私の名前は仁式神威。
 珍しい姓名だが、『にっしきかむい』と読む。
 私は喫茶店『メイビス』を経営している。だが、夜になると私の城はカクテルバー『メイビス』に姿を代える。
 一週間の内休みは水曜日と土曜日の二日間だ。
 そんな経営スタイルでも、私の城は隠れた名店として地域の方々から愛されている。
 
 ※この物語は、とある理由で武道を辞めた武人と駄洒落好きなアイドルのラブコメです。

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主人公の口調は、

年寄り口調+青年口調+敬語=主人公の口調

となっていますので、所々がチグハグです。
ですが、これも一種の布石ですので予想できますかな?


私はただの店長だ。

 

 私は都内の喧騒がどちらかと言えば好きでは無い方だ。何故なら、浮わついた喧騒は非行を促し、力持たざる弱き者等を虐げることが有るからだ。

 わかっている。これは私の偏見だ。

 しかし、一度根付いた価値観とはそう易々と変わるものではない。だが、同時に都内の喧騒は好ましく思う面もある。

 何故なら、孤独という言葉から程遠い、騒がしくも楽しげで独りという概念など何処かへ置いてきたかのような錯覚を感じることが出来るからだ。

 

「やめてください!」

 

「良いじゃねぇか。俺らとちょっと遊ぼうぜ」

 

「最近金入ったからイイトコ連れてってやんよ」

 

 ───待ち合わせをしているのだろう女性に対して、二人で徒党を組んで女性の手を引っ張る男達。

 

 流石に放置など出来まいて。買い出しの荷物を全て片手で持てば、残りの片手だけであの程度の輩など、どうとでも対処できよう。

 

「止めんかバカ共。そちらの女性が嫌がっているだろう」

 

「んだよ。文句あんのか?」

 

「だから言っておろうが。止めんかバカ共、と」

 

 舌打ちする暇があるのならば距離を開けるか詰めるべきであろうに。全く。これだから自制の利かん輩は駄目なのだろう。

 

「そちらの女性よ。ここから離れるか私の後ろへ来ると良い。少なくとも、他人の意を無視する輩などでは私を越えられまいて」

 

「は、はい」

 

「なら試してやんよ!」

 

 拳に腰が乗っておらんし、何よりも隙が多すぎる。この程度の拳で私を伸そうなんて片腹痛い。

 専守防衛を常に心掛けている私からすれば、一撃貰わなくては制圧を出来ぬ。

 私が初めから動けば、明らかに私の方が暴行を振るっているように見えてしまう。技量から筋力の差など、圧倒的に私の方が上なのだから、見る者が見れば私が罪に問われかねん。

 

「どうだ。カッコ付けるから痛い目を見るんだぜ」

 

「この程度で私が倒れるとでも? さて、周囲の人々は先の瞬間を観たであろう。ならば、私は私の流儀に基づき拘束させて貰うぞ」

 

「いってぇ!!」

 

「勝基! てんめぇ、死ぬ覚悟は出来てんだろうな」

 

 ───180後半の大男に拘束された170前半の男を見て、激憤した男が懐からナイフを持ち出したことで、周囲の所々から悲鳴が上がった。

 

 ………何かあればすぐに道具を使うとは。呆れ果てた大馬鹿者だとしか言えん。しかも、こんな人通りの多い場所で刃物を出すとは、警察に捕まえてくださいと言ってるようなモノだろうに。本当にどうしようもない奴だ。

 

「刃物なんて使えぬ者が使うべきではあるまいよ。ほれ、こうやってすぐに取られてしまうぞ」

 

「てめぇ何やりやがった!?」

 

 まさか、ここまでバカだとは………

 

「まず、持ち方がなっとらん。確りと握り、使わぬ手を体の前面から退かす。それも分からぬ者には、危なくて刃物を持たせられぬよ」

 

 ───ナイフを取り出した男から掠め取った刃物を、大男は身に着けているバンダナで刃の部分を覆い、買い物袋に入れていると人混みを掻き分けて警官がやって到着した。

 

「午前11時43分。容疑者確保」

 

「………私じゃなくて、そっちで蹲っている者達なのだが」

 

「詳しくは署の方で聞かせて貰う。だから、付いて来なさい」

 

 とんでもない誤解を受けてしまったようだが、まあ、今日は休日だから少し位なら時間を取られても大丈夫であろうが、流石にこのまま誤解が続くのは困るんだが………

 

「本当にその人は違います! 暴力を振るったのはそこのお二人です!!」

 

「詳しく聞かせて貰っても良いかな? 二人にも同行して貰う。目撃情報で刃物を取り出して彼を切りつけようとしたらしいからな、任意ではない。他にも、顔を殴ったみたいだから、詳しく聞かせて貰おう」

 

 彼女は律儀な方らしい。確かに、助けて貰ったのに何もせずに観ているなど、仁義は通らないが、最近の若い世代にしては確りとした人格が形成されているらしい。

 ふむ。私とてまだ老けてくる年ではないのだが、やはり修練の結果、精神が達観してきているらしい。

 

「これはそちらのジャケットを着た男性が出したナイフだ。危ないので預からせて貰っていたが、貴殿方に渡した方が良いのであろう?」

 

「ええ。貴方には署で詳しい事情を聴きたいので付いて来て戴きたいのですが、時間は空いていますか? もしでしたら、後日署まで来て貰う形でも構いませんが」

 

「私も行かせてください。そちらの方に庇って戴かなかったら、私が暴力を振るわれていたかもしれませんから、そちらの方が用事があるようでしたら私が代わりに詳しいことをお話します」

 

 やはり、最近の若い者等とは違い、人格形成の段階でよい環境に巡り会っていたのだろうな。義を通すのは人として大切なことである。仁義無き者はまた、他の者等もその者に対して情など掛けぬ。

 こういった者等が大成する人材であるのだろう。

 

「買い出しの荷物を置いてきてからで良いだろうか?」

 

「ええ、構いません」

 

「なら、1時半に■■署までお伺い致す。そちらの女性もその気が有れば来ると良いでしょうが、無理に来る必要もありますまい」

 

「わかりました。一時半にお待ちしています」

 

 

 

 

 

 


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