SAO/extra   作:ハマグリボンバー

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1-6夢現の空

───地上(ユメ)をみた。

 

 

 

───キリト(キボウ)をみた。

 

 

 

 

 決して届かぬ───アスナ(ミライ)をみた。

 

 

 

 

 世界から戦争は減少した。尚も続くものはあれど、終わりの日は見えずとも、無秩序に失われるものは確かに少なくなっていて。

 

 地上から飢饉は無くなりつつある。根絶は未だ遠くとも、この世界には確かに未来があって。

 

 

 アスナ達の口が紡ぐ地上は、多くのものを犠牲にする"成長期"を確かに終えていて、それでもなお、まだ前進を止めていなかった。

 

 

 

───なによりそこには、紛れもない笑顔があって。

 

 

 

 美しいと思った。正しいと思った。

 その世界のあり方が、どれだけの矛盾を孕んでいても。

 

 

 手が届かないものは美しい。

 

 

 でもそれは、対岸に茂る田畑を、青いと羨んでいるだけなのだと知っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カーテンから漏れる朝焼けが、私の顔を照らした。

 

 瞼の上からですら視界を焼くそれは、目前を白く染め、私の意識を引き摺り上げる。

 

 

 家主を失った家で一人。本来であればアスナがいるべき寝具の上で、岸波白野は目を覚ました。

 

 私がこのベッドで目を覚ましたのは、これで二度目だ。

 

 

 『あっ、目を覚ましたのね!良かったぁ…なかなか起きないから心配してたんだー』

 

 

──ふと、かつての言葉が蘇った。

 

 

 私はなんと返したんだったか。ムーンセルの内部で意識を失い、気がついたらベッドの上にいた。状況が全く飲み込めなくて、酷く混乱していたのは覚えている。

 だから、アスナが朗らかに声をかけてくれたとき、私は本当に安心をして。それで──あぁ。そうだ。あの時は、パタパタと走るアスナと共に跳ねるその髪に、"お揃いだな"と、勝手な仲間意識を持ったのだ。

 

 

 

 鏡を見る。今になって思う。

 

 私とアスナの髪は、決して同じ色じゃない。

 

 

 

 

 

 台所へと足を向ける。いつもはアスナが作ってくれた朝食も、今は自分で作らなくてはいけない。

 なに、心配することはない。アスナの影響で私も《料理》スキルを取っているから、朝食ぐらい問題ないのだ。

 

──さて、何を作ろうか。

 

 

 もっとも、肝心のスキルの習熟度は55なのだが。

 

 

 

 

 

 今日の朝食は、外食とする。

 

 私のアイテムストレージに入っていた《食材》は、全て《燃えないゴミ》に変化した。どちらかと言うと、《燃え尽きちゃってゴミになったもの》の方が正しい気がしなくもないが、それはそれ。

 そもそも、私が持っている《食材》は、70層より上の階層でドロップしたものだ。その分、《食材》としてのランクは高くなり、当然、要求されるスキル習熟度も高くなる。

 私のような、駆け出し料理人では、太刀打ちできる筈もなかった。

 

 

 

 『麻婆豆腐が辛くない?そうかなぁ、結構辛口にしたつもりだったんだけど…。でも、その分愛情を入れといたから、それで───ってからぁ!!!騙された!これ白野さんなんかしたでしょ!?』

 

 

 

 あの時、私は、愛情の代わりに辛味を足したのだ。私が好きなものをアスナにも食べてみて貰いたくて。もっとも、彼女を驚かせてやろうという気持ちが無かったとは言わないが。

 

 

 私が好む激辛の麻婆豆腐が万人受けしないことぐらいわかっていたのに、我ながらバカなことをしたものだ。

 

 でもその愚かさを、今は美しいと思う自分がいる。知らず上がっていた口角を戻し、私は外出の準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 本日の天気は晴天。見渡す限り雲は見当たらず、快晴といっても差し支えない。澄みきった青空に一度大きく息を吸った。

 

 どこまでも続くかに見える青空。だがこの鉄の城において、その多くは偽りだ。遥か遠くに感じるこの空も、言ってしまえば上層の地でしかない。

 この城の形状を考慮すれば、100メートルもせずに天井にぶつかるだろう。

 

 稀に見かける鳥だって、自由に飛び回ることは到底出来まい。

 どんなに翼を広げても、彼らは決して遠くにはいけない。剣の世界、閉じたこの世界では、どうやっても在り方が限られる。

 

 故にこそ、彼らは上層を目指すのだ。

 

 偽りの空ではない。正しく自由を手に入れるために。

 

 

 であれば私はどうなのだろうか。蝋で出来たこの翼は、真に翼を広げれば、一度太陽に近づけば、瞬く間にその役割を終え、地に落ちる他にない。

 

 私にとってこの城は、唯一自由に羽ばたける場所なのだ。

 

 

──否。正しくはきっと違う。いまの私に翼などない。私の翼は、ムーンセルに接続したあの時に、跡形もなく溶け落ちている。

 

 今の私は、地に落ちたイカロスが、空に飛ぶ鳥を羨む愚行に他ならない。

 

 

 納得した筈だ。諦めた筈だ。他の全てを諦めなかった私は、ただ一つ、生きることを、確かに諦めた筈なのだ。

 

 

 私の物語はあの時に終わった。それでも確かに続くものはあって。それのなんと素晴らしいことかと思ったのだ。人はそうやって未来へとバトンを繋げていくのだから。

 そうやって多くの願いを束ねて、未来は開かれて行くのだと。

 

 私はその未来を祝福したい。そこに私の姿はなくとも、幾人もの願いの果てにその今があるのなら。

 

 それは──なんて、希望に満ちた未来か。

 

 

──だが、そうやって思うには、アスナは余りに鮮烈過ぎた。

 

 

 

 

 私も、あんな風に生きられたらと憧れた。

 

 

 アスナの本質は英雄ではない。歴史に名を残す器ではない、という意味ではなくて、アスナの根底にあるものは、普通の女の子のそれと大差がない。それこそ、こんな事件に巻き込まれなければ、普通の女の子として生き、幸せを掴むこと出来たのだと思う。

 

──それでも、きっと彼女は英雄に至る。

 

 アスナなら出来てしまう。いずれ、この世界を終わらせた中心人物の1人として、未来へと語り継がれて行くのだろう。

 

 

 その未来に、私は自分の未来を重ねた。勝手な妄想だと分かってはいたが、姉妹のように慕う彼女が、姉妹のように慕ってくれる彼女が、自分のIFであるかのように思えたから。

 

 

 

 卑怯だと思う。反則だと思う。月で死ぬことが出来ていれば、アスナと会うことさえしなければ、死にたくないなんて、傲慢な願いは持たなかったのに。

 

 終わったと思えば続いていて、続くかと思えば終わっていて。そんなもの納得できる筈がなかった。

 

 

 納得なんて出来ない。心の整理も出来ていない。進むべき道はとうに見失った。

 

 それでも、この城は終わらせると誓った。

 この一歩が、絞首台へと向かう一歩に他ならなくても。

 

 だって、この身体はそういうもので出来ていた。

 

 

 

 

 

 

 それでも、アスナは攻略から離れるのだと言う。

 

 

 

 

 

 

 「そこのオネーサン、ちょっといいかイ?」

 

 朝食をどこで食べようかとキョロキョロ歩き回っていた私は、背後からの声に呼び止められた。

 ちょっとしたナンパのような言葉だが、その声は幼さを残したソプラノである。安心して振り返った私だが、その直前になって、詐欺の可能性もあるのかと思い直した。こちらに来てから、人間関係は全てアスナ繋がりだったから、今回のような突発的なのは初めてだ。なんだか少し緊張してしまう。

 

 果たして、振り向いた先にいたのは小柄な少女であった。黄色の巻き毛とクリクリと大きな瞳は、小柄な見た目と相まって活発な印象を与え、頬に描かれた三本の髭が、小動物的印象を加速させる。

 

 元気に走り回る猫やネズミ、そんな印象の女の子だ。

 

 

 そんな女の子が私に何の用だろうか。生憎と私は昨日までヒモだった身で、頼られても出来ることは少ない。

 

 

 「いやー、いつもあーちゃんと一緒にいたダロ?だから一人でいるのが珍しいと思ってナ」

 

 

 あーちゃん。もしかしなくてもアスナのことだろうか。そのセンスの良し悪しは別にして、アスナとあだ名で呼び合うような関係であることに驚く。アスナから友人について話を聞く機会は何度もあったが、目の前の少女の特徴に一致する話は聞いたことがなかったからだ。

 

 

 「あーちゃんもなかなか薄情だよナー。紹介ぐらいしてくれてもいいのにサ」

 

 私の訝しげな言葉に、黄色い少女はナハハと苦笑いをした。

 

 「オイラはアルゴ。これでもあーちゃんとは一層からの付き合いになるんだゼ」

 

 

 一層からの付き合いということは、もう2年になるということか。多くの人は、現実の知り合いなどいないとのことであったから、アルゴは、アスナにとって最も長い付き合いの一人ということだ。

 

 改めて、目前で私の目を覗き込む少女を見る。どう見たってアスナとは似ておらず、なぜ二人が知り合ったのか想像ができなかった。

 こう見えて、アルゴも攻略組だってりするのだろうか。

 

 「違うナ。オイラは戦闘向きじゃないから、ボスと戦ったりはしないヨ」

 

 であれば尚更わからない。アスナとはどういう繋がりなのだろうか。

 

 「偶然食べ物の好みが同じでナ。数少ない同性でもあったから、好く話すようになったんダ。知ってるカ?セリの天ぷら、あれが上手くてナー」

 

 朗らかに笑いながらも、じっと、アルゴの視線が私の目を貫いて離さない。

 

 

 へぇ。アスナがセリの天ぷらが好きだなんて知らなかった。アスナと一緒に生活していても食卓に並んだことはないし、話題にも出てこなかったのだが…。

 

 

───へぇ。

 

 声は聞こえなかったが、アルゴの口は確かにそう言ったように見えた。

 

 

 「まぁ、それは嘘だけどナ。セリの天ぷらとか食べたことないシ」

 

 おい。と思わず悪態が口に出る。そんな無意味この上ない嘘はやめていただきたい。

 

 「セリの天ぷらはあれダ。あーちゃんがリアルに戻ったら一番食べたいヤツだったかナ」

 

 いや、別に聞いてないのだが…。

 アルゴはあくまで自分のペースで会話を進める。なんだか私の周りはこんなんばっかだなと内心思いながら、結局なんの用なのかと問う。

 

 

 「別になんか用事があるって訳ではないヨ。いつもあーちゃんと一緒にいたオネーサンが、珍しく一人で歩いてたから気になってナ」

 

 アルゴの言葉に、なんだその事かと納得する。だが、さほど大層な理由はない。アスナが攻略から離れて、居所も移したものだから、共に行動する理由がなくなっただけだ。

 とはいえ、それ以前、私がヒースクリフと行動するようになってから一人で出掛けることも多かったから、何も今回が初めてと言うわけでもない。

 

 攻略組だけでなく、この世界は狭いコミュニティで形成されている。それでなくとも情報屋なんていうのも居るらしいから、そういった情報はすぐに広まると思っていたのだが。

 

 「そうでもねーヨ。情報の一部でも意図的に隠されちまうと信憑性がなくなるからナ」

 

 ふぅと、アルゴはわざとらしくため息をつく。

 

 「ところで、オネーサンはこれからどこに行くんダ?」

 

 アルゴの『お姉さん』呼びに、言い様のないゾクゾクとしたものを感じながら、食事を食べに行くのだと告げる。

 結局朝から何も食べれていないから、お腹も自己主張を始めている。

 

 「奇遇だナ。オイラもまだ何も食べてねーんダ。これから、ここらじゃ有名な穴場の名店に行こうと思ってたんだが、一緒に行かねーカ?」

 

 有名な穴場とはこれ如何に。

 

 ともあれ、お勧めのお店を紹介してくれるのであれば是非ご一緒したい。先程からいろいろと探してはいるのだが、なかなかピンとくる店がなかったのだ。

 

 私の言葉に、アルゴはニンマリと笑う。

 

 

 「決まりだナ。こっちダ」

 

 そう言って、アルゴは道を譲るように半身を引いた。三歩ほど歩いて横に並べば、ようやく彼女も歩き出す。

 三歩。

 横にならんでもなお私とアルゴの間にある距離だ。

 人と人とが共に歩くにはやや遠すぎるように思うが、人通りも少ない道で、あまりくっついて歩くのも、確かにおかしいのかもしれない。

 アスナとは初めから距離が近かったし、私にはこういった経験が少ないから、この距離の是非を判断することはできない。

 

 目的の店に着くまで、それでもアルゴは楽しそうに喋り続けた。───そしてその間一度も、私を視界から外すことをしなかった。

 

 

 

 

 

 照明の上でクルクルと回る木製のシーリングファンを見上げる。

 扇風機の羽によく似たそれは、どこか空回りする歯車のようでもある。

 

 「旨かっただロ?ここのパンケーキ」

 

 正面に座るアルゴの言葉に頷く。

 

 確かに絶品だった。フルーツが沢山盛られていて、見た目も宝石のようだったし、花のように添えられた生クリームや、雪のような粉砂糖。これぞインスタ映えって感じだ。

 

 「全部見た目の話じゃねーカ。美味しかったんだよナ?」

 

 ジト目のアルゴに無論だと答える。少し考え事をしていたから、あまり味わうことは出来なかったが。

 

 「まぁいいヤ。それより、はくのんは74層のボス攻略に参加したんだよナ?」

 

 攻略…というのは些か語弊があるような気がしなくもない。あの戦いは、そんな整然としたものではなかったから。

 とはいえ、74層のフロアボスを倒した場に居たという意味では間違いない。

 

 「あの人数で良く倒したもんだよナー。おまけに暴走した《軍》を救出しながらときたもんダ」

 

 通常のボス攻略が1レイド、つまりは42人で行われることを鑑みれば、確かに圧倒的に少ない人数での戦いだった。おまけに救出にも人数が割かれ、実際に戦っていた人数はもっと少なくないのだ。

 とはいえ、あの少人数で倒すことが出来たのは、あのボスに取り巻きがいなかったことと、ボス自体がパワー重視の比較的鈍重なタイプであったことが大きい。

 

 「最近じゃ取り巻きがいないボスも少なくねーし、パワー重視のボスも多いからナ。それでも普段から苦労してるんだから、やっぱり《二刀流》と《コードキャスト》がデカかったんだじゃねーのカ?」

 

 アルゴの言葉にウーンと唸る。

 そう言われても、私は後半気を失っていたし良くわからないのだ。私のコードキャストだって、言ってしまえば敵の攻撃を一回防いだだけである。そんな大きな貢献はしていないように思えた。

 

 「一回?あァ、《コードキャスト》を使うと副作用があるんだったカ」

 

 

──白々しい。

 

 アルゴの言う副作用。黒く染まった左腕を私は隠していない。

 私の白いワンピースと対照的なその色は、どれだけ遠目であっても目立つ筈だ。

 

 それでも、気を使ってこちらから話し出すの待っていたのかも知れないと自分に言い聞かせ、アルゴから見えやすいように左腕を掲げる。

 

 「…痛みはねーのカ」

 

 多少はある。だが、コードキャストを使った直後と比べると誤差のようなものだ。我慢できないほどじゃない。

 

 「脇腹も同じようになってるって聞いたゾ。そっちは?」

 

 同じだ。脇腹は範囲が狭い分気にならないぐらいで。

 

 「痛みがあるのは辛いナー。でも、なんで黒くなる範囲に違いがあるんだろうナ?」

 

 それは私もわからない。そもそも二回しか使って居ないのだから、考察のしようもないのだ。魔力の消費量に比例するのか、世界への干渉量に比例するのか、或いはランダムか。いずれにせよ現状では想像の域を出ない。

 

 

 「なら、これ以上《コードキャスト》を使うのは控えた方がいいナ。例えば、オレっちがその《コードキャスト》を使うこと出来るのカ?」

 

 いや、それは難しいだろう。

 

 私自身が感覚でコードキャストを使っているから、アルゴに理屈を教えることは出来ないのだ。

 もし、アルゴがとんでもない才能の持ち主で、見ただけで再現できると言うのであれば話は別だが。 

 試しにやってみようか。イメージ的には、体内で作ったプログラムをこの世界に押し通すような感じなのだが。

 

 

 「いやムリムリ。その説明から意味不明だしナ。オイラは止めとくヨ」

 

 アルゴにそりゃそうだと頷き、そろそろ店を出ようと伝える。ずいぶんと長居してしまった。そろそろ攻略に向かいたいところである。

 

 「まぁ待てっテ。これを飲みきるまで付き合ってくれヨ」

 

 そう言って、アルゴは手元のグラスを揺らす。既に氷が溶けてなくなったそれは、静かに水音をたてるのみだ。

 

 短く息を吐き、浮かしかけた腰をおろす。それ見たアルゴは、悪いナと言いながら手に持ったグラスをテーブルに置いた。

 

 「そういえば、なんで血盟騎士団との会合で坂ノ上田村麿なんて名乗ったんダ?」

 

 ニシシと笑うアルゴへ視線を向けず、頬杖をついたまま窓の外を眺める。

 

──ちょっとした冗談だ。長い付き合いになるのなら、少しでも親しみやすくしようとしただけだ。

 

 「血盟騎士団のメンバーに斬りかかったっていう噂ハ?」

 

──ずいぶんと好き勝手言ってくれたから、思わず手が出ただけだ。

 

 「──そもそも、はくのんはなんで100層を目指すんダ?」

 

 

───いい加減にしてくれないか。

 

 

 好き勝手な質問攻めに思わず立ち上がる。

 瞬間、アルゴは通路まで飛び退き、いつの間にか片手に装備していたクローを構える。

 

 余りにも速い対応だった。もしかしたら、いつでも飛び退けるように、ずっと腰を浮かしていたのかもしれない。

 その対応が、無性に頭にくる。

 

 

 私がそんなに信用できないのだろうか。いや、信用できないのだろう。目的のわからない協力者など、彼女達からすればいつ裏切るかもわからない相手でしかない。

 だが、だからなんだと言うのだろうか。そう思うなら、私に関わらなければ良いのではないのだろうか。

 

 アルゴもキリトもヒースクリフも、代わる代わるに私に問うのだ。

 なにが目的なのか、なんのために戦うのか。

 何度も答えた。

 あなた達のためだ。私が私で在るためだ。

 何度も何度も言葉を交わした。行動でも示してきたつもりだ。もしそれでも信用が出来ないなら、一体何をすれば納得するのだろうか。

 

 そのくせ、私には最前線に居てもらわなくては困ると言うのだ。

 

 私の責任者だとか、ギルドとして助けただとか、恩着せがましいにも程がある。私は使い勝手の悪いアイテムかなんかなのだろうか。

 あなた達が私の理由に納得出来ないのは仕方がないとする。理解も出来ないと言うならそれも仕方ないとしよう。

 だからって、そんな探るような真似は違うと思うのだ。

 

 

 私の動機が理解できなくて、それでも私の力を借りたいと言うのなら、なぜ誰も、『自分のために死んでくれ』と言えないのか。

 

 求めない癖に、与えられるものを信じられない癖に、それでもなお与えられて当然と考える。

 

 

 散々だった。もうウンザリだった。例えこれが八つ当たりに過ぎないとしても、これは紛れもない本心だから。

 目の前で、瞳揺らす少女を睨みつける。

 

 あなた達が私をNPCだと思うのは勝手だが、だからといって、私が何も思わない訳ではない。

 

 

 「ぁ…いや…、オイラは──」

 

 

──先に失礼する。いつまで待っても飲み物は無くならないようだから。

 

 そう言ってアルゴに背を向ける。

 

 「ちょ──ちょっとまって!」

 

 

 アルゴの引き留める声に足を止める。

 

 

──安心して欲しい。攻略は続ける。

 

 そう言って顔をアルゴへと向ける。改めて見るその表情はずいぶん幼くみえた。

 

 

 

──でもそれは、あなた達の為じゃない。

 

 

 




私はアルゴが好きです
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