さて、今回から少しずつ原作の流れに変化を加えていきたいと思います。
―――リゼンブールからセントラルへと辿り着いたエルリック兄弟は、燃えて無くなってしまったドクター・マルコーの研究資料の復元を元国立図書館司書、シェスカに依頼した。ちなみに少佐は護衛任務を部下のマリア・ロス少尉及びデニー・ブロッシュ軍曹へと引き継ぎ本業へと戻った。ウィリアムは馴染であるロス少尉に会いたがっていたが、プラットホームに待ち構えていたラビ・レーヴ中尉と部下数名に連行されていった。―――合掌。
『・・・やっぱり悪いことしちゃったかなぁ』
「気にすんなって、少佐も言ってただろ?ちゃんと上の許可得てるって。それより複写に結構時間かかるって言ってたし、俺はちょっと長電話してくるけどアルはどうする?」
『うーん、セントラルは初めてだし、一人でうろつくのはちょっと。ところで長電話ってどこに?』
「・・・ウィルにちょっと宿題出されたからな。ちょっとむかつく奴にむかつかせ方聞いてくる」
『本当に兄さんって昔からウィルの言う事は素直に聞くよね。ハッ!もしかしてお兄ちゃん欲しかったクチ?僕だけじゃ物足りないっていうの!?』
「誤解を招く発言は止めろーーーっ!!!?」
―――この会話を聞いた後、コソコソ話していたロス少尉とブロッシュ軍曹の顔が作画崩壊したのは言うまでもない。
Side マスタング
「・・・頼み?君が、この私に貸しがあるわけでもないのに??・・・明日は槍どころか豪雨だな。その上私は三人の“傷の男”に襲撃に会うのか。すまん中尉、君との約束は守れそうも―――」
『アホな上に失礼な妄想してんじゃねぇ―ッ!!この世に三人も“傷の男”がいて堪るか!!?』
・・・うむ、この撃てば響く火薬のような反応は鋼ので間違いないな。一瞬本気で声マネ世界王者のドッキリかと思った。しかしなんでまた急に、それも私を訪ねて電話してくるなど予想外も良いところだ。
『―――いや、俺らの探し物がなんか物騒な話に絡んでるみたいでさ。もうちょっと自衛手段を持っといたほうがいいって言われて。そういうの大佐得意そうだし、“傷の男”の件で俺達の事情結構知られたから、巻き込みたくないっていうか。特に少佐とヒューズ中佐とか』
・・・物騒?賢者の石が?伝説が先走り過ぎて実際どれほどのものなのかは知らんが、その言い回しだと、まるで既に悪用している人間がいるみたいではないか。ふむ・・・。
しかし奴の口から出た人選に思わず口が歪んでしまうな。確かにあの二人は相当な御人好しだ。この兄弟が危ない橋を渡ろうとしていたら、有無を言わさずお節介を焼くだろうな。
「確かにその二人は、クギを刺しておいても知ったことかと踏み込んでくるだろうな。私も気を付けておくとしよう。それより、そういう注意はもっと早くからしておくものだ。自分たちがどれだけの代物を追っていると思っている?もし君が手に入れたことを知ったら、殺してでもほしい人間はごまんといる。かくいう私もその一人だろうな」
多分気付いてないのだろうな。でなければあれだけ吹聴して回るものか。いや、これを成長というんだろうな。
『えー!?よりにもよって大佐もかよ・・』
「当然だ。君らにとっては元の肉体を取り戻す装置なだけかもしれんが、人体錬成を成功させるということは、どんな死に体でも新品の肉体に造り替えられるという事だ。本来の使い方は知らんが、私にとってはそれだけで値千金だ。自分と仲間の命に保険を掛けられるなど我々軍属にとってはどれほどの価値があるか、想像着かんわけじゃないだろう」
『・・・あー、昔っから思い込んだら他のことが見えなくって嫌になるよ』
「せいぜい君たちに助言をくれた人間に感謝することだな。さて、お互い暇じゃない。詳しいことはまた会ったときにでも話す、だから簡潔に言うぞ」
電話口からでも居住まいを正しているのが分かるな。まったく、普段からその位聞き分けが良ければ可愛いものなのだがな。
「一番良い方法はその物騒な対象を刺激しないことだが、君らは目的が知られ過ぎてるからな。今更諦めましたとか言っても却って怪しまれるだろう。周りを巻き込まないとなると、今すぐできる細工は3つだ。一つ、なるべく直接的な表現を避けること。二つ、周囲に繋がりを悟られないようまとまって動かないこと。そして3つ目、代替手段・別の解決法に乗り換えた振りをして騙す。小細工ではあるが、今より確実にヘイトは下がるだろうな」
『えーと、要は知られない、ばれない、騙すってことか。上手くやれるか分かんねえけど、ちょっくらやってみるよ。・・・・・・・・さんきゅ、大佐』(ガチャッ)
・・・・やれやれ、上官より先に電話を切る奴があるか。まったく。
「――失礼します、大佐。あら、何か良いことでもありましたか?」
やあ中尉。いや何、自分のことで精一杯だった子供が随分大人になったものだと思ってね。
Side out
場所:セントラル刑務所
「―――おや、随分懐かしい顔じゃないですか。相変わらずお忙しいようですね?」
「ああ、どこかの誰かさんを取っ捕まえて以来仕事を押し付けられる毎日でね。はいこれ、新聞。持って帰れって言われてるからさっさと読んじゃって」
もしいつもの彼を知っているものは、普段の言葉遣いとのギャップに驚いたことだろう。恐らく世界で唯一ウィリアムが敬語を外す人間の元へ面会にやってきていた。
「外は随分物騒になりましたねぇ。これはいよいよ世紀の瞬間が近づいているという事ですか?」
「まだまだこれからさ。対抗馬は有望ではあるけどいまいち危機感がね」
「ほう、ではこのまま『彼ら』の勝利は揺ぎ無いと?」
「いや、そっちはそっちで身内に足を引っ張られ通しでね。一番肝心の『人柱』が今一人しかいないし、それも降って湧いた天然の宝石ときた。あの人たち普段何やってるのかな?あんな働きぶりで不老不死が貰えると本気で信じているんだからもうどうしようもないね」
ちなみに人払いはしっかり済ませてあり、独房の外にはレーヴ中尉が見張りをしている。刑務所の責任者は私室で胃を抑えているだろう。何せ傍から見れば独房にぶち込んだ男とぶち込まれた狂人が同じ部屋にいるのだ。万一間違いでもあれば物理的に首が飛ぶこの状況は耐えがたいものがある。
「趨勢を握るのは7匹の小人と4人の餌。そしてまだ見ぬイレギュラー達。これらがどう脱落していくのか、誰が支えていくのかで決まっていくだろうね。ああ、物語には裏切りも付き物だったね」
「おやおや、特大の厄種をお忘れですよ?『人柱』なんて目じゃない、50人分の命を糧に真理を覗いた彼の方も重大なファクターでしょう」
「僕が?残念ながら僕はただ『本屋の立ち読み』がしたいだけで、この争いも、彼らの計画に賭ける情熱も興味ないよ」
「これはこれは実に興味を惹かれる答えですね。人類に対する裏切りともいえる大逆を働きながらこの戦いに関心が無いとは。では、貴方を射止めてはなさいその名書とは一体?」
「在り来たりの陳腐な答えですよ。錬金術師のあなたには話すのも恥ずかしいほどの
―――――――君は僕が『神頼み』がしたいって言ったらどう思う?」
「・・・?それは、いったい―――『ズズンッ!』――これは、爆発物で建物が崩れ落ちる音ですね。ああ、いい音だ」
「・・・はあ、忠告して直これか。本当に落ち着きのない子ですね」
牢獄の外も騒がしくなり、ウィリアムを呼ぶ声が近づいてくる。どうやら面会はこれで打ち切りのようだ。
「じゃあこれで失礼するよ。今後の展開によってはまたひと仕事あるかもだ。それまでこの爆音を子守歌にでもして待っていろ」
「そうさせてもらいましょう、とても楽しみです。ああ、それにしても本当に良い音だ」
―――翌日―――
「本当に良かったのか、エドワード・エルリック。せっかく足を運んでいただいた中佐を追い帰すなど―――」
「後で謝っとく、でも今回の件で確信した。『あの朱いヤツ』はやばい。『人柱』とやらの俺や武闘派の少佐ならともかく、ヒューズ中佐が自分で身を守るのは限界があるだろ?悪いけど情報共有は少佐の何時もの特技で何とかしといてくれる?」
「・・・であるな。よろしい、アームストロング家に代々伝わりし暗号術で密かに伝えておこう」
第五研究所の崩壊から一夜明け、病院にて久しぶりの兄弟の大喧嘩にヒューズによるウィンリィ誘拐(笑)事件と濃密な時間を過ごした後、いざ情報整理という段でエドワードが中佐を追い帰した。まあヒューズはエドワードの考えがある程度分かったのかさっさと引き上げていったのだが。
その他にも、これまでもなるべく一塊にならずに情報収集していた。特に護衛の2人には気を遣い、多少面倒をかけてでも頻繁に交代して貰いながら動くことで、彼らには何の情報か分からないよう、いつでも白を切れるよう心掛けていた。
「『ウロボロスの入れ墨』、『東部内乱にも使用』、『犯罪リスト』、大体このくらいか。よし、しかと暗号化したぞ!後は吾輩に任せておくが良い」
「ああ、頼むわ。俺はアルと南に――『コンコン』――ん?」
ノックされた扉の向こうには、メロンを抱えた色んな意味で地雷の超大物がやってきていて大騒ぎとなった。
嵐が去ったのち、何とか復帰したエルリック兄弟は師匠に会いに行くため、南部の真ん中に位置する町、タブリスへと向かった。
「・・・ん?そういや誰かが南に用事があるとか言ってたような?」
ここまでご覧いただきありがとうございました!感想・質問等いつでも大歓迎です!!
そろそろみんなのトラウマシーンが近づいて参りました。