これは、自らの証明を奪われた少女の反逆劇、その序章

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初めまして、初めての投稿小説です。もしもハカメモで女主人公が選択できればなという思いから書いてみました。駄文ですが、どうぞ。


ハッカーズメモリー THE Revenge of girl prologue

電脳空間EDEN

視覚的・感覚的にアクセスできるようになったもう一つの世界、あるいは日常。その電脳の楽園に、人々は熱狂している。理由は多々ある。現実ではできない事をするため、孤独をいやすため、居場所を作るため。しかし、そんな電脳空間にも問題がある。突如発生したウイルスプログラム、通称『デジモン』を悪用したハッキング行為。それはこのEDENにとって、大きな社会問題となっていた。電脳空間へのアクセスキー兼身分証明書でもあるアカウントを狩る行為が多発しているからである。そしてそんな者たちに制裁を加え、EDENの治安を守るためにデジモンを活用するハッカーたちも、確かに存在している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

EDEN下層アンダークーロン アカウント狩り集団の領域

 

「ハハッ、今回も大量のアカウントが手に入ったなぁ。」

 

「こんだけありゃ相当な金になるんじゃね?」

 

「そうだろうな。」

 

キャップをかぶった数名の男達が、ケラケラと笑いながらアカウントを盗めたことを喜んでいた。リーダーと思われる男が、端末でアカウントの成果を確認し、不気味に笑っている。

 

「あの、すいません。」

 

「?」

 

自分たちを呼ぶ声がしたためか、男たちが声のした方向を向く。歩いてくるのは、青いパーカーを羽織りついているフードを深くかぶった、小柄で短パンの少年?である。

 

「ああん、なんだクソガキ?」

 

「それ、あなた達が奪ったアカウントですよね? こっちに渡していただけますか?」

 

少年?は静かにそう言う。ハッカー達は互いの顔を見あうと、ぶわははと盛大に笑う。

 

「なに? 俺達の同業者? 手柄を横取りしようっての?」

 

「そんな悪党じみた事をする気はないです。ただアカウントを、元の持ち主に返すだけです。」

 

少年?は声色を変えぬまま、そう男たちに言い切る。リーダーはそれを聞くとはんっと鼻で笑う。

 

「金になるモンをやすやすと手放すわけねぇだろ? どうしても欲しいってんなら-------」

 

男は端末の画面を少年?に向ける。すると端末からデータの粒子があふれ、腕の大きさが左右非対称の黄色いモンスター、デジモンを構築する。

 

「このサイクロモンをぶっ倒してから言うんだなあ!!」

 

サイクロモンは右腕を大きく振り上げ、今にも少年?に振り下ろそうとする。瞬間少年?は、リーダーに似た端末をサイクロモンにかざし唱える。

 

「-------ゴーレモン」

 

端末からはアカウント狩りのリーダー同様粒子があふれ、真っ先にサイクロモン以上に太いであろう腕を形成する。その腕は拳を作っており、右腕を振り下ろす前のサイクロモンを殴り飛ばす。

 

「なっ……!?」

 

突然の出来事に、リーダーは驚く。そうしているうちに、少年?の放ったデジモンは全体を構築し終える。その姿はまるで、岩の壁を思わせるほどに、岩石に覆われていた。

 

「……倒しましたよ?」

 

「ふざけんな、まだ勝負はついてねぇ!! お前ら、やれ!!」

 

リーダーが叫ぶと、部下の男たちは一斉に端末をかざし、緑色の鬼の姿をしたデジモン、オーガモンを構築する。倒れていたサイクロモンは起き上がり、オーガモン達は少年?に向けて突撃する。

 

「カブテリモン、メガブラスター。」

 

少年?は再び端末をかざし、巨大なカブトムシデジモン、カブテリモンを呼び出す。構築を終えたカブテリモンはその手に巨大な電撃の球体を作っており、そのままオーガモン達に向けて発射。オーガモン達は吹き飛ばされる。その時起きた爆風で、少年?の被っていたフードが外れる。

 

「!? お、女‥‥‥だと…‥‥!」

 

リーダーは驚愕する。自分達が男だと思っていた相手が、薄茶色をしたミディアムポニーテールの少女だったからである。幼さも未だ残っており、従えているデジモンと見事にミスマッチしていた。

 

「ひ、怯むな!? 相手は女一人だ、数で押していきゃぁ--------」

 

「悪いな、一人じゃないんだ。」

 

男の声が響き、体勢を立て直そうとするデジモン達に追い打ちをかけるかのように横から凄まじいスピードで斬り付ける。そのデジモンは、青黒い人型の竜の姿をしていた。加えて少女の元に、三人の男女が歩み寄ってくる。

 

「リ、リーダー……あいつら、まさか…‥‥!」

 

アカウント狩り達は彼らを、そして彼らが共通で身に着けているパーカーのマークを見て戦慄する。

 

「あいつら、伝説のハッカーチーム『ジュード』のNo.2、御島龍司率いる便利屋集団-------」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  『フーディエ』だ‥‥‥‥!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく足止めしてくれたな。ま、一人でこれだけ相手取るには上出来だ。」

 

そう言って少女の髪を強めにつかむ青年はリーダーである御島龍司。

 

「リーダーはともかくして、まさかお嬢まで同行なんて。そんなにレイラが心配だった?」

 

同行してきた一人の少女をからかう龍司と同じくらいの背の青年は副リーダー的存在の今井千歳。

 

「別にそういうのじゃないから。」

 

からかわれている肩に虫型のデジモンを乗せている少女は天才ハッカーで龍司の妹、御島エリカ。

 

「まあ…‥あたしもここまでできた事には驚いてます‥‥…。」

 

そしてそんな三人に対して苦笑を浮かべる、アカウント狩りと戦っていた少女、天沢レイラ。

 

「ま、まさか…‥‥あんなガキがフーディエの一員だったなんて…‥。」

 

相手がフーディエだと知ったアカウント狩りたちは、先ほどまでの気迫が嘘だったかのようにたじろいでしまう。龍司は先程アカウント狩りのデジモンを攻撃した相棒、サイバードラモンを背に、アカウント狩り達を睨む。

 

「さて、俺達フーディエのクライアントはお前らみたいなEDENを荒らすハッカーを許さない。

 つまるところ、お前達への制裁がお望みだ。」

 

「に、逃げるぞ!! あいつらはやばい!!」

 

アカウント狩りのリーダーは部下に指示し、急いでその場を離脱しようとする。

 

「シードラモン、アイスアロー。」

 

逃げるアカウント狩りを見たレイラは、端末から三体目となる竜のようなデジモンを呼び出す。シードラモンは口の中で複数の氷柱を形成し、アカウント狩り達に放つ。氷柱はアカウント狩り達の目の前に突き刺さり、巨大な氷の壁となる。

 

「すいません。まだアカウント、返してもらってませんよね…‥‥?」

 

アカウント狩り達が振り向きざまに見たレイラは、笑っているのか怒っているのかもわからない、静かな表情をしていた………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ……。」

 

アカウント狩り達への制裁後、レイラはフードを深くかぶり、涙目でへたり込んでいた。千歳はそんな彼女を見てあっはっはと笑う。

 

「おいおい、さっきまでのかっこいいレイラはどこ行っちゃったの?」

 

「あんなの、見栄張ってただけに決まってるじゃないですかぁ……。本当はすごく怖かったです

 めっちゃ怖かったです早く千歳さん達に来てほしかったです…‥‥!」

 

と、レイラは下を向きながら答える。そんなレイラに言葉を交わすのは先程レイラとともに戦った三体のデジモン達。

 

『せやけど、レイラはんホンマかっこよかったわ。「悪党じみた事をする気はないです」。』キリッ

 

『本当にイケてたね~。最初殴った時にほら、あのセリフ。「倒しましたよ?」』キリッ

 

『ゴツであの泥棒、いい気味だった。「まだアカウント、返してもらってませんよね?」』キリッ

 

「もうやめてーーーーーーっ!」

 

デジモンにまでからかわれたレイラは、半泣きしながら耳をふさぐ。龍司はそんなレイラを見て、はあっと溜息を吐く。

 

「しっかりしろ。今エリカが回収したアカウントを確認してる。お前のもあるかもしれないぞ?」

 

「そ、そうだった……‥!」

 

思い出したレイラは立ち上がり、エリカの元へと走っていく。そしてエリカより背の低いレイラは、グッと背伸びして端末を覗く。

 

「エリカ、どうだった?」

 

「……駄目、全部確認したけど、あなたのアカウントはなかった。犯人は

 あいつらじゃないみたい。」

 

「…‥‥そう…‥。」

 

それを聞いたレイラは、ガクッとうなだれる。そしてパーカーのポケットに手を入れたかと思うとフードをかぶったままゆっくりと電脳空間の空を見上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたしのアカウントを奪った犯人さんへ

 

貴方は今どこにいますか? 誰も知らない場所に隠れていますか? どこかであたしを見てますか?

 

あたしは貴方にすべてを奪われました。 信頼を奪われました。 日常を奪われました。

 

代わりにハッカーの称号を手に入れました 協力者に出会えました デジモンと契約できました

 

便利屋として多忙ですが悪くありません 戦いも、何とかやっていけてます 少しだけ感謝します

 

ありがとう犯人さん でもあたしは、貴方を許しません 絶対に許しません そう、絶対に

 

あたしはもっと強くなります ハッカーの腕も磨きます デジモンだって強くします

 

ですので犯人さん あたしのアカウントはちゃんと持っててください 売ったりしないでください

 

あたしは貴方を必ず見つけます 絶対に貴方に制裁を加えます アカウントだって取り戻します

 

それまでは、あたしとは違った有意義な時間を どうぞごゆるりと どうぞ…‥どうぞ…‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ハッカーズメモリー THE Revenge of girl prologue END




序章なので、実際の内容次第では連載版を出すかもしれません。


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