陽乃さんを素直にすると、かなり、強敵かもしれない件   作:A i

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くつろぎタイム

 陽乃さんがお風呂から上がり、入れ替わりで俺もシャワーを借りた、

 頭と身体をザザッと洗うだけなので、十分ほどしかかからない。

 浴槽に浸かるかどうか迷いに迷ったが、陽乃さんが浸かった湯船に浸かるなんて、俺の理性が保たないと判断。

 

 やむなくシャワーだけ借りて風呂場から出た。

 

 すると、脱衣所にはバスタオルと薄い水色のパジャマが用意されていた。

 

 陽乃さんがどうやら俺がシャワーを浴びている間に用意してくれていたのだろう。

 

 それ自体はとても有り難い。

 

 しかし、少し気になるのはパンツまで用意されていて、しかもサイズがピッタリだということである。

 おそらく、小町が陽乃さんに伝えたのだろう。

 俺のプライバシーなさすぎじゃない?

 最近の小町はとことん俺を追い詰める気である。

 

 とはいえ、着替えを用意してくれていたことには素直に感謝していたので、俺はそそくさとその用意してくれていたパジャマに身を包み、脱衣所を出た。

 

 「お、上がったね。どうだった?うちのお風呂は」

 

 大画面の液晶テレビで、洋画を鑑賞していたらしい陽乃さんが風呂から上がった俺に気がつき、そう声を掛けてくる。

 

 「良い湯でした。ご馳走様です」

 「いえいえ。そりゃ良かった」

 「あと、このパジャマとかもありがとうございます」

 「良いの良いのそんなのは。こっちとしては小町ちゃんに八幡の身体のサイズとかあんなことやこんなことまで聞けたんだから」

 「え、何聞いたんですか?」

 

 陽乃さんのその言葉に嫌な予感を感じる俺。

 

 しかし、彼女はにこぱー、と満面の笑みでこちらを見つめ言った。

 

 「ナイショ♪」

 

 それを聞いた俺は出来るだけ口角を下げウヘ〜という顔をしながら言う。

 

 「嫌な予感しかしねー」

 「あはは、変な顔だね」

 「陽乃のせいですよ」

 「あはは、そうだね」

 

 俺の苦言に対しても笑うだけで全く取り合っては貰えない。

 おそらく、俺がどれだけしつこく聞いても教えてはくれないだろうと思う。

 

 よって、押してダメなら諦めろを座右の銘とするところの俺としてはすんなりと聞き出すことを諦めた。

 

 「まあ良いですけどね。そこ、座っても大丈夫ですか?」

 

 俺が陽乃さんの座るソファの隣を指差して聞くと「どうぞ」と言ってくれたので、遠慮なくそこに腰掛ける。

 

 「ふわぁ……」

 

 知らず知らずの内にそんな声が漏れてしまった。

 それほどに、そのソファの触り心地は抜群なのだ。

 

 「珍しいね、八幡がそんなにダラけるのって」

 

 隣でクスクスと可笑しそうに笑う陽乃さんに、俺はイヤイヤと手を横に振って答える。

 

 「俺、いつも大体ダラけてますよ」

 「えー、そうかな?」

 「そうですよ」

 

 背もたれにグデーンともたれかかりダラけきっていると、突然、俺の顔のすぐ上に整った陽乃さんの顔が覆いかぶさった。

 

 「な、なんでしゅか、陽乃さん?」

 

 動揺するあまり噛んでしまう俺。

 近すぎる距離と、噛んでしまった事実に顔が火照ってくるのを感じる。

 

 しかし、次の瞬間そんな小さなことは頭から吹き飛んでしまった。

 

 「八幡は頑張り屋さんだよ。お疲れ様……チュッ」

 「へ……?」

 

 あまりの事態に頭がフリーズしポカンと口を開けたまま陽乃さんの滑らかな首筋を見つめてしまう。

 

 額に何か柔らかく暖かな感触を感じる。

 

 しばらく俺はその柔らかい感触を味わっていたのだが、陽乃さんが顔を離すと、その感触もなくなった。

 

 依然フリーズしたままの俺に対して、陽乃さんは満足そうに微笑んでいる。

 

 たっぷり三秒ほどかかって、陽乃さんが俺の額にキスをしたのだと理解した。

 

 「な、な、なにしてるんですか!?陽乃!?」

 

 慌てて距離を取り、ペチペチと自分の額を触る俺に、屈託のない笑顔を向ける陽乃さん。

 

 「えへへ〜。なんかキスしたくなっちゃったからしちゃった」

 

 ぺろっと舌を出し、首をかしげる陽乃さんマジ可愛いっす……ってそうじゃない。

 

 「いやいや、そんな軽々しくしていいんですか?キスって」

 「なあに?重々しく、重厚にねっとりとキスして欲しいの八幡?」

 

 意地悪そうな笑みを浮かべ、唇を指で触れる仕草を見せる陽乃さん。

 エロいっす……って危ない危ない。

 なんかこの家に来てから俺のATフィールドが弱まっている気がするぞ。

 気を引き締めなければ。

 

 「いえ、結構です」

 「あら、冷たい」

 

 そう言うと、少しいじけたように唇を尖らせる。

 いちいち可愛いのやめて!食べちゃいたくなるから!

 

 「食べられちゃうの、私?」

 「マジで心読むのやめてください」

 

 イヤンと身体を抱き、上目遣いにこちらを見つめる陽乃に俺はため息をつく。

 

 そんな俺の様子を満足そうに見つめていた陽乃さんは突然「よっ」という掛け声とともに立ち上がる。

 

 「じゃあ、お夜食作るからリクエストとかある?」

 「え、悪いですよなんか」

 「いいのいいの。ほら、早く」

 

 ピョンピョンと跳ねながら急かしてくるので、思いついたものをとっさに口に出す。

 

 「ら、ラーメンとか?」

 「お、奇遇だね?私も食べたかったんだ!じゃあ、最高のラーメン作るからちょっと待っててね?」

 

 そう言うと、パタパタとキッチンの方へ消えていってしまった。

 

 一人ポツンと取り残された俺はどうでもいいことを考えていた。

 

 陽乃さんとラーメンという取り合わせ。

 あまり、馴染みがない組み合わせだけど、なんかしっくりくるな意外と。

 この後のラーメンでも完璧超人っぷりを見せつけてくるのだろうと思う。

 

 しかし、俺もラーメンに関してはかなりの玄人。

 

 そう簡単に「美味い」の一言は口に出さないぞ。

 

 そう決意して、陽乃さんのラーメンが完成するのを待つのであった。

 

 

 

 

 

 




遅くなりました!

ほかの作品の構想作りをしているのですが、難しい!!
なので、こっちでひとまず息抜きしようと思い、とりあえず八幡と陽乃をイチャイチャさせまくりストレスを発散させてもらいました笑
楽しんでもらえてたら幸いです!

次の話は出来るだけ早く書き上げますので楽しみにしていてください〜。
では、また今度!

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