「おや?姫様じゃないですかぁ」
正邪が現れた。
いや、それはおかしい。
正邪は異変の首謀者として捕らえられているはず。
まさか逃げ出して...!?
「いやだなぁ、ちゃんと罰を受けて来たんですよ。そもそも、脆弱な天邪鬼が逃げ出せる訳もないでしょう」
そうか。良かった。
じゃあもう下克上は諦めたんだね。
「そんなわけ無いじゃないですか」
え?
「ほら、また小槌を出してください。今度は副作用も分かってるし、上手くいきますよ」
呆れた。やっぱり正邪は正邪だね。
でももう私は小人族の真実を知ってるし、正邪には騙されない。
「ちぇっ。そうだと思った。こうなったら私一人でも下克上を成し遂げてやる」
やめる選択肢はないのね。
ところで用件はそれだけ?
「え?いや、ああそれだけですよ、うん」
そう。そんなのの為にわざわざここまで来たんだ。ご苦労様。
「ああ、そう...ですね」
...
そうだ、せっかくだからちょっと散歩でもしようよ。
たまには二人で過ごすのも悪くないよ。
「異変中散々二人っきりで過ごしただろ?」
それは輝針城での話でしょー。
それに、いっつも正邪の言うこと聞いてばっかりだったし...
今度は私が正邪を振り回してもいいでしょ?
「ん~...姫様がまた協力してくれるって言うなら考えてあげてもいいですかね~」
...いいよ。
「は?」
協力したげる。
「正気かよ?」
ちょっと協力するくらい大丈夫よ。
それよりほら、早く行こう!
「...しょうがねぇなぁ」
まずはここかな。
「吸血鬼の館?どうしてこんなところに?」
いいからいいから。
ほら、本が沢山あるよ。ちょっとくらい貰っていっちゃおうか。
「図書館の主はいるんだろ?」
魔理沙が堂々と盗んでるくらいだし大丈夫大丈夫。
「あれは...私を追ってきた吸血鬼」
色んなことに興味を持っては実行してるみたい。
きっと正邪を捕まえに来たのも面白そうだったからじゃない?
次はここ。
「寺?私に修行でもさせるつもりですか?」
まさか。正邪がそんなの真面目にやるわけ無いでしょ?
「さすが」
人間と妖怪の共存なんて出来るのかねぇ。
「出来ているから、今も人間がいるんじゃないですか。まあ共存と言っても、強い妖怪が上に立ち、人間は妖怪に怯え続けているんですがね。だから下克上しましょうよ」
そうすると幻想郷自体危ないって、言われなかった?
「はいはい、説教は聞き飽きました。げ、あの住職は」
力を持ったせいで封印された人間だね。
人間と妖怪の共存を一番に望んでいる奴だし、正邪のこともあわよくば更正させようとしてたのかもね。
最後はここだよ。
「ここは...天界?」
私もここには全く縁が無いんだけど...あ、いたいた。
「やっぱりいたな、天人」
天人っていっても、この人は特殊だけどねー。
なんとなく正邪に似てる...かな?
「いつの間に天人なんかと仲良くなってたんだよ」
いやまあ、色々あってねー。
今はちょくちょく地上に来たりしてるみたい。
天人の地位がひっくり返されるのが嫌で正邪を追っかけてたのかな。
やっぱりそっくりだなぁ、自己中心的なところが。
「お褒めに預かり光栄ですよ」
ふー、楽しかったー。
「...で、何なんだよ。私を追っかけてきた奴ばかり見せやがって」
あ、バレた?
「バレバレだ」
そっかー。
...
あのね、正邪。
さっきの奴らも、異変を起こして、霊夢に退治された奴らなの。
でも、普通に暮らしてる。
だから、さ。
正邪も私やみんなと一緒に普通の生活を
「姫様」
...!
「分かるでしょう?」
正邪...
...生まれついての天邪鬼、か...
「協力の件はやっぱりいいや。小人一人の力なんて借りる価値も無いからな」
...
「あ、そうそう」
...
「今度はこんな嘘つきに騙されないようにしてくださいね」
...
「...ありがとう。姫様...いや、針妙丸」
!?
それって...?
待って、正邪...!
「待てませんよ、天邪鬼ですから」
待って、いや待たないで、え?
どうしても正邪に言いたいことが...!
「じゃあ聞きたくないですね」
大好き。
「...私は、大嫌いですよ」
...
ありがとう、正邪。