出オチ注意。キャラ崩壊注意。少し不自然な点がある可能性有り。
斉木君は高校二年生です。キャラ崩壊注意。
僕の名は斉木楠雄。超能力者だ。
突然だが、今日10月3日、放課後に僕はとある市限定の名物饅頭を買う為に態々公共の交通機関を使っていた。瞬間移動などの超能力を使って買いに行くのではなく、あくまで電車に乗る。それが良いのだ。その商品の名を知りたいならば原作4巻を読んでくれ。
その饅頭は……ふざけた名前だが大納言をふんだんに使った甘さ控え目のあんと狭山茶を練り込んだ生地のバランスが絶妙で全然嫌いではない。
(でも確かな事は一つだけある……)
だが問題はその帰りで起きた。行きと同様に電車を使ったのが不味かった。
(私達は…会えば絶対、すぐに分かる!!)
僕の超能力の一つ、テレパシーは最低最悪のクソ能力だ。他人の心の声が聞けてしまう力。この力のせいで僕は四六時中他人の心の声を聞かねばならない。しかも能力のOFFが出来ないというゴミ仕様。
(私に入ってたのは君なんだって。君に入ってたのは私なんだって!)
そして僕は今満員電車の中にいてそのせいで周りが滅茶苦茶うるさい。だから特定の心の声を聞き分けて判断する事が出来なかった。だから彼女が目の前に現れるまで気付けなかったんだ。常時発動している意味が無いじゃないかクソ能力。
(楠雄君だ……!!どうしよう、直接会うのは初めてだし……何て話しかけよう……)
いや誰だ君は。何故僕の事を知っている風なんだ。そして何故顔を赤らめている。おいやめろ僕はラブコメの主人公になった覚えはないぞ。
(あれ…?でもこっちを信じられないものを見る目で見てるし……てゆーか超能力で私の心の声聞こえてるんだよね……?はっ!そういえば透視も出来るんだっけ!?どうしよう!!裸見られた!?)
おい待て、何故僕の名前どころか超能力の事まで知っている。僕は君なんか知らないぞ。一体どういう事だ!?あと腕で胸元を隠すようにするのはやめろ。傍からみたら僕が変態行為をしているみたいじゃないか!
「く、楠雄君……あの、私……覚えて…ない?」
………君は、何者だ?
****
「え、えー…っと、楠雄君……?」
……にわかには信じ難い話だ。しかし彼女の記憶は本物だ。
あの後、僕は彼女が何者かを問うた。すると彼女は悲しげな顔をして勝手に去ろうとしたものだから僕はとりあえずは引き止め、話を聞く事にした。
そこから話された内容は正に骨董無形なもので、あり得ないような馬鹿げた話だった。
彼女ーーー宮水三葉はここ数日、眠っている間に不定期で僕と心と身体が入れ替わって生活していたと言うのだ。
最初は海藤と同じただの中二病かとも思ったが、しかしそれだと僕と僕の超能力について知っている理由にはならない。それにテレパシーで彼女の真剣さが直に伝わって来た。
だから僕はテレパシーの応用で彼女の記憶を探らせて貰う事にした。どうせもう超能力は知られているし、彼女がそれを言いふらすような人間には見えなかったしな。
結論から言うと確かに彼女には不定期で僕と心と身体が入れ替わって一日を過ごす事になっていた記憶があった。何処と無く朧気な部分も多かったが。まるで超能力で記憶にモヤがかかったような感じだ。
確かに入れ替わり自体は0巻で不愉快な事に幽体離脱を使って燃堂とやった事はある。不愉快な事に。鳥束の奴も『口寄せ』で幽霊を自分の身体に憑依させる事があった。入れ替わりそのものは否定しない。
しかし僕は彼女と入れ替わった覚えは無いし、知らない間に自分が普段と違う行動をしていたと取れるような周りのリアクションも無かった。彼女の記憶からして彼女が僕の身体で過ごしている間は僕が彼女の身体にいたようだしな。何故か伊達眼鏡をして無口でやり通して昼休みにはコンビニのスイーツを幸せそうな顔でもにゅもにゅと食べていたらしい。うん、僕だ。伊達眼鏡は入れ替わっても超能力が使えるから石化能力を抑える為だろう。
そして彼女は僕の身体と入れ替わった際には僕のお金で『純喫茶 魔美』のケーキセットや諸々のスイーツを勝手に食いまくって僕の財布をスッカラカンにしたようだ。おい、人の金で何やってんだお前。
「ご、ごめんなさい………」
まぁ今回は許してやる。入れ替わっている間に
だが本当にどういう事だ?寝ている間に制御装置が外れて幽体離脱を暴発させたか?しかしそれだと更に不自然な点が増えるし……。
因みに彼女と僕が入れ替わっていた事は空助の奴に一発で見抜かれたようだ。何なんだあいつの洞察力と考察力。マジキモいんですけど。
その際に母さんが超能力について口を滑らせたらしい。父さんが必死に誤魔化そうとしていた姿も記憶で見ている。かなりみっともない話題の晒し方だった。
それに入れ替わっている間は彼女は僕の超能力を使えなかったようだ。よくそれでそんな話信じたな。
疑問は尽きないが……それで?君はどうして態々僕に会いに来たんだ?それもかなり遠い田舎から。交通費だって馬鹿にならないだろう。その糸守という町には滅多に電車も通らないようだしな。
「え、えーと…それはその……」
……?何だ?妙に歯切れが悪いが……。
(どうしよう……何て言おう……。まさか楠雄君と照橋さんのデートが気になったなんて言えないし……)
やれやれ、テレパシーを忘れていないか?……って、おいちょっと待て。今何を思った。誰と誰がデートするだと!?
(でも違う……本当は……ただ楠雄君に逢いたくて……)
何だこの急展開。何で実質初対面なのに君の僕に対する好感度がそんなに高いんだ。今テレパシーを使って好感度を測ってみたが90まであったぞ。おかしいだろ。何がどうしてそうなった?
しかも記憶を探った時には出てこなかった情報だが、何勝手に照橋さんとデートの約束なんてしているんだ。いやでも今日学校で照橋さんに会ってもテレパシーでそんな事は全く伝わって来なかったぞ。どうなっているんだ?
しかしどうする?照橋さんに加えて宮水さんまで何故か僕に好感を抱いている。宮水さんと照橋さんが鉢合う事になって二人が恋のライバル的な関係になってダブルで迫られたらその面倒臭さは燃堂や海藤を軽く凌駕する。
『斉木楠雄の♀難』なんてタイトルになるのは御免だぞ。全く頭が痛い……っ!?
途端に僕の頭に映像と声が流れる。僕は頭痛を起こすと断片的な未来を予知するという超能力も持っているのだ。
『ご覧ください!彗星が二つに分裂し、無数の流星が発生しています!』
『これは事前の予報にはありませんでしたね!』
『その日は神社で秋祭りが催されていたために大勢の人々が集まり、被害が集中。落下地点の周囲1kmが一瞬で壊滅し、結果、住民の3割以上の約500人が死亡』
隕石が彼女の住む糸守町に落下して周囲が崩壊して行く。その衝撃で何人もの人が死んで……、宮水さんも……。
……マジか。
……僕の予知は放っておけば100%現実になる。つまりこのままだと宮水さん達は死ぬ。間違いなくな。だが1999年の大予言や2000年問題、マヤ文明とかに比べたら原因が分かっている分、対処はしやすい。
………やれやれ。見殺しにするのも後味が悪いし、仕方ない……。僕は正義の味方ではないのだがな。
****
『ご覧ください!彗星が二つに分裂し、無数の流星が発生しています!』
『これは事前の予報にはありませんでしたね!』
『これほどの壮麗な天体現象を目撃していることを……正に肉眼で目撃出来ている事はこの時代に生きる私達にとっての大変な幸運と言うべきでしょう!』
幸運なものか。大勢の人が死ぬというのに少し不謹慎だぞ全く……。
10月4日、僕は糸守町に来ていた。…予知の感覚で近い内に来る未来だとは分かっていたが、次の日は早過ぎるだろう……。
「く、楠雄君……ほ、本当に割れる彗星を全部壊すん……?」
やれやれ……人の目に付きにくく、最も隕石を効率的に破壊出来る場所を見つける為とはいえ、宮水さんに予知の内容を話したのは早まったか……。要らぬ心配をさせてしまっている。
彼女は失敗した場合の惨事の事もそうだが、それよりも成功した後の僕の身を案じている。………心の底から他人の心配を出来る善人に会うのは稀だ。
さて、そろそろだ。僕は頭の左に付いている制御装置を外して宮水さんに預ける。そして万一の事を考えて
僕は空を飛び、両手でサイコキネシスを使い、巨大な光の球体を作り出す。これで一気に隕石を破壊する。以前、幽霊である燃堂の父親に使った際には通じなかったがそれは奴が霊体だったからだ。島一つ消滅させるのも訳ないこの超能力を制御装置無しでやれば対処出来るはずだ。
僕はフルパワーのサイコキネシスで思いっきり、分裂した隕石を片っ端から粉砕した。どれがこの町に落ちるかなんて分析するのは面倒だからな。これだけの数なら制御装置を外した状態なら可能だ。僕と同じスペックの
サイコキネシスの塊を隕石にぶつけるのは良いが、周りにバレるのは面倒だ。分身達には僕や球体を糸守の人々に対して催眠を応用させて姿を隠させる。流石に報道で見られる事は無いだろうが、糸守町の人達には見られてしまうかもしれないからな。制御装置が無ければ分身達にそれをして貰うのは容易い。本当なら余波を相殺させる保険のつもりだったのだがな。
これで終わりだ!
『な、何でしょう!?分裂した彗星が全て消えてしまいました!!一体これはどういう事でしょうか!?』
どうでも良いが何故TVの報道がリアルタイムで聴こえているんだ?
別に隕石を破壊せずに住民に避難をさせても良かったが、そちらの方が時間と手間がかかる上に町が壊滅して宮水さん達が住む場所を失い、町にも大きな被害が出る事になるからな。こうして彗星そのものを消し去った方が早い。
しかし、制御装置を外してもこれだけの力を使う事になるとはな。中々骨の折れる作業だったぞ。流石は宇宙から来訪した彗星だな。
僕はそっと空から降りて宮水さんに制御装置を差し込んで貰う。下手に彼女に触れたら粉々に吹っ飛ばしてしまう可能性もあったからな。
さて、帰るか……っ!?
すると突然宮水さんに抱きつかれた。ちょ、やめ………、
僕は当然引き剥がそうと思ったが……やめた。その理由は単純だ。
「ありがとう……!!楠雄君がいなかったら……私も四葉も、おばあちゃんもお父さんもサヤちんやテッシーも……皆死んでた……!!皆を……助けてくれてありがとう……!!」
泣きながら、心の底から感謝された。………これまで僕の超能力を知った身内以外の人間の反応は大きく分けて二つだった。
恐れる者と、都合良く利用しようとする者。だから僕は超能力を隠していた。
しかし彼女は違った。両親や祖父、祖母と同じで恐れる事もなく、利用しようともせずにただ個性と受け入れる。……父は先に挙げた後者に近いが結局は受け入れてくれた人間だ。
………別に彼女がそういう人間だとは最初から分かっていた。だが………いや、これ以上は語る必要は無いな。
……人助けも、偶には悪くないな。しかし測ってみたが、好感度は100にまで上がってしまっている。どうしたものか。
とりあえずは帰る事にする。流石の僕も疲れた。
「楠雄君………また、会える?」
……まあ、結局君の体験した入れ替わりの謎は全く解けていないしな。僕としてもはっきりと究明はしておきたい。
「っ!じゃあ!!」
………またな。宮水さん。
「うんっ!またね楠雄君!」
こうしてまた僕の超能力について知る人間が増えてしまった。そして僕が宮水さんの体験した入れ替わり現象の謎を知るのは三年後の事である。
三年の差があるのに三葉が高3で斉木君が高2な点は『斉木楠雄のΨ難』が大噴火の件で毎年斉木君の手で一年やり直しになっているからです。地球の時間は戻っても宇宙の彗星には関係ないですから……。
そして最後に瀧君ごめん。