サイタマは諦めた。己の頭部に頭髪を生やすことを、サイタマは決意した。ハゲによるハゲのためハゲの国を作ることを…

1 / 1
マルハーゲ帝国 初代皇帝 サイタマ

 

 

もういっそうハゲだけの国を作ろう

 

 

サイタマは強大な力を得たものの、その代償なのか髪を失い、若くして ハゲ になってしまった。

 

無論、彼とて努力はした。

だが懸命な努力を行ったにも関わらず……まるで神に見放されたかの如く、その努力が実を結ぶことはついぞ無かった。

 

故に頭髪を生やす努力を放棄した。そして思い立った。

 

 

「そうだ。ハゲの国を作ろう」

 

 

その結果、彼はハゲのための国。ハゲのための楽園を作ることにした。

 

 

災害レベル「神」

マルハーゲ帝国 初代皇帝 サイタマ

 

 

人類最強最悪の災害の誕生の瞬間であった。

 

 

 

 

  ▼▼▼

 

 

 

 

Z市にある危険地帯。

サイタマが住まうマンションの一室に、片目に傷のある強面の青年が訪れていた。 

 

 

「皇帝、A市に災害レベル「竜」の怪人が出現しました。

 ヒーロー協会から救援の要請が出ています」

 

「わかった。ちょっと正義執行してくる」

 

 

その後、彼はものの数分で災害レベル「竜」の怪人を肉片に変えて討伐を果たす。

 

 

「ほんじゃ、お前らいつものアレ頼むわ」

 

 

怪人の襲撃を受けて負傷したであろうヒーローたちにそう声をかけるとサイタマは帰っていった。

 

 

「あれがZ市の廃墟地帯… いや、今はマルハーゲ帝国だったな…」

 

「ああ、S級ヒーローが束になっても敵わなかった災害レベル「神」の男…」

 

「マルハーゲ帝国の皇帝、サイタマ…」

 

「でも国民が一人もいない国の皇帝」

 

 

 

 

  ▼▼▼

 

 

 

 

「おかしい」

 

「おかしいとは?」

 

 

自宅でゲームをしているサイタマに強面の青年──キングが聞き返す。

 

 

「何で国民が増えないんだ? というか一人もいないのはおかしいだろ」

 

 

あの日、マルハーゲ帝国の建国を決意したサイタマは先ず手始めにテレビや新聞社を襲撃、ハゲのための国──マルハーゲ帝国の建国の宣伝をした。

 

当然、そんな蛮行を犯せばヒーローが駆けつける。

誰もがこれでこの事件は終わるだろうと思った。

 

だが彼はこれを返り討ちにする。

これには誰もが驚いた。

 

この時ヒーロー協会は倒されたヒーローがC級ということもあり、まだ事態を重く見ていなかった。

 

 

──C級がダメならB級を…

 

 

これもまた打ち倒される。

 

 

──B級がダメならA級を……念のために数人で向かわせよう。

 

 

サイタマは拳一つで黙らせた。

 

 

ヒーロー協会は唖然とした。

どう見てもザコっぽそうな外見にA級ヒーローが倒されていくさまは悪夢を見ているようだった。

 

事態を重く見たヒーロー協会はS級ヒーローであるタンクトップマスターにお願いした。

 

さすがにS級なら大丈夫だろう。

しかし心のどこかでは、もしかたら…? と思いつつも。

 

始めは互角に戦っているように見えた。

周囲の地形が変わるほどの激しい戦闘を繰り広げられている光景の中、彼なら──タンクトップマスターなら倒してくれるに違いないと否応なしに期待が高まる。

 

 

「あ、わりぃ。そろそろスーパーの特売だから」

 

 

言うな否、サイタマはタンクトップマスターの首筋に手刀を叩き込んで再起不能にした。

 

ヒーロー協会は愕然とした。

 

S級ヒーローが赤子の手を捻るように軽く倒されるさまを見せられて、しばらくの間、誰もが言葉を発することができなかった。   

 

 

「タツマキを……いや、招集可能なS級ヒーロー全員を動かす必要がある…」

 

「災害レベルは…?」

 

「神だ」

 

「髪だけに?」

 

「……………………」

 

 

サイタマが立ち去った後、ヒーロー協会はすぐにサイタマの調査を行った。万全の体制で完全に倒すために…

 

 

 

 

  ▼▼▼

 

 

 

 

数日後、サイタマを倒すための戦力がZ市の廃墟地帯に送られて……結果、敗北した。

 

災害レベル「竜」ならば問題なく倒せる戦力でも相手がサイタマだと話は変わってくる。

 

あらゆる攻撃が通じず、逆にサイタマのたった一発の攻撃で味方が倒されていく。そんな冗談みたいな光景がそこにあった。

 

全てのS級ヒーローが倒れたとき、ヒーロー協会はサイタマと戦うことを諦めた。事実上の人類の敗北であった。

 

しかし幸か不幸か、サイタマは人類を滅ぼすような危険な思考を持っているわけではなかった。

 

そこでヒーロー協会は異例の措置を取る。

 

サイタマと交渉し、Z市の廃墟地帯を彼の領地として認めたのである。

 

マルハーゲ帝国の誕生であった。

 

 

 

 

  ▼▼▼

 

 

 

 

『──さあ、君もマルハーゲ帝国の住民になろう!』

 

 

テレビから流れてくるマルハーゲ帝国への勧誘のCM。

A市に出現した怪人をサイタマが倒したことを大々的に報道している最中である。

 

サイタマが強力な怪人を倒すたびに流されているが、悲しいことにマルハーゲ帝国へ入国しようとする物好きな人間は……今のところ皆無に等しかった。

 

 

「おかしい」

 

「仕方ないよサイタマ氏。こんな危険地帯に来る人なんてそうはいないよ」

 

「なんかヒーロー協会にいいように言いくるめられた気がする…」

 

「サイタマ氏は誓約書とか、ほとんど目を通さないからね」

 

 

マルハーゲ帝国初代皇帝サイタマ。

今現在、彼の領内にいる住民の数0名。

 

  




(´・ω・)にゃもし。

息抜きに執筆。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。