八幡、捻くれたままNEWゲーム   作:nyasu

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男なら戸塚、女ならアナスタシア、どちらを選ぶべきかが問題だ

朝、妹の小町がトースト片手に雑誌を読んでいた。

横から覗けば頭の悪そうな、ラブ活だの激モテなどムカつく単語が羅列されている。

 

「お前、将来買った服に対して幼すぎ買うんじゃなかったって言うことになるぞ」

「いいんです、だって小町ってば若いから、それはもう若気の至りってやつ……若至ちゃうの!?」

「あったま悪そうな造語を作るんじゃないよ、まったく」

 

お兄ちゃん知らないの?今はやってるんだよ!必読推奨なんだよとか言われた。

うんうん、それもラブ活だよねとか言ってればいんだろ、と適当に流す。

はぁ、今日もブラックコーヒーが美味いわ。

 

「あれ、お兄ちゃん。それって砂糖入ってないよ?」

「何その角度、シャフトなの?シャフ度なの?」

「質問に質問で返さないで、これだからゴミいちゃんは……」

「…………甘い見通しをする奴が多すぎる世の中だ、コーヒーくらい苦い方がいい」

「こないだと言ってること違うよ」

 

歳を取れば嫌でも分かるさ、MAXコーヒーはおじさんには甘すぎる。

いつからだろうな、俺の手のひらの中にあった甘さを忘れてしまったのは……健康診断で引っかかってからだわ。

 

「時間」

「うわやば」

「口元、ジャム」

「嘘、ジャムってる!?」

「お前の口は自動小銃なの?マシンガントークぶちかますけどさ」

「はぁ?ちょっと、何言ってるか分かんない」

 

それは凄く冷たい目だった。

いや、そうだな今のは俺が悪い。

そんな我が妹はパジャマを脱ぎ捨て、脱ぎ捨てたパジャマで口を拭う。

男前すぎるだろ、お前ってばよ。

 

「てかさ、お兄ちゃんときどき何言ってるか分かんないよね」

「年の差だろ、俺もお前がときどき何言ってるか分かんない」

「私達、考えることは一緒だね!あは、今の小町的にポイントたかーい!」

「ちょっと、何言ってるか分かんない」

「えー」

 

ほらほら、女子中学生のパンツだよ!パーンツ!と朝からハイテンションな妹。

やめなさい、女の子なんだから恥じらいを持ちなさい。

もうお兄ちゃん妹のパンツ見すぎとか言うお前は、アニメの見過ぎだから。

 

「フッ」

「は、鼻で笑うだと!?」

「先に外で待ってるぞ」

「あー、待って!四十秒でしたくするから!」

「早くしろよ、空から女の子降ってきちゃうでしょ」

 

まぁ、この平穏な日常の世界で空から女の子が落ちるなんて絶対ありえないのだが、とはいえ登校である。

他愛ない会話をしながらの登校、まぁ由比ヶ浜の事に対する恐ろしいカミングアウトもあったが二回目なので知ってた。

俺宛のお菓子美味しかったか、俺は食べてないぞっ!

 

「ちなみにお前の言うお菓子の人は由比ヶ浜って言うんだぜ、小町ちゃん」

「すごーい、お兄ちゃんはなんでも知ってるんだね」

「なんでもは知らないよ、妹の事だけ」

「なにそれこわい、まーいいや!じゃね、小町学校だから!」

「いや、俺も学校だから」

 

やめてよね、貴方とは違うんですって扱い。

まぁ、そんな妹は颯爽と降りて、ありがとー車に気を付けるんだよと手を振ってくる。

そんな妹を俺は鼻で笑い、籠に入っていたカバンを投げつけた。

 

「わわっ!?」

「お前は忘れ物に気を付けろよ」

「えへへ……お兄ちゃん、大好き」

「……お前、俺が兄貴であることを感謝しろよな!」

 

じゃなかったら、速攻告ってフラレてたわ。

フラれちゃうのかよ!

 

 

 

月が変われば授業も変わる。

その授業のカリキュラムに頭を悩ませている先生側の事情も知らず、文句を垂れる学生の多いこのご時世。

あと数年したら、ブラック部活問題とかあるのだから部活で飽きたとか言ってあげるなサッカー部。

そんなチャラ男代表の教師泣かせなサッカー部と絡む気の無い俺はテニスを希望した。

 

「ふぅ、八幡。我の魔球を披露してやれないのが残念だわー、お前がいないと我は一体誰とパス練習すれば良いのだ?」

「安心しろ、パスを貰わないから練習する必要はない」

「授業なの!それはもはや、見学!見学だぞ、ハーチーマーン!」

「うるせぇ、はよ行け」

 

最後の方は涙を浮かべて懇願していた材木座、だから言ったじゃんサッカーとか地獄だぞって。

モテたいからと安易にサッカーを選んだお前が悪い。

二人一組になってと言われて、俺は何も言わず佇む。

良く言えばレベルが違いすぎてペアになれない孤高な俺。

悪く言えばレベルが違いすぎてペアになれない孤独な俺。

どっちも独りだったわ。

 

「えー、マジかよ。気楽にやろうぜ、えっと名前なんだっけ」

「よろしくな、コート行こうぜ」

 

最終的に余り物同士でやることになる。

人数偶数にしてるから、壁打ちしたら彼が独りぼっちか先生とやることになっていたわ。

まぁ、俺も名前知らないモブAみたいな紹介のされそうな茶髪の男である。

あれだろ、幻の六人目とかそんなんだろ、ミスディレクション使いそう。

 

「ほい」

「オーラ!やべーっしょ、ナイスショット!」

「そだな、ほい」

「喰らえ、うりゃぁぁぁ!」

「すごーい、君はテニスの才能があるフレンズなんだね」

 

人の体力を奪うような左右への揺さぶり、俺はそれを追いかけて足元に打ち返す。

いや、ホントいい運動になるわ。腹筋とかバキバキになっちゃうわ。

 

「あはは、弱すぎでしょ!必死すぎなんですけど」

「あぁ、そうだな。おっと、手が滑った」

「えっ、ギャ!?」

「悪い、下手くそ過ぎて顔面にボール行っちゃった。授業だし、許してくれよ」

 

ホント、学生って馬鹿。

魔法少女が闇落ち不可避なくらい言葉の暴力がすぎるぜ。

所でテニスというのは当たると当てた方に得点が入る。

当てた俺は悪いが、当たった方がテニス的には悪い。

つまり人として負けたが勝負には勝った。

 

「やれやれ、また勝てなかったぜ」

 

昼休み、ゲームで言えば彩ちゃんイベントである。

彩ちゃんイベントとは、大天使戸塚エルと俺が邂逅を果たす約束されし勝利のスチル回収イベントだ。

 

「あれ、ヒッキーじゃん」

「おう」

「なんでここに居るの?」

「静かだからな、ここは」

 

お前こそなんでいるんだよ、俺は静寂を求めてるんだよ。

無限の龍神ムーブだっての、なお八幡は幼女じゃないので需要はない。

 

「お前はどうせ、罰ゲームでジュースでも買いに来たんだろ。雪ノ下とよくやってるもんな」

「えっ、なんで分かったし!あれ、でもゆきのんとは今日がはじめてだよー」

「本当にそうか?自分が忘れていたら、誰が証明できる」

「えっ、言われてみれば……どうしよ、私忘れてるのかな」

「由比ヶ浜はほんとアホだなぁ……」

 

俺は優しい目を向けた。

昼空の下、泥だらけで舌を出すゴールデンレトリバーに向けるような目だ。

アホってなんだし、と拳を作って上下に振る由比ヶ浜は色々と揺れていたとだけコメントしておく。

やめろよ、その揺れは男子の心を揺さぶる。

うおぉぉぉ、大天使戸塚エルよ!悪魔由比ヶ浜の誘惑に揺れる信仰を許してくれ!

俺は揺れる信仰を取り戻すべく、地上に降臨なさった大天使戸塚エルと視線を移す。

戸塚たそ~、なお戸塚エルが見えるのは学生だけだ。

将来はモデルになっちゃうんだから、イケメンになっちゃうんだからな。

 

「何見て、おーい!さいちゃーん!」

「条件反射で言葉を吐いてないか?」

 

戸塚はコテンと首を傾げ、とてとてと駆けてくる。

由比ヶ浜がアホな犬だとしたら、戸塚はハムスターだった。

うは、超かわいい。なお、俺は気持ち悪い。

 

「よっす、練習?」

「うん、ウチの部弱いから……お願いしてたらやっと最近OK出たんだ」

 

戸塚、お願い、もしかして通報案件では?

俺の中のグーグル先生が囁くんだよ、テニス部顧問を問い詰めろとな。

まぁ、そんな汚れきった妄想は異端なので切り上げる。

戸塚かわいいよ、略して戸塚わいい。

お前がアナスタシアのコスプレしてくれた時の事を、俺は生まれ変わっても忘れてないぜ。

 

「由比ヶ浜さんと比企谷くんはここで何してるの?」

「勘違いするな、由比ヶ浜とは喋ってただけで何も無かったからな」

「やー、ホント何も……勘違いするなって何!されると困るの!?」

「困るだろ、お互い」

「えっ、あっ、うん」

 

なに頬染めてんの、やめろよ戸塚の前だぞ。

変に誤解させるだろ、そういうのは少女漫画の世界だけにしてくれよね。

 

「フフフ、二人は仲良しだね」

「戸塚は無垢だなぁ」

 

そっかー戸塚に恋愛は早かったな。

大人になるって汚れるって事だって分かんだね。

 

 

 

 

 

 

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