鋼の錬金術師 錬金術師も神に縋る   作:章介

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 今更ではありますが、誤字脱字、文章に関するご指摘いつもありがとうございます。
大変助かっております!!


第十四話 密会と進路

 

 

 

 

 

 

 場所:郊外の小屋

 

 

 

「腕ぶった切ったまま下水の中を歩いただぁッ!?ったく、破傷風になっても知らんぞ!!」

 

 

 

 

 ホークアイ中尉はリン達を連れて、大佐に指示された合流先へと辿り着き周囲を警戒していた。その後、大佐がエルリック兄弟とノックス医師を連れて姿を見せ、現在は手術の助手を務めていた。

 

 

 

「・・・・妙だな?傷口が清潔すぎる。前傾姿勢でしかも汚水が歩行で撥ねたんだろ?ここに来て応急処置したにしても黴菌が入ったように見えねぇ。どういうこった??」

 

 

「は・・・はあ、若と別れたあと、すぐ・・・妙な二人組に・・・。そのうちの一人は、襤褸布に包まれて・・分からないが、もう一人は女性だった。その女が・・・恐らくは・・錬金術を使って―――」

 

 

「ああ、もう良い傷に障る!話は体調を整えてからにしやがれッ!!」

 

 

 

 

 

 

 同時刻、エドワード達は情報の共有をしていた。大総統の正体、大佐の執務室に届いた『ヒューズ准将が遺した国土錬成陣の情報』について、下水道であった正体不明の二人、そして・・・ウィリアム・エンフィールドについて。

 

 

 

「・・・透明な壁作ってガードとか反則も良いところだよな。初見殺しにも程があるよ」

 

 

「ふむ、私が気になったのは“傷の男”の『分解』や錬丹術を無効化した業だな。ここにいる戦力はシン国の物を除いて錬金術が主力だ。もし我々に対しても同じことが出来るのなら、はっきり言って詰みだぞ」

 

 

「だよなー。燃やせない大佐とか『む』から始まる役立たずだもんな」

 

 

「・・・人のことが言えるのか?そういう君は『チ』から始まる無能になるんじゃないのか、うん?」

 

 

『二人ともこんな時まで喧嘩しないでよッ!!それより、エンヴィーの名を出してたりリンを撃とうとしたあたり、やっぱりウィル兄さんはあっち側なんだよね、はあ。・・・なんだったのかな、あの右手は。最初鉛色だったから機械鎧なのかなと思ったけど、全然違った。むしろグリードの硬化した腕の方が近い感じだった』

 

 

 

 会うたびビックリ箱の様に次から次へと何かしらとんでもないものが飛び出してくる男に全員で頭を抱える。しかもそんな男が敵に回っているのだからますますマズイ。

 

 

 

「俺はその男が何かする前にアルフォンスが吹っ飛ばしたからよく知らんが、そんなにヤバい奴なのカ?」

 

 

『錬金術のせいで常に拳銃が機関銃みたいになってる。あと、リゼンブールで拳銃出した時、いつ抜いたのか全く分からなかった』

 

 

「たしか南部で開腹もせずに病気治してた。あと、毒作ったり極細のワイヤーで切断したりはお手の物って聞いたことがある」

 

 

「・・・学生の内からイシュヴァール内乱に参戦しているから、あの年齢で既に百戦錬磨だ。しかも奴は最激戦区を国家錬金術師すら凌ぐ進軍速度で攻略した実績を持っている。ついでに言えば、キング・ブラッドレイと御前試合で真面にやり合って見せたこともあるそうだ。出来れば彼の地盤作りのためのヤラセであってほしいところだ」

 

 

「\(^o^)/」

 

 

 

 実はアルの奇声付キックで九死に一生を得ていたことを知り凄い表情へと変わるリン。しかもこれらに加えて『エメス』の最新技術も掌握しているのだ。どうして味方じゃないんだというのが全員が共有する感情だった。

 

 

 

「・・・・もう良い。奴について考えるのはまた今度だ。とにかく私は、ヒューズが遺してくれたこの重大な情報と、大総統がホムンクルスであり人間を食い物にする何かを企んでいるという情報を武器に、軍内部で味方を選別し外堀にいる無関係の人間を味方へと引き込む。いくら成り上がりの田舎者に協力するのが嫌でも賢者の石の材料にされることよりはマシだと思うはずだ」

 

 

「――――それじゃあ動くのに制限のない俺とアルは余所で味方を探すか。リオールで態々中央軍を使ったあたり、あいつらセントラルの外にはあまり根を張ってないみたいだ。他の地方司令部なら上手くやれば立ち上がってくれるんじゃねえか?」

 

 

「ふむ、南と西はやめておけ。あそこは意図的に膠着状態を維持されている。恐らく連中の手先が潜り込んでいるはずだ。有力なのは北だな。アームストロング少将とは合同訓練で何度か顔を合わせたことがある。性格はともかく、人柄で言えば最有力だ。特に資料によれば次に奴らが動くのは間違いなく北だ。ここを前面に押し出せば力になってくれるだろう。ただ―――」

 

 

 

 唐突に言葉を切った大佐に他の面々は訝しむ。常に自信満々に断言する大佐らしくない姿だ

 

 

 

「あの御仁はエンフィールド技術大佐を物凄く毛嫌いしていたはずだ。勿論そんなことで君たちの評価に色眼鏡は掛けんだろうが、余計な事を言って話を拗らせん方が良いな。」

 

 

「――おーい、マスタングさんよ!処置が済んだぞ、そんなとこで駄弁ってないでさっさと来い!!」

 

 

 

 

 

 着々と話が纏まっていく最中、ある一言を聞き咎めた怪物が、怨敵を丸呑みにせんと咆哮を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side ウィリアム

 

 

 

・・・AからLまでの列はもう調整の必要はなし、他の棚はまだまだ大人しすぎる。もう少し前頭葉を退化させて―――。

 

 

 

「―――やはりここにいたか!こんな不気味な場所に何時間も籠っていられるなど、正気とは思えんなッ!」

 

 

 

 ・・・無能1号、御登場ですか。

 

 

 

「おや、どうしましたクレミン中将?確か今は軍議の時間では?」

 

 

「大総統閣下が御呼びなのだ、そうでなければ選ばれた人間であるこの私が貴様など相手にするものかッ!!まったく、自分から死地に飛び込んだ東部の猿を笑っていた所を邪魔しおって」

 

 

 ・・・やれやれ、人を会議室から追い出したかと思えば会議に参加しろと言ってきたり、面倒な人たちですね。どうにも自分たちが何も役に立てなくて焦っているようですが、そう思うならせめて陣頭指揮をとってその綺麗な軍靴の底を擦り減らしてからにしてくださいよ。

 

 

 

「ところで・・・貴様の作ったものだから心配しておらんが、これはちゃんと使えるんだろうな?有事の際はこれが我らの切り札なのだぞ」

 

 

「そうですね、あと一週間もあればここにある物は全て稼働できます。もし彼らが目覚めるときが来れば、『愚か者たちは一人残らず』殲滅されることでしょう」

 

 

 

 僕がそう言えば、言質は得たとばかりに揚々と去っていきました。・・・呼びに来たのではなかったでしょうか。

 

 

 

「閣下、このような不出来な木偶人形に閣下の貴重な御時間を割く必要はありません。後のことは我々にお任せを」

 

 

 

 おや、レーヴ中尉。もう帰ってきたのですか?詰まらない雑用を命じてすみません。

 

 

 

「いえ、二重尾行は私の得意分野ですので。『体の大きな幼児』は無事御家に帰られました、堅そうなお友達のみを連れて、ですが」

 

 

 

 ・・・ふむ、『あの人』命な彼らがまさか目的に真っ向から反することなんかしないとは思いますが、一応準備だけはしておきますか。どうも最近失策続きですね、彼らも。これが古典的な時代劇なら粛清でもされてそうなものですが。

 

 

 それよりも、マスタング大佐ともあろう人が、随分と脇が甘いことだ。例え骨の髄まで腐っていれど、事ここに至るまで自分たちの本性を隠して来れたゾンビ狐たちですよ?簡単に手の内を見せてどうするんでしょうかね。

 

 

 

「しかしこれで危険因子と認識されたマスタング隊は解体ですか。閣下の仰られた『対抗馬』は縮小ですね」

 

 

「それは早合点というものですよ。寧ろ都合が良い、追い詰められた人間が獲る行動は二つ。一つは頭に上った血が沸騰しての自滅行動、そしてもう一つは青い焔の様に静かに冴えわたるか。まだまだ捨てたものではありませんよ」

 

 

 

 さて、長話してるとまた一号がやってきそうだし、準備は中尉に任せて大総統の元へ急ぎますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所:大総統執務室

 

 

 

「―――えーと、つまりあの爆弾魔を釈放して来いと仰せで?」

 

 

「そうだ。ラストが欠け、グラトニーも現在一時離脱中、生まれ直したばかりのグリードに遠方任務は任せられん。役に立つ駒を遊ばせている余裕はなくてな、君がブリッグズまで行ってくれるのであれば構わんが」

 

 

「勘弁してください、そんなことしたら北壁さんが僕の血でウォールアートを始めそうだ」

 

 

「はっはっはッ!それならそれで面白い。君の血なら一滴でも紋が刻めそうだ」

 

 

 

 いや、本当にシャレになりませんて。しかしなんであの人にあんなに嫌われたんでしょうね?心当たりなんて・・・偶々遠征に行ったときにドラクマ軍を一人で潰したから、それとも北壁渾身の戦車を勝手に改造したから、いやいやアームストロング家に代々伝わりし名剣に細工をしたから・・・・あれ、心当たりしかありませんね。

 

 

 

「まあそれは冗談として、紅蓮の錬金術師の釈放手続きに関してはエンヴィーがやっておいてくれる。君には彼が存分に働けるよう手の者を貸してほしいのだ。あそこは色々遅れていてな、血の紋は無論のこと、スロウスもちょうどあの辺を掘っている所だ」

 

 

 

 ・・・うわぁ、これまでの経緯を考えると厄介ごとが起きる予感しかしない。腕利きを手配しておきますか。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――数日後

 

 

 

「えーっと、あんたがウィリア――『『『『『『『チュンッ!!』』』』』』』――うわ、あっぶねぇッ!!?何しやがるッ!!」

 

 

 

 ・・・これはこれは何時ぞやの不法滞在者さん。確かあの時5、6発鉛玉を御馳走するって言いましたよね?弟分に殴られた分も上乗せしてもう2発おまけしただけですよ。

 

 

 

「・・・うっわ、マジで服に穴が7発空いてやがる。・・いや、そうじゃねぇよ。ラースから聞いてねえのかよ!?俺が新しいグリードだって」

 

 

 

 いや、聞いてますよ。新しくシン国の皇子様の体を貰ったとか。ただ最強の盾とやらがどれ程のものか知りたかったものでして。

 

 

 

「・・・・・・・・あー、うん。もういいわ。それより、あんたも居残り組なんだろ?俺もしばらくは暇そうだからよ、話し相手になってくれねえか?あんたからは面白そうな話が効けるって俺の勘が言うもんだからよ」

 

 

 

 ・・・また変な人が寄ってきましたね。しかし『強欲』ですか。ならこんな話は如何でしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――『約束の日』の翌日について貴方は考えたことがありますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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