sword art onlineー黒と灰ー   作:戒斗

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一気に飛ぶよ!


第一四章:終わりの始まり

キリト達はついにカセドラルの頂点へたどり着く。

ユージオとの戦闘、アリスとの和解、アドミニストレータの目的。

 

そしてーー

 

「《メガロス》…?」

 

無数の鎖で雁字搦めに拘束された《メガロス》は力尽きたかのように微動だにしない。

体中に夥しい数の杭が打ち込まれ、夥しい量の血が床に広がっている。

 

そして始まるアドミニストレータとの死闘。

歯車は回り始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……暗い………ここはどこだ……。

体を動かすのも億劫だ…。

 

このまま寝てしまおうか。

 

僅かに浮上した意識の片隅に聞き慣れない(聞き慣れた)声がする。

 

……金髪優男……お前、死んだのか……

 

床に倒れている金髪優男。黒に重なって良くは見えないが、周りに広がる赤い血の量から生きていたとしてもそう長くはない。

 

体中痛ぇし、このまま寝ちまいてぇけど

 

………全く世話が焼ける。待ってろ、今……

 

 

 

 

 

助けてやる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「■■■■■■■!」

 

突如として轟く咆哮にこの場にいる全員が凍り付いた。

 

「なぜ生きている!なぜまだ生きている!」

 

アドミニストレータの取り乱しようを見れば、自らが手を下した《メガロス》は確実に息の根を止めたはずなんだろう。

 

《メガロス》について分かったことがあるのだとすれば、システムに縛られることのない存在であるということ、そしてアイツは俺を知っていて、俺もアイツのことを知っているということ。

 

けど俺の知り合いにあんな化物はいない。

外見ではなく中身、あのガワの中に宿るものこそが…

 

自らを縛る鎖を引き千切り、体を貫く杭を力任せに引き抜き、滝の如く血が吹き出る傷口は瞬く間に塞がる。

 

そうして暴虐の化身は再臨した。

 

「こ、の…化物がぁぁァァァ!」

 

アドミニストレータの激昂を皮切りにメガロスが動く。

床に膝が付くほど身を屈めたかと思えば、まるで重力を感じさせない動きで宙へ舞い、そのまま一回転しつつアドミニストレータへと向かう。

 

アドミニストレータは紙一重で突進を避けメガロスは床へと着弾する。

 

着弾

 

その表現が正しいだろう。

床には深いヒビが走り、けたたましい爆音と共に砂塵が舞う。

まさに砲弾だ。

 

未だ舞う砂塵をその剛腕で振り払い、脚力と人智を超えた防御力を武器にアドミニストレータへ迫る。

 

「■■■■■■!」

 

「死に損ないがァ!」

 

両腕を失ったアドミニストレータの取れる手段は剣のように鋭い髪だけ。自身へと迫る左腕を二の腕の半ばまで切断、切り飛ばした。

 

夥しい出血。

 

瞬く間に足元が血に染まり床へと広がっていく。

しかし──

 

「ゥゥゥ…■■■■■■!!

 

「なんだよ…あれ…」

 

切り飛ばされ細切れとなった肉片は、それが一つ一つ発火し失ったメガロスの左腕へと収束していく。

 

左腕だけじゃない。メガロスの足元に広がる血溜まりまでもが、まるで可燃性であるかのように燃え広がり始める。

 

蛇のようにうねり、のたうって床を這い部屋中へと広がっていく。

 

その炎は俺の眼前まで迫りユージオに覆いかぶさりながら目を閉じる。

しかしいつまで経っても熱は襲ってこない。

 

目を開け周囲を見渡せば俺たちを取り囲む様に円を描き、円の外側へと拡がっていく。

 

「ぎゃあああ!あ、熱い!焼ける!燃える!」

 

声の主は元老長チュデルキン。

 

「燃える!違う!消える!私が消えるぅ!」

 

腹に風穴が空いていてもまだ生きていたらしい。

しかし炎に焼かれ炭の塊へと成り果てた。

 

不定形な炎の左腕。

揺らめく業火に照らされる背中。

埒外な理不尽なまでの力。

 

知ってる。俺はこれを知っている。

 

「お前…まさか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アヒャヒャヒャ!見てるかい!記録してるかい!システムを捩じ伏せ!屈服させ!改変する!理不尽の権化!これこそが《メガロス》!」

 

「主任…これは、一体………」

 

「人の意思がシステムに介入する力が《心意》!ならば!システムを捩じ伏せ、屈服させ、改変する力!言うなれば《超克》!これこそが僕が彼を選び、ここへ連れてきた理由さ」

 

鳴り響く警報そして銃声。

それは極秘プロジェクトを押し進めるこのオーシャン・タートルが何者かの襲撃を受けていることの証左。

 

「!?主任!直ちに避難を!」

 

部下の避難誘導にも反応せず、ただ画面に映る映像を食い入るように見つめる主任。

 

「避難?どうして?」

 

「どうしてもなにも襲撃が──」

 

「…………ああ!そうかそうか!そうだったそうだった!君は違った」

 

「違う?主任なにを言って──」

 

サイレンサー特有の缶を開ける様な音が耳に届くと同時に胸のやや下、鳩尾に焼け杭を押し込まれた感覚と殴られたような衝撃が走った。

 

「主任…あなたは一体…何者………」

 

「僕が何者かって?それは君が知ってもどうしようもない。知ったところで何も出来ない。君は無力だ、だからこそここで死ぬ」

 

物言わぬ骸となった元部下に一瞥もくれず、よれた白衣から古めかしい通信機を取りだした。

 

「やぁ兄弟」

 

『よう兄弟、首尾はどうだ』

 

「セキュリティは全て解除、抵抗はあるだろうけど問題ないだろう?」

 

『ああ。目標は?』

 

「アリスは確認できてる。けど余程掠め取られるのが嫌なんだろうね。強固なプロテクトが施されてる。直接アンダーワールドに入り込んで奪取するしかない。入る手段は確保済み、あとはそっちの到着待ちさ」

 

『了解だ』

 

「『It’s show time』」

 

髑髏は嘲笑う。この世の全ては無意味だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、まさしく暴虐を体現したメガロスとアドミニストレータの戦いは熾烈とも互角とも言い難いものだった。

 

それもそうだろう。

 

片や両腕を失い満身創痍

片や傷を負おうとも埒外の回復能力を武器に小細工諸共叩き潰す。

 

前へ前へ、ひたすら前へと傷つくことを恐れず、傷つけられることを恐れず、ただ眼前の敵を叩き潰すためだけに進み続けるその姿は確かにアイツの姿によく似ている。

 

俺の眼前まで迫っていた炎は、それ自身が意思を持っているかのように別れ、俺とユージオを守るかのように周囲を囲み不可侵の領域を作りあげた。

 

『そこを動くな』

 

まるでそう言われているようで。

 

「■■■■■■!」

 

「こ、の……死に損ないがぁぁぁ!!!」

 

鋭利な刃と化した髪がメガロスの体を刻み、飛び散った血が床を濡らす。そしてその血が発火し、更なる炎となって部屋全体を照らす。

 

暴虐とは、暴力とは、なんなのか

メガロス自身がその身をもって知らしめる。

 

手傷を負わされようが構わず

攻撃を凌がれようが構わず

ただ眼前の敵を屠るためだけに前進し続ける理不尽の権化

 

そしてついに周囲を炎に囲まれ退路を失ったアドミニストレーターをその手に捉え、床へと叩きつけた。

 

「離せ!ケダモノ!この身はお前のようなケダモノが触れていいものではない!」

 

その声が届いているかは不明だが、まるで蛇が鎌首をもたげるように異形の左腕が振り上げられた。

 

「■■■■■■!」

 

咆哮一閃

 

振り下ろされた左腕は巨大な火柱を上げ、抜き取られた人々の記憶が納められた天井を貫き、徐々に収まっていく。

そうして最後に残されたのは修復が阻害されているのか融解した床に両膝を突いたメガロス。

 

先程まで轟々と燃え盛っていた炎は最初から存在しなかったように消え失せていて、幻覚であったかのようにその熱も消え去っていた。

 

いや、そんなことより確認しなきゃいけないことがある。他の誰でもない俺が。

 

震える膝をねじ伏せ、今もまだ膝を突いたまま動かないメガロスへと駆け寄る。

背中を向けたままで分からないが、濃密な死の気配も圧倒的な存在感も感じない。

 

「おい!」

 

正面へと回り込み力無くうなだれるメガロスの顔を覗き込む。爛々と赤い光を宿していた左目はその光を失い、半ば開いた口からは呼吸は感じられない。

 

まさか……

 

嫌な考えを振り払い、その胸へ耳を押し当てる。

脈動する臓器の音は弱く今にも消え入りそうなほどだ。

 

 

「おい!こんなところで死ぬな!お前は──」

 

けたたましく鳴り響く電子音。

それはアドミニストレータが外の世界に通じる道を開くために開いたもの。

 

通信に出てみれば菊岡の声でアリスを連れて逃げろというもの。

問いただす間もなく俺は光に貫かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キリトくん!?クソっ通信ケーブルを切られたか!」

 

第三勢力の介入──いや、相手は分かってる。

 

アメリカの特殊部隊

目的はアリスとメガロスの奪取

 

それにしてもオーシャンタートルのセキュリティをこうも容易く突破されるなんて…内通者がいるはずだ。

それも高度なクラッキングが可能な──

 

脳裏をくたびれた白衣をまとった男の姿が掠める。

 

「まさか─主任…?」

 

急いで《メガロス・プロジェクト》を進める部門にコンタクトを取るが通信回線が落ちてるのか何の音も返ってこない。

 

急いで確かめるしかない!

 

「明日奈くん、詩乃くんは隠れていてくれ。君たちに何かあれば彼らに顔向けができない」

 

作務衣姿のままだがなんとかなるだろう。

デスクにしまい込んだハンドガンを取り出しチェンバーを確かめる。

 

「比嘉くんは僕がここを出たら出入り口をロックしてくれ。敵にクラッキングが得意な人間がいるが君なら十分に相手取れるはずだ」

 

「菊岡さんはどうするの!?」

 

明日奈くんの言葉に一瞬足を止める。

 

「僕は…僕の恩師の忘れ形見を取り戻しに行く」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見渡す限りの暗闇の中。

上も下も分からず立ち尽くす。

 

俺はなんでこんなところに…?

 

『やぁ気分はどうかな?三神颯真くん?』

 

暗闇から響く声に上を見上げる。

 

「あ?誰だアンタ?なんで俺を知ってる?」

 

『僕は主任とみんなから呼ばれてるよ。名前で呼ばれるのが嫌いでね。さて自己紹介も済んだところで、君はどこまで憶えてるかな?脳に酷い損傷を受けて治療を受けていたんだ。つい最近まで植物状態だったんだよ?』

 

「どこまで…?」

 

何かを思い出そうとすると酷いノイズが走る。

何かを忘れている。何かを失っている。

何故かは分からないが、この確信がある。

 

「俺は三神颯真、確かSAOの正式サービス開始日にログインして、それで…それから……?」

 

『ふんふん、記憶障害か。海馬にもダメージがあったからね。それの影響だろう。さて、薄々気付いているだろうけどそこはいわゆる電子世界、ゲームの中さ。君にちょっと手伝ってもらいたいことがあってね』

 

 

 

 

 

 

 

戦争ゲーム、その中であるものを探してほしいんだ




メガロス覚醒のBGMは「the Beast」
エヴァの初号機暴走時に流れる曲です。

完全覚醒メガロスを説明すると
常時リジェネ
無限ガッツ
被ダメでダメージ床発生
何このクソゲー



次章予告

「【ミヌアーノ】……」

「その名前で呼ぶってことはテメェGGO出身か。ま、お前がどこの誰であろうが関係ねぇけどな」

背負う大剣と異形の短剣を抜き放ち、その身に理不尽を捩じ伏せる魂の炎を纏い、彼は怒りを隠さず告げる。

「人の女に手ぇ出したんだ。楽に死ねるだなんて思っちゃいねぇだろうな?」

「テメェは俺の逆鱗に触れた。これ以上テメェが成せることも手にするものも何もねぇ。ここで無様に死ね」


「戦いに慈悲はない。ただ殺す奴と殺される奴がいるだけだ。祈りも理想も夢も願いも希望も……戦場じゃ役に立たない。あるのは殺し殺され死に死なせる現実だけだ。それを理解できない奴から死んでいく。戦場(ここ)で生き残りたいなら、どこにも逃げ道はない。相手を殺し生き残る他に道はない」
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