主にロビンフッドとメルトリリスが食堂で駄弁る話

※うちのカルデアの場合です。

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第1話

 フィニスカルデア、食堂室。

 全職員が同時に食事を摂る事も想定された席数のある食事スペースと、

カウンターを挟んで隣接する幾らか増設されたと思しき立派なキッチンから成る、

一般職員からサーヴァントまで全員に開放された共同空間である。

 

 そんな食堂の隅っこでロビンフッドがマスターの積みプラモを消化していると、

カツカツと足音鳴らしてこちらに近づいて来る一人の気配。

 そのまま向かいの席に、座ろうと……

 

「なんか用すか」

 

 する、その寸前の厭らしいタイミングで声をかけた。

 

「ーーっ!べ、別に。私が何処に座ろうと勝手でしょ」

「そりゃそっすけど、出来ればもうちょい離れてもらえませんかねぇ」

 

 意表をつかれた悔しさを誤魔化すように、どすりと力任せにメルトリリスは腰掛けた。

 その所作が面白く、作業の手を止め意地悪い視線を投げかけてにやりと。

 

「いつ攻撃されるかと怖くて怖くて」

「期待にお応えしてあげようかしら……」

 

 これ以上何か言ったら◯◯すという顔をしている。

 そりゃ勘弁、と肩をすくめてプラモ作業を再開したロビンを、

メルトは猛禽類の様な目で睨みつけていたが、そうしている間に落ち着いたのか追撃はなし。

 その事に内心冷や汗であったロビンは悟られない様にほっと一息ついた。

 

 それからロビンが黙々とプラモを組み続け、対してメルトは周囲をぼんやり眺めたりチラチラ見たりと、

互いに対して興味ゼロの不干渉な時間がそこそこ過ぎた頃。

 

「で、どんな感じ?」

 

 メルトがポツリと呟いた。何故か独り言を装った風に。

 

「んー? まぁぼちぼちって感じですかね。前にやったガンプラ? ほど簡単じゃないっすけど、

 まぁ量が多くて細かいだけで……」

「違うわよ。誰があんたのプラモ組みに興味あるって……何これチェイテピラミッド姫路城MG?

 まったく、変態に技術を持たせると碌なもの作らないわね………じゃなくて!」

 

 そっちはそっちで後でよく見せなさい! と念を押してから、

 

「リップの事よ。どうなの? ちゃんとやれてる? 」

「……なんの話か分かりませんがね」

「しらばっくれても無駄よ。キッチンであの猫メイドと料理作ってるリップを心配して、

 あんたがこそこそストーキングしてるのは分かってるんだから」

 

 何か証拠があって、とかではなく、お前のことだからどうせそうなんだろ? という。

 完全に決めつけの主張であるからしらばっくれくことも出来るのだけど、

さっきからちょくちょくからかっているのがロビンの運の尽きであった。

 メルトのサドポイントが溜まってる今、変に抵抗したら出血大サービス(物理)となりかねない。

 

「……心配じゃなく、警戒してんですよ」

 

 あとストーキングではなく監視、と主張してもやっている予想通りなのだからなんとも弱い。

 

「はいはい監視監視。それで、どんな感じよ」

「こいつ……」

 

 ロビンは諦めの溜息一つ。

 ニッパーを置いて、入れて置いていた麦茶を一口飲んでから視線をメルトへ向けた。

 

「どうもパンケーキ作ってるみたいですぜ」

「パンケーキ? それはまたえらく可愛らしい……そんなのあの子に作れるの?」

「どうなんでしょうね。キャットのやつは『かの騎士王でも作れたお手軽おやつ』つってましたけどね」

「言ってたって……ここからキッチンまで結構あるわよ? ……まさか盗聴機?」

 

 まさか、とそれを鼻で笑う。

 

「あいつらくらい堂々と喋っててくれりゃ、そんなもん使わなくても昔取った杵柄で余裕ですわ」

「やだ気持ち悪い」

 

 どん引かれた。これは明らかに失言である。

 

「でも大丈夫かしら? 潰すとか叩き割るとかしか出来ないような子よ?

 頑丈さだけはあるから火傷とか包丁でどっか切るなんて心配はないでしょうけど、

うっかりキッチン破壊して大爆発とか癇癪起こして大暴れとかしないでしょうね」

 

 その光景は、ロビンにも容易に想像ができる。

 というかこうしてプラモを作成しながら警戒しているのが正にそのことであった。

 なので心配しすぎだろとメルトを笑う事は出来ない、出来ないが……。

 

「そんなに気になるなら、俺んとこじゃなく直接見に行きゃいいでしょ」

「いやよ。妹の様子をちまちま伺いに行くなんてまるでシスコンみたいじゃない」

 

 頬を少し赤くしてプイッとソッポを向くメルト。

 

「いや、まるでも何も……」

 

  正にじゃねーですかね、と思った。

 しかし自覚がないものをわざわざ起こすのも面倒であったため、そこは濁して。

 

「ま、以前なら兎も角、今のあいつなら頑張りゃあ出来んじゃないんですかね」

 

 気休め半分、期待半分くらいのフォローに留めた。

 の、だが、その瞬間。

 メルトは目を見開いて(口も半開きで)ロビンへと振り向き凝視した。

 ロビンはロビンでその反応に対してどう返していいか分からない。

 殺意や敵意や嗜虐の気配はなさそうだとは辛うじて。

 そのまま固まる事数十秒。

 先に言葉を発したのはメルトリリス。 キリッと真面目な顔をして、

 

「言っとくけど、惚れてるとかなら私許さないわよ?」

「また随分話が飛びやがったな!?」

 

 恋愛脳乙ーーーー!!と思わず叫ばざるを得なかった。

 言われたメルトは顔を真っ赤にして慌て、

 

「ち、違うわよ失礼ね。万が一よ、万が一。あの子のこ、恋人?とかは唯一の肉親的存在である

 私に審査する義務があるんだから!」

(こ、こいつ今ナチュラルにBBの事いないもの扱いしやがったな……)

 

 まぁそれはどうでもいいか、と流すとして。

 

「ともかく、あんたみたいな陰気な奴はお断りなんだからねっ!?」

「へいへい、俺もああいうのはタイプじゃないんで」

「あぁん!あの子の何が気に入らないってのよ!」

「どっちだよ!?くっそぅ、どっかの聖女さまみたいな声しやがって…」

「ほーん、あっちが後出ですー」

 

 などと、既になんの話だったか分からぬ言い合いが続くのであった。

 

ーーーーーー

 

 そんなこんなを十分余り。

 普段は冷静めな二人であるから、途中から慣れぬテンションを続けた疲労の色が見えていた。

 白熱しているというよりは互いに止めどきが掴めないといった塩梅であったから、

そっと誰かが置いていったお茶を同時に飲んだのをきっかけにそのまま沈静化。

 結果、両者言葉を交わすでも何をするでもないグダグダとした状態となっていた。

 

「メルトリリス、ロビンフッド、いいところに」

 

 そんな二人の名前を呼んで、此方に歩いてくる男がいた。

 ガウェインである。

 

「歓談中申し訳ありませんが少し尋ねたいことが……」

 

 傍まで来てもこのグダった空気を察せずか意にも介さずか、いつもと変わらぬ調子の。

 

「ほいほいなんですか騎士様、私らめで分かることでしたら」

「あらあらどうしました騎士様、お役に立てるか分かりませんが」

 

 などと、言葉こそ丁寧であるが明らかにやる気なく返しても、

 

「? 何故そう卑下にするのです。私達は共にサーヴァントの身であり実力も」

 

 と真面目に返してくる。

 どうにもやりにくいんだよなこの騎士様、とロビンは思うがこの天然さが刺激になったか幾らか調子を取り戻した。

 

「いや、冗談だっつーの流せ流せ。 で? なんですかね、尋ねたいことってのは?」

 

 ガウェインはなるほどと納得して。

 

「実はパッションリップにお茶会のお誘いを受けたのですが、当の本人が見当たらず」

 

 それを聞いたメルトの腰が少し上がった。口の端も少しあがったか。

 しかし許す許さないと言いださないのは、流石に懲りたかそれとも御眼鏡に適ったのか。

 それにガウェインは気づくことなく、ロビンは無視した。

 

「あら、そいつは御愁傷様なこって」

「と、言いますと?」

「これから何を食わされるのか、分かったもんじゃないって事ですわ」

 

 リップ本人としては何時ぞやのお礼も兼ねてという意図なのだろうけど。

 今日始めたばかりの料理を食べさせられると言うのは、結果として毒味役と大して変わらないのだと。

 

「あのドラ娘が作る飯程じゃねぇでしょうけど、生焼けか炭を食わされるくらいh」

 

 と、意地の悪い顔で言い終わる前に、ロビンは横に吹っ飛んで床を滑って行った。

 驚いた二人が終着点を見れば、遺体の頭部は歪な形のパンケーキとなっていた。

 これこそパンケーキを作る者を侮辱したものの降りかかる東洋の呪い、ではなく。

 

「また何か私の悪口言ってたでしょっ!」

 

 パッションリップによってキッチンから投擲されたパンケーキが顔面にぶち当たったのである。

 ケーキもロビンも破裂していない辺り、力加減が身についてきていると褒めるべきなのかどうか……。

 

「そんな隅っこでこそこそしてたって私は気づいてるんですからね!」

 

 当のリップは怒りがまだ治らぬといった形相で、カウンターから身を乗り出し、

 

「ガウェインさんはこっち!そんなとこにいたら陰険が写っちゃいます!」

 

 呼ばれたガウェインは息絶えたロビンと巨大な手でブンブンと手招くリップを交互に見て、

少し考えたのちリップの方へと歩き出した。

 

「……ガウェイン卿」

 

 と、それを呼び止める声がした。

 振り返ればそれはムクリと起きあがったロビン。死んでいなかった。

 

「くれぐれも……」

 

 と何かを言いかけて口籠り、しばしモゴモゴとして要領をえない。

 

「悪い、なんでもない」

 

 ガラじゃねえっすわー、などと言って結局何も告げずじまい。

 ガウェインは首を傾げたが追求しても仕方ないと判断して、頷いて再びリップの元へ歩いて行った。

 

ーーーーーー

 

「で、なんだったの? パンケーキ顔面に食らったみたいな顔してたけど」

「たとえ下手かよ……まんまじゃねえか」

 

 席に戻って来るや先程の醜態を聞いてくるメルトをあしらいながら、

 ロビンは依然頭に乗ったままであったパンケーキを手に取った。

 簡単に眺めすかしたあと、少し千切って舌に乗せてみる。

 痺れなどはなし。どうやら毒ではないらしい。

 というか。

 冷めて、形も悪く、加えて多少焦げ付いてはいるものの、今日初めて作ったにしては及第点。

 これをあの問題児であった少女が作ってみせたというのだから。

 

「ま、悪くないんじゃないですかね」

 

 やれやれ、と思わず顔を綻ばせた。

 のを、目の前のメルトに見られた。なんか凄いニヤニヤしている。

 

「…………惚れた?」

「はいはいスイーツスイーツ」

「あそこできゃっきゃうふふしてるリップにモヤモヤとかムラムラとかしない?」

「くそうぜぇ……」

 

 こうなってはまた止まらないであろうこの思春期脳は。

 それにまだまだつきあわされるのを確信して、ロビンは深く深く溜息をつくのであった。




本作は人理修復後、CCCコラボイベント後辺りの時間軸の話です。
とはいえ特にネタバレになるような事は書いていないつもりですが。

読了ありがとうございました。

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