中編です
カランを可愛く書きたくて仕方ありませんでした
なので今回はカランカラン回です、多分
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カラン
ふわふわの耳と尻尾、深緑色の髪に綺麗な紫色の瞳を持つ小柄な少女がラルの傷を見つめていた。屋敷内のゆったりとしたリビングに招き入れられたラルはカランに針を抜いて貰い、暖炉の側にあるソファへ腰掛けることを進められた。
「ちょっと色々道具を取ってくるから、じっとしとくんだよ、歩き回っちゃだめだからね~」
カランは長い尻尾を振りながら奥の部屋に消えていった。ラルはそれを見送ると深いため息をつきソファに深く腰掛けた。傷が痛んだが、一度座るとその心地よさに意識が遠のく。
いよいよ眠ってしまうというところで、静かな声に話しかけられた。
「あの…」
ラルが目を開けると、前にメイドが立っていた。桃色の髪は右目を隠すほど伸びており、左はサイドポニーでまとめている、カランより少しだけ背が高めの少女だった。なにやら申し訳なさそうに口を開く
「先ほどは、その…すみませんでした。お怪我とかはありませんでしたか…?」
身に覚えのないラルは多少戸惑いながらも聞き返した。
「俺、前に会ったことあるっけ…?」
「覚えてらっしゃいませんか?あなたを屋根の上まで飛ばしてしまったんです…」
「え…」
目をそらす少女の後ろからカランがひょっこり顔を出した。
「君、ハトの魔法の勢いで飛ばされたんだよ、まぁた随分深くまで庭を抉ってくれたねぇハト~」
にやけながらハトと呼ぶメイドの顔をのぞき込む。
「すみませんでした…カラン様」
しゅんとして下を向く。
「ハトはとんでもない魔力を持ってるくせに魔力の加減が下手くそなんだ、でも責めてやらないでくれよ、結果君は助かってるんだ」
あまりも突拍子もない話でラルは固まって聞いていたが、我に返ったように口を開いた。
「それよりも色々聞きたいことがあるんだ!まず君たちのこ…」
ラルが話している途中、開いた口に何か、小さな玉を放り込まれた。
「苦ッヴォェェェ!」
「おいおい、ちゃんと飲み込んでくれよ、それ薬だから」
どうやらカランが薬を口に投げ入れたらしかった。カランはハトの影から出てきてラルに面と向かって続けた。
「ボクはカラン、さっき言った通りこの屋敷の今の主さ、こっちがハトホル、ボクはハトって呼んでる。勢い余って君を屋根の上まで吹っ飛ばしちゃうおっちょこちょいさん」
メイドの方を指さしてハトホルと呼んだ。ハトホルは恥ずかしそうにして奥の部屋に消えていった。カランがラルの方を向いてじっと見てきた。ラルも話し出す
「俺はラルラトス・シェイルダー、ラルと呼んでくれ。探索家をしている、この度は命を救って頂き感謝している」
「シェイルダー、セイト坊の息子か?」
カランがその名前を口にしたとき、ラルが身を乗り出して聞いた。
「親父の名前だ!なんでその名前を!?というか坊ってなんだよ…」
「まぁそう興奮するなって毒が回るぜ?セイト坊はボクの昔の仲間の身内だからねぇ、あの子がちっこい時から知ってるよ。中間はよく知らないけど。」
ラルが唖然としていると、急にまた慌てだした。
「そうだ親父が!親父が獣に追われてるんだ!俺を庇って獣の攻撃をモロに受けてそれで…」
「落ち着けって忙しいヤツだなぁ…とにかく今は体を休めろよ、君に打ち込まれた針ってのは毒をもっててな、致死性の毒じゃないけど放っておいたら体が痺れたりして動けなくなるんだ。ホラ針が刺さったところをみ~せて」
ラルは言われた通り患部を診せた。カランは薬を塗ったり包帯を巻いたりしている。少し落ち着いてから口を開く
「だったら一層親父は危ないかもしれない、あの針を全身に受けたんだ、出血も酷かったし…でもそもそもあの獣は何だったんだ…」
「ラルが森であの針を受けたのなら確かに変だ、本来ダンジョン内に縄張りを持つ、しかも中層クラスの獣が森の中にいるなんてかなり珍しい」
「一刻も早く助けに行かないと、親父はその獣を町に近付けさせないためにダンジョンに引き戻そうとしてたんだ」
「探しに行くのは諦めな」
カランはそう言い放った。ラルが睨む
「親父を見殺しにしろっていうのか!」
「あーあー違うってば君は動くなってこと、ハト~!」
部屋の奥からハトホルがお盆を片手に姿を現した、お盆の上にお湯の入ったコップと、皿の中に何か緑色の粉が見える。もう片方の手には薄い茶色のリュックを持っていた
「ボクはセイト坊を探しに行ってくるから、君はハトとお留守番さ」
「だ、大丈夫なのか…?カラン1人で」
「んぁ、超平気、これでも昔は探索家だったんだ」
「そうなのか…じゃあ、親父を頼む」
ラルはカランに頭を下げた。カランはそれをじっと見て、ハトホルからリュックを受け取りラルに言う。
「この薬は飲んどけよ、傷の治りが早くなるから」
「わかった」
ラルはハトホルから薬を受け取り、それを口に流し込んだ。
「ヴェ…なんて苦いんだ」
カランが腕のホルスターに不思議な形をした銃のようなものを収め、腰に鈴を着けてリビングから出ようとした。ラルはじっと、カランの背中を見つめていた。
「シェイルダー家の人間はさ、代々探索家をやってるらしいんだけど、ボクが知ってる中でも一番仲間思いなんだ。」
カランはラルに背を向けてそう言った。
「ラル、君もきっとそうなんだよね」
ラルはその言葉を静かに聞いていたが、カランが話し終えた直後に視界が暗くなった。
ハトホルがラルの目を手で覆っていた。
「なんだ!?やめてくれ!俺は…!俺…は…」
ラルの意識が遠退いていった。
すやすやと眠るラルを見て、カランは独り言のように呟いた。
「全く、一族揃って無茶をするよね、放ってたら君、這ってでもダンジョンに向かったろ」
ラルの側に立っていたハトホルはラルの寝顔を見てカランに言った。
「それはカラン様が人間だった頃のお仲間さんのお話ですか…?」
「…人外も悪くないさ」
カランは長い尻尾をゆっくり振りながらリビングから姿を消した。
再・夜の森
カランは屋敷を出ると一瞬だけ光を纏い空を飛んだ。ダンジョンの方へ真っ直ぐ飛ぶ。下の方を見回しながらしばらく滑空していると、木々の隙間から何かが大量に蠢いているのが見えた。
「
カランは下にあった木の中に入り込み、獣たちに見つからない高さから観察した。浅層の獣たちは森の獣道に沿って走って行く。
「人間を追ってる動きじゃないな…やっぱりダンジョンの外に中層クラスの獣がいるんだ…」
独り言を呟きながら獣たちの列を見送ると、獣が通ってきた道の奥の方を見た。目を凝らして眺めていると、ずっと遠くに大きな影が見えた。
カランは木から飛び降り、その獣の方へ走っていった。走りながら尻尾を巧みに扱ってリュックから瓶を取り出す。中には茶色がかった液体が入っており、尻尾でしっかり握って落とさないようにしていた。
カランが大きな獣に近付いて行きその姿が段々と明らかになっていった。
体全体が鱗のようなもので覆われており、わかりやすく表すと体長が5m程の、魚に水かきのある四つの足が生えている獣、頭部から尾にかけて長い毛が生えており、なんとも不気味で気持ちの悪い見た目をしている。
その獣の20m手前くらいで近くの茂みに身を隠すと、瓶の蓋を開けてその中に側にあった木の棒を浸けた。
「レグピスキス、こんなやつまで森の中にいるなんてなぁ…うひょ~くっせ」
本来ならダンジョン中層の湖に生息するレグピスキス、その雌から採ったフェロモン液を木の棒に染み込ませる。なんとも言えぬ臭いがカランの周りを包み込む。瓶の蓋を閉めてリュックに収め、木の棒を口に咥えた。
カランは地面を蹴ってレグピスキスの方へ四つ足で走った。じっとしているレグピスキスの鼻先を通るようにジャンプして、そのまま通り過ぎて行く。カランが走っていると、後から重い足跡が聞こえてきた。
獣が付いてきているのを確認しつつ、カランは木々をジグザグに走る。しばらく走っていくと、ダンジョンの入り口が見えた。口に咥えた木の棒をカランが浮遊した時と同じ魔力で覆い、ダンジョンの中に向かって思いっきり投げ込む。
「取ってこーい!あっ帰ってくるなよ!」
レグピスキスはダンジョンに突っ込んで行った。みるみるその姿を小さくして遂に見えなくなった。
「さて、時間取られちゃったな…セイト坊を探さないと」
カランは手の土を払い、また森の中に消えていった。
【屋敷のリビング】
カランが出て行ってしばらくして、ハトホルは自室で書き物をしていた。するとリビングの方で鈍い音がした。
ハトホルがリビングに向かうとラルがソファから落ちていて、リビング出口の扉に頭を向けて倒れていた。
「信じられない、あなたどんな体のつくりをしているんですか?」
ラルが唸りながら顔を上げた。
「お、俺が行かな…ヴォェエ」
ラルが戻した。高そうなラグを吐瀉物が汚す。
「あーもう、無理に起きようとするとお腹の中身全部出しちゃいますよ。さっきのはそういう薬ですから…」
ハトホルがラルを引きずってラグから離し、暖炉の前まで引っ張った。
「ラグを下げてきます、ついでに吐き気止めの薬も持ってきますのでそれまで動かないでくださいね…まぁ動けないでしょうけど」
「う、気持ち悪い…」
「はいはい、少し待っててくださいね」
ハトホルはラグを引っ張って奥の部屋に持って行き、しばらくして木の箱を手に持ってラルの側へ駆け寄った。
箱を開けると中には木の実や植物の葉、液体の入った瓶などが板で分けて入れてあった。
その中から赤黒い実を取り出し、小さな薬研に入れてすりつぶした、乾いた音がラルの唸り声と共にリビングに響く
「どうぞ、そのまま口に含んでゆっくり溶かしながら喉に通してください」
そう言って出された粉薬に、ラルは少し抵抗を覚えた。
「今となって思ったのだが、普通は初対面の人間の出した薬を飲むなんておかしい話だよな…」
「安心してください、町の人にもたまに出している薬です。知る人ぞ知る薬屋みたいなものなんですよここは」
「ハッ…聞いたこともねぇな」
ラルは薬を受け取り口に流し込んだ。
「…辛い」
「眠気覚ましにもなりますよ」
ラルが暖炉の前で横になってる間、ハトホルは側に座ってラルの様子を見ていた。
「あの…ハトホルだっけ、別に戻ってくれても良いんだぜ?」
「あなた目を離したらまたすぐどこかに行こうとするでしょう」
「もうしないさ」
しばらく静寂が続き、ラルがハトホルに問いかけた。
「聞きにくいんだけどさ」
「…何ですか?」
「カランはどうしてあんな姿をしているんだ?」
「そうですね、私が勝手に話すのもはばかられます、本人にお聞きください。その代わり私にラルさんのお話をしてくれませんか?」
ハトホルが微笑んでそう言った。ラルは自分のことを話し出す。
「俺さ、親父に憧れて探索家になったんだけど魔法が使えないんだ。仕方なく剣術の方に力を入れて、最近ダンジョンに入ることを探索協会に許されたばかりなんだ。もう何度か潜ったけど親父の足引っ張るばっかでさ」
ラルは静かに笑いながら話した。
「拾われ子なんだ、親父が50のときに家の前に俺が籠の中に入ってすやすや寝てたんだってよ」
「セイトさんは優しい人ですからね、たまに他のチームの皆さんとこの屋敷に寝泊まりしに来ますよ」
「そうだったのか…もうかなり歳だろうに、いつまでも元気だよなぁ、俺なんか庇ってさ…」
ラルは感傷に浸っていると、ハトホルがラルに言った。
「ラルさんはセイトさんのことが大好きなんですね」
「あぁ、親父には俺が一流になって1人でも探索家としてやっていけるようになるまで見届けて欲しいよ」
「1人でダンジョンに潜るなんて無茶ですよ」
ハトホルが少し笑いながら言うと、ラルは上半身を起こしてハトホルの目を見て話し始めた。
「いいや、俺もそのくらいの探索家になってやる!血は繋がってないけど、俺の爺さんはあの伝説の探索チームの
「えぇ、知ってますよ」
「伝説の探索チーム『ヘレティック』、5人の探索チームで何度も深層に潜ったって!チームメイトは全員二つ名持ちで、
「よく覚えてらっしゃいますね」
「そりゃ俺の憧れの大先輩なんだ、俺もあんな風になりたいもんだ」
ラルが話し終えたところで、何かにひっかかったような顔をして考え込んだ。するとハトホルはあることを思い出したかのように話した。
「あ、そういえば!ラルさん屋敷周りの結界を1つ壊したんですよ」
「えっ俺が?いつ?」
「多分足を引っ掛けたのではないですかね、屋敷の周辺を私の魔力で覆ってるのですが、その補助装置のクリスタルが一カ所砕けた感覚がして…」
「あぁ、そうえいばここに来るときどこかで足を…砕けた感覚?」
「正確には私の魔力がぷっつりと切れたのです。あなたが倒れていたところを中心に」
「それはすまないことをした」
「いえいえ、あのクリスタルはどこでも採れるものですし、それにラルさんを見つけたとき後ろに中層クラスの大きな獣がいたものだからびっくりしちゃって…」
「やっぱりあのとき俺の背後に迫ってたのは中級の獣だったのか…あれ、でもその後俺吹き飛んで…」
「すみません…あまりに焦って魔法を使ってしまったんです。私魔力制御が苦手で…獣も粉微塵にしちゃったし」
「え…」
ラルの顔が青ざめる。つまりもう少しハトホルの放つ攻撃魔法がずれていたらラルは骨も残っていなかったと言うことだ。
「ま、まぁご無事で何よりです。よかった~」
ハトホルは手を合わせてにっこり笑った
「ごめんハトホル、急に怖くなってきた」
カランの帰宅
日はすっかり昇り昼に入ろうとしている頃、ラルは目を覚ました。火の消えた暖炉が目に入り、体を起こすと食べ物の良い匂いが漂ってきた。
匂いを辿って屋敷内を歩き回る。体の痛みはほとんど消え、歩く分には差し支えなかった。
部屋を2つ通り過ぎダイニングに入ると、丁度カランが食卓に着き、ラルの方を向いてサンドイッチを頬張っているのが見えた。むしゃむしゃと食べて飲み込んだ後にラルに話しかける
「やぁ、おそよ~お寝坊さん」
「あ、おはようカラン、親父は?」
カランはまたサンドイッチにかぶりつき、ラルから視線を逸らす。ラルの目に包帯を巻いたカランの右腕が映った。キッチンの方からハトホルが出てきた。
「ラルさん、紅茶飲みますか?」
「ハトホル…ありがとう貰うよ」
ハトホルはラルにおしゃれなティーカップにいれられた紅茶を渡し、カランの前にもティーカップを置いた。
「駄目だったんだな?」
ラルはカランにそう聞いた。カランはポケットから羽の生えた玉を取り出し、ラルに見せた。あちこちが凹んでいる。
「これがラルの倒れていたところの少し離れたところに落ちていた。これはボクがセイト坊に作ってやったものだ」
「親父の物なのか」
「あぁ、これは獣よけの一種でな、魔力を込めたら空を飛ぶんだ。魔力を使い切る間は浅層の獣を近付けさせない。これはラルの物だ」
カランは羽の生えた玉をラルに向かって投げた。ラルはそれを受け取り、見つめる。
「親父…」
最後の方、書いてる際に頭痛に襲われめちゃくちゃ適当になっています。お許しください
親父はどうなってしまったのだ…
それも後編で明らかに…是非読んでください
カランとハトホルが登場してからの物語の進みが早くて書いてて楽しいです
感想等ありましたら是非ともお願いします、作者がきちんと読みます