがゆっくりと橋の上を歩いていた。

 

ペタ、ペタ、ペタ。

 

遅い。ゆっくりと歩いている。

東條はそれをジッと見ていた。

キリーの左目がくり抜かれていた。

 

 

「それで……、あの、いいと思うよ」

 

 

キリーが歩き去り、数時間。

東條は、ふと、黄泉にそんな事を言ってみた。

 

 

「え?」

 

「先生が言ってたんだ。大勢を救うときには、時には個を犠牲にしなければならない。あるいは大切なものを犠牲に出来るのが英雄だって」

 

「………」

 

「あの子は、あれで満足しているし、結果的には父親が助かってる。なによりもあの子自身がそれを望んでいるんだから、たぶん、えぇっと、今のままで良いと、思う」

 

「……そうか、そうだな」

 

「わかんない、けど」

 

「いや、それでいいんだ。だって私は私の信じるやり方では正義の味方にはなれなかった。それはきっと私のやり方が間違っていたからに他ならない」

 

 

黄泉はさっぱり分からなかった。

正義がさっぱり分からなくなった。今になって思うが、もしかしたら6thだって弱者だったかもしれない。

救うべき相手だったのかもしれない。それを知らない自分は、マヌケなピエロだ。

正義の教科書がつくづくほしかった。

 

気づけば、6日目になっていた。

キリーがゆっくりと橋の上を歩いていた。

東條はぼんやりとそれを見ていた。

キリーは一度振り返り、東條と黄泉を見た。

だからなんなんだ。東條は無言だった。黄泉も無言だった。

キリーは歩いていく。時間が過ぎる。キリーが戻ってくる。

右腕が切断されていた。

 

 

「明日で、おとうさん、手術してくれる」

 

「そう、よかったね」

 

「うん」

 

 

キリーは帰っていく。

東條と黄泉は、肩を並べて座ったままだった。

そうすると東條は目を覚ました。体を起こすと朝だった。

気づけば7日目だった。

 

まともに食事をしていない。

橋の下にはいろいろな死骸が転がっている。

デストワイルダーが持ってきてくれたものだが、東條たちは口をつけなかった(当たり前と言えばそうだが)。

未来予知が正しければ黄泉は今日の17時17分に死ぬことになっている。

とは言え、本人は座ったままだった。東條もやる事がないので無言だった。

気づけば16時30分になっていた。キリーが歩いてきたのはその時だった。

相変わらず遅い、ペタ、ペタ、ペタ、はじめから靴も履かずにゆっくりと橋の上を歩く。

 

 

「――……」

 

 

キリーは、口で息を吸いこんだ。

だが、すぐに鼻で吐き出してしまう。

そして彼女は歩いていく。

 

 

「かわいそうだなぁ」

 

 

東條は思っていることを口にした。キリーは無視して歩き去った。

 

 

『かわいそうだなぁ』

 

 

だが、言葉は確かに刺さっていた。

痛みを自覚したその瞬間。彼女は振り返ってしまった。既に距離は大きく離れているため、東條や黄泉は見えない。

だからなのか、震える声で、零れる涙を拭わずに――

 

 

「たすけて」

 

 

それを、口にしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――」

 

 

キリーが我に返ったときには石のベッドの上だった。

屋敷の地下室は遊技場だ。そこで見るからに高そうな椅子に座り、派手な装飾品を身につけ、葉巻を吹かす小太りの男こそが、屋敷の主人『ドン・ゲルポー』である。

 

 

「ゲルポー様、用意ができました」

 

「ウム」

 

 

"ドクター"と呼ばれた男性が舌なめずりを行う。

観客も数人はおり、ニヤニヤとしながらキリーを見ていた。

 

 

「ゲルポー様」

 

「ん?」

 

「本当にこの娘の父親を助けるのですか?」

 

 

護衛の黒服が耳打ちを。

 

 

「当然だろう。それが約束だ。これは正式な契約なのだよ」

 

 

それくらいは守ってやるのが情けだろう。

代わりに娯楽を頂く。ウィンウィンの関係ではないか。ゲルポーは金や医療を提供し、キリーは肉体を差し出す。

それは性的なものではない。そんなものはとっくに飽きた。ましてやロリコンやペドフェリアはここにはいない。ここにいるのは皆、娯楽を求めるサディストだ。

 

 

「キリーよ。今日はお前の左腕を切り取らせてもらうが――」

 

 

中世の世界観だが、現代的なアイテムもあるらしい。

ドクターと呼ばれた小柄な男性は『チェーンソー』を抱えてやってくる。

そこで、誰もが三日月のような笑みを浮かべる。

 

 

「今日は、麻酔をかけない」

 

「え……」

 

「もちろん報酬は今までの比ではない。お前の父親も私の手にかかれば確実に治す。だが、ハァハァ……!」

 

 

興奮しているのか、呼吸を荒く、ドクターは大きくさらけ出されたキリーの左腕をなでた。

 

 

「そろそろ我々は泣き叫ぶ姿が見たいのだ」

 

 

あまり早く壊れてしまってはそれこそ興ざめなので、今までは麻酔を多用していたが、もう限界なのである。

肉片が飛び散り、骨が断たれる様をリアルで体感する少女はどんな表情を浮かべるのだろうか。

麻酔があったとしても爪を剥ぐとき、目をえぐるときの彼女の表情は随分そそられるものだった。

では本当の痛みがあったなら? 地下室にいる誰もがそれを想像し、"ギンギン"になってしまう。

 

 

「――だ」

 

 

格別なる恐怖がキリーを襲う。

 

 

「やだぁああぁああ!!」

 

「フヒッッ! ホホォヒィイ!!」

 

 

ドクターは涎をたらしながらチェーンソーを起動させる。エンジン音と共に刃が拘束回転を始めた。

 

 

「助けてェ! お父さん! お母さんッッ!!」

 

 

キリーは必死に逃げようとするが、手足は鎖で括り付けられ、ビクともしない。

ましてやその悲鳴が男達の興奮をそそらせるのか、黒服にいたっては自慰すら始めたほどだ。

 

 

「痛いぞォ、苦しいぞォ!!」

 

 

笑顔ではしゃぐゲルポー。

対比してキリーは真っ青になって泣き叫んだ。

 

 

「だずげでぇエェエエェエエ!!」

 

「ほほほ! 叫んでも助けにこんわ! ここがどれだけ地中深いと思っておる!」

 

 

ましてや、地下室に入る扉はダミーを入れて複数。

完璧な偽装工作。さらにさらに鍵が必要なのだから、助けなど来るはずもない。

 

 

「イヤアァアァアアァアアアアッッ!!」

 

 

とは言え、ひとつ。

たった一つ。ゲルポーも、キリーも誤算があった。

知らない。誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界にただ1人。

人の1000倍。"超聴覚"を持った男がいたことを――!

 

 

『フリーズベント!』

 

「お?」

 

 

チェーンソーの回転がピタリと止まった。

なんだ? どうした? 必死に再起動を試みるが、うんともすんとも。

 

 

「良かった。機械にも通用した」

 

「え?」

 

 

刹那、鉄の扉が吹き飛んだ。もはや鍵など関係ない。扉ごと吹き飛んだのだ。

視線が一勢に集中する。そこにいたのは仮面を被った騎士と、カラスを怯ませる"目玉風船"のようなものを被った全身タイツの男だった。

 

 

「な、なんだお前らは!!」

 

 

立ち上がり、汗を浮かべるゲルポー。明らかに普通ではない。

 

 

「我々ハ――」

 

 

"仮面ライダータイガ"と、"12th"は並び立ち、ゲルポーを睨んだ。

 

 

「英雄ト、正義ノヒーローッッダダダ!!」

 

「!?」

 

 

黄泉は立ち上がり、天を仰いだのだ。

たとえ失敗しても、たとえ誰も救えなくとも。たとえその先が破滅でも。

自分が望む――、正義を!

 

 

「なんで……」

 

 

声で12thが麻袋の男だと察したのか、キリーは呟いた。

なんで助けに来たのか? その答えは、あまりにも簡単だった。

 

 

「涙ヲ流シッ、助ケヲ求メル少女ヲ――ッ! 見捨テル事ナドデキルモノカッッ!!」

 

 

躊躇いのせいで、心が死んでしまうくらいなら、『生』に手を伸ばしたほうがいい。

その時、黄泉の心の中で、燃えるような感情が交差した。

ずっと答えがどこにあるのかを探し、迷っていたが。ああ、なんとバカらしい。

今は未来か? それとも夢か? 願う未来なのか?

オマエの夢は、叶わないのか?

その時、懐からボイスレコーダーから音声が流れた。

未来の自分から、過去の自分に送る言葉だった。

 

 

『迷っているか、過去の私。ならば思い出せ』

 

 

平坂黄泉。

オマエは、誰に憧れていたのか?

その時、ノイズが走る。

 

 

『今日、17時17分、12th……「平坂黄泉」は死亡する……。DEAD END』

 

 

うるさい。そう叫んだ。

DEAD ENDとはそれ即ち、『行き止まり』の意。

 

 

(デッドエンド)風情ガ! 私ノ歩ミヲッ! トメラレルモノカ!!」

 

 

ノイズが酷くなり、音声がかき消されていく。

 

 

「過去ト同ジ未来ホド、ツマラナイモノハナイッッ!!」

 

 

現在の時刻は17時45分。

つまり、平坂黄泉のデッドエンドフラグがへし折られた証拠だった。

 

 

「何故だ! なぜこの場所に侵入者がこれるのだ!!」

 

 

ゲルポーは叫んだ。

確かに、ダミーの扉は沢山あった。そもそもキリーが監禁されている場所が地下であることを誰が気づけるというのか。

ましてや異世界からの来訪者である12thたちには絶対に不可能だ。

 

 

『17時45分――。キリーガ腕ヲ切断サレ、ショック死』

 

『救エルノハ、偉大ナル英雄、正義ノミ』

 

『今ヲ試ス扉ヲ壊スノカ、開ケルノカ、オマエガ決メロ』

 

 

そして、ボイスレコーダーには屋敷に至るまでの道、そして入り口から地下室にいたるまでのルートが正確に記録されていた。

 

 

『隠シ扉カラ階段ヲ降リレバ、一直線ノ廊下ニ出ル。ソコカラ二番目ノ扉ガ本物ダ』

 

 

その案内に従い、やって来た。

 

 

「馬鹿な! そんな馬鹿な事がァ!!」

 

「フフフ! コレハ正義ノ音ガ記ス奇跡!!」

 

 

時空を統べる神。デウスエクスマキナによって与えられた、神の力。

倒すべき【悪事】。そして守るべき『弱者』を記録する。

 

 

「コレガ私ノ未来日記――! "正義(せいぎ)日記(にっき)"の能力(ちから)ナノダ!!」

 

「……ぐッ!!」

 

「ドウダイ? カッコ良イダロウーッ!?」

 

 

とにかく見られたからには殺さなければならない。

銃を構える黒服たち。だがそのときだ。

ゲルポーが身に着けていた宝石。あまりにも輝きすぎて、世界を反射していた。

だからこそ宝石から白虎が飛び出したのは必然だった。

 

 

「グォオオオ!!」

 

 

デストワイルダーはゲルポーの両隣にいた護衛を宝石の中にあるミラーワールドに引きずりこんだ。

同じくしてデストワイルダー本体は、現実世界へ飛び出し、咆哮をあげながら暴れまわる。

 

 

「アヒッ!」「んびょ!」

 

 

とりまきの男達が二つになり、喉が引き裂かれ、次々に絶命していく。

一方で宝石の中から悲鳴が聞こえた。

生身の人間がミラーワールドから出る術はない。そのまましばらくすれば粒子となって消滅だ。

 

 

「フン!」

 

 

断末魔があがった。地下室に男の首が舞う。

タイガがデストバイザーで、観客の一人の首を持っていったのだ。

 

 

あれは、少し前の話になる。

 

 

『キミも行くか。東條悟』

 

 

救いを求める声を聴いた黄泉は、しっかりと立った。

 

 

『どうして? そんなの、先生の言葉に――』

 

『では聞くが、そのやり方でキミは英雄になれたのか?』

 

『それは……』

 

『先生の言葉が間違っているとは言わない。だが、キミはどんな英雄になりたかったんだ?』

 

『どんな? 分からないよ。でも英雄になればみんなが好きになってくれるから……』

 

『フム。だがキミはまだ英雄じゃない。なり方も分からない』

 

 

東條は頷いた。

 

 

『だが、今、一つだけ確かに分かることがある』

 

『え?』

 

『確実に分かることが、たった一つだけある』

 

『それは?』

 

『彼女を助けに行くんだ。そうすれば、私はキミを好きになる!』

 

『!』

 

 

大勢の人間からはどうか分からないが、少なくとも黄泉は東條を好きになる。

 

 

『英雄もいいが、相棒もいいものだぞ』

 

 

少なくとも、ソレが仮面を被る理由にはなった。

上等だった。それだけで、今はいい。

それが、果て無き希望になった。

 

 

『その行動が、きっと私たちを――、ヒーローにしてくれるだろう』

 

 

そして、東條はタイガになった。

鏡のように透き通る川面にデッキをかざしたのだ。

東條は左腕と右腕をクロスさせ、Xの文字を描くように斜め下へ移動させる。そして右腕を左へ、左腕を右斜め上に突き出し、手首を返した。

黄泉は両腕を伸ばし、大きく旋回させて円を描く。そして左上に突き上げた。

 

 

『変身!』『変身!』

 

 

鏡像が重なりタイガに。

全力で着替えて12thに。

二人は、正義を胸にやってきた。

 

 

「夢見ルヒーロー。ココニ参上!」

 

「僕は、英雄になる」『ストライクベント』

 

 

デストクローが下半身を露出させたままの観客に突き刺さる。

そしてそのまま右に爪を振るうと、体が引き裂かれた。臓物と血液を撒き散らし、絶命する男を見て、悲鳴が木霊する。

 

 

「クソ! 何がどうなっている!!」

 

 

異常事態だった。ドクターは引きつった表情で後退していく。

が、しかし、そこでフリーズベントの効果が切れたのか、チェーンソーが起動し始める。

ニヤリと笑みを浮かべるドクター。せめてここまできたら意地でもキリーを殺さないといけない。

でなければこの勃起したままのイチモツが可哀想ではないか(適当)。

 

 

「ウヒ! ウヒハハハ!」

 

「!」

 

 

ドクターはチェーンソーを抱えてキリーのもとへ走っていく。

 

 

「きゃああああああああ!!」

 

 

叫ぶキリー。タイガや12thはまだ遠い。助けは確実に間に合わなかった。

 

 

「アビビバブビバッッ!!」

 

「!!」

 

 

チェーンソーが肉を立つ音が聞こえた。

ドクターは、自分の脳天に刃を押し当てていた。

 

 

「あ、ありあれられれありられ?」

 

 

頭蓋骨が引き裂かれ、脳が飛び散る。

 

 

「な、なんでぇえぇええぇええ」

 

 

そこでドクターは倒れ、いろいろなものを垂れ流しながら絶命した。

 

 

「死ネー! 死ネー! 邪悪ノ悪党! 打ッチ滅ボセーッッ!!」

 

 

腰を激しくクネらせる12th。

 

 

「お、お前が何かしたのか!!」

 

「ソノ通リ!! ダガ悪党! 貴様ガソレヲ知ルノハ地獄デノコトダダダッ!!」

 

「ば、バカにしおってからに!!」

 

 

ゲルポーは銃を抜くと、それを乱射。

とにかくタイガと12thを射殺しようと試みる。

しかし、ゲルポーが我に返ると、周りの人間がすべて死んでいた。

護衛の人間、遊戯を楽しもうとしていた観客。石の床は既に真っ赤に染まっており、臓物や脳の一部が漂っている。

 

 

「な、なんだ!!」

 

 

死体には赤い点が。銃弾を受けた傷だ。

そう、その実、ゲルポーはタイガと12thを撃っているつもりで、実際は身内を射殺していたのだ。

 

すべてはタイガのデストワイルダーが注意を逸らしている間に行われた。

12thには、超聴覚のほかにもう一つ特殊能力があるのだ。

それが超強力な『催眠術』である。タイガやデストワイルダーが暴れている間に、ドクターやゲルポーに催眠術をかけておいた。

その結果、自傷行為や同士討ちを誘発させたのだ。

 

 

「行クゾ相棒! 悪ヲ、滅ボス!!」

 

「ん!」『ファイナルベント!』

 

 

デストワイルダーが飛び上がり、爪を突き出す。

 

 

「ヒッ! ヒィイイィィィイ!!」

 

 

そして逃げるゲルポーの背中に、爪を突き入れた。

 

 

「ぐぷぅ!」

 

 

吐血するゲルポー。おかまいなしに地面へ叩きつける。

そのまま移動を開始するデストワイルダー。硬い地面にゲルポーを押し付けて移動するため、肉が摩擦ですれて激しい熱と痛みが襲い掛かる。

 

 

「フッ! ハァアアア……!」

 

 

一方で腰を落としたタイガ。爪を光らせる。

 

 

「待て! 待て待て待て!! と、取引をしようじゃないか!」

 

 

硬い地面と摩擦熱で、肉が削れていく。

ゲルポーは終わりを確信し、声を上ずらせて叫ぶ。

 

 

「かッ、金か!? わかった! なんでもやる! だから、だから――」

 

 

そこで、デストクローがゲルポーの腹部を突き破った。

 

 

「ごぉぉおあおあかあああぁああ!!」

 

 

まだ終わらない。

デストクローから強力な冷気が放出され、瞬く間にゲルポーの体が凍りついていく。

 

 

「コイ! ユニオンダ相棒ッッ!!」

 

 

両手を広げる12th。

タイガは頷き、完全に凍結したゲルポーを抱え上げ、そのままブン投げた。

 

 

「正・義・執・行――ッ!!」

 

 

飛んで来た氷を、飛び蹴りで打ち砕く。

これが、複合ファイナルベント。『クリスタルジャスティス』であった。

 

 

「モウ大丈夫ダヨ」

 

 

12thは死体を乗り越え、キリーのもとへ。

しかしマスクに大量の汗が浮かんだ。鎖でしっかりと縛られ、普通の人間ではほどけない。

 

 

「どいてほしい。斧を使うから」

 

(斧……)

 

 

トラウマなのか、汗を浮かべる12th。

まあそれは良いとして、タイガはデストバイザーで鎖を断つと、キリーを自由にする。

すると、蹴りが飛んで来た。キリーは必死に12thを蹴っていた。

 

 

「最低! もう少しでお父さんを治してあげられたのに!!」

 

「………」

 

「それにッ! みんな殺すなんて! 悪魔!!」

 

 

キリーはボロボロと涙を流し、唸っていた。

 

 

「お父さんッ! うぅあ! うぅああああああ!!」

 

「………」

 

 

12thは踵を返し、歩いていく。

後をついていくタイガ。ふと、振り返り、呟いた。

 

 

「死んだら、何も分からなくなるよ」

 

 

そして、小走りで12thにおいつく。

 

 

「酷いよね。あの子、せっかく助けてあげたのに」

 

「イインダヨ。我々ハ結果的ニ、オ父サンハ見捨テタンダカラ」

 

 

それに。

 

 

「正義トハ、孤独」

 

 

結局、やったことは人殺しだ。

それを悔いぬ心、迷いの善意は橋の上に捨ててきた。

巨悪は、死すべし――!

 

 

「私ハ、コレカラモ正義ノ為ニ戦イツヅケル」

 

「……やっぱり、僕は正義の味方じゃなくて、英雄になりたい」

 

「アア、ソウダナ」

 

 

キリーは放っておいても助かるだろう。

だってもう、屋敷に生きている人間などいないのだから。

 

 

「一つ聞いてもいいかな?」

 

「なんだい?」

 

 

東條と黄泉。

二人は橋の手すりにもたれかかり、盗んだパンを齧っていた。

 

 

「はじめて会ったとき、どうして僕に催眠術を使わなかったの? 使われてたら、むしろこっちが危なかったかも」

 

 

わざわざデストワイルダーにボロボロにされることもなかったのに。

すると黄泉はニヒルに笑う。

 

 

「さあ、なんでだろうね。もしかしたら――」

 

「?」

 

「キミの声が、助けを求めているように聴こえたからかもしれない」

 

「そんな事……」

 

 

すると空間が歪んだ。

そこからなんだか小さいのが飛んでくる。

 

 

「オォ! こんな所におったのか12th!」

 

「ムルムルさん!」

 

「すまんのぉ、ワシがハンドスピナーかと思ってまわしたのがお前の存在だったのじゃ。それで、なんか――、ね?」

 

 

因果律があれで、これで、色が近い龍騎の世界も巻き込んじゃって、いろいろ時間があれで、東條があれでこれでほい。

とにかく、ムルムルが無事に世界の異常を修正した。

どうやらこれで二人は元の世界に帰れるらしい。それを証明するため、東條の背後にも灰色のオーロラが出現する。

 

 

「別れの時だな」

 

「………」

 

「東條くん。キミに出会えてよかった。おかげで踏ん切りがついたよ」

 

「僕、なにもしてないけど」

 

「いやッ、そんな事はない。人生なんてそんなものさ。何もしてないと思っても誰かにしっかりと影響を及ぼしている」

 

 

そういうと、黄泉は手を差し伸べた。

 

 

「私には大切な時間だった」

 

「………」

 

 

東條はおずおずとその手をとり、握手を交わす。

 

 

「お、BLかえ? 滾るのぉ」

 

「少し黙っててくれませんか……」

 

 

ムルムルはふくれっつらで水面を睨んでいる。

 

 

「ありがとう。これでキミは僕の大切な人だ。倒さなくちゃ」

 

「……え」

 

 

こいつヤバくね?

黄泉は必死に首を振る。

 

 

「目に映るものがすべてじゃない。全盲の私でも分からなかったことさ」

 

「ッ?」

 

「キミの目指す英雄は、キミを幸せにしてくれるのか?」

 

「どういう意味?」

 

「皆に好かれればキミは幸せなのか?」

 

「それは……」

 

「もっと、キミの事を理解してくれる人に、会えるといいな」

 

 

踵を返し、軽く手を振るう。

 

 

「正義の味方も――!」

 

「!」

 

 

東條は何をしていいのか、何をすればいいのか分からなかった。

その中で、『一緒に助けに行かないか』と言う提案は、よく分からなかった。

分からなかったが――、イヤではなかった。

 

 

「正義の味方も、悪くないの――、かも」

 

「フッ」

 

 

黄泉はムルムルと共に空に上っていく。

 

 

「東條くん!」

 

「いつか――、明日か1年後。いやッ10年後、何十年後! また会えるかもしれない」

 

「うん……」

 

「そうしたら、また一緒に戦おう」

 

 

東條は無言で頷いた。

 

 

「なあ、あれは誰じゃ? なんだか知らんがヤバそうじゃぞ。由乃と近い『臭い』を感じるのじゃ」

 

「彼は――」

 

 

自分を貫くこと。

いつか覚えてくれるといいのだが。

 

 

「彼は、私の友人ですよ」

 

 

そこで、二人は完全に別れた。

東條には聴こえないが、黄泉は言葉を続けた。

たとえ催眠術があろうとも、それをかけるまでの時間がある。

 

なによりも立ち上がるときに、かっこ悪い姿を見せたくないと思わせる『他者』が必要なのだ。

だから一人では無理だった。

 

 

 

「タイガは英雄です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拝啓、ふたりの END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丘の上に一つ、お墓があった。

生を掴んだことへの安堵と罪悪感。そして今までの感謝。

なによりも愛のため、娘は毎日花を供えた。

そうしている内に、花屋の息子と知り合った。

少女は自らの姿が異形であると自傷の刃を振るったが、少年はそれを受け止め、少女を抱きしめた。

 

時が流れても、お墓には美しい花が供えられている。

丘の下、海辺で女はひとつの瓶を流した。

波にさらわれていく瓶を見つめながら、女は寂しげに笑う。

 

 

「届くかしら」

 

 

届くとは思っていないが、届いてほしかった。

割り切るのに――、随分時間が掛かってしまった。

彼は、彼らはそんな自分を責めるだろうか。

 

 

「大丈夫。さあ、行こうか。何か食べにいこう」

 

「うん!」

 

 

女は、キリーは笑顔で愛する人の手をとった。

瓶の中には、いつかの感謝と謝罪の手紙が入っている。

 

 

 

【拝啓、ふたりの英雄(ヒーロー)様へ――。】

 

 

 

 







未来日記のED1とOP2はすべてのサバイバルゲームものがお手本にするべき――って思ってるくらい、すこ(´・ω・)
特にOP2はいいですね。早めに退場したキャラにもしっかりと見せ場を作ってるのはキャラクターを立たせて素晴らしいと思います。

サバイバルゲーム系の面白さって言うのはルートが違えば誰が敵で、誰が仲間になるのか分からないところにあると思います。

12thはそういう点で見ても面白いキャラクターでしたね。
本編は『え? そこで死ぬの!?』っていうくらい即死だったのに、いつまでも記憶に残ってるのはそれだけ可能性が思い浮かぶからでしょう。


では、みなさん。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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