陽乃さんを素直にすると、かなり、強敵かもしれない件 作:A i
「たーいま〜」
「あ、お兄ちゃんお帰り!」
俺が玄関扉を開けると、驚くほど早く小町が出迎えてくれた。
「で、で!どうだったの……?」
逸る好奇心が抑えられない!といった様子で、目を輝かせる小町。
「いや、まぁどうだったって言われてもなあ〜」
「なになに〜?キスとかしちゃった?」
ニシシといたずらっぽい笑みを向ける小町。
「してないわ!!」
「なあんだ。やっぱりお兄ちゃんはヘタレだな〜」
「ほっとけ」
吐き捨てるように俺がそう言うと、小町はケラケラと笑う。
「ま、それが、お兄ちゃんらしいけどね。お風呂沸かしてあるから入ってきなよ」
「お、準備がいいな」
ちょうど、風呂に入りたいと思ってたところだったのだ。
「へへへ、もっと小町を褒めて!」
「偉いぞ〜小町。世界一可愛いぞ〜」
「なんか適当じゃない?」
不満げに唇を尖らせる小町。
「じゃないじゃない」
俺は、そう言いながら、少し不満げにしていた小町の頭をクシャクシャと撫でる。
「わわ!」
「そんじゃ、風呂もらうぞ〜」
「もう少し、丁寧に撫でた方が小町的にポイント高いんだけど、まぁいいや。ごゆっくり〜」
小町と別れ、脱衣所へと、向かう廊下の途中で、ブルリとスマホが震えた。
スマホを見ると、そこには陽乃さんから、「今日はありがとね。また、明日絶対遊ぼうね。今日は疲れてるだろうし、お風呂にゆっくり入って体を休めてね〜、また明日」と、メールが来ている。
俺は、知らず知らずのうちに上がる口角を引き結び、とりあえず、「了解」とだけ送り、脱衣所へ入るのだった。
「ふぃー……いい湯だった」
俺が濡れた頭をバスタオルで拭きながら出てくると、リビングでくつろぐ小町の姿があった。
「およ?お兄ちゃん。お風呂上がったんだ?」
「おう、いい湯加減だったぞ」
「まあね、小町が入れてあげてるんだから、当たり前だよ」
無い胸を張る小町に俺は適当に手を振る。
「はいはい、ありがとよ」
「テキトーだな〜。まあ、いいんだけどね。それでそれで、今日はどうだったのよ!!」
「まだ聞くのかよ」
「モチのロンだよ!まあ、さっき、お兄ちゃんがお風呂に入っている間に、陽乃さんから結構聞いちゃったんだけどね」
テヘペロッ!と舌を出す小町。
なんか、無性に殴りて〜……。
「じゃあ、俺が言うことなんて何もないだろ?」
ぶっきらぼうにそう言うと、さっきまで、おちゃらけた雰囲気だった小町が一転。
真剣な眼差しになった。
「雪乃さんと結衣さんはどうするつもりなの?」
「どうするって……」
「あの二人にはちゃんと説明しないとダメだよ」
真剣な声音でそう言った小町の迫力に、俺は負けそうになりながらも、しっかりと目を見てこう答える。
「わかってる。明日、必ず伝えるよ」
俺の瞳をジッと見つめていた小町だったが、不意に破顔して、言う。
「なら、いいんだけどさ。てっきり、ごみいちゃんのことだから「あいつらは関係ないだろ」とか、訳わかんないこと言うと思ったから、心配しちゃったよ〜」
「おい、そのモノマネやめろ。恥ずかしいし似てない」
「いやいや、この前、雪乃さんと結衣さんの前でやったら二人とも「瓜二つね」「めっちゃ似てる!小町ちゃんすごい!」って言ってくれたんだから」
「あの、二人の前でそんなことやったのか……」
我が妹ながら、こいつ何やってんだ?と思いつつ、あれ?俺ってそんな感じなの?もっと、クールでニヒルな感じじゃないの?と不安にもなった。
「ま、何はともあれ!」
小町が、笑顔でこちらを見る。
「明日、ちゃんと二人には言うように!」
「わあったよ。言えばいいんだろ言えば」
「わかったなら、よろしい。じゃあ、小町は夢の世界へ行って参ります。おやすみなさい!」
「おお、おやすみ……」
パタンとリビングの扉が閉まり、リビングには俺一人になる。
「にゃーお」
「お、すまんすまん。カマクラお前がいるのを忘れてたな」
すぐ足元を、ムスッとした顔で闊歩するカマクラさんを、俺はひょいと持ち上げ、太ももに乗せる。
カマクラは、数回フミフミして、居心地を確かめると、目を瞑り眠り出した。
俺は、そんなカマクラの背中をゆっくりと撫でながら、考える。
明日、あいつらになんて説明しよう……。
いきなり、陽乃さんと付き合うことになりました、なんてこと言ったら、確実に雪ノ下あたりに殺されるだろうしな。
かと言って、嘘で彼女たちを誤魔化すこともしたくない。
どう伝えるのが、一番、いいのか。
どう伝えるのが、正解なのか。
そんな、問いかけばかりが、ぐるぐると回り、一向に答えらしきものは見つからない。
しかし、『あの二人にはちゃんと説明しないとダメだよ』と言ってくれた小町の言葉を裏切るわけにはいかない。
俺は、自分が納得するまで、この状況を彼女たちに説明するシミュレーションを行った。
すると、気がついた頃には、空が白み出しているのだった。
誤字多くてすみません!
スマホで打つとどうも多くなります。
修正してくれた方本当にありがとうございます。