少女異世界旅行   作:破壊神クルル

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今回のゲストは五等分の花嫁から、中野姉妹たちです。
ただ、五等分の花嫁の舞台が愛知県の知多半島にある東海市という街にある、名鉄太田川駅近辺が舞台となっておりますが、異世界食堂のねこやがあるのが東京と言う設定なので、中野姉妹たちが住んでいる街も東京近郊の町と言う設定となっております。



肉まんおばけとの遭遇

 

とある休日、東京の某所の駅の近くの公園‥‥

 

「はぁ~‥‥」

 

その公園のベンチにて途方に暮れている一人の少女が居た。

彼女はウェーブのかかった赤く長い髪で前髪の一部が長く後ろに伸びて、両方のもみあげの部分には星形の髪飾りをつけており、頭のてっぺんからはぴょこんと立ったアホ毛が生えている。

スタイルは女性の象徴である胸は大きく、容姿もそれなりに整っている。

公園に来た周囲の人も気になるのかチラッと見るが声をかける勇気がないのか、仕事などの事情があるのか、声をかけず、少女の前の素通りしていく。

彼女は何故、こんなにも途方に暮れているのか?

それは今朝まで、時間を戻す。

 

「ねぇ、今日はみんなでおでかけしない?」

 

朝食の席にて、一人の少女が提案をする。

 

「いいわね、今日はアイツも家庭教師に来ないし」

 

「うぅ~‥‥なんかめんどい」

 

「えぇー!!一緒に行こうよ!!」

 

「外でお昼と言うのであれば、昼食はバイキングがいいです」

 

朝食の席には五人の少女たちがおり、彼女たちは髪型などの大きな違いはあるが、容姿は五人ともそっくりな顔立ちをしていた。

そう、彼女たちは世にも珍しい五つ子だったのだ。

今日、出かけようと提案したのは、アシンメトリーのショートヘアーをした五つ子の中で最も短い髪の長女で、右耳にピアスがついている。

長女の提案にいの一番に賛成したのは次女で、髪型で五つ子の中で最も長い姫カットの前髪とロングヘアーを、左右に着けた特徴的な黒い蝶の髪飾りでツーサイドアップにしている。

反対にあまり外出に興味なさそうなのは、セミロングで右側が隠れるような前髪になっている三女。

そんな三女を強引に連れていこうとしているのはボブカットで緑のうさ耳リボンをつけている四女。

そして、冒頭にて、公園のベンチで途方に暮れているのは五女だった。

彼女たちはそれぞれの名前を、長女は中野一花、次女は中野二乃、三女は中野三玖、四女は中野四葉、五女は中野五月と言う。

彼女たちはある事情から、同じ学校の男子高校生から家庭教師をしてもらっているのだが、今日はその家庭教師が休み、ついでに学校も休みなので、折角の休日を姉妹揃ってショッピングへ出かけることにしたのだ。

そして、出かけた先にて‥‥

 

「みんな!!おっそーい!!」

 

五つ子の中でも体力がある四女の四葉はスタスタと先に行ってしまう。

 

「あっ、ちょっと!!待ちなさいよ!!四葉!!」

 

そんな四女を次女の二乃は慌てて追いかける。

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥」

 

五つ子の中で、一番体力がない三女の三玖は先に行ってしまう次女と四女に着いていくのにも一苦労の様子。

 

「三玖、大丈夫?」

 

そんな三女に声をかける長女の一花。

 

「だ、大丈夫‥‥」

 

三玖は大丈夫と言うが、息を切らし、顔中汗まみれ‥‥

彼女が休日に外出したくないと言った理由として、自分は五つ子の中で一番体力がない事、

そして、休日の外は混むからだった。

 

「うーん‥‥それにしても凄い人混みだね‥‥五月ちゃんは大丈夫?」

 

一花は、末っ子の五月に声をかけるが‥‥

 

「あ、あれ?五月ちゃん?」

 

そこに五月の姿はなかった。

彼女は人の波にのまれ、はぐれてしまったのだ。

 

「一花!!二乃!!三玖!!四葉!!どこですか!?」

 

人波にのまれ、他の姉妹たちと離れ離れになってしまった五月は必死に姉たちの名前を呼ぶが、姉たちの姿も声も聞こえない。

 

「こういう時は、おちついて、みんなと連絡をとって‥‥」

 

五月はショルダーバッグから携帯を取り出し、姉たちと連絡をとろうとするが、

 

「あ、あれ?携帯‥‥携帯が‥‥あっ!!確か‥‥部屋の充電器に‥‥」

 

五月は自分の家に携帯を忘れてしまった。

しかも‥‥

 

「あ、あれ?財布‥‥財布‥‥」

 

彼女は自らの財布も家のリビングのテーブルに忘れていた。

ここに来るときは一花が切符代をおごってくれたので、お金を使うことなくここまで来ることが出来たのだが、姉妹とはぐれ携帯も財布もない状態となり、五月はまさに孤立無援の状態となった。

 

そして、場面は冒頭に戻る。

 

孤立無援となった五月。

運よく、ここに居るのを他の姉たちが見つけてくれればいいのだが、この広い街中で、人一人を見つけるのはなかなか難しい。

交番へ行けば一番手っ取り早いのだが、迷子となり、孤立無援状態となっている五月にそこまでの冷静な判断が出来ず、こうして公園のベンチで項垂れていたのだ。

しかも、事態は悪化し‥‥

 

ぐぅ~‥‥

 

「うぅ~お腹が空きました‥‥」

 

五月は五人の姉妹の中で一番食べる子だった。

朝から平然とカツ丼をペロリ、学校の食堂では、うどんの大盛りにトッピングの天ぷらを三つ以上、デザート付きで、その値段は平均で一食1000円を軽く超える。

さらに放課後はコンビニで肉まんを三個は平気でペロリ。

ここで食べて夜ご飯を食べられるのかと思いきや、夜ご飯も五人の姉妹の中で一番たくさん食べる。

四葉ほど運動はしていないのに、燃費だけは五つ子の中で一番悪い。

財布が無ければ切符どころかコンビニで食べ物さえ買うことはできない。

空腹と孤立無援な状況に高校生ながらも泣きたくなる心境な五月。

そんな五月の鼻孔を美味しそうな匂いがした。

 

「ユー、お前、食べ過ぎだぞ‥‥さっき肉まんとピザまんを食べたばかりじゃないか。この後、お昼ご飯もあるのに、今からそんなに食べて大丈夫なのか?」

 

なんだか聞き覚えのある様な声‥‥と言うか、「肉まん、ピザまん」の単語に反応して五月がふと、顔を上げると、そこには自分よりも少し年下の少女が二人居た。

そして、二人の少女の内、一人の少女の手には紙に包まれた美味しそうなメンチカツがあった。

 

「へーきだよ、ちーちゃん。お昼ご飯は別腹だから」

 

そう言って、メンチカツを持った少女はおいしそうにメンチカツを口へと運ぶ。

 

「ちーちゃんも食べてみる?あのお肉屋さんのメンチカツ、とってもおいしんだから」

 

そう言って、ユーと呼ばれた少女は二つ目のメンチカツをもう一人のちーちゃんと呼ばれていた少女に食べさせようとする。

五月は無意識の内にベンチからゆらりと立つと、自然と彼女の足は、二人の少女の下へと向かっていた。

 

「じゃ、じゃあ‥‥あー‥‥」

 

ちーちゃんと呼ばれていた少女がメンチカツを食べる前に‥‥

 

「あむっ‥‥」

 

五月はそのメンチカツにかみついていた。

 

「「っ!?」」

 

突然、横からフッと出てきた五月の姿にびっくりする二人の少女。

しかし、そんな少女たちの様子を気にすることなく、メンチカツを咀嚼する五月。

一口嚙んだ時にサクリと音を立てて、そこからじゅわりと肉汁が溢れる。

口の中に広がるのは、たっぷりとした肉汁。

軽い食感の衣と混ざり合い、口の中でほどけていく。

塩と胡椒が利いた、けれど決して利き過ぎていない絶妙な加減の肉。

コンビニで売っている様なものではなく、肉屋で売っているだけあって、良い肉を使っているためか、肉汁もコンビニのメンチカツと比べると一味違い、物凄い旨味を舌に感じる。

空腹となった五月の胃に生気を戻す様な‥‥

生きているという実感を覚えさせてくれそうな感覚になる。

 

「ちょっ、あんた誰!?」

 

「あぁ~っ!!‥‥わ、わ、わ、私のメンチカツが~ぁ~!!」

 

なんだかんだ言ってちーちゃんと呼ばれていた少女もメンチカツを食べたかったようだ。

その証拠にちーちゃんの目は五月にメンチカツを食われて涙目になっている。

 

「えっ?」

 

メンチカツを食べてほんのわずかであるが食欲を満たしたことにより、五月に理性が戻る。

そして、自分が今、何をしてしまったのかを自覚する。

 

「あっ、す、すみません!!」

 

五月は慌てて二人の少女に頭を下げて謝る。

 

「お、お腹が空いてつい‥‥」

 

「『つい』じゃない!!」

 

ちーちゃんは、五月に詰め寄る。

 

「ほ、ほんとうにごめんなさい!!」

 

「まぁ、まぁ、ちーちゃん、許してあげたら?それにこの人、なんかちーちゃんと声が似ていない?」

 

「ぬぅ~‥‥そんなわけがない!!それにお前は良いよな!?メンチカツを食べることが出来たんだからさぁ‥‥!!」

 

ちーちゃんは自分と五月の声が似ていることを認めてはいないが、ユーにはこの二人の声がそっくりに聞こえた。

 

「それで、アンタは一体誰なのさ?」

 

ユーは五月に名前を訊ねる。

 

「人の名前を訊ねるのであれば、まずは自分の方から先に名前を言うのが礼儀ですよ」

 

五月は、ユーとちーちゃんに自分の名前から名乗るのが礼儀だという。

 

「メンチカツ泥棒のくせに偉そうだな」

 

ユーとちーちゃんは呆れる感じで、五月を見ている。

 

「私はチト。それで、こっちが‥‥」

 

「ユーリです。それで、アンタは?」

 

「私は中野五月です」

 

三人の少女は互いに自己紹介をする。

 

(ナカノ?アズサと同じ苗字だ‥‥もしかして知り合いかな?)

 

ユーは、自分の知り合いに同じ「中野」と言う名字の知り合いが居ることから、眼前に居る五月は知り合いかと思った。

この時、まだユーは知らなかったが、自分の知る中野梓と五月の姉であり、中野家の次女の声がそっくりだった。

 

「それで、中野さんは何故、私のメンチカツを食べたんですか?」

 

ちーちゃんこと、チトはジト目で五月にどんな理由があって、見ず知らずの筈の自分のメンチカツを横から食べたのかを訊ねる。

 

「じ、実は‥‥」

 

五月はチトとユーリに事情を話す。

自分は姉妹たちと共に出かけてきたのだが、人波に呑まれてその姉妹たちとはぐれてしまった事、

携帯と財布を家に忘れてしまった事、

更にお腹が空いて動けなくなってしまった事、

そんな中、チトとユーリの二人が自分の目の前でメンチカツを食べており、その匂いを嗅いで思わず我慢できずにチトのメンチカツを食べてしまった事、

それらを聞いて、二人は‥‥

 

「イツキ、いくつなのさ?」

 

「子供か?」

 

「うぅ~‥‥返す言葉もありません」

 

事情はなんであれ、五月がチトのメンチカツを食べてしまった事に変わりはない。

 

「で、迷子なら、交番に行けばいいでしょう?」

 

「交番なら、駅の反対側にあるよ」

 

チトとユーリが迷子になったのであれば、交番で保護してもらえと伝え、その交番の場所も五月に教える。

 

「そ、そうですか‥‥で、ですが‥‥」

 

「ん?」

 

「どうしたの?」

 

「その‥‥お腹が減って‥‥力が出ません~‥‥」

 

「「‥‥」」

 

五月はお腹が減って動けないという。

しかも彼女のお腹は盛大に空腹であると言わんばかりに腹の虫が鳴いている。

 

「さっき私のメンチカツを食べたばっかりじゃないか!!」

 

「あ、あれだけでは全然足りません!!」

 

メンチカツ一つでは五月の胃袋を満たすほどではなかった。

そりゃあ普段から、朝からカツ丼をペロリ、昼食もうどんの大盛り+トッピングの具材三つ以上+デザート、放課後は肉まん三つ、夜はご飯の大盛り+おかずを平らげる五月の空腹時の胃袋にメンチカツ一つでは焼け石に水である。

 

(ユーみたいな奴だな‥‥)

 

声はチトに似ているが燃費の悪さ+食べる量はユーリみたいな五月だった。

チトとユーリ‥‥二人がもしも合体したら、それこそ五月二号になるのではないだろうか?

彼女の家庭教師がこの現場を見たら、きっとそう思うに違いない。

 

「そういえば、ちーちゃん。私もお腹が空いたのだ」

 

五月の話を聞いてユーリも今は空腹だと言う。

時間帯も昼に近い時間‥‥

五月ではないが、お腹が減る時間帯でもあった。

チト自身もお腹が減っていた。

だからこそ、五月にメンチカツを食べられたことに対してあそこまで怒ったのだ。

 

「‥‥それじゃあ、帰ろう‥‥お店でお昼ご飯を何か作ってやるから。私もお腹減ったし‥‥」

 

「おぉ!!」

 

チトがお昼ご飯を作ってやると言うと、ユーリは目を輝かせる。

反対に‥‥

 

「‥‥」

 

五月はまるで捨てられた子犬の様な視線をチトとユーリの二人に向けている。

『お昼ご飯』と言う単語を聞いて五月の胃は空腹度を増し、

 

「早く何か食べさせてくれ!!」

 

と、食べ物を強請っている。

 

「「‥‥」」

 

当然、その視線に二人は気づいている。

 

(ねぇ、ちーちゃん)

 

(なんだ?)

 

(あの人、こっちを見ているよ)

 

(気にするな‥‥交番の場所は教えたし、はぐれたのであれば、あの人の姉妹も探している筈だ。きっとあの人の姉妹がすぐに見つけてくれるはずだ)

 

(でも、空腹の中、イツキは、ずっとここで待っているんだよね?)

 

(まぁ、そうなるな)

 

(‥‥空腹の辛さは、ちーちゃんも知っているでしょう?)

 

(‥‥)

 

確かにユーリの言うとおり、チトも空腹の辛さは嫌と言うほど経験がある。

この世界に来てもそれを忘れることなく、一つの教訓としている。

それは、

 

食べ物を粗末にするな!!

 

である。

 

(ねぇ、ちーちゃん‥‥)

 

(はぁ~‥‥わかったよ‥‥)

 

ユーリの説得と自身の空腹体験から、チトは等々折れて、

 

「貴女も来ますか?」

 

チトが誘うと。五月は先程まで捨てられていた子犬の様な絶望感が漂う顔からパァっと輝く顔になる。

それはまさしく、砂漠のど真ん中でオアシスを見つけたかの様な心境だっただろう。

 

「い、いいんですか!?」

 

「まぁ、ここで見捨てるのも寝覚めが悪いので‥‥」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

「ただ、今日は店長さんが不在なので、そこまで多くのメニューは作れませんけど‥‥」

 

本日、日曜日は、ねこやは定休日であり、店長も久しぶりの休日なので、朝からどこかに出かけている。

よって、今日の調理担当は、必然的にチトになる。

なので、そこまで手の込んだ料理はチトにはまだ出来ない。

だが、ユーリも五月も質よりも量なので、問題はなさそうだ。

そして、やってきたねこや。

 

「‥‥洋食レストラン、ねこや?」

 

「そう、ここが私たちの家であり、お世話になっているお店」

 

「家?‥‥お二人は姉妹なのですか?でも、あまり似ていない様な‥‥」

 

「物心がついた時には二人で暮らしていたけど、実際に私とユーは、血は繋がっていない‥‥でも、私もユーも互いに家族だと思っている」

 

「‥‥」

 

自分や家庭教師兼同級生の男子高校生の家も事情を抱えていたが、この二人も家庭には何か事情があるのだろうと五月は察した。

今日は店が休みと言うことで、店の正面口には『本日休業』と書かれた札がかけられていた。

もっともチトとユーリはある事情から、この正面口を使用することはない。

よって、いつもの通り、裏の勝手口から入る。

カギを開け、ノブを回して、

 

「どうぞ」

 

五月を招く。

 

「ん?そういえば、お腹が空いていたのに、無事にここまで来れたね?」

 

ユーリが五月に店まで来れたことに疑問を感じ、空腹で交番に行けなかったのに、ねこやにはこうして来れたことを五月に訊ねる。

すると、五月は、

 

「ご飯のためならば、多少の空腹は問題ありません!!」

 

「「‥‥」」

 

超ドヤ顔で五月はそう言うが、チトもユーリもリアクションに困る反応だった。

 

「それで、何が食べたい?」

 

チトは手を洗いながらユーリと五月に何が食べたいかを訊ねる。

 

「私はなんでも結構です!!」

 

「何でもって‥‥それが一番困るんだけどなぁ‥‥」

 

「じゃあ、ちーちゃん。私はチャーハンが食べたい!!」

 

「チャーハン‥‥あれは結構力を使うんだよなぁ~‥‥」

 

ユーリからのリクエストを聞いて、面倒そうに言いながらもチトは厨房の冷蔵庫からチャーハンに必要な素材を出していく。

ユーリと五月は適当なところに座り、料理が出てくるのを待っている。

 

「えっと‥‥チャーシューは確か作り置きのモノがあったから、それを使うか‥‥あとは野菜と卵と、ご飯と‥‥付け合わせは、ワカメと卵の中華スープでいいか‥‥となると、ワカメと‥‥」

 

厨房の台に食材が置かれる。

 

「さてと‥‥」

 

チトはまず、付け合わせのスープから作る。

乾燥わかめを水に戻し、鍋に水を入れて湯を沸かす。

鍋の水が沸騰したら、鶏ガラスープの素、酒、塩を入れひと煮立ちする。

そして、沸騰したら、わかめを入れ、溶いた卵を少しずつ入れ、最後にごま油と白ゴマを入れて出来上がり。

 

次ぎはメインのチャーハンを作る。

チトは腕まくりをして、まな板と包丁を取り出す。

そして、まず、チャーシューを食べやすく、火の通りも早い大きさにスライスする。

次に長ねぎは横に切れ目を入れてみじん切りにする。

同様にピーマンも種を取り除き、細かく切る。

中華鍋に火を入れ、油を敷き、鍋が温まってきた時に片手で卵を割り、お玉で崩して、大きく混ぜ合わせる。

そして、半熟の状態で一度鍋から取り出す。

鍋をそのままの状態で野菜とチャーシューを入れて炒める。

具材が炒め上げるとご飯と卵を入れると、

 

「っ!?」

 

チトは鍋を大きく揺らしながらご飯を炒める。

鍋の中のご飯は大きく揺らされるたび、宙に舞い上がる。

これがチトの言う『力を使う』を意味していた。

 

「凄い‥‥ご飯が宙に浮いています‥‥」

 

五月はその光景を見て、思わず声を漏らす。

 

「鍋から放り上げられたご飯が、空中で炎の上を通り抜ける‥‥その時、ご飯と具材は直に炎にあぶられる。それによって、余分な油が飛んで、ご飯がパラりとなり香ばしくなる。鍋の中でいじいじとかき混ぜているだけだと、油でベタベタしたモノしか出来ない‥‥」

 

チトは中華鍋を大きく揺らしながら、何故こんなに大きな動作なのかを説明する。

 

「そういえば、ちーちゃんが作った最初の頃のチャーハンはベチャベチャしていたもんねぇ~‥‥」

 

「うるさい」

 

最初に店主から教わりながら作ったチャーハンはチャーハンもどきと言う失敗料理だった。

その頃から見ると、チトの料理の腕は確実に上がっていた。

 

チトは頃合いを見て塩、コショウ、オイスターソースを少量入れてまた大きく中華鍋を揺らす。

出来上がったチャーハンをチトは皿へと盛る。

五月の前には皿に盛られた黄金色の山が聳え立っていた。

香ばしい香りが漂っており所々に細かく刻んだ肉と野菜が鉱物のように存在している。

 

「ごくっ‥‥」

 

五月はそのメニューを見て思わず唾を飲み込む。

 

「では、いただきます‥‥」

 

手に取ったレンゲでこんもりと山になった料理を掬い上げ、それを口に運ぶ。

五月は空腹ながらもそれを味わうかのように口の中で転がし咀嚼する。

 

「‥‥」

 

その後は、ひたすらに無言‥ただ無言で食べ進めて行く。

 

(こ、これ、おいしい!)

 

香ばしい油と甘辛く味付けがされた肉と少し癖の強い野菜の旨みをたっぷりと吸い、素晴らしい味となった熱々の米。

口の中でパラリとほぐれ、舌の上で踊るように旨みを炸裂させ、噛み締めるとさらに旨みを吐き出す。

そして、その味を柔らかく包み込む卵。

肉、野菜、コメ、そして卵。

一匙、一匙が素晴らしい味の連続で手が止まらない。

ひたすらにチャーハンを食べ、時折スープを飲む。

スープはあっさりとした薄味に仕上げてあるので、チャーハンの味を惑わすことはなかった。

朝、姉である次女が作った朝食を姉妹の中で一番多く食べたにも関わらず空っぽになった胃袋が満たされていく。

チトやユーリともどもひたすらに無言でチャーハンを掻き込んでいく昼の時間‥‥

五月にとっては、静かな‥‥だが確かに幸福な時間であった。

 

「どうかな?味は?」

 

チトが五月にチャーハンの感想を訊ねる。

 

「ほんっとうに美味しいです!!」

 

チャーハンを平らげた後、五月はチトに感想を述べる。

 

「このチャーシュー、独特の肉の味がしましたが、使っているのはどんな豚なんですか?」

 

「それは豚じゃなくて、イノシシのチャーシュー」

 

「へぇ~‥‥どうりで、独特の風味を感じました」

 

異世界食堂の常連の一人から普段の食事のお礼で以前、立派なイノシシを貰った。

店主はそのイノシシの肉を使って、チャーシューを作ってみたのだ。

大きなイノシシだったので、作り置きの分もあった。

今回のチャーハンにはそのチャーシューを使用したのだ。

 

「それで‥‥その‥‥」

 

五月はなんか気まずそうな顔をする。

 

「ん?どうしたの?」

 

「その‥‥お、おかわりを‥してもいいですか?」

 

五月はチャーハン一皿ではまだ足りないようで、おかわりを頼んだ。

 

(ちーちゃんも初めて此処に来た時もパンとスープをおかわりしたけど、その時のちーちゃんとイツキのリアクションがそっくり‥‥)

 

声も似ていれば、おかわりを頼んだ時のリアクションもチトと五月は似ていた。

 

「‥‥ま、まぁ‥ユーが居るから沢山作ったけど‥‥」

 

ユーリが居るので、チトはそれなりの量を作っていたので、おかわりをしても問題ないと言う。

五月から皿を受け取り、おかわりのチャーハンを出す。

 

「ちーちゃん!!私もおかわり!!」

 

予想通り、ユーリもおかわりを頼んだ。

それからユーリと五月は争うかの様にチャーハンをおかわりした。

 

五月がねこやで昼食を摂っている頃、五月の他の姉妹はと言うと‥‥

 

「どう!?居た!?」

 

「ううん、こっちにはいない!?」

 

他に姉妹たちが、五月が居ないことに気づいたのは、お昼の時間よりもかなり前で、その後、姉妹たちは買い物をそっちのけで自分たちの末っ子を捜しまわっていた。

そもそも、五月がはぐれてしまったのは、人ごみの他に五月がお昼ご飯は何にしよう?

最初は五月の携帯に電話をかけたが、彼女は自宅に携帯を忘れて出てきているので、当然出るわけがない。

 

「フードコートやレストランを見てきたけど、居ないよぉ~」

 

「全く、どこに行ったのよぉ」

 

「一人で帰っちゃったのかな?」

 

「‥‥でも、五月、財布を忘れているかもしれない」

 

「「「えっ?」」」

 

三女、三玖のつぶやきに固まる残り三人の姉妹たち。

 

「三玖、それってどういう事?」

 

「‥‥見間違いかもしれないけど、リビングのテーブルに五月の財布を見たような気がして‥‥」

 

「「「‥‥」」」

 

三玖の話を聞いて、他の三人の姉妹たちは、表情が固まる。

 

「あっ、で、でも‥私の見間違えかもしれないし‥‥」

 

三玖もリビングのテーブルに置いてあったのが、本当に五月の財布だったのか自信がなかった。

財布なんて出かける際の必須アイテムだし、それを忘れるなんてありえない事だ。

でも、もし、本当に財布を忘れているのだとしたら‥‥

 

「一応、交番に行ってみましょう」

 

「そうだね」

 

「そうね、もしかしたら、交番に居るかもしれないし‥‥」

 

「えっと、ここから一番近い交番は‥‥」

 

迷子になったのだから、五月もきっと交番に居るのではないかと思い、五月を除く姉妹たちは交番へと向かった。

 

その捜し人である五月はと言うと‥‥

 

「う~ん~‥‥この杏仁豆腐もなかなかの絶品です~」

 

ねこやにてデザートの杏仁豆腐を食べていた。

匙で掬い口の中に入れると、つるんとした食感と杏仁豆腐独特のさわやかな味わいが口の中に広がる。

 

「ねぇ‥‥」

 

満面の笑みを浮かべながら杏仁豆腐を食べている五月にユーリが声をかける。

 

「なんですか?」

 

「いや、『なんですか?』じゃなくて、お昼ご飯食べて、デザートまで食べたんだからさぁ、もう、お腹いっぱいになったんじゃない?」

 

「はい!!どうもありがとうございました!!」

 

「そうじゃなくて、他の姉妹の人、探さなくていいの?」

 

「‥‥あっ!?」

 

ユーリの指摘を受けて、今自分が迷子になっていることを思い出した五月。

 

(ほんとうに大丈夫かな?この人‥‥)

 

(この人もイシイみたいにボケっとしているなぁ‥‥)

 

「お昼ご飯、どうもありがとうございました!!」

 

「交番の場所わかる?」

 

「はい、大丈夫です!!」

 

そう言って、五月はねこやを後にした。

そして、チラッとねこやのあるビルを見ると、

 

(近くにはケーキ屋さんもあるみたいですから、今度はちゃんと財布を持って、来てみましょう)

 

五月は、今度ちゃんと財布を持参して、ねこやの料理と近くのケーキ屋も入ってみようと決めた。

そして、チトとユーリから聞いた交番へと向かうと、

 

「あっ!!見つけたよ!!五月!!」

 

「えっ?ほんとだ!!五月ちゃんだ!!」

 

「もう、心配したんだからね」

 

「まったく、高校生にもなって迷子になるなんて‥‥」

 

「ご、ごめんなさい。みんなには心配をかけたみたいで‥‥」

 

「まぁ、こうして無事に見つかったから良かったけど‥‥」

 

「五月、あんた携帯はどうしたの?」

 

「そ、それが、家に忘れてきたみたいで‥‥」

 

「三玖が、リビングのテーブルに五月の財布を見たって言っていたけど‥‥」

 

「あぁ‥‥三玖が見たのは間違いなく、私の財布です」

 

「はぁっ!?あんた、携帯も財布も忘れていたの!?」

 

次女の二乃は、五月が財布も携帯も忘れていたことに呆れる。

 

「は、はい」

 

「五月ちゃん、それまでどこにいたの?」

 

「そうだよ!!もうお昼の時間過ぎているんだよ!?五月、お腹空いてないの!?」

 

五月の燃費の悪さは、当然他の姉妹も知っている。

朝食を食べた時間から、かなりの時間が経っている。

普段の五月ならば、もうとっくに胃の中は空になっている筈だ。

しかし、眼前の五月は空腹を訴えている様子は全くない。

 

「あっ、実は親切な方が、お昼ご飯を作ってくれまして‥‥それとデザートで杏仁豆腐も食べました!!」

 

五月は馬鹿正直にねこやでお昼ご飯を食べたことを話した。

まぁ、真面目な五月らしいと言えば、五月らしい。

そんな五月に対して、

 

「はぁっ!?あんた、私たちが必死に探している中、食事をしていたの!?」

 

次女の二乃が五月に詰め寄る。

 

「えっ?は、はい‥‥」

 

「「「「‥‥」」」」

 

五月の言動に呆れる他の姉妹たち。

 

「裁判長、五月には今度、パフェでもおごってもらいたいと思います」

 

二乃が一花に今回の騒動の罰として、五月に今度、パフェでもおごってもらおうと進言する。

 

「採用」

 

「えっ!?ちょっと‥‥」

 

「じゃあ、私、プリンアラモード!!」

 

四葉は五月にプリンアラモードをおごってもらうことにして、

 

「私は抹茶パフェ」

 

三玖は戦国武将が好きな一面があり、それと同時に和風なモノを好み抹茶ソーダなるものを愛飲している。

 

「私はチョコレートパフェね」

 

提案した二乃はチョコレートパフェをおごってもらうつもりで、

 

「じゃあ、お姉さんはフルーツパフェをおごってもらおうかな?」

 

「えっ?ええええー!!」

 

有無を言わさず、姉たちにパフェをおごる羽目になった五月であった‥‥

 

後日、五月は姉たちにパフェをおごることになり、その姿を見た彼女たちの家庭教師である男子高校生はその光景に首を傾げていた。

さらに後日‥‥ハンドルネーム『M・A・Y』と言う人物が、ねこや、そしてねこやの近くのケーキ屋に現れ、口コミサイトに高評価をつけたことで、ねこやと近くのケーキ屋にお客が殺到した。

さらにまた後日‥‥

 

「二乃、チャーハンを作ってください!!」

 

五月は中野家の厨房担当である二乃にチャーハンを作ってくれと頼む。

 

「チャーハン?まぁ、いいけど‥‥」

 

二乃は五月に頼まれたとおり、チャーハンを作る。

二乃が作ったチャーハンを食べた五月であるが、

 

「なんか違う‥‥」

 

「何が違うの?」

 

「以前、ねこやで食べたチャーハンは、もっとパラっとして、お米がほんのりとこんがりとしていました!!」

 

「‥‥あんた、人に作らせておいて、随分な意見ね」

 

「二乃もねこやのチャーハンを食べればわかります!!あそこのチャーハンは‥‥」

 

と、二乃にグダグダとチャーハンとは何ぞやの講義をし始めた。

 

「そうだ!!今度、二乃もねこやに行きましょう!!そうしましょう!!そうすれば、チャーハンのなんたるかが分かるはずです!!」

 

「えっ?ちょっ‥‥」

 

「いいですね?二乃」

 

有無を言わさず、五月は今度、二乃を連れてねこやに行くことにした。

後日、ねこやに二乃と共に来た五月であったが、チトの声が五月に似ていることに驚くと同時に、ユーリは、二乃の声が中野と言う名字の知り合いの声に似ていることに驚いた。

 

四女に関しても以前、木組みの家と石畳の街とあの田舎の町で出会った少女たちと声が似ていることにも驚愕した。

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