月1更新位になってしまっていますね、もう少し早く更新したいところ・・・。
まぁそれはさておき次話になります。
どうぞ!
「そのカラーリング、それがどういう意味か分かっておいでですの?」
セシリアはそう問いながら、目前まで来て浮遊する少女を見た。
搭乗者は虎子・E・白銀と名乗った少女。
それは別に構わない。
問題はその搭乗機だ。
両側前面に巨大な盾のような物を装備し、装着者自身は鎧の様な様相だ。
さておき、それもまた別に構わない。
セシリアが何よりも気になるのはその色だ。
いや、セシリアだけではない。
そのISを見た者全てが、懐疑の目を向けている。
それほどの意味があった。
虎子のISの色は白銀。そこへ黒い縞模様。
“銀虎”と、世間一般で呼ばれている
それは一種の
憧れるのは良い、崇拝するのも構わない、だが、真似だけは誰も許されなかった。
いや、出来なかった。
その色合いにしたISの事如くが、起動し続けることができなくなったのだ。
どんなオカルト話だと、誰もが最初は笑った。
何かの間違いだと、誰もが笑った。
偶然だと、誰かが嘲笑った。
だがそれもすぐに事実だと知れ渡る。
科学者が、有識者が、専門家達が、その
そうなると困るのは圧倒的自信を基にその謎を解き明かそうとした各権威達だ。
テレビで雑誌で、様々なメディアを始めとした場所で己の威信を掛けて知識を披露してきたその威光が瓦解してしまう。
一人や二人ならばまだ良い。その時代の流行り廃りに飲まれた程度で済まされるだろう。
しかしあまりにもその人数が多かったため、その謎はオカルトのまま捨て置かれた。
まるで触らぬ神に祟りなしとでも言うかの如く。
そうしなければ解き明かす者としての力を保てなかったのだ。
斯くして出来上がったのが“禁忌”であった。
曰く、『白銀の虎には誰も成るな』と。
とはいえ、対外的には名だたる科学者も挑戦して解明できなかった謎の一つでしかないオカルト話だ。
セシリアも勿論その話は知っているが、噂されている様に、銀虎を模したものには天罰が下るとしか知らされていない。
故に目の前に居る“銀虎”に眉を顰める。
少女の立ち居振る舞いからしてそのISを使い始めてすぐという様子は無かった。
寧ろ慣れた様子で滑らかに操縦しているのが見て取れる。
ならばあの噂は所詮オカルトであったのか?
そう言った意味も含めての目線であったが、その答えは思わぬ形で帰ってくることになる。
「当然です。これは母から譲り受けたモノですので」
「貴女のお母さまですか?」
セシリアの言葉に、虎子はピクリとも感情を動かさずそう告げる。
そして逆に、キョトンとした表情をセシリアはした。
突如母、と言われてもピンと来るはずもない。
“白銀”という苗字で特別有名な技師が居るとは聞いたことも無い。
だがその答えは先のものも含めて、出た名前によって氷解した。
「ええ、コウジュスフィール・フォン・アインツベルン。それが母の名前です」
「っ!? ・・・・・・
誰が呼びだしたか
名前からしてドイツ籍のようだが、ドイツ本国にはその様な人間が居た形跡は皆無だ。否、データはあるがそれ以外の痕跡が無いという不思議な経歴を持つ。
しかしそれだけではない。
彼女がそう呼ばれるのは他にも理由がある。
彼女は特別技師としての腕が良い訳でも、どこぞの天災の様な頭脳をしている訳でもない。
ただ、ISの調整に関して右に出る者は居ないと言われているのだ。
しかもただ触れるだけで、そのISの不備を見抜くと言われている。
生憎とIS適正は無いのか、ISの搭乗だけは出来ないとも言われているが、整備士として重宝されている。
更に言えば、彼女の名を誰もが知る要因がある。
それが“世界初の男性IS操縦者専属技師”という肩書き。
世界初の男性IS操縦者が操るIS、銀虎とも呼ばれるそのISを生み出したのも彼女とされている。
ついでに言えば、未だ謎に包まれるその男性操縦者について詳しく知る人物の一人ともされている。
彼女を残し気付けば姿を消すその男性操縦者、それもあって不可解な部分が多すぎるその少女を指していつしか魔女と呼ぶようになった。
そんな魔女の娘だと言う目の前の少女に、セシリアは常に無い驚きを見せた。
何せあの魔女に娘が居たということにも驚きだが、銀虎が受け継がれていることにも驚きだ。
ただ口にされただけならば虚言だと断じることもできるだろうが、銀虎に乗り、魔女と似た容姿をしていればそれも出来ない。
しかしセシリアとて矜持がある。
銀虎に乗り、魔女の娘だと名乗られようとも負けるわけにはいかないのだ。
「正直に言って驚きました。しかし、
「同じく。前にも言いましたがやるとなれば負ける気はありません」
「上等ですわ」
二人は互いに目線を交わしながら、それぞれの武器を握る手に力を入れる。
セシリアが構えるのは2mはある砲塔。
スターライトmkⅢという名のそれは、高出力のレーザーライフルだ。
巨大な分その取り回しは難しいだろうが、逆に言えば当たってしまえば忽ちにシールドエネルギーは削られ敗北を喫するであろうことは想像に難くない。
虎子が両の手それぞれで構えるのは、先程まで非固定浮遊部位として肩辺りに浮いていた巨大な二つの盾だ。
持ち手が先端部に在り、その部分には覆いもあることから唯の盾ではなく籠手としての役目もあることが分かる。
その見るからに重々しいそれを、軽く持ち上げながらも力強く構えていた。
「遠距離射撃型の私に足して、近距離格闘型。どこまでも魔女が産みだした銀虎を真似ますか」
「猿真似ではないことを証明いたしましょう。とはいえ、
「・・・・・・言いましたわね?」
そして、開始の合図が鳴り響く。
「先ずは小手調べですわ」
先に動いたのはセシリアであった。
スターライトmkⅢの砲塔が輝き、光が溢れ出す。
偽りなく光速で撃ち出されるレーザー。
それに対して虎子は右の盾を前に出し―――、
―――殴るように拳をぶつけて反らした。
「なんて出鱈目・・・・・・」
「生憎と防ぐしか能がありませんので」
遅れて、ドバンっと反れたレーザーが観客席を守るためのレーザー障壁へとぶつかり霧散する。
それを目にし、セシリアの頬が僅かに引き攣る。
しかし彼女とて幾つもの戦いを既に経験した身。
すぐさま思考を呼び戻し、照準を新たに向け直す。
「ならばこうですわ!!!」
狙いを定めると同時の速射。
さらに今回はそれだけにとどまらず、続けて第2、第3と撃ち続ける。
「無駄です」
しかしそれもやはりというべきか、全てが防がれ、反らされていく。
セシリアが少しばかり表情を険しくする。
彼女とて、ただ単に照準を合わせている訳ではない。
幾ら虎子が持つ盾が巨大だとはいえ、隙間がある。
それを狙って撃っている。
時には、先の一射を囮とし、2射目を当てに行くような撃ち方などもしている。
しかしその全てが効果を及ぼしているようには見えなかった。
「奥の手などと言っている場合では無さそうですわね」
◆◆◆
「さぁてイッチー。秘密の共有と行こうか」
そう、ニヤリと笑うコウ姉。
頭の中で警鐘を俺の感が鳴らす。
というのも、こういう顔をしている時のコウ姉には近づかないのが吉なのだ。
ぶっちゃけて言えば碌な目に遭ったことがない。
一番新しい記憶では、箒の姉である束さんと開発した薬の実験台になった時だ。
最初の説明では一時的に体の成長を弄るとかなんとか説明されたのだが、実際に飲んでみると俺の見た目は千冬姉に似た姿へと変わっていた。ストレートに言えば女になった。
ほんともう意味が分からなかった。
効果は30分程であったが、まるで自分が千冬姉になったかのようで、妙な背徳感があった。
そのあとコウ姉と束さんは千冬姉にぶん殴られていたが、何故か千冬姉が私にも見せろなんて言ってきて困ったのはついこの前のことだ。
ともかく、そんな感じに良いことに繋がったことが無い時の笑顔をコウ姉はしている。
「虎子の学校での様子はどうだい?」
「様子?」
・・・・・・と思っていたのだが、聞かれたことは普通に母親がするような質問であった。
無意識に"ような"と着けてしまったあたり女々しい自分が嫌になるがそんなことよりも、なぜそんなことを聞くかだ。
「本人から聞いたりはしないのか? 見た感じ仲は悪くないと思うんだけど」
俺の言葉にコウ姉が頬を掻き苦笑する。
「悪くは無いと思うんよ。でも、教えてくれることが全部堅い内容でな。こんな授業を受けただとか、こんな昼食だったとか、ぶっちゃけ定時連絡というか・・・・・・」
「あー」
普段の虎子の様子からしてそれが容易に思い浮かぶので困る。
クラスではお隣さんなので休み時間などに話したりするのだが、誰と話す時でも固い印象だ。
今では俺も慣れたものだが、最初は随分と戸惑った。
何というか、話すことに慣れていないと言うべきか?
基本的にテストの例題みたいな定型文で帰ってくることが多い。
疑問に対して真っすぐに帰って来るから分かりやすくはあるのだが、言い方を変えれば歯に衣着せぬ言葉である。
それが苦手に感じてしまっているクラスメイトも居るようだが、今となっては慣れてしまった。
にしても、それがまさか母親相手でもそうだとは・・・・・・。
「ってそれより虎子がコウ姉の娘ってどういうことなんだよ!? 旦那さんが居たのか!?」
もしそうなら何故俺に教えてくれなかったんだ。
千冬姉は知っているのだろうか?
俺だけが知らなかった?
教えられない理由があった?
何とも言えない悔しさと寂寥感。
それが俺を支配する。
そんな俺を見て、何故かコウ姉が優しく笑みを浮かべる。
そしてそのまま近づいてきて背伸びをし―――、
―――ポンポン。
俺の頭を撫でた。
「な、え?」
「あのなぁイッチー。シスコンも程々にしなよ」
「今の流れでどうしてその反応!?」
「くふふ、俺もよく言われるがイッチーも中々顔に出過ぎだよ」
俺の頭を撫でるのを止めたコウ姉は口元へと手を持っていき、静かに笑う。
「どうせ『俺だけ仲間外れだったのか?』とか思ったくちでしょ?」
「ち、ちが・・・・・・」
言い当てられたのがどこか恥ずかしくて、つい否定してしまう。
これでは本当にシスコンみたいではないか。
いや、家族は大事だと思う。
ただそれだけだ。
しかしその当の姉にはいはい分かってますよ的に笑われてしまえば恥ずかしさは増す一方だ。
「まぁ安心しなよイッチー。イッチーに内緒で実は裏で結婚していたとかではないから。そもそも俺はずっとイッチー達と暮らしていたでしょうが。自分で言うのもなんだけど、隠し事超苦手なんだよ俺。知ってるでしょ?」
「確かに」
「・・・・・・これで納得されるのは微妙に複雑だわ」
なんて言いながら落ち込むコウ姉だが、先程自分自身でも考えたように、実際にコウ姉は千冬姉以上に隠し事がかなり苦手だ。
もうワザとやってるんじゃないかというぐらいに隠し事をした時はボロを出す。
目線を反らす。噛む。挙動不審。いつもよりうっかり具合が増す。
これで気づかない方がおかしいというレベルである。
まぁ何よりも、性格的にそういった大事なことを内緒にする人ではない。
ずっと一緒だった家族なのだから、それ位は分かるつもりだ。
ただ一つ気になることがある。
「でもさっき虎子には黙ってた方が面白いからとか言ってたよな? アレも何か理由があるのか?」
俺がそう言うと、不貞腐れるように唇をコウ姉は尖らせた。
「ぐぬ、こんな時だけは勘が良いんだからイッチーは」
「茶化すなよコウ姉」
そんなコウ姉を俺は真っすぐ見る。
今のタイミングで茶化すのはあまりにもらしくない。
家族として過ごしてきた故の勘でしかないが、違和感があったのだ。
ただ、誤魔化そうとしているというよりは、まだ踏ん切りが付かないという様子だった。
俺がジッと見ていると、降参とでもいう様にコウ姉は両手を上げ、一つ溜息を吐いた後に口を開いた。
「・・・・・・だな、ごめん。お察しだろうが何処まで言うべきか悩んでるんだ。ただまぁさっきのについての答えは単純で、あの子にはその理由で俺が言えなかったって思っていてほしいからさ。あの子、自分では分かってないつもりだろうけど、自分が誰かに伝えにくい存在だっていうのを結構気にする方だからさ」
「虎子が?」
「そうだよ。あの子だって女の子で、まだまだ未熟な子どもだ。感情の整理が下手なだけでね」
寂しそうに、コウ姉がそう言う。
その姿は紛れもなく子を心配する母の姿であろう。
まったく、先程からどうも姉から母性を感じて困る。
ついぞ“母”というものを知らずに育ったわけだが、まさか姉からそれを感じることになるとは夢にも思わなかった。
とはいえ、だ。
今重要なのはそこじゃない。
問題は先程コウ姉が言った"虎子の存在は他者に伝えにくい存在である"という部分だ。
推測は、出来る。
コウ姉は世界初の男性IS操縦者のメカニックだ。
そしてその存在に一番近い存在だとも言われている。
更に言えば、その操縦者もコウ姉も、そして虎子も銀髪に紅眼だ。
そこに関連性を見いだすなという方が難しいだろう。
しかしコウ姉は、結婚していないと言った。
つまりは見た目に関しては偶然で、養子ということになるのだと思う。
「ひょっとしてだけど、虎子はコウ姉の養子に当たるのか?」
「おおぅ、どうしたイッチー、今日はやけに冴えてるね・・・・・・っと、茶化すのは無しだったな。どうも真面目な話に慣れなくていけねぇや」
ガシガシと、粗野に頭をかきながら苦笑するコウ姉。
しかしそれもすぐに真剣な表情へと変わった。
「正解だよ。詳しくは言えないんだが、あの子の生まれはちょいとばかし特殊でね。それにあの見た目もあるから大っぴらには紹介できなかったんだよ」
「見た目ってのはやっぱり・・・・・・」
「まぁあれだけ似ていて邪推するなって方が無理だろうさ。俺自身は別に構わないんだが、あの子がどうもそれを気にしていてな。自分の所為で俺に悪評が立つのが許せないって。そんなもの幾ら言われようが、あの子が俺の娘であることに変わりは無いんだけどねぇ」
寂しそうに、だけどもどこか嬉しそうに、そう口にするコウ姉。
今日は幾つもコウ姉の見たことが無い顔が見れている気がする。
そっか、コウ姉はこんな顔もするのか。
なんだかほっこりとした温かい感情が生まれる。
そんな俺はさておき、コウ姉は続ける。
「ま、なんとか説得して、治外法権扱いのここでなら気にせずあの子ものびのびできるだろうからって入学させたのが顛末だ。イッチーにはもっと早く紹介しても良かったんだけど、色々立て込んでいてな。あの子の調整もあったし」
「調整?」
その言い回しに少し違和感があった。
時間の調整という意味かとも思ったが、どうやら違うらしい。
何故分かったかというと、目の前のうっかり姉がしまったという顔をしているからだ。
つまりその言葉には、意味があるのだ。
ふと口にした言葉であったが、きっとそれこそが虎子を知るための道しるべなのだろうと直感的に感じた。
「ひょっとしてあの耳?」
虎子がいつも付けている機械の耳。
それが脳裏をよぎった。
初めて彼女を見た時、その芸術品とも思える美しさとは別にどうしても目を引いてしまったのがあの耳だ。
言い方は悪いが、あの耳だけがどうにも異質であった。
別に異様だとは思えない。
ただ、違和感だけがあった。
あの耳は耳でメタリックな質感でありつつも時折走る光のラインがかっこよく見える。
しかし良い物と良い物をちゃんぽんしても良い物が出来るとは限らないというか、どこかずれを感じるのだ。
今では慣れたものだが、それでもあの耳には目が行ってしまう。
「ああ、アレね。別にアレは関係ないよ。外せるし」
「外せるのか!?」
驚愕の真実だった。
どの授業であろうとも頑なに外そうとせず、そして誰にも触れさせないあの耳が実は外せるだなんて。
のほほんさんがジーっと見ていても微動だにせず、あののほほんさんが逆に気後れしてしまうあの耳が・・・・・・。
でも、ならば調整とはどういう意味になるのだろうか?
そんな思いでコウ姉を見るも、あーとかうーとか言うばかりで話が進みそうにない。
驚くだろう? これで成人してるんだぜこの姉。
とはいえ、だ。
見た限りこれ以上は流石に踏み込むべきではないことのように思える。
どういう内容かは分からないが、恐らくコウ姉は言うべきではないと考えての事だろう。
それにきっと、虎子が居る場所で聞いた方が良い気がした。
「良いよコウ姉。コウ姉が話せるようになった時、それと虎子が居る時にでもまた聞かせてくれ」
「・・・・・・良いのかい?」
「良いも何も、言えることならもう言ってるだろう? ごめん、こちらこそ聞き過ぎた。多分だけど虎子の居ない場所で言うのはどうかとかその辺を考えてなんだろうし」
そう言うと、コウ姉は驚いた顔でこちらを見た。
「何だよコウ姉」
「エスパーだったのかイッチー・・・・・・」
「違う違う。誰かに言われたことない? 俺もよく言われるんだけど、考えていることが顔に出過ぎだって」
「ぐぬ、意趣返しかイッチー」
「はっはっは、そんな怖いこと出来ないって」
俺が乾いた声でそういうと、コウ姉は溜息を一つ。
「はぁ、悪いね。これに関しては俺だけの問題じゃないんだ。俺にも俺の責任があるからさ」
「分かった。待ってる。それまで俺も気にしないようにするさ」
俺が笑みを浮かべてそう言うと、コウ姉はジトーっとした目で俺を見た。
そしてくるッと俺に背を向けた。
「・・・・・・この女ったらし」
「何でその評価が出てくるんだ!?」
背を向けたコウ姉からボソッとその様な評価を貰ってしまった。
思わず反論するが、再びこちらを向いたコウ姉は満面の笑みを浮かべていた。
「ま、感謝するってことだよイッチー。さすがは俺の弟だ」
その笑みに、俺はもう何も言えなかった。
◆◆◆
「行きなさいブルー・ティアーズ!!!」
セシリアが叫ぶと同時、背後のスラスターのように見えた非固定部位が4つセシリアから離れ、虎子へと迫る。
それを見て虎子は表情には何も出さず思考する。
セシリア・オルコットが今放ったのは俗に言うビット兵器というものだ。
それ自体は事前に情報を得ており、驚きは特にない。
だから今まさに自身を包囲しつつその方向を輝かせていることにも驚きは無い。
「ふっ」
ビット兵器から放たれたレーザーを右の盾で弾く。
しかしそうすることで開いた隙間へと、次のレーザーが迫る。
問題は無い。
「武装、展開します」
ガコンと、右の盾が開く。
「な!?」
セシリアが驚くのも無理はない。
虎子が持つ右の盾、その表面が中心から開き、中から白く透き通った宝玉のような物が見えるようになった。
それが起こると同時、セシリアのレーザーが虎子へと当たる。
その場所には幾ら盾が開いたとはいえ装甲の無い場所だ。
これで一手進んだとセシリアは思った。
しかし、そうはならなかった。
レーザーが当たると思われた瞬間、半透明の膜のような物が現れレーザーが霧散したのだ。
「言った筈です。守るしか能が無いと。この武装のテーマは“要塞”。何ものもこの盾を通しはしません」
盾が閉じ、再び元の姿へと戻る虎子の武装。
その姿は威風堂々としたものであり、一瞬ではあるがセシリアは気圧される。
盾を貫くイメージが出来なかったのだ。
撃ち放った弾丸は既に無数。
当然セシリアの機体とて撃てば撃つだけエネルギーは消費し、自身の敗北は近くなる。
だからこそ無駄球を極力無くし、隙があればすかさず撃ち放った。
だがその先、虎子へと有効打を入れる算段が思いつかない。
とはいえ当然負けるつもりはない。
一瞬とはいえ弱気になった自分を叱責し、再び隙を探す。
考えながらもビットを操り、撃ち放っていく。
ただ、ここから先は泥臭い試合になりそうだと、予測する。
ビット兵器は同時に幾つもの武装を操作するため、極度の集中が必要となる。
今隙を探すために思考しているが、それすらもギリギリ。
更に言えばまだセシリアはこのビット兵器を元々操り切れてはいない。
故に今、セシリアの足は止まってしまっている。
ふとそこで、セシリアに疑問がうまれた。
そう、セシリアは動いてはいない。
思考するため手に持つスターライトmkⅢの照準すら曖昧なものだ。
だというのに、虎子は動いていない。
それどころか、開始位置からほぼ動いていないのだ。
精々が旋回する際の予備動作分程度のものであろう。
それに気づいたセシリアは、その疑問の答えを知るため、
「漸くですか」
腰元からさらに追加されて飛び立つ2機のビット。
それをみても虎子に焦りは無い。
元々表情には出ないが、知っていた情報に驚く訳が無い。
「知っていることは知っています」
「っ!?」
ここに来て初めて、虎子は少しばかり目を見開く。
追加された2機のビット。
それに搭載されているのは先の4機とは違いミサイルである。
虎子は勿論その情報を得ていた為、それに驚いたのではない。
セシリアが行ったのは単純だ。
虎子の手前で2つのミサイルをぶつけ爆破し、爆炎を虎子へと浴びせかけた。
精々が一瞬の目くらまし。
ハイパーセンサーが搭載されているISにはこの程度の目くらましはすぐに情報を修正されてしまう。
ダメージに関しても直接ISのシールドに当てるのに比べ何段も落ちてしまっている。
だが、幾ら問題ないとはいえその中に居るメリットは無い。
すぐさま抜け出し、セシリアを捕捉するに努めるべきだ。
セシリアとの距離が近かったならば奇をてらうことも出来ようが、生憎とセシリアは遠距離射撃型だ。
セシリアの想像できないような戦術があるならばどうしようもないが、恐らくそれは無いとセシリアの勘が告げていた。
そして――――、
「やはりですか」
「・・・・・・」
セシリアの想像通り、虎子はその場所を動いてはいなかった。
両の盾を展開し、その身を膜で包んでいるが不思議なほどに爆破前とその場所は変わっていない。
「余裕の表れかと思ったのですが、どうやらその機体は自身を守りながら動くことが出来ないというわけですわね」
「ええ、その通り」
セシリアの言葉に、表情を動かさず肯定する虎子。
「私の盾は何も通しはしません。通させはしません。私は守るための盾ですので。なので今は自身を守っています」
表情は変わらないが、何処か真剣な面持ちでそう告げる虎子。
「攻撃はしませんの?」
「ええ、私はあくまで盾ですので」
淡々とそう告げる虎子。
そんな彼女をジッとセシリアは見る。
猛攻は既に止まっている。
先程まで鳴り響いていた戦闘音は無く、アリーナはシンと静まっている。
先に根負けしたのはセシリアだった。
「はぁ、ならば何故この勝負を受けたのですか。あなたの信条はよく分かりました。だからこそよく分かりません。負ける気はないとあなたは仰いましたわね?」
そう、虎子は試合が始まって以降一度も反撃をしてこなかった。
唯々守りに徹し、防戦一方であった。
それは果たして試合と呼べるものだろうか?
否、的に当てている方が些か以上に有意義というものであろう。
だからこそ疑問なのだ。
真意がセシリアには分からなかった。
しかし、当の虎子は珍し表情を動かし、キョトンとしていた。
そして少しの間の後、口を開いた。
「貴女が言ったのではないですか、壇上に上がるべきだと」
「・・・・・・へ?」
セシリアからお嬢様らしくない声が漏れ出た。
「いやあのちょっとお待ちくださいまし! ならば私の挑発に負ける気が無いと言ったのは!?」
「盾である以上負ける気はありません。特に勝つ気もありませんでしたが。守るだけが能なので」
「な、ならば勝負にならないと仰ったのは!?」
「私の武装は基本的にこの盾で殴ることです。しかしマシーンスペック上私の武装で貴方のブルー・ティアーズに追いつくのは困難です。その為無駄を省き私は守りに徹していましたが、そうするとあなたの武装で私を貫くのは不可能です。そうなってしまえば千日手、勝負と言い表すべきものではないと判断しました」
淡々とそう告げる虎子。
そう、虎子はただ事実を言っていただけだ。
勝負にならないというのは挑発ではなく、勝負が成立しないという意味なだけだ。
それでもセシリアが砲口を向けるため、盾として虎子は在っただけだ。
「は、ハハハ、戦闘に向いていないというのはそういう意味でしたか・・・・・・」
『それまで! この試合引き分けとする!!』
思考を復帰できずに居たセシリアなど露知らず、審判役であった千冬からドローの声が、ただ虚しくアリーナに響くのであった。
いかがだったでしょうか?
所々に某シールダー後輩の要素を覗かせている気がしますが、キノセイデス。
分かりやすい展開も含まれていると思いますが、キノセイデス。
とりあえず言いたいのは、セッシーがやはりチョロいんだということ(え
いやぁISのSSに於いて導入編を優しく指導してくださるセッシーとのバトルが書いてみたかったんです。
某異世界ファンタジーのギー〇ュ君と立ち位置的には同じですが、やはり華があるのはこちらですしね!
あ、向こうも一応華があるか。
さておき、IS編はこんな感じのモノを考えていました。
IS戦闘の描写とか難しそうだったのでチャレンジしたかったというのもありますが、ちゃんと読める程度にはなっていますでしょうか? 楽しめるかはさておいて・・・。
そしてこれからも遅筆ながらお目汚しをばさせて頂きたく思うのですが構わないでしょうか?
IS編の目標は一期終了まで、のほほんさんを出す、なのですが、大丈夫かな・・・。
まぁ兎も角、今後も是非よろしくお願い致します!
P.S.
FGOでは贋作イベも終わり、次は節分イベとか。
何やら厄介な方法で進んでいくようですが、頼光ママと酒呑ちゃんのピックアップがあるなら回したいなぁ・・・。
P.S.2
本編の方は終わったわけじゃないですよね?なんてメッセを最近頂くのですが、あっちもそろそろ動かしたいですね。
2足の草鞋になりそうですが、拙作であろうとも求めて頂けているなら是非頑張りたい。
ところで、特に関係ないですがこのすばってみんなご存知?