鋼の錬金術師 錬金術師も神に縋る   作:章介

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*2月28日、一部改編しました。


第十三話 乱入と・・・

 

 

 

 

 ―――戦場は廃駅の近くへと移る。“傷の男”は逃亡することなく、アルフォンスとウィリアムの二人と交戦していた。口ぶりから知り合いだとわかるが、連携は兄弟よりも劣るだろうと判断し、その条件が、殺傷能力が高すぎる武装で戦うウィリアムの足を引っ張るに違いないと。

 

 

しかし、予想とは裏腹に終始守勢に回らされる。原因は前衛のアルフォンスだ。極端な話、血印さえ無事なら何とかなるため遠慮せず火力を注いでくること、そして彼の銃弾の威力が高すぎてアルの鎧を容易く貫通するので、アルを盾に射線を塞ぐことがむしろ危険であるためだ。

 

 

 

「うーん、流石にこう開けた場所では分が悪いですね(アルには刺激が強すぎて使えないものが多いですし)」

 

 

『わわッ!?ちょっと、直るからってバカスカ撃たないでよ!!このままじゃ装甲が持たないよ!』

 

 

「そうは言っても、元イシュヴァラ僧相手に白兵戦なんて出来ませんし、殺しが御法度となるとこうでもしないと一気に間合いを詰められますよ?」

 

 

 

 一方、“傷の男”も攻めあぐねていた。『翆煉の錬金術師』の手口がエゲツないことは先日身をもって味わったところであり、口でどう言っていても、思いもつかないような搦め手を仕掛けられるか分かった物ではない。しかも『分解』の錬金術を地面に用いて牽制を行っても何故か途中で錬成が中和されて届かない。さらに悪いことに、戦い通しでスタミナを最も消費しているはずのアルフォンスの動きが鈍らず、ウィリアムは射撃しかしておらず殆ど動いていない。このままでは間違いなく先に体力が尽きてしまうだろう。

 

 

 

 それ故“傷の男”は勝負に出た。追い詰められた体を装い貯水槽の傍へと行き、タンクを大量の水ごと吹き飛ばし目晦ましにする。まんまとおびき寄せられた鋼の錬金術師の弟を無力化し、とにかくサシの勝負に持ち込む。

 

 

 ―――しかし、“傷の男”の右腕はアルフォンスの目前で何かにぶつかったかのように弾かれてしまう。咄嗟に錬金術を使われても対応できるよう金属だけでなく土やコンクリートにも対応した術式を使用したにも拘らずだ。そもそも自分の掌底をも弾く物質が何故見えない?

 

 

 どれだけ予想外の事態に備えていても、突然起こってしまえば動作に乱れが生じる。百戦錬磨の“傷の男”ですら例外ではない。対してアルフォンスは回避は不可能と判断し、ウィリアムを信じてカウンターを放っていた。当然“傷の男”は避けることが出来ず、水月に強烈な右ローキックを叩きこまれた。

 

 

 

「ぐぉッ!!?・・・くっ、何をした!?」

 

 

「透明度99%の強化プラスチックですよ。合成樹脂の塊だからその分解式じゃあ破れません」

 

 

『よ、良かった~~~ッ!!一瞬駄目かと思った』

 

 

 

 咄嗟に左腕で庇われたものの、金属の塊に全力で蹴られた事で決して浅くない傷をつけることが出来た。暫くは左腕と腹に力が入らないだろう。ようやく流れを引き寄せることが出来た。

 

 

 

 ところが、ここに来てさらなるイレギュラーが発生する。臭いを辿ってホムンクルス・グラトニーが飛び込んできたのだ。わき目を振らず“傷の男”に向かって飛んできたグラトニーの牙を何とか避けるが、腹に激痛が走り避けきれずに体当たりを喰らってしまう。とにかく時間を稼ぐために、一切の加減抜きで『分解』を行い、脳を重点的に破壊されたグラトニーは地面に倒れ込む。尤も、既に半分ほど再生しており今にも動き出しかねないが。

 

 

 

『あれは・・・たしか『エンヴィー』とか言うのと一緒にいた・・!リン達はどうなったんだ!?』

 

 

「・・・なるほど、彼らをおびき寄せるのが目的ですか。さて、加勢はするべきか否か・・・む?」

 

 

 

 ――突如、マンホールが高々と跳ね上げられ半裸となったリン・ヤオが飛び出てきた。そして未だ再生途中のグラトニーの口に手榴弾を放り込み内部から破裂させた。さらに間髪入れずアルフォンスに丈夫なワイヤーを錬成させ、チャーシューのようにぐるぐる巻きにしてしまった。強制的に再生される体がワイヤーに食い止められ、逆に自身を縛り付けてしまいグラトニーは一切身動きが取れなくなった。

 

 

 

「―――獲ったぞ、ホムンクルス!!」

 

 

『や、やった―――』

 

 

「シン国所縁の・・・彼がエンヴィーの言っていたリン何とかさんですね。さすがにこれを見逃すと契約違反になるので、とりあえず5,6発撃ち込んでおきますか」

 

 

『えぇッ!?え~~、あ~っと。ほ、ホアチャ~~~~ッ!!』

 

 

「はっ!?え、ちょ――『ドゴォッ!!』―――グエッ!!?」

 

 

 

 どこぞの傘がトレードマークの戦闘民族のような咆哮を上げたアルフォンスに面食らったウィリアムはそのまま諸にラリアットを受け吹き飛んで行った。状況が読めないリンであったが、『早く逃げないと穴開きチーズより酷いことされるアルッ!!』とのジェスチャーを受け、駆け付けたホークアイ中尉の車に急いでグラトニーを乗せて去っていった。

 

 

 

『はぁ、な、何とかなった。いやそれよりも、さっきの蹴りも手ごたえあったけど、今の体当たりで恐らく肋骨がやられたはず。つまり、“傷の男”を捕えるなら今――』

 

 

「スカーさん、助太刀しまスッ!」

 

 

『え?うわぁッ!?』

 

 

 

 ―――二度あることは三度ある、というべきか。グラトニー、リンに続いてメイ・チャンが現れ、アルフォンスの頭部を蹴り飛ばし“傷の男”の下へと走り寄る。凶悪犯に駆け寄る子供にアルフォンスも、そして追い付いてきた憲兵隊も訳が分からず、つい場違いな呼びかけをしてしまう。

 

 

 

「ムッ!多勢に無勢ですネ。スカーさん、此処はいったん引きますヨ!!」

 

 

 

 言うや否や、無数の鏢を投げるとそれが独りでに錬成陣を形成する。そして手元にも作成した錬成陣で術を発動させようとした瞬間―――。

 

 

 

 

 

「―――ちょっと失礼しますね」

 

 

 

 

 

 ―――いつの間にか復活していたウィリアムが、今まさに発動しようとしていた錬成陣に手を置くと、既に起動していたはずの錬成陣が停止してしまった。

 

 

 

『な――ッ!?既に発動した錬金術を強制的に止めた!!どうやって!?』

 

 

「――なるほど、これがシン国に伝わる錬丹術とやらですか。是非一度見てみたかったんですよ。何やら妙なエネルギーを使って遠隔地でも発動できる仕組み、これは勉強になります。しかし随分単純な陣模様ですね。もう少し色々と見せてもらいませんかね?」

 

 

 

 メイは突然現れた男に心底恐怖していた。錬丹術を止められたことが・・・ではない。陣諸共手を抑えられてしまったことでもない。目の前の人物が自分を見ている目が何より恐ろしかった。

 

 

 

「(こ、この人・・・まるで物か何かを見るような目で!?どうすればこんな冷たい表情が出来るんですか!!?)は、離してくださ――「ぬぅおあああぁッ!!」――スカーさン!?」

 

 

 

 

 痛みに怯む体を叱咤して“傷の男”は腕を突き出し、メイを抑えているウィリアムの右腕に『破壊』の錬金術を叩き込んだ。

 

 

 

 

 

「・・・そうか。あの時己れの拳が効かなかったのはこういう理由か」

 

 

「これは意外でしたね。てっきり頭を潰しに来ると思いましたが、その子のこと大事にしているんですね?」

 

 

 

 袖口こそ弾け飛びはしたが、ウィリアムの右腕は健在であった。しかし、その中身はおよそ人間のソレには見えなかった。アルフォンスの目にはかつて相対したグリードの硬化させた腕とよく似ているように見えたが、それ以上に濁った様な色や重厚さに不気味さを感じていた。

 

 

 

 破壊こそできなかったものの、衝撃で離れたことで錬丹術が今度こそ起動し辺りは煙と水蒸気に包まれた。視界が晴れた時にはすでに“傷の男”とメイの姿は無かった。

 

 

 

『・・あぁ、逃げられちゃったか。もう少しだったんだけどな、でもくよくよしてても仕方ないよね。あ!ウィンリィと兄さんは無事かな?早く合流しないと―――』

 

 

 

 一秒でも早くここから逃げ出さないと、とでもいうように言い訳染みた独り言を呟いて離れようとするが、後ろから凄まじい力で掴まれ否応なく止められてしまう。心なしか触れられている右手から軋み音が聞こえてくるが、きっと気のせいに違いない。

 

 

 

 恐る恐る後ろを振り向けばそこには・・・・・・本気でブチ切れた師匠と同じオーラを纏って笑みを浮かべる、兄と慕う男の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所:中央司令部 

 

 

 

 憲兵隊に保護されたウィンリィとエドワードは中央司令部のとある一室で待機させられていた。本当なら今すぐにでもアルの元へ駆けつけたいところだが、まさかの大総統の登場でそうもいかなくなった。ウィンリィの気が紛れる様昔話や世間話に花を咲かせているが、エドワードは正直上の空であった。

 

 

 

 数十分後か、それとも数時間は経過したか、ある士官が入室し、『鋼の錬金術師の弟殿と翆煉の錬金術師殿が帰還なされました』と知らせると一気に部屋の空気が明るくなった。直に通す様にと命令すると大総統は気を利かせて退席した。直後、こちらに向かう足音が一つ聞こえてきた。訝しむ二人であったが扉が開かれるとそこには――――。

 

 

 

『あだだだだッ!?凹むッ!どんどん凹んで行ってるよウィル兄さん』(メキゴキバキッ!!)

 

 

「大丈夫ですよぉ?ひん曲がっても僕かエドがとっても格好良く直してあげますから。それよりも、大事な弟分にぶん殴られた心の痛みはどうすれば治るのかなぁ?そうだ、アルって当たり前のように双眼で物見てるけど、兜をモノアイにしたらどういう風に景色が映るか興味ありません??」

 

 

『うわあああぁんッ!!ごめんなさい、ごめんなさいいぃッ!!?』

 

 

 

 ―――そこには若干埃塗れのウィリアムと、右腕で鷲掴みされているアルフォンスが頭部のみの姿で現れた。

 

 

 

「アルゥッ!?え、体は!!?あっちに大事な血印が―――」

 

 

「嵩張るので置いてきました♪安心してください、血印なら襟の部分ごと引っぺがして兜に咥えさせてあります」

 

 

 

 何が一体どうなっているのか問いただしたかったが、ウィリアムの笑顔があまりにも怖くて何も聞けない二人であった。

 

 

 

 

 




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