鋼の錬金術師 錬金術師も神に縋る   作:章介

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原作読み直してみると、この内容はもう2巻に入ってるんでしたね。失礼しました。

気が付けばこの小説も評価バーに色が付き、週間ランキングにも入っていたので筆者は小躍りしています。これからもよろしくお願いします。


第五話 再会と悲劇

 

 

 

 

 

Side ウィリアム

 

 

 

 

 

「23番!作業完了しました!!」

 

 

「14番、33番も完了しました!」

 

 

「―――局長、全行程完了致しました。こちらが第6機関が本日実地訓練を行った区画です。どうぞ御検分を」

 

 

「わかりました。―――ふむ、ふむ。コンクリートの精製は大分様になりましたね。しかし

土の掘り起こしや化学肥料の出来はまだムラがありますね。これじゃ当分値段はつけられませんが、中期計画の見直しまではしなくて済みそうです。引き続き彼らの指導を頼みます。講習会が必要であれば、時間は都合しますので」

 

 

「はっ!寛大な処置痛み入ります」

 

 

 

 

 さて、僕が今何をしているかというと、何時の間にか押し付けられていた機関の実地訓練を目的に、東部までやってきております。

 

 

 

 ―――特務機関『エメス』。内戦終結後、国内外で高まった『錬金術』に対するマイナスイメージの解消のために創設された、錬金術専門開発機関です。国家錬金術師が軍事利用を主としているのに対し、『エメス』は公共の福祉を目的としております。

 

 

例えば、今日のようにテロ活動により損壊した建物の修復や、戦争に取られた働き手の補てんとして錬金術で土を耕したりなど。これらによって『錬金術は大衆の為にあれ』という原則を蔑ろにしていないというアピールをしています。また、イシュヴァール内戦の悲惨さに心が折れた国家錬金術師たちの多くを取り込むことが出来、国が保有する錬金術師の質を落とさずに済んだのはうれしい誤算です。この機関はいかなる理由があろうと、在籍する人員を戦争に動員しないという大総統のお墨付きを頂いていますからね。

 

 

 

 

 

・・・・もっとも、これらはあくまで表向きの話で、裏では『計画』の隠れ蓑として利用されているんですけどね。何か企んで入局してきた奴とかを言い包めて事件に加担させたりとか、そういえば少し前にラストさん達に要請されて一人リオールに送りましたが、あれからどうなったんでしょうかね?

 

 

割と便利屋のように使い走りを命じられますが、アメストリスのあちこちを飛び回れるのは僕としても好都合なので文句はありません。色々仕込むには時間が幾らあっても足りませんしね。

 

 

 

「―――それと局長、先程セントラルより入電がありました。それが・・・」

 

 

「・・・機関員の即時帰還、しかも残りの日程はすべてキャンセル?珍しいですね、横槍を入れてくるのもそうですが、埋め合わせや説明もなしに命じてくるとは」

 

 

「局長に直接連絡が言っていないところを見るに『例の件』ではないと思います。恐らく本当に突発的に起きた、それも致死性の高い緊急事態が濃厚かと。既に機関員全員に通達し、最も近い便のチケットも抑えました」

 

 

「わかりました。僕は本部に連絡を取ってみます。迅速な手配をありがとうございます、レーヴ中尉」

 

 

 

 先程から僕と会話をしていた女性はラビ・レーヴ中尉。『エメス』にて教導官を務める僕の副官で、自身も中々の腕前の錬金術師です。他にも色々と込み入った事情があるのですが、それは又追々。

 

 

 

「―――そうだ。今日はあの子たちが上京してくるんだった。今からホームにいけば間に合いますかね?」

 

 

 連絡はその後にしましょう。多少危ない事態でも僕はそう簡単には死ねませんし。

 

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てんめ~ッ!ウィル、偶には帰って来いっつったろうが!」

 

 

「いやー、すみませんねぇ。機関の立ち上げやら復興作業やらで離してもらえなかったもので。あ、アルも久しぶりですね。エド好みのデザインに魔改造されてやしないかと心配していましたけど」

 

 

『久しぶりウィル兄さん。うん、それだけは全力で死守したからね』

 

 

「おい、何二人で人のセンス貶してんだ!つうか無視すんな!高い高いすんな!子ども扱いすんなーッ!」

 

 

 

 エドが駅に顔を出したウィルを見つけた瞬間飛びかかった。勿論本気で飛び蹴りした訳ではないのと、何よりリーチが違い過ぎたため白兵戦が苦手なウィリアムでも簡単に往なすことが出来、そのまま持ち上げられる。

 

 

 

「子ども扱いなんてしてませんよ?ただ僕にとっては君たちがどれだけ大きくなってもエルリック家のエド君とアル君ですからね。その証拠にほら・・・」

 

 

『――え?わ、わわわっ!!』

 

 

 そう言ってエドワードを下してすぐに、隣りで見ていたアルフォンスもひょいと持ち上げ始めた。どう見ても30キロ以上はある全身甲冑を腰も使わず腕だけで、しかもひょい、という表現が相応しい軽さで持ち上げたので、周りで微笑ましく見ていた人たちも目が点になった。エドは既に何度か見ているが、相変わらずどういう構造してんだと半目になっている。

 

 

 

「―――エンフィールド技術大佐、技術大佐ー!あ、いらっしゃった。さっきから中央からの催促が凄いんですよ。グラマン中将のストレスがヤバいので早く来て下さいって!」

 

 

「おや、本当にせっかちですね。ではそろそろお暇しましょう。エド君、もし中央まで来る機会があれば是非うちに寄って行ってくださいね。それではマスタング大佐、どうか二人の事をよろしくお願いしますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから少し時間が経過し、現在エルリック兄弟はマスタング大佐の執務室へと来ていた。

 

 

 

「今回は一つ貸しが出来たな、大佐!」

 

 

「・・・君に借りを作るのは怖いな、鋼の。で?堅苦しい司令部まで来たんだ、もう何が欲しいか決めてきてるんだろう?」

 

 

「さっすが、話が早いな!ちょいと大佐の伝手で生体錬金術の専門家を紹介してほしいんだけど―――って、なんだよ、俺変なこと言ったか?」

 

 

 せっかく押し付けた貸しを有効活用しようと持ちかけたエドだが、『何言ってんだ、こいつ』みたいな顔をされてたじろいでしまう。よく見ればホークアイ中尉もポカンとしている。

 

 

「・・・あー、鋼の。つい先ほどまでお前たちを持ち上げていた男は、この国有数の生体錬金術の権威だぞ?癪だがあの男以上となると国をひっくり返しても見つけるのは難しいと思うぞ」

 

 

「『・・・えーーーー!?』」

 

 

「まさかと思ったが、本当に知らなかったのか。この6年で特務開発局『エメス』の名は随分有名になっただろうに」

 

 

『いや、その・・・。あの人本当に極偶に帰ってくるんですけど、いつもあんな感じで・・・・・。どうしても近所のお兄さんのイメージが抜けなくてつい』

 

 

 

「そういやウィルの奴、偉かったんだよな。・・うん?そういやウィルって『技術大佐』って呼ばれてたけど、大佐とどっちが偉いんだ?」

 

 

 

「それは・・・」

 

 

「―――それは勿論私だッ!別称付の階級は本職より権限が僅かだが劣る。謂わば『技術大佐』というのは中佐以上大佐未満といったところだ」

 

 

「へー」

 

 

「でも、彼は特務機関長でもあるから、東部ではともかく中央上層部での発言力は実質中将並だそうよ」

 

 

『・・・てことは?』

 

 

「もしあちらから何か要請があれば、突っぱねられるのは東方司令部だとグラマン中将だけね」

 

 

『あっ(察し)』

 

 

「・・・大佐、大丈夫だって。まだまだこれからなんだし」

 

 

「私に生温かい視線を向けるのは止めろっ!!!だいたい、あの男が異常なのだ。この平時では私ですら6年かけて階級を一つ上げるのが精一杯だった。それを大尉から3階級も上げて見せるなど有り得んことだ。一体どんな超常の手を使ったのか是非教授願いたいところだ。それはともかく、どうするんだ?技術大佐を頼るならここで動いても二度手間にしかならんぞ」

 

 

「いや、紹介頼むわ大佐。ウィルは多分知ってても教えてくれないだろうから。錬金術に関しては凄く口が堅いけど、俺たちに必要なことを教えてくれなかったことは一度もなかったから」

 

 

『必要ならとっくの昔に教えてくれてるだろうしね』

 

 

「そうか、なら一人心当たりがいるぞ。『綴命の錬金術師』ショウ・タッカー氏だ。私も今は時間があるからすぐにアポを取ってやろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・“傷の男”ですか。最近噂のテロリストが東部に・・・なるほど、あの撤収命令はそれでですか。で、僕はどう動けばよろしいでしょうか?中央に戻りますか、それとも―――」

 

 

『いや、君はこのまま東部の援護に回ってくれたまえ。ラストやエンヴィーは追跡に関しては正直、な。それにそちらには希少な人材が固まり過ぎている。ここまで来て代わりを用意するは難しい。有象無象はともかく、絶対に「人柱」を殺らせるな』

 

 

「もちろん、心得ております。ではしばらく単独で東部に留まりますね。不測の事態があればラストさん方に相談しますので、これで失礼致します大総統閣下」

 

 

 

「・・・さて、大佐は問題ないでしょうし、モグリの錬金術師が襲われたという報告も受けてませんね。では、やはりエド君達が一番の懸念材料ですか。恐らくあの子たちの今のところの目的は『アレ』でしょうから、行くとすれば恐らくあそこですかね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side ウィリアム

 

 

 

―――えっと、これどういう状況?『綴命の錬金術師』の自宅へ向かうと何故か憲兵が塞いでいたので身分証を提示して中に入ると、ボコボコにされたタッカー氏と犬型のキメラ、それからマスタング大佐一行が居ました。

 

 

 

「エンフィールド技術大佐、ちょうど良かった。是非君の協力を得たいと思っていた所だ」

 

 

「さっきぶりですね、大佐。大凡の予測はついてますが、状況の説明を戴いても?」

 

 

「それは私からさせていただきます、技術大佐。鋼の錬金術師から通報があり、調べたところ実の娘と飼い犬でこのキメラを作成したそうです。それから国家錬金術師の資格を得た時も妻を犠牲にしたと供述しております」

 

 

「そうですか。ありがとうございます、ホークアイ先輩」

 

 

「・・・公的な場では階級に応じた扱いをお願いします、技術大佐」

 

 

「おっと、これは失礼しました。それよりも、協力は勿論させていただきますが、具体的には何をすれば?」

 

 

「錬金術を命の冒涜に用いたとなると、せっかく上向きになり始めた世間の評判がまた失墜しかねん。国家錬金術師のトラウマを掘り起こすことは出来るだけ避けたい。生体錬金術師の専門家として穏便に済ませられるか?」

 

 

 

「・・・ああ、そういえばエド君たちは見てしまったんですね。彼らが直面するには厳しすぎますからね。ご心配いただいてすみません」

 

 

「・・・そんなことは良い。それよりどうだ、何とかなりそうかね?」

 

 

「ではちょっと失礼しますね。ふむふむ、これはまた、程度の低い術を行使したものですね。まあそのお陰で魂にまで干渉がされていないようですね」

 

 

 

「程度が低い・・・?は、ハハハハッハ!!私の、私のキメラは完璧に錬成されている!誰にも元に戻せんよ!少なくとも戦場で親を死なせたような奴に『ピンッ』は――ご―けほっ―かっ――!」

 

 

 それまで大人しくしていたタッカーだったが、流石にウィリアムの言葉にプライドを傷つけられたからか、猛烈な勢いで騒ぎ立てる。が、この場でもっとも言ってはいけない一言を口に出してしまったために突如伸びてきた『何か』に首を締め上げられ黙らされることとなった。

 

 

 

「技術大佐!!この男を殺すことは許さん。裁判にかけなくては――」

 

 

「ええ、勿論。彼を殺したい人間は沢山いるでしょうし、抜け駆けはしませんよ。一応血液に酸素を錬成してますから、このまま首を落とさない限り死にはしませんよ。あんまりうるさいので少し大人しくなって貰いました。ああそれと、殺しはしませんが、殺人犯に凶器を持たせたままでいるのは都合がよくありませんよね?」

 

 

 

 タッカーに絡みついていた鋼線が解け首から離れた瞬間、凄まじい速さで巻き取られその弾みで絡みついた両腕が千切れ飛んだ。

 

 

「あ、あああああ私の腕が、早く、早く治して、じゃないと研究が、これまでの努力が全て無駄にいいいいいい!!?」

 

 

「中尉、申し訳ありませんが止血をお願いします。それから、そんなに喚かなくても良いでしょう?貴方の研究なんてとっくに無価値なんですから」

 

 

 

 そういってタッカーの飼育室へと入り、適当に見繕ったキメラに手を翳し錬成を開始する。

 

 

 

「これでよしっと。ハッピーバースデー、今日から君の名前はココだ」

 

 

「・・・ナ・・マ・・・・?コ・・・・・コ??」

 

 

「―――――へっ?」

 

 

「つい最近まで医療分野の研究をしていましてね。主に痴呆や呆けの治療をテーマに脳の研究をしていたので、このくらいは筋の良い部下でもできますよ。いかがですか?・・・聞こえていないようですね」

 

 

 

「・・・・どうやら『エメス』の技術力は想像以上のようだ。技術大佐、君ならこのキメラの治療も可能か?」

 

 

「残念ながらすぐには無理ですね。僕は彼女が人間だったころを知りませんから。抜け毛でも何でも構わないので彼女のDNAを回収してください。それから人間のころの写真も。後は僕たちが引き受けますので、彼女をセントラルまで輸送してください」

 

 

「わかりました。急いで手配します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして俄かに騒がしくなったタッカー邸。しかし、慌てて拘束され連れて行かれるキメラが、外部からはどう見えていただろうか。突然の猟奇事件に東部軍も浮き足立っていたのか、この事件の関係者にこのことが伝わらなかったことも悲劇の一因となってしまった。

 

 

 

 トラウマを掘り起こされ、気が動転していたエルリック兄弟は彼女の移送を実験動物としての連行だと思い込んでしまい、移送を妨害してしまった。そうして彼女は路地裏に姿を消し、そして―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――翌朝、原型を留めないほど粉々に分解された姿で発見された。

 

 

 

 

 




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