永琳の人体実k・・・じゃなかった。治療を見てしまってからだいたい6〜7年ぐらい経過したわ。妖怪の私からしたらあっという間の事なのだけれど、この6〜7年の間に色々な事があったわ。
白ひげが魚人島を縄張りにしたり、勇儀が暇潰しに同盟を結んだ7つ海賊団をアジトがある島ごと沈めたり、村沙が四皇ビックマム海賊団の傘下の海賊船を10隻海難事故に遭わせて沈めたり、永琳が鈴仙を連れて海賊狩りに行って15の海賊団狩ったり、コング元帥が全軍総帥になってセンゴクが海軍本部の元帥に就任したり、とある素行の悪過ぎる1人の海兵が幽香が育てていた大切な花壇の向日葵を面白半分でナイフで斬ってしまい、怒り狂った幽香によって海軍本部が滅びそうになったりと、それはもう本当に色々と大変だったわ。
私もセンゴクが元帥になってから中将に昇格し、多数の部下を貰ったわ。ホントは軍艦も貰えるみたいだったけど、にとりが勝手に「私が最高の軍艦ってヤツを作ってあげるよ!」と断ったらしい。あのにとりがもう2週間以上造船所から出てこない事になんか嫌な予感がするが・・・まぁ、大丈夫だろう。
そして、海軍中将に昇格した私、八雲 紫は現在どこで何をしているのかと言うと・・・・。
「ガープ中将、この書類とこちらの書類が間違っています。早く直して下さい」
「えぇ〜〜〜〜!?のう藍、もう勘弁してくれんか?もう儂4日も菓子を食っとらんのじゃが・・・」
「申し訳ありませんが、これ等の書類の山は全てガープ中将がサボッて溜めたものです。今日中に机の上にある書類は終わらせていただきます」
「じゃからって結界を2重に張らんでもいいじゃろう・・・」
ガープの執務室のソファーに座り、私が張った結界の中で目の下に隈を作りながらも藍に監視されながら書類仕事をしているガープをお茶を飲みながら眺めているわ。勿論センゴク元帥からの許可も貰ってあるわ。頼んだら喜んで許可してくれた。・・・・あら?この煎餅美味しいわね。ガープったら、また勝手に高い煎餅を購入したわね?
「む!?ゆ、紫!それは儂が後で食べようと思っておった煎餅じゃぞ!?返せ!!」
「なら早く仕事を終わらせなさい。早くしないとお煎餅が全部なくなっちゃうわよ?・・・うん、美味しいわ♪おつる中将に送ってあげましょう」
「あぁ!!儂の煎餅ッ!!!」
「ガープ中将、まだ仕事は終わっていません。終わったら煎餅を食べていいですから」
煎餅を半分お皿に乗せてスキマでおつる中将に送ると、ガープが滅茶苦茶泣きそうな顔でこっちを見てくる。まぁ、今までサボッていたのだからこれぐらい我慢してもらいましょう。
そんな風にガープが涙目になりながら書類にペンを走らせるという普段なら絶対に見られる事のない光景を眺めながらお茶を啜っていると、懐に入れていた電伝虫が鳴り始めた。懐から出してテーブルに置いたその電伝虫は、左前辺りに結び目がある薄い黄色のリボンが付いた鴉羽色の帽子を被り、紫色の瞳が閉じたサードアイが付いていた。これはこいしの持っている電伝虫に繋がる電伝虫だ。彼女はホントに自由で、海軍本部には殆どおらず、高確率で凄い所から連絡してくる。因みに前はおやつタイム中のビックマムの帽子の上から連絡して来た。何か口に含みながら話していたから多分ビックマムのお菓子を摘み食いしたんでしょうね。電伝虫の向こうで誰かの怒り狂う声が聞こえたもの。
プルプルプルプル、プルプルプルガチャ・・・
「はぁ〜い。こちら海軍中将八雲 紫よ。今日はどこにいるのかしら?」
『もしもし〜?私こいし!今ね、マリージョア?にいる奴隷達がいる牢屋の中にいるの♪』
「あら、今日はそんな所にいるのね。それで?何か面白い物でも見つけたのかしら?」
今日はマリージョアの奴隷達の牢屋の中か・・・前連絡して来た場所が場所なだけにちょっと驚きは少ないわね。それにしても牢屋ねぇ?・・・前は「おっきなオバさんの上に喋る雲とお日様があるよ!」なんて楽しそうに話していたけれど、牢屋にこいしが面白そうと思う物なんてあるのかしら?
私が首を傾げていると、こいしの楽しそうな声が電伝虫から聞こえてきた。
『うん!あのね〜♪牢屋の中で〜歌う奴隷さんを見つけたの♪』
「?歌う奴隷さん?」
うん、ちょっと今回ばかりはどこら辺が面白い物かイマイチ分からないわ。歌を歌う奴隷なんて、言ってはなんだけれどマリージョアには沢山いるのよね。こいしが連絡してくる程歌が上手いのかしら?
『そうそう♪それでね〜その人の顔なんだけどね?な〜〜んかどこかで見た顔だなぁって思ってたんだけど、さっき思い出したの!それで、名前も聞いてみたら当たってたんだよ♪凄いでしょ〜♪』
「えぇ、とっても凄いわこいし。因みにその人の名前ってなんて言うのかしら?」
『うん!ギルド・テゾーロって言うんだって♪』
・・・・・うん?
「・・・・・ごめんなさいこいしちゃん?お姉さんちょ〜〜っと聞き間違えちゃったみたいなのよ。もう1回その奴隷さんのお名前を言ってもらえるかしら?」
私はちょっと話し方がおかしくなりながらもなんとかこいしに聞き返した。私の聞き間違いじゃなかったら、こいしが見つけた奴隷さん、私と藍が暇を見つけては探し続けていた人物なのだけれど?
私は無意識のうちにゴクリと唾を飲み込みながらこいしの返答を待った。
『うん!いいよ♪ギルド・テゾーロって言うんだって!ね?奴隷さん!』
『あ、あぁ・・・確かに俺はギルド・テゾーロだ。というか嬢ちゃん、どうやって入って来たんだ?』
こいしの元気な声に続いて、テゾーロ本人らしき男性の声が電伝虫から聞こえて来た。本人も自分をテゾーロと名乗っている。
・・・・・・・・ビンゴォ!!!
「藍!!今すぐにステラをここに呼んで来なさい!!」
「え!?し、しかしまだガープ中将の仕事がまだ・・・」
「そんなサボリ魔爺い「おい」なんて放っておきなさい!!今はステラをここに連れてくるのが最優先!!分かったら行く!!」
「か、畏まりました!紫様!」
「こいし聞こえる?今からそっち行くからその人から離れないでね!」
『うん!分かったよ紫お姉ちゃん♪』ガチャ・・・。
藍はスキマを開いて訓練場に居るであろうステラを呼びに行った。ステラは現在私の部下で、大佐にまで昇進している。更に以前幽香が見つけた悪魔の実を食べ、海軍本部でも珍しい
ステラが食べたあの水色の悪魔の実は『ミスミスの実』。食べれば身体を霧にしたり、周囲に霧を発生させる事が出来る“霧人間”となるロギアの実だ。
これによってステラは新しく悪魔の実を扱う訓練をするようになり、更に力を付けた。
そうこうしている内に藍がスキマを開いてステラを連れて来た。『正義』と書かれたコートを羽織り、腰には愛用の刀を携え、頭には海軍帽を被っている。
「紫様、連れて参りました。しかし突然如何したのですか?」
「あの・・・私いきなり連れて来られた所為で何が何だかいまいち理解出来ないんですけど・・・何かありました?」
「喜びなさいステラ!今こいしから連絡があって、マリージョアでギルド・テゾーロって名前の男の奴隷を見つけたんですってよ」
「ッ!!?そ、それは本当ですか!!?」
驚愕の表情になるステラに私が頷いて返すと、ステラは太陽のような笑みを浮かべた。隣に立つ藍も喜びの表情になるステラに「良かったなステラ!」と言っている。
「さぁ!ちゃっちゃとマリージョアに行って!テゾーロを攫お・・・コホン!連れて来ましょ《プルプルプルプル、プルプルプルプル》・・・・・」
いざマリージョアへ!と思ったと同時に、私の懐に入っているもう1つの仕事用の電伝虫が鳴り始めた。私は無言でアフロに眼鏡を掛けた電伝虫を取り出して受話器を取った。
『紫!!悪いが急いd「死ね」何故n』ガチャ・・・。
プルプルプルプル、プルプルプルプル・・・
受話器を電伝虫に戻すとしばらくしてまた鳴り始めた。正直言って今そんな気分ではないのだけれど、藍が念話まで使って『出てあげて下さい紫様・・・』って言ってくるから仕方なく溜め息を吐きながら再び受話器を取った。
「なんの用よ?変な用事だったら貴方の上半身と下半身を切り分けた上でそれぞれ
『何故そんなに不機嫌なんだかは分からんが、取り敢えず謝罪しよう。だからそんな本気でやりそうな事はせんでくれ』
「はぁ・・・で?なんの用よセンゴク?今から私達は用事があるのだけれど?』
私は受話器の向こうの相手・・・センゴク元帥に要件を聞いた。正直言って今仕事より大事な用事があるからやるかどうか以前に絶対やらないのだけれど。
『あ、あぁ。実は急いでマリージョアへ向かって欲しいのだ。先程マリージョアから連絡があってな、1人のタイの
「(うわぁなんて偶然。・・・そうだわ。ならその混乱に乗じてテゾーロを攫っちゃいましょう♪)分かったわ。なら私と藍とステラが行ってあげるわ」
『分かった。私はすぐに軍艦を5隻手配してマリージョアへ向かわせる』
センゴクは焦っていたのかすんなり承諾した私を怪しむ事なく通信を切った。私は藍とステラを見て互いに頷き合い、マリージョアに繋がるスキマを開いた。藍とステラがスキマに消えて行ったのを見届け、机に座ってこちらを見るガープに笑顔を向けてからスキマに入って行った。
この時、ガープは紫の笑顔から「センゴクに何か言ったら殺す」というメッセージを感じ取り、儂は何も知らんと心の中で連呼しながら書類にペンを走らせた。
★
マリージョアに繋がるスキマを抜けると、そこにはまるで戦争中の様な光景が広がっていた。あちこちで火の手が上がり、頻繁に銃声や爆発音、更には誰かの断末魔や悲鳴が聞こえて来た。
「あらあら、派手にやってるわねぇ♪さてと、こいしの妖力は・・・・こっちね。行くわよ2人共」
「「分かりました」」
私は日傘を差しながらこいしの妖力を感じる方角へ歩みを進めた。マリージョアの中心に向かうに連れ、銃声や爆発音が大きくなって来る。更には道端に海兵や天竜人の私兵やSP、CPの連中が倒れている。
ボロボロだったり、倒壊してたり、燃え盛る建物が進むに連れ増えていく中、とあるボロボロの建物の中からこいしの妖力を感じる事が出来た。どうやらこの中にテゾーロとこいしがいるらしい。
「ここよ。この建物の地下からこいしの妖力を感じるわ」
「ここに・・・テゾーロが・・・・」
ステラはボロボロになっている建物を見上げながら自分が捜し求めていた人物の名前を呟いた。本当にここに彼女が知っているテゾーロがいるかはまだ分からない。もしかしたら同姓同名の別人かもしれないからだ。だから実際にステラがあってみないと本人かどうかは分からない。
私も早く彼女にテゾーロを会わせてあげようと思い、建物の扉を開けた。ボロボロな建物内を散策し、やっとの事で地下へと続く階段を見つけると、スキマからランタンを取り出して下に降りた。
暗い石階段を3人で降りて行くと、やがて沢山の牢屋がある開けた場所に出た。牢屋の中を見ると、老若男女多種多様な種族の奴隷達が怯えた様子で私達を見ていた。てっきりみんな逃げ出したのだと思っていたが、どうやらここは上の建物が破壊されただけで、報告にあった魚人は来ていない様だ。
放っておいても私は構わないのだが、ステラが悲しい顔で牢屋の中の奴隷達を見詰めていたため、逃すことにした。
「藍、貴女はここにいる奴隷達を解放しなさい。私はステラを連れてこいしのいる牢屋を探すわ」
「畏まりました。紫様」
藍はそう言うと牢屋の鍵を探しに行く・・・なんて事はせず、妖力を纏わせた蹴りで牢屋を破壊し、奴隷達の首に付けられている首輪を妖力を纏わせた手刀で破壊し始めた。
「お、おぉ!!外れた!首輪が外れたぞ!!!」
「やったわ!!これで私達は自由よ!!」
「ありがとうよ嬢ちゃん達!!この恩は一生忘れねーよ!!」
解放された奴隷達は藍や私達に泣きながら礼を言って地上に続く石階段を駆け上がって行った。私はステラを引き連れて奥へ奥へと歩みを進めた。そしてこいしの妖力がある1つの牢屋の鉄扉の前で立ち止まる。
「この牢屋よ。・・・・ステラ、覚悟はいい?」
「はい・・・大丈夫です!」
「分かったわ。じゃあ、こいしが見つけた人物に会ってみましょう・・・・ハァ!!」
私は手に持った扇子を開き、妖力を纏わせてから鉄の扉を斬り開いた。ガラガラと音を立てて崩れ落ち、牢屋の中を見ると、「おぉ〜♪」と言いながらパチパチと拍手するこいしと、ボロボロの服?を着たステラとより少し背が高い顔を驚愕に染めた男性がいた。
ステラは彼の姿を見てしばらく固まった後、ポロポロと大粒の涙を流した。ステラは涙を拭い、私が今まで見た事のない美しい笑顔を浮かべた。
「やっと・・・・会えたわね」
「・・・・・・・ステラ?」
ステラは今日、捜し求めていた男性・・・ギルド・テゾーロと再会した。