これから受験などで選択を迫られてる人達へ、
選択した先で後悔して欲しくない。
そう伝えたかっただけのお話

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どうも、最近地面に潜っていた(比喩(え?比喩じゃない?))しずねは最かわっ☆です。

なんとなく浮かんだ作品を書いてみました。
作者本人、選択肢は幾度となく間違えてきました。
あなた達は間違えていませんか?
その選択は本当に正しいですか?

まぁ、自分には関係ないですけど(無責任)


選択肢

どこで間違ったのだろう。

綺麗な放物線を描くそれを見る目は、既に息をしていないようだった。

 

 

 

 

時ほど残酷なものは無い。

誰がどう足掻こうがどうにもならない。

取り戻せない。

後悔先に立たずと言う。

気づくのはいつも終わったあとだ。

 

 

朝起きてから、顔を洗いに洗面所へと赴く。

20を超えたあたりから始めた一人暮らしも、大分様になってきた。

顔を冷水で洗い流し、目を無理やり覚ます。

鏡に映る自分の顔は、いつにも増して生気がなかった。

たった一人で食卓へ付く。

朝食は軽め。

パン一枚にコーヒー一杯。

「頂きます。」

呟いただけの声は、自分以外居ない空間に嫌と言うほど反響する。

いつからだろうか、苦いコーヒーしか飲めなくなったのは。

 

未だに着慣れないスーツに袖を通す。

気が引き締まる気はしない。

寧ろ、重しを乗せられた様な感覚が全身を襲う。

 

戸締りを確認し、誰もいない空間へ行ってきますと告げる。

いつからだろうか、一人が寂しいと感じるようになったのは。

 

 

駅へ自転車を走らせ、近くに止める。

慣れたホームへ入り、目的の切符を買う。

一つ一つの動作が重い。

階段を上る足取りも遅く、電車をひとつ逃してしまうほどだった。

 

ひとつ遅れた電車に乗った。

座席へと座る。

心做しかいつもより深め。

気を抜いたら寝てしまう。

まるで、起きていることを拒むかのようだ。

 

目的の駅につき改札を抜ける。

駅から目と鼻の先にある会場へと入ってゆく。

受付へ招待状を確認してもらい、名簿へ印が入れられる。

数並ぶ名簿の中でも、割と早い段階で名前があった。

少し涙が出てくる。

一番後ろの方がまだ救われたのかもしれない。

 

豪華に飾り付けられた会場には既に多くの人が集まっていた。

みんな気合の入った服、もといい正装。

みんな口々におめでたいと言う。

オメデタイってなに。

頭が言葉を理解しようとしない。

 

イベントが始まった。

左右にわかれた客席。

真ん中を通るはレッドカーペット。

その先には神聖な飾りが沢山。

 

長く使われているであろうと曲を裏に、背後の大扉が開く。

来客はみな、背後へと視線を移す。

自分の視界に映るのは使われずに綺麗なままの靴だけだった。

 

 

それからのことは何故か思い出せない。

気がついたら既に外に出ていた。

綺麗なドレスに身を包む彼女は皆を魅了し、いかに幸せかをアピールするようだった。

 

隣にいるのは知らない誰か。

好青年なのが見て取れる。

誰にでも優しい彼女は、誰にでも優しい相手がふさわしいのだろうか。

何時からだろうか、その優しさに溺れていたのは。

 

 

会場内はドレスを着直した主役二人を迎え、美味しい食事を楽しんでいた。

自分は外に出て、場に似つかわしくない缶コーヒーを啜っていた。

それに気づいたのか誰かの足音が聴こえてくる。

まぁ、俺のところに来るわけじゃないんだがな。

「ヒッキー」

俺だったか。

「……」

無言で視線だけむける。

「高校時代はありがとうね。」

「あぁ……」

そうだった。

俺らはあの冬を超えたあと、お互いの進路に向け歩みだし、それぞれ違う道についた。

それこそが間違いだったのか。

そのあとが間違いだったのか。

今の俺には理解しきれない。

「ヒッキーがね、あの時頑張れって言ってくれたから大学にも合格できたし、彼にも会えたし。

ほんとうに感謝してるんだ。」

「そうか……」

それは感謝する理由にはならない。

励まされたからとはいえ、彼女は実力でこの未来を掴んだのだ。

俺は何もしていない。

「ねぇ、ヒッキー。私はね今とっても幸せなの。」

「……」

「ヒッキーはどうなのかな。」

「俺は……」

幸せってなんだろうか。

自分が幸福と感じるのは。

マッ缶?妹のこまちといる時?仕事が上手くいっている時?

分からない、分からないがしかし。

「幸せ……なんだろうよ。」

彼女の前では嘘をつく。

「ヒッキー、もしかしたらさ、ヒッキーはここじゃなくて私の隣であそこに座ってた未来あったのかな。」

「……」

あるのだろうか、そんな未来。

「こう、理屈じゃなくてさ、感情論でいいんだよ。

私とそういう未来、歩いてみたかったのかなって。

……ごめんね意地の悪い質問して、また旦那さんに怒られちゃう。」

「感情論……希望論は語らない主義だ。」

「そっか。ヒッキーはそう言うと思った。」

「あぁ。」

「……もしやり直しが聞くなら、私はヒッキーと歩いてみたいな。」

「そうか……」

 

 

 

 

 

 

それからすぐに俺は会場を後にした。

電車の中の景色も覚えていない。

見慣れた故に忘れたのか。果たしてどうなのか。

ひとつだけ覚えているのは、出た時よりも手荷物が増えているだけ。

重さはさほど感じない。

銀色に輝くそれは何故か綺麗に見えた。

 

 

帰宅し、ただいまと呟く。

しかし声は反響しない。

返っても来ない。

夕飯を作るが音も聞こえない、味もしない。

挙句すべてを吐き出した。

すべてを吐き出しても、未だに吐こうとする体は脳に危険信号を出し続ける。

 

 

ようやく止まった。

しかし視界は以前より暗い。

そうか、よく分からないがここで終わるのか。

何故かそう思えた。

間違え続けた人生だった。

ならば最後くらい自分の意思で消えさせてくれ。

手に取った銀の凶器が、購入した時から決まってた用途のように思えた。

己の体に向かって構えるそれは、綺麗でそして汚かった。

床に散らばる真っ赤なそれは、やがて体を包み、暖かかった。

視界が歪む。

転生論は信じていない、これでこの世界ともお別れだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体に掛かる温かみに違和感を感じて目を開く。

まだ覚めきっていない脳は一生懸命に状況を把握する。

幾分か縮んだように見えるそれは、長く慣れた自分の身体だから分かること。

テーブルに伏していたらしく、腕は痺れている、喉元には愛用のボールペン。金属で出来ているそれは少し冷たかった。

長く眠っていたのか、固まっている体を伸ばそうとする。

布が落ちる音が聞こえ振り返ると、自分のものでは無い制服が落ちた。

誰の持ち物だっただろうか。

机に視線を戻すと、自分のものと見られるノートの他にもう1冊向こう側に向かって開かれたノートと、筆記用具があった。

誰のものか拝見しようとした時、部屋のドアが開かれる。

その時視界に映る景色が学校の図書室だということに気づく。

「あ、」

部屋に入ってきた人物は自分に向け、蔑みの視線を向ける。

「ヒッキーやっと起きた、勉強始めたと思ったらすぐ寝ちゃってさ。」

呆れ顔まで追加してくる。

「もう、教えてっていったのに。」

「すまん」

「いやいいの、でもさ。」

しかし一転、心配そうな表情に変わる。

「魘されてたけど、大丈夫?」

魘されていた……か。

さっき見た光景は。

いや、さっき体験してきたそれは夢だったのだろうか。

ひどく現実味を帯びていた。

「大丈夫……だと思う。」

「そっか…、まぁ、勉強しよ。」

仮にあれが、本当に起きるのであれば。

「由比ヶ浜。」

「ん?どうしたの?」

選んだ道が間違っているというのなら。

「あのさ。」

ひねくれた道を歩む事を良しとしないのであれば。

「これはあくまで俺の提案なんだが。」

「うん。」

「頑張って勉強も教える、だから……」

「……うん。」

なら、選択を変えよう。

「同じ大学へ行って、一緒に歩かないか。その、未来ってやつを…………」

後悔をしないように。

 

 

 


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