捕まりたくない、ヴィラン人生   作:サラミファイア

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USJ編一気に投稿。
本日3話目。これで最後です。



12話「爆破君とバーガー野郎」

「ふっざけんなァアア!」

眼前で大規模な爆発が起きたせいで一瞬ひるんだ。

まあひるんでもそうでなくても、こんな怒りにまみれた爆発を受けたくない俺に、攻撃は通じない。

俺を中心に半径一メートルの強力な壁は、俺の体を傷つけたりはしないのだ。

 

煙が晴れても無傷な俺を見て爆豪君はわかりやすく顔を歪める。さきほどのオールマイトの攻撃を俺が防いだことで俺の個性はわかっているはずだ。攻撃が通じなかったことで苦々しそうにしているのは、少しだけ可笑しい。

 

突如始まった俺対爆豪君の戦いに、周りが驚いているのがわかる。

 

「おい爆豪……!? 知り合いか!?」

「お互い妙なあだ名で呼んでたな……緑谷! 中学の同級生かなんかか?」

 

切島君と轟君の問いかけに、爆豪君はまるで聞こえていなさそうだが緑谷君は茫然と俺の顔を改めて確認した。ハッ、とわかりやすく何かに思い当たったような顔をする。

いやいや、まさか覚えてるのか?

 

「いや、同級生じゃない……けど、一回会ったことがある……! かっちゃんと一緒にいるときに……!」

「友達ってことか!?」

「ダチじゃねえよ!!」

 

うわ、本当に覚えていた。一回しか会ったことないのに。

爆豪君の方も問答を聞いていたらしく、ダチだということは明確に否定する。

ついでに驚いているのはヒーロー側だけではない。

 

「おいゼロ……」

「ゼロ、どういうことですか?」

 

死柄木さんや黒霧さんまで俺に問い詰めてくる。家出期間中に爆豪君と会っていただなんてもちろん、どこで何をしていたかすら伝えていないのだから雄英高校に知り合いがいるなんて思ってもないだろう。どうしよう。

 

「……別に大したことじゃない。後で話す」

 

とりあえず問題は先送りだ。今はこの怒れる爆豪君の相手をしなければならない。なにしろ相手は雄英高校にトップで入学したエリートだ、気を抜けば死柄木さんたちと撤退するときに逃げ遅れる。

そんなのはごめんだ。

 

「……まあいい。そのまま生徒たちを抑えておけ」

「! 少年たち! ここは私に任せて逃げなさい! 相手をしてはいけない!」

「オールマイト、そうも行きませんよ……爆豪が止まる気がしねえ!」

 

轟君の言う通りである。オールマイトの指示を無視し、爆豪君は再び俺に向かって爆速ターボをかけながら距離を詰めてくる。

だがオールマイトはこちらばかり気にしていることもできない。

 

「俺たちはオールマイトだ。———クリアして帰ろう!」

「……SHIT!」

 

向こうも始まった。

視界の端のほうで、脳無がオールマイトと再び激突するのが見えた。これでオールマイトは脳無につきっきりになるしかなく、こちらに移動してくることはないだろう。

俺はこちらで指示された通り生徒を相手する。独断専行した爆豪君が、俺を狙っていることだし。

 

「……ってめえ……!」

 

不意に大声で爆豪君が叫ぶ。

愚直に俺に突進してくるかと思いきや、伸ばした左腕のすぐ前で急に爆発がおき上空に飛び上がった。つられて上空に視線をやったその瞬間、背後から強い衝撃が走った。

……あれか、こまやかな出力の調整で俺の上空、真後ろにすばやく回り込んだのか。

相変わらずの強さだ。防御がなかったらやられてる。

 

「死角でも防げるのかよ! チートじゃねえか!」

 

切島君、それほどでも。

 

「っ!」

 

そんなことを思った瞬間、足元に冷気が吹き込んできて一瞬びっくりする。

発動しっぱなしだった個性が、足元からにじり寄ってきた氷を防いだ。見ればそれなりの距離をとっていたはずなのに俺への氷の道がしっかりと形成されている。

 

「チッ……!」

 

こちらを睨む轟君の舌打ちが聞こえる。轟君の個性か。

俺の視線が上空にそれた瞬間に足元を凍らせておこうという算段、抜け目ない。

未だ俺の後ろにいる爆豪君は再び俺に攻撃を仕掛けてこようとしているし。茫然としているのは緑谷君くらいだ。

 

 

「……なんっかあるとは思ってた……!」

 

……後ろにいる爆豪君の声。振り向けばうつむいた爆豪君がこちらに歩み寄ってくる。

 

 

「なんかあるとは思ってたが、それが()()か!?」

 

 

絞り出すような声は、しかし彼に似合っていない。

間違いなく、いつも通りの爆豪君じゃない。

何度突貫してこようが俺の個性で防がれることもわかってるはずだ。それなのに愚直に突っ込んでくるなんて、ますますらしくない。

 

「おい爆豪! 落ち着け! 一人で突っ込んでも仕方ないだろ!」

 

しゃあねえ!と悪態をつき切島君と轟君が動く気配がする。

 

「緑谷! お前も手伝ってくれ!」

「う、うん……!」

 

本格的に四人でかかってきた。

先行する爆豪君にサポートする形だ。一対四ってなかなか不公平だと思うのだが。

 

「邪魔すんな! 俺はこいつに、聞かなきゃなんねえことがあんだよ!!」

「相手はヴィランだ、全員で当たるべきだろ。……どういう間柄なのかは知らねえが、聞くのは捕まえた後でできる!」

「やるぞ爆豪!」

「―――うるせえッ!!」

 

もっともな判断だ。勇ましく構える四人はまさにヒーローの卵と言っていいだろう。

 

再びの攻防。瞳孔が開ききった爆豪君の攻撃を個性で防ぎきる。爆豪君は意外にも俺の真正面の位置をとり、轟君や切島君の介入を防ぐように彼らの前を陣取る。

しかし爆豪君の言をスル―する生徒たち三人は戦う気だ。

生徒たち全員がかかってくるのであれば、同じ方向に全員がいる方が好都合だ。特にアクションを起こさず、爆豪君の行動を見守る。

 

聞くのは捕まえた後でできる、か。そうだろう。

……いやだな、聞かれるのは。だから捕まりたくない。

 

 

最初にかかってきたのはやはり爆豪君だ。残り三人と協力する気があるのかわからないが、機動力がもっとも高い。

BOOM!という爆発を防いだ瞬間、俺のパーソナルスペースぎりぎりまで顔を寄せてくる。

 

 

「……どっからだ」

「……」

「———どっからが嘘だ!?」

 

どっから、と聞かれても。

俺には答えようがない。

 

爆豪君は立て続けに爆発を繰り出してくる。めまぐるしく立ち位置を変え、攻撃の手段を変えて爆豪君は襲い掛かってきて、俺はほとんどその場から動けない。

できるのはただその場にしっかりと立って、神経を個性の発動に集中することだけだ。

棒立ちといえど個性を発動していれば俺に死角はない。

 

集中することで体感時間が延びる。一瞬の攻防でも、意識を広げれば相手の出方を観察できる。俺はこれをヴィランとして動きながら学んできた。

 

爆豪君の爆発を目くらましにして迫ってくるのは足元の氷だ。再び轟君の個性だろう。動けないのをいいことに凍らせるつもりだ。

寒いのは嫌いではないが、足元を凍らされるつもりはない。

 

「だらぁああ!」

 

と背後から襲い掛かってくるのは切島君だろう。彼の個性は『硬化』、振り返るまでもない。

 

「———SMASH!!」

 

上空から襲い掛かってきても無駄だ。死柄木さんをかばったとき、緑谷君のワン・フォー・オールでは俺の個性を破れないことはもうわかってる。

 

「!」

 

ふと気づいた。俺のパーソナルスペースを囲むように氷が迫ってる。

切島君や緑谷君の攻撃、爆豪君の爆発さえも囮にして俺をバリアまるごと凍らせるつもりか。

 

二人の攻撃がきまる。ガンッ、ガチィン!とそれぞれ鈍い音をたてて俺のパーソナルスペースに激突する。

 

「離れろ!」

 

あたりだ。拳を解いた緑谷君と切島君は、険しい顔のまま俺からすぐに距離をとる。

轟君が号令をかけた瞬間、氷が地面からせりあがった。包むように、球状に、一瞬で。

 

爆発や攻撃の音が止む。しんっと急に音がなくなった感じがして、ふうとため息をついてみれば妙に大きく聞こえた。

……本当にすごいな。試しに一回個性を解いてみて壁に触ってみれば、当然ながら冷たい。360度ぐるっと氷で囲まれきれいな球状であることがわかる。

俺自身は個性で守られているが、たった一瞬でここまでの氷を形成させるなんてすごい。本当に年下とは思えない。

 

 

「うっとうしい」

 

 

だとしてもさすがに、ちょっとまるごと凍らされるのは勘弁だ。

俺を中心に半径1メートルのパーソナルスペース。それが急激に拡大する。内側から一気に圧力をかければ、氷はひとたまりもない。

 

パァン、と俺を閉じ込めていた氷が砕け散った。

 

あたり一面に破片がちらばりきらきらと光って、どこか幻想的だ。一歩踏み出せばパキパキと小気味いい音がして氷が砕ける。

 

「な、んだよ……あれでもダメか……!」

「くそ……」

「あのバリア、拡大もできるってこと……!?」

 

三人を眺めてみればどことなく腰が引き気味だ。

まあ俺でも思う。オールマイトや脳無の攻撃を防げるようなバリアが敵にいたら、心底面倒だろうな、と。

 

 

「——……ッざけんな、ふざけんなッ!」

 

……さすがだな。三人は俺から距離を取ろうとしているくらいなのに、彼だけは強く地面を踏みしめて俺に向かってくる。

 

 

「———なんだその個性は!?」

 

 

そういえば爆豪君は、俺の個性がエアコンという個性だと思ってる。

 

 

「———名前は!? ゼロってなんだ!」

 

 

爆豪君は、本名を差し置いて俺がそう呼ばれてることを知らない。

 

 

「どっからだ!? 俺に言った、()()()()()()()()が嘘なんだ!?」

 

 

……なんでだろう。

悪いのはたぶん俺だろう、俺はヴィランだし今まさにこうして雄英高校に侵入し、犯罪に手を染めている。

問い詰められているのは俺で、問い詰めているのは爆豪君だ。

正義は俺にはなくて、向こうにあるものだ。

 

でも、どこか切実そうに声を荒げているのは俺ではなくて爆豪君だ。

 

 

「……仮に言ったとして、()()()()信じる?」

「……!!」

「俺はヴィランだ、……それだけだよ」

 

三度、右腕を振りかぶってくる爆豪君。

今日だけじゃない、一年間くらい彼が個性を練習しているのを見ていた。そうでなくても爆発じゃ俺の個性は破れない。

 

 

「———テメエがヴィランだって知ってたら……!」

「……知っていたら?」

 

 

ぎり、と爆豪君が歯をかみしめるのが見えた。

そこにどんな感情があるのかわからないが、見たこともない表情を浮かべている。

 

 

「……ッ知り合いになんか、ならなかった!!」

 

 

……そうだよな。爆豪君だったらそうだろうな。

『もしも』に意味はないけど、爆豪君だったら初対面で俺がヴィランだって知った瞬間に爆破をしかけてくるだろう。徹底的にやるはずだ。

俺も、きっと例外じゃない。

そうだよな。当たり前だよな。

 

……なんだか、少し、疲れたな。

 

 

「ッ――!?」

 

突然、左側から豪風が吹いた。

個性を発動しっぱなしだったおかげで吹き飛ばされずに済んだが、俺に殴りかかった体勢のままだった爆豪君は吹っ飛ばされた。

 

「ぐっ!?」

 

どうやらそれは爆豪君の後ろ側にいた緑谷君、轟君、切島君も例外ではなかったらしい。地面にしゃがみこみ、それ以上飛ばされないようにするだけで精一杯のようだ。

 

何だこの強風? 左側に視線をやって、当たり前の事実に気付く。

そうか。オールマイトだ。

 

 

 

    * * *

 

 

 

時は少しだけさかのぼる。

 

「……SHIT!」

 

爆豪勝己が、フードをかぶりゼロと呼ばれていた青年―――おそらく高校生くらいだろう―――とぶつかったとき、オールマイトはすぐに彼らを引きはがそうとしたのだ。自分からヴィランに向かっていくのをやめさせようとした。

どこの誰かはわからないがオールマイトの攻撃を防いだバリアのような個性の持ち主。彼に向かって進もうとした、だがそれを察知したかのように、黒い巨体のヴィラン―――脳無がぶつかってきた。

 

ショック吸収に超再生。複数の個性を持つ只人ではない脳無と戦わざるを得ない状況に追い込まれ、オールマイトは少し動揺した。ほんの一瞬だけ、どう動くかを迷った。

 

結果、背後に広がった黒靄に気付くのが遅れ、迎撃ではなく回避の選択肢をとる羽目になったのである。

 

確か先ほど脳無をバックドロップしたとき、あの黒霧と呼ばれたヴィランは語っていた。目にもとまらぬ速さのオールマイトをとらえるのが脳無の役目、そして半端にとどまった状態でゲートを閉じ体を引きちぎるのが私の役目、と。

言い換えれば、黒霧の速さではオールマイトを捕まえることはできないということ。オールマイトが先制をとり黒霧を吹き飛ばせればよかった。

だが一瞬の迷いのせいでオールマイトは黒霧を先にとらえることはできず、かえって攻撃を回避することになった。

 

真後ろに現れたゲートに押し込まれる寸前、オールマイトは脳無ごと前に踏み出した。

結果、

 

(生徒たちと離れてしまった……!)

 

だが黒霧や死柄木と呼ばれたヴィランもこっちに寄ってくる。彼らを生徒側にいかせるのもまずいだろう、だったらこのまま自分が相手をした方がいい。

生徒たちの方に向かわれるのはごめんだ。彼らは、オールマイトが守るべき生徒なのだから。

 

 

「黒霧。隙があったらいつでも使えるようにしとけよ。……計画とずれて、ゼロが一人で生徒たちの相手をしてくれるみたいだからなぁ」

「ええ。私たち三人ならよりやりやすい」

 

ぐるりと黒靄の中の目らしきものが蠢く。こきこき、と死柄木は手首を回す。

 

(……3対1、数的に不利だ。時間も、もうほとんどない……)

 

朝の通勤時間に三時間いっぱい活動可能時間を使い切ってしまった。

 

しかし、やらなければならない。なぜなら、オールマイトは。

 

 

(———私は、平和の象徴なのだから!!)

 

 

彼を動かしたのは平和の象徴である自負、後ろにある守るべき存在、一言では言い尽くせぬ彼の信念だ。

脳無とぶつかったその衝撃波か、その人より圧倒的に重い信念によるものか、死柄木弔はその気迫に押され思わず後退する。

黒霧も隙を見て使えるようにしとけよ、と言われたワープゲートを準備する暇も近づく暇もないほどだ。

 

オールマイトは真正面からの殴り合いを選択する。

圧倒的な速さ、圧倒的な力。避けることを放棄しつつ、オールマイトは上手に場所を移動していく。脳無を殴り、吹っ飛ばし、脳無に殴られ吹っ飛ばされそうなのをこらえながら。

 

「ショック吸収って自分で言ってたじゃんか……!」

「そうだな!」

 

でも、それがショック『無効』ではなく『吸収』ならば限度があるはずではないか。

 

「私対策!? 私の100パーセントを耐えるなら! さらに上からねじ伏せよう!!」

 

力技だ、究極の脳筋である。

 

(ヴィラン)よこんな言葉を知ってるか!?」

 

―――PLUS(更に) ULTRA(向こうへ)!!

 

渾身の右ストレートが脳無の腹に突き刺さる。

脳無の腕は宙を舞い、ただその腹の打撃を受けるしかない。

 

オールマイトを倒すはずだった改人・脳無は、あえなくショック吸収の限度を迎え、天井をぶち破ってはるか遠くに打ち上げられた。

 

そしてその最後の攻防時、オールマイトの微調節が功を奏し彼は無事生徒のそばに戻ることができたのである。

 

 

 

 

     * * *

 

 

 

ドカドカとすごい音がしていたのはもちろん気付いていた。

最後の攻防時、少し離れていたはずのオールマイトと脳無はこちら側に戻り、そこで生徒たちと俺の前で脳無が天高く打ち上げられてしまった。

どうやら原作通りの展開になったようだ。

 

「やはり衰えた。全盛期なら5発も撃てば充分だったろうに———300発以上も撃ってしまった」

 

……それだけ撃てば、確かにこの強風も納得だ。

 

「さてと(ヴィラン)。お互い早めに決着つけたいね」

「チートが……!」

 

砂煙の中、悠然と立つオールマイトとガリガリと首を引っ搔く死柄木さん。もう勝負は決したようなものだ。

ちらりと視線をやれば、はちゃめちゃな方法で脳無をぶっ飛ばしたオールマイトに視線が奪われているようで、こちらに注意がない。

そろ、と動き出す。

 

 

「衰えた? 嘘だろ……完全に気圧されたよ。よくも俺の脳無を……! 全っ然弱ってないじゃないか! あいつ……俺に嘘を教えたのか!?」

 

動揺しすぎて『先生』をあいつ呼ばわりしている。

 

「どうした? 来ないのかな!? クリアとかなんとか言ってたが……できるものならしてみろよ!!」

「うぅおおお……!」

「落ち着けよ死柄木さん」

「脳無さえいれば! 何も感じず立ち向かえるのに……!」

 

少し離れたところからとはいえ、声をかけたのに無視か。

すかさず黒霧さんがフォローに入る。

 

「死柄木弔……落ち着いてください。よく見れば脳無に受けたダメージは確実に表れている。あと数分で増援が来てしまうでしょうが、子供はゼロがなんとかしますし、死柄木と私で連携すればまだやれるチャンスは十分にあるかと……」

 

いや、正直に言うとそれはやめてほしい。

こんなところで死ぬ人じゃないと思う、オールマイトは。

 

「……うん。うんうん……」

 

俺の思いとは裏腹に、ぴた、と死柄木さんが首を掻くのをやめる。

 

「そうだな、そうだよ……やるっきゃないぜ……目の前にラスボスがいるんだもの……」

 

冷静になるの案外早いよな死柄木さん。この場じゃやめてほしかったんだが。

というか増援はまだ――――って、あれ?

 

まずい!

 

「何より……脳無の仇だ」

 

ズワァ、と黒靄を広げる黒霧さんに怒りもプラスして移動が速くなっている死柄木さん。もともとそれなりに身体能力が高く戦闘も強い二人は攻撃への初動も早い。

まったく! 早いんだよ!

爆豪君たちはそのままにして、二人の方へ走る。

 

「おい待てテメエ!!」

 

突如走り出した俺に、爆豪君の声が追ってくる。だけど無視だ。

 

「崩れろ……!」

「死柄木さん!」

 

わりとそれどころじゃない。

ズドッ!と鈍い音が耳に突き刺さる。

 

「!!」

 

遅かったか……。

死柄木さんがオールマイトに手を伸ばした瞬間、そこに銃弾がヒットした。発射元はこのウソの災害と事故ルームの入り口だ。

 

「来たか!!」

 

きた。——増援だ。

おそらく原作よりオールマイトが脳無を倒すのに時間がかかった。俺が生徒たちと戦う時間がそれなりにあったということは、そういうことだ。

そしてオールマイトはぎりぎりで脳無を倒しきり、増援が間に合った。

 

 

「ごめんよ皆。遅くなったね」

 

ずらりと並ぶ教師陣。全員が資格をもったプロヒーローだ。そしてそこにまじるのが眼鏡が特徴のクラス委員長——

 

「1-Aクラス委員長、飯田天哉! ただいま戻りました!!」

 

黒霧さんの言うところの散らし損ねた生徒。彼はしっかりと教師陣を連れてきてくれたのだ。

やべ、急いで死柄木さんたちのそばに寄らなければ。

 

「あーあ来ちゃったな……ゲームオーバーだ。かえって出直すか黒霧……ぐっ!!」

 

BANG!BANG!! 耳障りな音が響き渡る。

 

おいおい大丈夫か。

雨あられと降り注ぐ銃弾、すぐに主犯格と判断されたらしい。立ち上がろうとしていた手下たちはほかの教師陣によって一掃されてしまう。

 

「大丈夫か」

 

追いついた。

個性を発動したまま、矢面に立つ。俺の後ろにいれば銃弾も届かないはずだ。

 

「この距離で捕獲可能なやつは―――」

「———僕だ……!」

 

ズオォォ……!と出入り口方面から俺たちもろともを吸い込もうとする風が吹く。

13号の個性、『ブラックホール』。怪我を押しての個性の発動だ。

吸い込まれるとわかっている風を、俺は拒否する。だから吸い込むための引力もそよ風になる。

 

はかったように後ろで黒霧さんが個性を発動するのがわかった。

 

「今回は失敗だったけど……今度は殺すぞ、平和の象徴――オールマイト」

 

捨て台詞を吐いた彼を、ワープゲートが先に向こう側に飛ばすのがわかった。黒霧さんも、なおも発動されているブラックホールの餌食になりたくないのだろう。

次は俺だ。

……やっと帰れる。

 

 

 

「———おい! 待てやコラァ!!」

 

……爆豪君。まあ、そうだよな。

正直に申し訳ないと思う。何も言ってなかったのは俺だし怒っても仕方ない。爆豪君は何も悪くない。

だから罵倒くらいは甘んじて受け入れよう。

 

 

「てめェざけんな! ………夕立ぃ!!」

 

「……!」

 

 

素直に驚いた。

 

俺の名前、憶えててくれたのか。そっか。憶えてくれたんだな。

 

何か言おうとして、やめた。それはきっとヴィランとして相応しくない言葉だ。

だから何も言わずに、一歩下がった。視界が黒い靄で埋め尽くされる。

 

じゃあな、爆豪君。

 

 





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