八物語   作:Maverick

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とんでもねぇ遅刻しました。すみません。

いやぁ、結局去年は1話分しか更新できませんでしたね…何やってるんですかね私は。

ただまあ心境の変化と言いますか、なんか9割自己満足でやってることなので、皆様を待たせているとは思いつつまあ自分の好きなタイミングで出そうかなと思い始めました。この後の展開も何も考えてないですし、次はまた2023年にお会いすることになるかもしれないですね。

今回のタイトルなんですが、ちょっと迷いました。というのも、原作のつばさ、とかひたぎ、とかはその原作のみのキャラだから成り立つものであって、俺ガイルキャラの名前を使うとただのネタバレになってしまうなぁと思ってしまったのです。ということで名前が当てはまるところは???に置き換えています。別に名前の文字数は意識していません、原作は大体3文字なのでそれにあやかりました。

と、前説はこの辺にして新たに幕開けとなった、ある意味初めての「比企谷八幡」の怪異物語となります。何卒よろしくお願いします。


???スネーク《其の壱》

時は過ぎ放課後、俺は忍野のところへ行かなければならない。が、それはそれ、これはこれ。今から俺は羽川と書店に行って参考書を見繕わなければならない。いやぁすまんすまん、と届くはずのない謝罪を忍野に念で送って昇降口に向かう。案の定そこに羽川はいた。

 

「すまん待たせたか」

 

「ううん、大丈夫。さっき来たところだよ」

 

こういう返事、大抵の人なら本当に待ってないのか、それとも気を使って言わないのかがわかる。例えば戦場ヶ原ならはっきりいう前者のタイプだろうし、神原は前者でついでに色々聞いてもないことをつらつら言うのだろう。俺の周りには物事をはっきりさせる人が多いようで。

しかし羽川は、掴みきれないところがある…いや、彼女が彼女たらしめるポリシー的には後者なのだろうか。まあいい、どのみち俺には測りかねる人間なのだから、浅慮するだけ無駄なのだろう。

 

「じゃあまあ、行くか」

 

「うん」

 

そういって本屋へ歩き出す。途中俺の自転車を回収するために駐輪場に寄ったが、それにも羽川はついてきた。

基本的に羽川と2人の時はお互いダンマリか、羽川がふってくれる話題に俺がのることが多い。俺から出す話題はだいたい小町かわいいくらいだ。

それは今の状況でも変わらず、まだ高い日の下で羽川はその端正な顔を俺に向けて質問をしてきた。

 

「そういえば比企谷くん」

 

「ん、なんだ」

 

「大学受験の準備、って言ってたけど第一志望とか決めているの?」

 

あぁ、進学先ね。やっぱ聞かれるよな。俺にはこれに答える義務があるだろう。手助けしてもらうのだから、それに対して誠意を見せるべきだ。

ただそれを正直にいうのは、なんというか、その、あの、って感じなのだ。いやほら、あれがあれなんだよ。だから俺は少し誤魔化す。俺は嘘をつきたくないから、本当のことしか言わないが、全ては言わない。

 

「あ〜、まあなんだ。別にここってのはないな、俺の夢であるところの専業主夫を叶えてくれそうな女性が多そうな大学がいい…どこがいいと思う、羽川」

 

「そんな目的で大学いく人なんて聞いたこともないよ…だからわかんないけど…それだと将来キャリアウーマンの高収入になりそうな女性が多そうなところだよね…」

 

俺が言っておいてあれだが、ちゃんと真面目に考えてくれるのが優しすぎるというか、模範的だなと感じた。

 

「流石にこればっかりは羽川も知らないか」

 

「もう、いつも言ってるけど私はなんでも知ってる訳じゃないんだよ」

 

「そうだったな…まあ私立文系の上の方が妥当だと思ってる。そもそも理系が壊滅的だからな、それくらいしか選択肢がない」

 

中間試験がもう近い。俺は今回もどうせ文系科目3位の理系科目下から3位とかになるんだろうな。ちなみに文系科目で俺の上にいるのは羽川と戦場ヶ原だ。

 

「う〜ん、私立文系に行くような人たちは、そんなに稼ぎいいとは思わないんだけど…」

 

「まあ…そうかもしれんが、そこは後々考えることにする」

 

「たまぁに思うんだけど、比企谷くんはもう少し真面目に将来を考えるべきだと思うんだ…」

 

お前絶対されたまぁにじゃないだろ。本人が常々思ってることなんだ、間違いない。

 

 

 

 

その後は羽川の助力を借りながら、専業主夫の夢を叶えるためにどうすればいいかというところから逆算して、だいたいの大学のレベルを推定してそれに見合った参考書を少し購入した。羽川様々である。その後羽川とは別れ、俺は約束のあった学習塾跡に来ていた。

カツン、カツン、カツン。人のいない建物は音がよく響く。かつては賑わいを見せたであろうこの塾も、少子化や駅近くにできた通信予備校により潰れてしまった。今となっては幼女姿の吸血鬼(仮)2人と怪しいおじさんが寝泊まりするだけだ。

電気も当然ながら通っていないので、四階にたどり着く手段は階段を登るほかにない。コンクリート建の特別古いわけでもないこの建物は、廃墟でありながらその影を揺らすことはない。建物内の灯りは外を照らすついでと言わんばかりに入り込む少々の斜陽のみ。根っからの現代人である俺からすれば、よくこんな電気や水道のないところで過ごせるな、と思わざるを得ない。

そんな思考を回しているうちに、どうやら四階に来ていたようだ。いつもの部屋に入ると、いつものように忍野メメはそこにいた。

 

「やあ、比企谷くん。待っていたよ」

 

「よう——あらすじは阿良々木から聞いてる。詳細を聞かせろ」

 

「まあまあそう焦らないでよ、何かいいことでもあったのかい?」

 

そうほいほいいいことはおこらんだろ、というか焦っているイコールいいことがあったなんて、こいつは何を言ってるんだ?と思ったが、ああこいつの口癖というか決まり文句だったな、と思い当たる。

 

「ねえよ。むしろ俺は早く帰って小町のご飯を食べたいんだ」

 

「はっは。威勢がいいね、その調子で僕の依頼をサクッと解決してほしいところだよ」

 

「だから早くその依頼とやらを言え」

 

「わかった、わかった」

 

飄々としているアロハシャツは一度深呼吸して、普段より少し真面目な顔をして口を開いた。

普段ふざけてるやつのちょっと真面目なところってのはなんでこう映えるんだろうな、ごじょせんはいつでもかっこいいが…いや、流石に教え子のスカート履いてる時はキツかったか。

 

「あらすじは聞いてるってことだからね、少し省くけど。蛇切縄に縛られる痛みってのは結構なものらしくてさ、もしまた何も非のない女子中学生が縛られてたら、それは純粋に僕の良心が痛むんだよ。だから君には難しいかもしれないけれど、縛られている子を特定してここに連れてきてほしいんだ。それに、札を貼ったとはいえあそこがまたスポットになる可能性は捨て切れないからね、予防策を張っておく意味もある。つまるところ、こちらを知らない子にあそこはふさわしくないんだよ、加害でも、被害でもね」

 

普段はテキトーそうに見えてもやはり専門家か、怪異と人間の在り方に関してはしっかり考えているようだ。このおっさん、こう見えてなかなか食えない奴だ。

とりあえず忍野が何を考えているか、俺に何をやらせたいかはわかった、が。

 

「事情は分かったが、それは阿良々木向きだろ」

 

阿良々木の方がコミュ力あるからな…聞き取り調査とか、多分俺の目だと道ゆく人が俺から離れていってうまく進まないんじゃないか。

まああいつはあいつでメカクシ団みたいな見た目してるから怪しい見た目ではあるが。Reboot楽しみだぜフヘッ。

 

「それは僕も思ったんだけどねえ……君の借金をなんとかしてあげたいんだよ、僕は。ほら、優しいから——さ?」

 

「ふぅん…まあ、そういうことなら」

 

怪しさは拭えなかったが、俺に課せられた借金が全てチャラになるというのならそれくらいはしてやろう…阿良々木は山奥の廃寺に札貼るだけで、俺以上の額をチャラにしてもらっているのだが、そこは気にしてはいけない。俺の心の千反田も今回は仕方ないですと諦めてくれてる。

 

「うん、ありがとうね比企谷くん。ああ、あとこれ、必要になるかなと思って軽く調べておいた、この街の小中高の場所の地図と、件の山奥への行き方の地図だよ。存分に使ってくれ」

 

そう言って忍野はどこからか雑に折り畳まれた紙を2枚取り出した、それぞれが地図なのだろう。

 

「変に親切だな…いや、助かるんだけど」

 

「いやね、僕もあんまりこういう形態は慣れてないからどこまで手を貸せばいいのかわかんなくてね。まあ阿良々木くんよりも返済額が少ないのにやることは多いんだ。これくらいの手ほどきじゃ多分足りないくらいだよ——あ、それと君のとこの小愛ちゃんも連れて行きなよ。役に立ってくれるはずさ」

 

よくわかんない義理だが、もらえるもんはもらう。投げられた地図らを受け取り、学校の場所が書かれた方を開いてみる。ほう、思ったよりうちの町の学校てのは少ないんだな。これならまあ、なんとかなりそうだ。

 

「小愛」

 

「はいさ」

 

連れて行くことを推奨されたので試しに呼んだみたが、すぐに———というか食い気味に返事が来て内心びっくりする。声は後ろからした気がしたので振り向いて確認する。どうやら俺の影に入ろうとしているようだ、すでに下半身が俺の影に入っている。

 

「話は聞いてたか?」

 

「うん、お手伝いするよ!とりあえず八幡の影の中に入ってるね」

 

そう言って俺の返事を待たずに波紋を残して影に消えた。うーん、ぱっと見ではただの女の子の見た目をしている子が、俺の影に入っていくというのはとても違和感がある。

 

「じゃ、頼んだよ比企谷くん」

 

「ああ、まあ、やれるだけやってみる」

 

「うん、それでいいよ。ただまあ無理だなと思ったらその時は言ってくれ、君が無理だったという情報だけで正直報酬に値するからね。もちろん、その場合でも正規の報酬を渡すよ」

 

買い被りすぎだろう…と思ったが、そのことを目で訴えると春休みのことを掘り返されそうになったので止めた。

めんどくせえなあと思いながら、学習塾跡を出た。




はい、というわけで八幡にもバイトしてもらいます。原作を知ってる方はまあ今後あのおっさんがどうなるか知ってるでしょうから、多くは言いません。

さて、誰が怪異に巻き込まれるのでしょうか。よろしければ予想などしてもらいながら楽しんでもらえればな、と思います。


ではでは、また数ヶ月後お会いしましょう…。

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