陽乃さんを素直にすると、かなり、強敵かもしれない件 作:A i
あと、誤字指摘ありがとうございました!
「マジっすかこれ……?」
「マジだよ〜」
カラカラと楽しそうに俺の隣を歩く陽乃さん。
「ここ、絶対高いですよね。俺持ち合わせ足りるかな」
分かってはいたが、目の前で見ると、とんでもなく高級なところに来てしまったのだと、ひしひしと感じる。
そして、なによりもまずいことに、俺の財布には、例の錬金術で生み出した、少しの諭吉さんと、英世さんしか入っていない。
あんぐりと口を開け、目の前に聳える高層ビルを見上げていると、となりの陽乃さんがチッチッチ、と人差し指を振る。
「お姉さんを舐めてもらっちゃ困るよ、比企谷くん。もちろん今日はお姉さんの奢りよ?」
「いや、流石にそれは悪いですよ」
「いいのいいの。今度、どっかで奢ってもらうからさ、その時までお金は取っといて」
パチンと綺麗なウィンクを浴びせてくる彼女に、俺は苦笑しつつ、お礼をいう。
「そうですか…、ありがとうございます」
「いえいえ〜」
はるのさんが少し先行する形で、俺たちはエントランスへと入っていく。
すると、ドアマンの人が「はるの様、いつもお越しいただきありがとうございます」などと言ってきて、やっぱセレブは違うなー、とか思っていると、陽乃さんがこちらにチロリと視線を向けて、「じきに慣れるわよ、比企谷くんも。私のボーイフレンドになればね?」などと、言ってくるので、俺は苦笑するしかなかった。
高層ビルの、最上階にある、レストランに着き予約済みのテーブルへと案内される。
一面ガラス張りになっていて、千葉の夜景が一望でき、特に景色を見ることが好きでもない俺でさえも、「綺麗だな」などと、口ずさんでしまうほどに、そこからの夜景は綺麗だった。
すると、陽乃さんが、ニヤリと笑みを浮かべてこちらを見てくる。
「なんですか?」
俺が少し、仏頂面でそう聞くと、可笑しそうに笑う陽乃さん。
「あはは、いや、比企谷くんも、夜景に感動したりするんだなー、と思ってさ。意外だったからつい、まじまじと見ちゃったよ」
「まあ、一応人間なので」
「ありゃ、ゾンビかと思ってた」
「いや、違うでしょ」
「なら、死んだ魚の目?」
「いや、まだ死んだ魚なら、わかりますけど、目限定ですか?」
「あはは」
屈託無い笑みを浮かべて、笑う彼女。
ここの姉妹は、ほんと人のことをからかうときは、いい笑顔するんだよな〜。
まあ、雪ノ下の場合、冷笑なんだけど、さ。
などと、心の中で思っていると。
「比企谷くん。デート中にほかの女の子のことを考えるなんていただけないな〜」
棘のある声でそんなことをいう、陽乃さん。
いや、なんでこの姉妹どっちも心読めるんだよ!!
どこのメンタリストだよ!
と下手なツッコミを入れつつ苦笑する。
「いや、デートなんですか?これ」
「デートでしょ、これは。他に何かある?この状況を的確に表す言葉」
「拷問?」
「ひっどーい!私のことなんだと思ってるのよ。少なくとも、私は今比企谷くんとデートしてるつもりなのにさ」
陽乃さんは、そう言っていじけたように少し唇を尖らす。
やばい、なんか、子供っぽい仕草がこう……グッとくるよね!!
いつもの、魔王ぶりとのギャップまで計算に入れているのだとしたら、この人マジでやばすぎるよ?
八幡骨抜きにされちゃうよ?
陽乃さんの、思いがけない可愛さに悶絶しそうになっていると、運良く、ウェイターさんが、飲み物を持ってきてくれる。
「どうぞごゆっくりお楽しみください」
美しい所作でお辞儀をするウェイターさんに、少し会釈をして、飲み物に手を伸ばす。
「まあ、とりあえず乾杯しましょうよ、陽乃さん」
「あ、初めて、名前呼びにしてくれたんだ」
さっきまでの、いじけた様子が嘘のように、嬉しそうな顔でこちらを見つめてくるはるのさん。
しまった、口が滑った。
「間違えました、雪ノ……「陽乃って呼んで」いや、だから、雪ノ「陽乃って呼んで」」
もはや、絶対にそれは譲る気がないようで、目がマジだ。
有無を言わさぬ迫力を帯びている。
俺は、大きくため息をついて仕方なく、言った。
「陽乃、さん」
「うん、よろしい。まぁ、陽乃、って呼び捨てでもいいんだけどね。むしろ、推奨」
満足そうに微笑む陽乃さん。
「いや、陽乃さん、で」
「強情だなあ、まあいいけど。とりあえず、乾杯しよっか」
「そうですね」
俺たちは、グラスを手に持ち、掲げる。
「乾杯」
「乾杯」
こうして、俺と魔王の食事会は始まるのであった。
いかがでしたか?
陽乃さんと八幡もっとイチャイチャさせるつもりなので、どうぞよろしくでーす。
R15で十分なのか不安だけど、頑張ります笑笑