超短編です。昔配ったビラの裏に書いたものです。
とりあえず載せる感じです。

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ロスト

世の中には、予測不可能な事態に陥る事が多々ある。どんなに対策していても、その隙間を縫うようにして襲いかかってくる。そして得てしてその多くは、手遅れな場合が多い。原因を追求しても、既に結果が覆らない事が殆どなのだ。何という理不尽。だが、悲しいかなこういった事態には結構な確率で遭遇してしまう。運命の女神がいるとしたら、さぞ性格の悪い事だろう。

 

 

さてこれは、俺の身に起こったそんなお話である。

 

 

 

 

俺は駅のホームに立っていた。駅名には『目白』とある。平日の午後なのに、随分と人が多い。

目の前を、黄緑のラインが入った電車が走り去っていった。今の今まで、俺が載っていた電車だ。噂によると、終点が無いらしい。まったく……そんな電車、ある訳ないだろう。東京都民は抜きん出たユーモアを持っているらしい。いや、それとも地方民が考えた冗談なのか。後者の方が現実味があるな。

 

 

もうお分かりだろうが、俺は東京都民ではない。本籍は福岡だ。

この世に生を受けて十七年。何故地方民の俺が東京の駅にいるのかと言えば、当然理由がある。

 

 

中卒で上京? それならあんな自己紹介する訳ないだろう。

サボり? こう見えて皆勤賞だ。そもそも、どんな行動力だ。自宅からここまで、何キロあると思っているんだ。

もっと現実的な答えが聞きたいな。それくらい想像がつくだろう?

 

 

ま、一応答えを教えておこう。そう、修学旅行だ。

今日は二日目。自由行動で皇居に向かう途中なのだ。

まったく……。先ほど路線図を見たが、“まるで迷路”とは言い得て妙だと思った。JRだけでなく、そこに地下鉄や私鉄が加わるという。

 

 

目的地まで複数のルートがあるなんて、何の意味があるのか。効率重視? 笑わせてくれる。それで得するのは、東京都民だけだ。我々地方民にとっては、ただややこしいだけである。

今日だって、グループを作って出発したのに、気が付けば一人だ。まあ皇居なんて大して興味ないし、最悪辿り着けなくても構わない。それよりも重大な問題が、今の俺にはあるのだから。

 

 

それが何かって? 流石に想像もつきまい。この人生最大とも言える、我が身に降りかかった災厄の事など。

普段の俺なら絶対にありえない状況なんだがな。やはり修学旅行というイベントによる、心の隙を突かれたか。

……ふむ、だいぶ前置きが長くなってしまったが、そろそろ話すとしよう。願わくば、この苦しみを共感してもらえる仲間が現れてくれるように。

 

 

 

 

…………迷子です誰か助けて。



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