陽乃さんを素直にすると、かなり、強敵かもしれない件 作:A i
今日は金曜日。
いつもであれば、明日から、どんなアニメを見よう?どれだけゴロゴロしよう?なんのゲームをしよう?外出は……ないな!
と、そんなことを考えながら眠りに落ちるといい夢が見られる最高の曜日。
それが、金曜日のはずである。
しかし、今の俺は金曜日にあって、全く心踊らない。
むしろ、恐怖しか感じていない。
だって、陽乃さんと休日を二人っきりで一つ屋根の下だよ!?
絶対やばい!何かが起きるに決まってる!
もちろん、それも悪いことってな!
いや、もちろん、俺も一応男子高校生な訳だから、陽乃さんとムフフなこと起きないかな?なんていう淡い期待を抱いた時期もありましたよ?
しかし!
相手はあの魔王陽乃さんである。
そんな高校男子の甘い幻想を180度裏切る形で、何か俺を破滅させる策略を巡らせているに違いない!
そうに決まってる!
ハアハア、と心の中で息を切らして叫んでいる俺だったが、現実ではぽかんと口を開け呆然としていたようで、陽乃さんが「おーい?」と俺に呼びかけている。
「あ、すみません。ぼうっとしてました」
俺が頭をガリガリ掻いていると、陽乃さんは俺のそんな様子がおかしかったのか、声を上げて笑った。
「あはは。まあ仕方ないよね。急に初夜を迎えるなんて言われたらさ」
「え!?なんか、言い回しがおかしくないですか!?」
俺はあまりにも突飛な言葉に突っ込むが、当の本人は至って真面目な顔である。
「え?もちろん、男女が一つ屋根の下で何もしないなんてことありえないでしょ?」
「いや、そんな当たり前でしょ?みたいに言われても……」
俺が呆れた顔でそう言ったのが不服だったのか、唇を尖らせてこちらを横目に見る陽乃さん。
「なら、したくないの?」
「うぐ……」
したいに決まってるだろ!?と叫びそうになるのをグッとこらえた。
いや、なに、まあその陽乃さんみたいな綺麗な人とあんなことやこんなことしてみたいと思わなくもないのだが、彼女のバックにいるパパのん、ママのんを考えると怖くて、そんなこと考えられもしないんだよ!!
まあ、ほかにも、何人かの顔が頭を掠めたのもあるし……。
「……八幡?」
陽乃さんの冷たい声。
「はい!」
「また、私以外の女のこと考えたでしょ?」
「……い、いえ、考えておりません」
陽乃さんの冷たすぎる流し目におののきながらも応える。
「ほんとかしら?」
「イエスマム!」
ピシッと敬礼ポーズを取りそう叫ぶと、陽乃さんがジッとこちらを見つめる。
怖いなあ怖いなあ……あと、ちゃんと前見てください!
あなた運転中ですし!
俺のそんな心の叫びが聞こえたわけではないだろうが、陽乃さんはスッと視線を前方へと向ける。
「なんか、気にくわないけど。まあいっか」
そう言って、ほんのりと口元に笑みを浮かべた彼女の横顔があまりにも綺麗であっけにとられてしまったのは内緒である。
「じゃあさ」
陽乃さんが視線を前へと向けたままに聞いてくる。
「なんでしょう?」
「さっきの質問の答えはノーってことでいいのかしら?」
一瞬、何のことだか分からなかったが、初夜云々の話だと気が付く。
え……これどう応えたらいいのん?
教えてゆきペディアさん!!
「…………そうですね」
俺は困りに困った末ようやくその言葉を絞り出した。
「そっか……」
どこか沈んだ声に聞こえ、俺はハッとして隣を見た。
そして、俺は陽乃さんの横顔に息を飲む。
「私は……八幡とその、したいけどな……」
消え入るような声でそう呟く陽乃さんの顔は耳まで赤く染まっている。
こんな陽乃さん初めて見た……。
あのいつもの傲岸不遜、大胆不敵な魔王はどこへいったのだろうか。
まるで、恥じらう乙女のような陽乃さん。
恥ずかしいのをごまかすように視線を前から外さないのもなんかグッとくるんですけど……。
普段とのギャップに、不覚にもドキリとしてしまった。
しかし、失恋経験はともかく恋愛経験はゼロの俺からしたら今どのように答えるのが正解なのかさっぱりわからない。
どう応えたらいいんだ、この状況で。
誰か教えて!!
そんな感じで、応えに窮しまくり、黙り込んでいた俺だったが、幸いにも目的地に近づいて来たらしい。
陽乃さんが、先ほどまでとは打って変わり、明るい声で言った。
「お!八幡、見えてきたよ。あれが私の新居でーす!」
「え、どれですか?」
「あの一番大きいのだよ!」
そう言って指さす先には、とんでもない高層マンションがそびえ立っている。
「あの……まさか、あれ全部買ったりしてないですよね?」
この人なら丸ごと買い取ったりしかねない。
すると、それを聞いた陽乃さんは、手を横に振って笑う。
「あはは。ないない!さすがにそんなことしないよ、私でも~」
「どうだか……」
「まあ、ワンフロアは買い取ってるけどね?」
「いや、それも似たようなモノでしょ!!どの口がそんな事言えたんだ!」
「あはは」
俺たちを乗せた車は地下の駐車場へと向かう。
どの車も控えめに言ってもお高そうだ。
窓の外を眺めていると、次々に知ってる車が流れてくる。
おいおい、ポルシェにフェラーリ、ランボルギーニって俺の知ってる高級車全部揃っちゃったよ。
恐ろしいなこの駐車場。
千葉の高級車全部ここに集まってんじゃないの?
そんな風に思うほどとんでもない駐車場である。
そしてその一角に陽乃さんは手際よく駐車。
「着いたよ」
「ありがとうございました」
「いえいえ~」
そう言って、二人揃って車を降り、エレベータへと向かう。
もうここまで来れば本当に逃げられない。
「ふふふ、楽しみだね八幡?」
無邪気にそう笑う陽乃さん。
俺も力なく笑う。
「そうですね、もう逆に楽しくなってきましたよ」
「そっかそっか!では、行くよ!乗って乗って!」
大理石のエレベータに乗る寸前、少し逡巡した。
これに乗れば正真正銘、逃げられない。
しかし。
「早く!」
そう言って俺の腕は引っ張られ、、ついに、エレベータに乗車。
扉が閉まりなめらかに動き出す。
確かな速度で昇っていくエレベータ。
それに伴って、不安とも、喜びともつかない奇妙な気持ちが膨れ上がっていくのを感じる。
しかし、そんな俺の心の内など関係なくエレベータは昇る。
これは地獄への道行きか。
はたまた、天国行きの切符なのか。
そのどちらとも、その時の俺にはまだ分からなかった……。
やったぜ〜!皆さんのお陰でなんとか日間ランキング入りしました〜。
いつも拙い文章にお付き合いいただき本当にありがとうございます。
誤字訂正や、感想、評価してくれた方々も本当にありがとうございます!
これからも頑張っていきますので、応援よろしくお願いします!
あと、感想くれると励みになります。
厳しいお言葉頂くのもありがたいんですけど、できればたのしんでるよ〜!という内容の方が嬉しいです!(当たり前のことですね笑)
というか、やばい!このままいくとR15では耐えきれない可能性が出てきた笑笑
まあなんとか抑えつつ頑張ろう!