ゼノヴィアの学園生活   作:阿修羅丸

33 / 33
バレた

 『停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)』の効果は、わずか数秒。長くとも十数秒しか続かないようで、リアスと一誠の硬直も直に解けた。

 気を取り直して、顔合わせが始まる。

 この教室はオカルト研究部最後の一人であるギャスパーの住まいとして使われており、悪魔の契約の仕事に使うパソコンや、娯楽のための各種ゲーム機器、オーディオ機器、ぬいぐるみや本などが所狭しと並んでいる。しかし整理整頓されているせいか狭さは感じず、散らかってる印象はなかった。

 教室中央に置かれたテーブルの上には、すでに飲み物とお菓子が用意されており、それらを銘々が味わいつつ、隼人、ゼノヴィア、アーシア、一誠の四人が、簡単な自己紹介をする。

 

「ギャスパー・ヴラディ……グレモリー眷属の僧侶(ビショップ)です……よ、よろしくお願いしますぅ……」

 

 ギャスパーもオドオドした態度ではあるが、自己紹介する。

 

「あ、あの……さっきは本当にすいませんでした……新しく入ってきた方々と顔合わせするって聞かされてたけど、いざ知らない人たちと会ってみたら、こ、怖くなっちゃって……」

「大丈夫、俺は気にしてないよギャスパーちゃん! それに時間を止めるなんて素晴らしい能力じゃないか! 何かあっても君はこの俺が守ってあげるからね!」

 

 一誠がギャスパーの隣に移動して、熱い眼差しで語りかける。鼻の穴がプクッと膨らんでいた。

 

 ──コイツ、今絶対変なこと考えてるな

 

 それを見た部員たちは大同小異そう思った。

 

「イッセー。言っておくけれどその子、男よ」

「──ハイ?」

 

 リアスの言葉に、一誠は裏返った声を漏らした。

 チラリと、隼人が朱乃の方を見る。

 

「ええ、そうです。ギャスパーくんは女装が趣味なのですよ。とてもよく似合ってるでしょう?」

「…………嘘だぁぁぁあああっっ!!」

 

 一誠が絶叫した。

 

「こっこここ、こんなに似合ってるのに! こんなに可愛いのに! お、お、お、男だなんて! チ◯コついてるなんてぇぇえええっっ!!」

 

 思わず口走った単語に、アーシアが頬を赤らめた。

 ギャスパーは突然絶叫する上級生にすくみ上がり、リアスの背後に隠れる。

 

「そ、そ、そ、そ、それじゃあ俺の夢は! ダブル金髪美少女ビショップ揃い踏みという俺の夢はどうなるんだよぉぉぉおおおおっっ!! 返せ、俺のときめきを返せ! 俺の愛しさと切なさと心強さをぉぉぉおおおおっっ!!」

 

 ──最後の「心強さを」の部分は、旧校舎の外で響き渡った。隼人が神足通で一誠を外に飛ばしたのだ。

 すぐに一誠は、足音を乱暴に響かせながら、走って戻ってきた。

 

「佐久間テメェ! 人を勝手に飛ばすんじゃねえ!」

「そりゃ悪かった。次は一言入れてから飛ばすわ」

「そういう問題じゃねえんだよ!」

「お黙り、イッセー」

 

 鋼鉄のような暗く冷たいものを含んだ声で、リアスがたしなめた。一誠はその声色にすくみ上がり、思わず『気を付け』の体勢となる。

 

「私、言ったわよね……ギャスパーは対人恐怖症だって……なのにあなたはさっきから大声で喚き散らしてこの子を怖がらせてばかり……」

「い、いや、あの、その……」

「私が良いと言うまで、お口にチャックしてなさい。わかったわね」

「い、い、い、イエッサー!」

 

 何故か敬礼までして答えた一誠は、大袈裟な身振りで口のチャックを閉める仕草をして、半ば逃げるように、少し離れた席に座った。

 一瞬、気まずい沈黙が漂ったが、

 

「さ、切り替えていきましょう。ギャスパー、音楽をお願い出来るかしら?」

「は、はいぃ……」

 

 ギャスパーは壁際の棚にまでパタパタと駆け寄ると、そこに置いてあるリモコンを操作した。

 教室の四隅に設置されたスピーカーから、ピアノのメロディが流れてくる。会話の妨げにならない控えめな音量だが、それを聞いた隼人がポツリとつぶやいた。

 

「蒼いノクターンか」

「佐久間くん、知ってるのかい?」

 

 祐斗が尋ねる。

 

「母さんがポール・モーリア好きでしょっちゅう聞いてるんでな。いくつかの曲とタイトルくらいはわかるようになっちまったよ」

「今隼人が練習してる曲だな」

 

 隼人の隣でゼノヴィアが言う。

 

「あら。佐久間くん、ピアノでもやってるの?」

 

 リアスが問い掛けた。

 その瞬間、隼人はジロリとゼノヴィアを睨み、睨まれた彼女は、今更ながら口を手で押さえた。

 

「──どうかなさったんですか?」

 

 アーシアが小首を傾げて、二人に尋ねる。

 

「あらあら、ウフフ……佐久間くん、別に隠すようなことでもないでしょう?」

 

 朱乃がそう言った。何となく、ここでは一上級生として振る舞った方が良いように思えた。

 少しの間を置いて、隼人は両手を上げた。

 

「自分、ハーモニカをやってます」

「あら素敵」

「……隠さなくても良いのに」

「是非聞かせてください!」

 

 リアスのあとに小猫が続き、アーシアがリクエストする。

 ギャスパーがリアスに命じられて、音楽を止めてしまったので、もう逃げられない。

 観念した隼人は、自宅の部屋にしまってある愛用のハーモニカを神足通でこの場に呼び出すと、収納ケースから取り出して、唇を当てた。

 

 おぼろ月夜。

 ふるさと。

 夏は来ぬ。

 ラヴァーズ・コンチェルト。

 

 ゼノヴィアや朱乃によく聞かせる曲を緩やかに奏でていく。

 部員たちはそれを、ある者は目を閉じて、ある者はリズムに合わせて小さく身体を揺らしながら、聞き入っていた……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ヒロアカ世界に転生した者が千手を背負い過ごしていく。(作者:名も無き住人)(原作:僕のヒーローアカデミア)

葉隠透と波動ねじれの幼馴染のオリ主が千手の個性を持ち転生したヒーローアカデミアの世界を気ままに過ごしていく。


総合評価:283/評価:4.45/連載:34話/更新日時:2026年06月20日(土) 06:00 小説情報

争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい(作者:大気圏突破)(原作:ハイスクールD×D)

 サービス残業・休日出勤・パワハラで疲弊していたサラリーマンはデスクワーク勤務中に心臓の鼓動が止まり亡くなってしまった。憐れんだ神は第2の人生として彼を『リリカルなのは』の世界に送るつもりだったが書類の手違いで『ハイスクールD×D』の世界に送ってしまった▼ 神は送る直前に間違いに気付き彼に与えた力の他に原作主人公の能力を奪って付与させた。赤龍帝になってしまっ…


総合評価:1518/評価:6.39/連載:50話/更新日時:2026年06月23日(火) 22:57 小説情報

ハイスクールD×D~Stand up to~(作者:ライダーマスク)(原作:ハイスクールD×D)

これはイッセーが昔に奇妙な冒険という運命を切り拓いた後の物語。▼家族、恩師、仲間、親友を失い続けるが覚悟と黄金の精神で己の運命を切り拓き、培ってきた3つの力を極限のその先に至り赤龍帝の籠手が消えると同時にスタンドを発現。▼一時的に世界の理を使い、未来の絶望に匹敵する存在を滅ぼした。▼スタンド。▼その名の由来は立ち向かう―――Stand up toから来た名で…


総合評価:405/評価:8.43/連載:22話/更新日時:2026年04月29日(水) 22:34 小説情報

転生特典が俺を殺しに来ている(作者:小説のシメサバさん)(原作:ハイスクールD×D)

不幸にもトラックに撥ねられ錐揉み回転しながら公園の花壇に上半身をぶち込んで死んだ可哀想(笑)な主人公。▼いい性格してやがる女神様にテンプレな展開。もらった特典は死亡フラグが満載。しかも転生先は死亡フラグが乱立しまくるハイスクールD×Dの世界。「あえて言おう、カスであると。」▼


総合評価:267/評価:7.29/連載:8話/更新日時:2026年05月17日(日) 13:02 小説情報

Fate/Grand Order : 冠位影法録(グランドオーダー・シャドウレコード)(作者:りー037)(原作:Fate/)

▼2015年、人類の未来が焼却された。▼人理継続保障機関カルデアに集められた48人のマスター候補生。その最後の一人としてスカウトされたヴァルナ・クロスは、魔術師ではなかった。▼彼の正体は、東洋の異端の術式『十種影法術』を操り、かつて聖堂教会に属し死徒を狩り続けた規格外の異邦人。▼突如起きたカルデア爆破テロにより、ヴァルナと盾の少女マシュは、人理焼却へと巻き込…


総合評価:1323/評価:8.44/連載:0話/更新日時:2026年05月29日(金) 10:51 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>