雪ノ下陽乃は今も比企谷八幡を愛している 作:氷結アイスブリザード
原作:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
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ください
八陽です
あの日から五年の歳月が過ぎた
私もすでに大学生ではなくなった
雪乃ちゃんたちもすでに高校も大学も卒業し、もう私の親しい人で学生なのは小町ちゃんだけになってしまった
かわいらしい小鳥の鳴き声が聞こえてくる
どうやら夜明けごろのようだ
カーテンの隙間からかすかに光が差し込む
ベッドにほぼ寝たきりの生活になってしばらく時間の感覚が失われつつある
比企谷くんがこの世を去って五年
彼を失った私の喪失感はかなりのものだった
雪乃ちゃんも静ちゃんもそんな私の姿に驚きを隠せず、あの母でさえ動揺するほどだった
身内が死んでも平然としている私が比企谷くんが死んだ時は号泣し、何日も泣き続けたことが相当意外だったのだろう
彼の死ぬ直前に残した最後の言葉は今も覚えている
彼は比企谷くんは私を庇って死んでしまったのだから
『………最後くらい少しは素直になりますかね…サブレの時はどこの誰かとかそういうの知らず助けないとっと体が勝手に動いただけなんですけど…今回は違います
あなたを助けたいと死なせたくないと思って無我夢中でした」
比企谷くんが死ぬ直前になって、私は彼の事が好きだったことに気づいた
私の本性に気づいていながら、態度を変えず自然に接してくれる彼との時間に居心地の良さを感じていた
雪ノ下家の長女としてではなく雪ノ下陽乃個人として私を見てくれてうれしかった
『これからは雪ノ下と仲良くやっていってください…千葉の兄弟が仲の悪いままというのは千葉県民として悲しいですからね
それから陽乃さん、あなたに涙は似合いませんよ………俺みたいなボッチの事は忘れてこれからは自由に生きて…幸せになってください』
バカだよ比企谷くんは…忘れるなんてできるはずがない。雪乃ちゃんよりもっと好きな君を忘れるものか
比企谷くんがこの世を去って1ヶ月たったころ、私は雪乃ちゃんとの関係を改善を目指した
煽ることをやめ、優しくしすぎないようと心掛けた
また依存してしまわないか心配だったけどそれは杞憂だったようだ
雪乃ちゃんは私を避けようとせず自分で物事を決められようになっていた
以前バレンタインで電話の時、比企谷くんのセリフを真似していたころとは、以前の雪乃ちゃんでは考えられないことだ
どうやら比企谷くんの死は雪乃ちゃんにも大きな影響を与えていたようだ
変わったといえば私の母もだ
以前なら家の代理やらパーティーなどで散々こき使ってきたのに強要することもなくなり進路も好きにしなさいといっていた。別人かと思った
私が好きな大学さえも行かせてくれず、自分の目的のため望んでいた学校より低い偏差値の学校に行かせた母親ととても同一人物と思えなかった
どうやら私が殺されかけたことで親としての愛情に目覚めたみたい
失いかけてようやく子どもの幸せを望むようになったのだ
次何かあったら今度こそ私が殺されるかもしれない、だったらもう自由に人生を選ばせようそう思ったのだろう
私が誰とも付き合わず誰とも結婚する気がないことを知っても何もいわなかった
以前なら家の繁栄のため平気で政略結婚させようとしてきただろうがもうその気はないようだ
もし無理やり誰かと結婚させようとしたら大人しく従っていた昔の私はともかく、今の私はお母さんを殺していたかもね…
あれから何度目かの春が過ぎようとしたあの日、職場で私は倒れた
心配した雪乃ちゃんが病院で詳しく調べさせたところ不治の病にかかっていることがわかり余命宣告を受けた
それを知った家族や静ちゃん達は悲しみ、治療できる医者を探しだそうとした
だけど今の現代医学では不可能だった
私は死を目前としても冷静だった
ただせっかく比企谷くんに救ってもらった命で長生きできなかった事が申し訳なかった
いくら初期症状が出にくく、比企谷くんに助けられる前からすでに発症していたとはいえ
だけどけっして無駄ではなかった
雪乃ちゃんとの親密な関係、母親の操り人形ではない自由な人生、そして誰かを本気で愛する気持ち
以前の私なら一生かけても手に入れられなかったものがたった五年で3つも手には入った
もう心残りはなかった
雪乃ちゃんたちには悪いけど私はもう長くはないだろう
そう思っていたら、ふと人の気配を感じた
こんな夜遅くに?
会いたかった、けど長い間会えなかった…懐かしい姿が目に映った
「陽乃さん」
とても懐かしい姿で腐ったような目のままで
「ひきが…や…くん?」
「久しぶりですね陽乃さん」
これは現実だろうかそれとも夢?
私の弱った心が生み出した幻想、ああどっちでもいい
君に会いたかった…あの日からずっとずっと
今すぐ伝えたい言葉があるのに死病によって衰弱している私の体は声を発するのもつらい
だけどこの息苦しさが夢ではなく現実だと私に認識させてくれる
「………つらそうですね」
悲しげな表情を浮かべている
君は死んだ後も優しいんだね
「ふふ…そりゃそうだよ不治の病だし♪」
体がつらいのに自然と笑みを浮かべてしまう
ああ、私ってこんなにも君に会いたかったんだ
死病にかかっていてとても笑い事じゃないのに
それになに得意気に言ってんだろう私
まるであの頃のように
「迎えにきました、陽乃さん」
「およよ、君が自分から私に会いにくるなんて珍しいね
なになに、もしかしてお姉さんに惚れちゃった♪」
「相変わらずですね」
比企谷くんはどこか懐かしそうにふっと笑った
「ほらほら、せっかく会えたんだから私とスキンシップしようよ!私に抱きついちゃっていいんだよ♪」
「いやいや、俺肉体ないんすから触れないすよ」
「プ~比企谷くんのいけず~」
「あんたなあ…」
呆れ顔をする比企谷くん
幽霊になっても相変わらずだな~やっぱり比企谷くんはおもしろい
いきなり比企谷くんは真面目な顔をした
「なんでもっと自分の身体の事気を使わなかったですか
いくらあなたでも限界はあるんですよ」
「………」
返す言葉がない
雪乃ちゃんや静ちゃんにも何度も言われたからね
「どうして結婚して家族を持たなかったのですか
もしかしたら病気に気づいてもらえたかもしれないのに…」
「私が好きになった人は今まで一人だけだよ
好きでもない人と結婚なんてできない」
「………陽乃さん」
「私が決めたことなの
この気持ち誰にも否定させない、誰のせいでもない」
大学生のころの私は比企谷くんの事が好きだった
それは今も変わらない
仕事ばかりしていたのは気を紛らわせるためだった
そうしないと君を失った悲しみに耐えられそうになかったから
私は誰とも結婚しなかった
それ以前に誰とも付き合うつもりない
告白は何度もされたが興味は一切わかなかった
告白してくる相手は本当の私ではなく外面のいい仮面、偽物の私を求めていた
誰一人気づきもせず一切の疑いもなく
私の仮面に感づいた人もいたが告白どころか私と一切関わろうとせず避けていた、どっちにしろ興味なかったけど
そう、私は比企谷くんの事を心から愛している
この数年1日も忘れた日はなかった
私の言葉を意味を理解したのか幽霊なのに微かに顔を赤らませてる比企谷くんを私は満足げに見つめる
「そうすか///」
「フフ~ン」
「それなら安心して一緒にいることができますね」
「それって」
「俺はただ迎えに来ただけじゃないんですよ」
「これからはずっと陽乃さんのそばにいます」
これってプロポーズ?
つまり私は比企谷くんともう別れることなく一緒にいられるということ
「…うれしい」
感極まって涙を零す
今すぐ抱きつきたいけどそれさえできない衰弱した自分の体がもどかしい
そんな私の目もとにそっと手を当ててくる比企谷くん
「陽乃さんが俺の事をそこまで想ってくれていたなんて出会ったころの俺が知ったら驚愕しますよ」
「そうだね、私も誰かを本気で愛するなんて思ってもいなかったよ」
初めて会った時はこんな関係になると思っていなかったけど
「すいません」
「なにがかな」
「寂しい思いをさせてしまって」
「もう私の前からいなくならないでよね」
「もちろんです」
比企谷くんはそっと私の目の前に手をさしのばした
ああ、ようやく私は愛する人と同じ時間を共に歩める
こんなに心満たされて死を迎えることができるなんて昔は思いもしなかった
あの時伝えられなかった私の想いを最後に口にする
「君に会えてよかった…これからはずっと一緒だよ、大好き」
肉体の檻から解放された私は最愛の人に強く抱きしめられ身をまかせる
「陽乃さん愛してます。昔も今もこれからもずっと」
翌朝、微笑むような顔で息を引き取った雪ノ下陽乃が妹の雪ノ下雪乃により発見された
そのことを知った彼女の関係者は彼女の死を深く悲しみ、別れを告げた
そして、天国で八幡と幸せに暮らせるよう心から願った
おしまい
あとがき
シリアスな話でした
死んではいるけどハッピーエンドです
これから二人はずっと一緒にいられます
最近野菜が高くてほんと困ります
白菜が1/2で400円くらいします
買うか!こんなの!キャベツも白菜程ではないけど高すぎ
…
おかげで料理が制限プレイです…