陽乃さんを素直にすると、かなり、強敵かもしれない件   作:A i

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二話です。
ハルさんとの電話です。
どうぞお楽しみください。


TEL

「君、私の彼氏になりなさい」

「は?」

 

俺はあまりの驚きに、間の抜けた声を漏らしてしまった。

 

え?俺が誰の彼氏になるの?はるのさん?

いやいや!!

だって、あの、完全無欠の超絶美少女の魔王、陽乃さんだよ?

絶対俺みたいな捻くれぼっちに自分の彼氏になれなんざ、天地ひっくり返ってもありえないだろ?

おそらく、聞き間違えだな、うん。

そうに違いない。

 

どうにかこうにか自分を納得させた、俺は一応もう一度聞く。

 

「あの、聞き間違えてしまったと、思うんで、もう一度……」

「だから、私の彼氏になりなさいって言ったの,しっかりと聞いてよね、比企谷くん。女の子にこんな恥ずかしいこと二回も言わせたらダメなんだぞ?」

 

メッ!と冗談めかして言う陽乃さんだが、こっちはそれどころではない。

 

「いやいや、なんでですか!?おかしいでしょ!!」

「何にもおかしいことはないわよ。君が私の彼氏になるのがそんなにおかしいことかな?普通泣いて喜ぶと思うんだけど。あ、わかった!比企谷くん、雪乃ちゃんのこと好きだから嫌なのか!」

 

合点がいった、とでも言わんばかりに嬉しそうな声をあげる陽乃さんに、俺は敢然と否定する。

 

「いや、それは違います!」

「え、じゃあ、ガハマちゃんかな?浮気は許さないよ?」

 

声の高さは変わってないのにめちゃくちゃコエー!!

 

「いや、それも違いますし。それよりも俺が聞きたいのは、なんで俺が雪ノ下さんの彼氏にならないといけないのか、です。」

「ありゃ、嫌なの?」

 

キョトンとした調子で言うはるのさんに、俺も言い返す。

 

「嫌、とか嫌じゃないとか以前にわからないんですよ。俺なんかと付き合おうと思う理由が」

「比企谷くんのことが好きだから、じゃダメかな?」

 

クスリ、と蠱惑的に笑うはるのさん。

 

それが本当の理由じゃないことは、その笑いからも明白だ。

 

「からかわないでください」

 

自分が思ってるよりも低い声になり、少し驚いた。

 

「ありゃ、怒っちゃった?」

「いえ、怒ってはないです」

「あはは。ごめんね。つい、比企谷くんと喋ってると楽しくなっちゃうからさ」

 

楽しげに笑うはるのさん。

彼女にはもはや呆れるしかない。

 

「じゃあ、なんで急にこんな話したのか、そろそろ教えてもらっていいですかね?」

 

俺がため息交じりにそう問うと、陽乃さんも笑いを引っ込めて答える。

 

「うん、そうだね。でもさ、こんな話、電話ですることでもないから今からご飯、食べに行かない?」

「え、今からですか?」

 

時計をチラリと伺うと、18時を回っている。

 

「結構遅いですけど、雪ノ下さんは大丈夫なんですか?」

「ありゃ、私のこと気にしてくれてるの?ありがと。でも、大丈夫だよ。大学生って結構ルーズだからさ」

「はあ、まあなら、大丈夫ですよ」

「じゃあ、今から迎えに行くし。速攻でスーツに着替えてね?」

「え!ドレスコードあるとこ行くんですか!?」

 

てっきり、サイゼはなくても、その辺のレストランぐらいかと思ってたぞ。

 

そんな俺に、ケラケラと笑う陽乃さん。

 

「まあ、私服でも良いけど、ダサいのはダメだよ?」

 

はるのさん相手に、ダサくないの、とかハードル高すぎる。

 

「なら、スーツで行きます」

「よろしい。じゃ、30分後には着くから、準備、しっかりしててね〜」

 

そう言うと、電話はプツリと切れてしまった。

 

「陽乃さんなんて?」

 

ソファーの上で寝転ぶ小町が上目遣いにこちらを伺う。

 

「ちょっと、出かけてくるわ。夜飯も食べてくるから」

「はいはーい。楽しんできてね〜」

 

ぷらぷら〜と、手を振る小町に「楽しめねーよ」と言いつつ、俺は親父の部屋へスーツを着替えに行くのだった。

 




また、3話でお会いしましょう〜

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