天才と呼ばれた男がいた。自身の定めた道を行くために、長い時を掛けて暗躍し。男の裏を世界が知ったとき、全てが既に終わりを迎える。誰にも止めることなど出来はしない。温和の仮面は今剥がされ、無色の冷徹が顔を出す。その口から出でる男の言葉。それは現実となるだろう。

──────私が天に立つ



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私が天に立つ

 

英雄のごとき逸材。そう呼ばれる男がいた。

 

多くの女性を虜にする甘いマスク。

 

老若男女に好印象を与える温厚な性格。

 

賢慮を感じさせる人柄。

 

日本にて数少ないAランク伐刀者。

 

斬拳走鬼という戦法を編み出した才気。

 

彼自身が鬼道と呼ぶ200種類近い魔法の創造。

 

それを適材適所完璧に扱ってみせる判断力。

 

彼を知る者は言う。

 

「すでに英雄の領域に立っている。世が世なら既に英雄と呼ばれている男だ」

 

さて、彼が英雄として歴史に名を刻む。それは起こり得るのだろうか。

 

立ち居振舞いは慈悲深く、他を思いやる心に溢れている。能力に問題はない。世に言う天才。誰もが認める程。

 

そう、表では。

 

ああそうだ。表だけなのだ。そんな他人を思いやる慈悲深さも、天才と認められる才覚も。傲り高ぶらず勤勉を貫く姿勢も。

 

……誰もが気付かない。気付くことが出来ない。どんな豪傑だろうと英雄だろうと、男の能力の前では気付くことが出来ない。

 

誰にも真の目的を悟らせず暗躍する、男の全てを。

 

他人の全てを完全に把握して見せる分析力。どんな表情や行動をすれば好感が持たれるかといった判断力。決してボロを出すことのない精神力。何よりも、男の持つ完全催眠という能力。人の身では到達しえない領域の御業。蝿を竜に見せることも、底無し沼を一面の花畑に見せることも可能。常人がその力を持てば、能力に使われるのが落ちである。

 

しかし男は、その能力さえも完全無欠に把握し、掌握し、行使する。

 

恐ろしいのはそんな様々な能力ではない。

 

男だ。男こそが恐ろしい。

 

他人に見せている力など、男の才覚から生まれた一欠片。パン屑にも劣るもの。

 

そんな男の名を、藍染惣右介と言った。

 

さて。

 

運命の大きさは、生まれ持った魔力量に比例する。そう言われるこの世界で、男はどう在るのか。運命さえも手中に納めてしまうのか。それとも運命を振り切ってまだ見ぬ果てへと向かうのか。はたまた男でさえも運命に翻弄されるのか。

 

分からない。

 

凡人には図りかねる。

 

だが男は。

 

誰かに支配されることも、誰かに見下ろされることも赦さない男は、自らが頂点に立つことを己に課す。

 

 

 

──────孤高の天才が天に立ったとき、そこへは誰も辿り着けない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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七星剣武祭。

 

それは日本在学の高校生伐刀者たちによるNo.1決定戦。そこで優勝した者こそ、その年の高校生で最強の伐刀者。七星剣王(セブンスワン)の称号を賜るに相応しい存在。

 

そしてそこには、多くの観客が歴史の証言者となるため集まってくる。激闘に次ぐ激闘を制し七星剣王へと登り詰める。その過程から結果までを眼に納めるために。

 

市民だけではない。世界の実力者たち。権力者たち。国のトップも見物に来るほど。

 

そのため警備も厳重になり、その時だけは不埒な輩など近よりもしない場所となる。

 

だというのに。

 

──────その七星剣武祭にて、最強にして最凶の犯罪者が生まれてしまった。

 

黒鉄一輝という一人の優勝者が誕生するやいなや、藍染惣右介という一人の男は化けの皮を剥がし、世界に対して宣戦布告を突き付けた。

 

現場に居合わせた実力者たちを、それまで隠していた能力により翻弄し、幾人もを戦闘不能へと追い込めば。彼は言ったのだ。

 

「世界最高の原石『ステラ・ヴァーミリオン』。そして10年に一人の落ちこぼれ、Fランクの七星剣王『黒鉄一輝』。君たちは実に面白かった」

 

時空間を操る伐刀者が仲間にいるのか。干渉することが出来ない光の柱に身を包まれた藍染。

 

「……今日この日を持って、耐えがたい天の座の空白も終わる。これからは───────私が天に立つ」

 

かけていた眼鏡を捨て、降ろしていた髪を撫で付けるように後方へ。そうすれば温和であったように見えた人相がガラリと変わり、妖艶にして冷淡な魅惑の美貌が晒された。

 

何も出来ずに見詰めるだけの眼下の者たちなど、最早眼中にないと言わんばかりにクルリと背を向け。

 

「さようなら、諸君。今年の七星剣武祭は中々に興味深かったよ」

 

その言葉を最後に、光の柱は閉じてなくなった。その中にいた藍染の姿もまた、何処かに転移したのか消え失せていた。

 

 

 

 

数ヵ月後。

 

藍染と世界の戦いが幕を開ける。

 

藍染が戦力として用意したのは数多くの魔人。運命に誰もが縛られる中、自身の可能性を極め尽くしてなお上を目指す者にしか至れない領域の存在たち。そのため魔人の数は圧倒的に少ない。しかし藍染は魔人を大量に生み出すことに成功。その中でも十刃(エスパーダ)と呼ばれる魔人の上位10名は隔絶した戦闘能力を持っていたため、戦いは驚くことに藍染側の有利で進む。

 

そして藍染の実力自体が十刃よりも更に頭抜けたものであった。誰もが藍染の隠していた真の能力『五感の完全催眠』を破ること叶わず。魔力を探っても、勘を巡らせても、どうすることも出来なかった。

 

勝利を当然のように手中に納めた藍染は、やがて自身こそが神であると宣言した。藍染自身が何かしらの方法で、神と読んで差し支えない領域に至ったのも要因の一つか。

 

文字通り天に立った男は、世界と隔絶された遥かな上空にて玉座に座す。色を映していない瞳で世界を見渡し、口角を上げることもなく淡々と言葉を紡いだ。

 

「ここからが始まりだ。『闘神』も『暴君』も『比翼』も既にいない。私の邪魔を出来る者は全て消えた。天の座の空白は埋まり、世界は今ここから廻り出す。さて」

 

──────手始めに、世界を平定しようか

 

 

 

 

 

 

 

 






息抜きに書きました。落第騎士×BLEACHのクロスオーバーって凄い書きやすいと思うんです。思ったからつい書いちゃったんですが。。。

誰か書いてくれないかなー




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