__私達が広間へ入った瞬間、給仕を行うメイドや執事が一斉に博くと共にヴァイオリンの調べが鳴り出す
私達はそれを意に返さず席につく。がハリー達にとっては慣れない景色だったらしく、今も扉の前で呆けていた
「どうした?席につかんのか?」
「え・・・え?何コレ・・・」
「何って・・・食事だが?」
「いやおかしいだろ!?」
「何でメシ食うだけで綺麗なメイドがいたり音楽が鳴り出すんだ!?」
「しかも生演奏で!!」
フレッドとジョージ、更にはロンまでもが喰い気味に言い切り、他のメンバーもコクコクと頷いているが・・・え、普通じゃないの?
「普通じゃないよ!!ホグワーツでもこんなのなかったじゃん!!」
「でもハリー、ここは私の城。クレーリア城だ。そして私達は王族だぞ?」
そう返すとジニーが「常識が崩れていくわ・・・」とか言ってきやがった・・・失礼な、これが王族の常識だ!
何とか席につかせメイドがそれぞれの首にナプキンを巻いていく。ロン達男達が近くに来たメイド達に見惚れているが大丈夫か?ジニーとモリー小母様が白けた目で見ているが・・・(特にアーサー小父様ぇ・・・)
次に執事達が飲み物をグラスに注ぎ、後は乾杯をするだけとなった
「誰が音頭を取る?父上がやりますか?」
「いや、今宵の主賓は其方だウィラ。お前が取るといい」
「そうね、よろしくねウィラ?」
父上と母上にそう言われては私も引けない。それにハリー達もこちらに注目していることだし
席を立ち、グラスを掲げ__
「海を渡り、国を超え、我等はこうして出会い友となった。今宵の素晴らしい
__チンっ____
私の音頭と共にそれぞれがグラスを鳴らし、クイっと喉に流し込む
(言っとくけど私達はお酒ではないぞ?大人組は知らないが)
それを見届け給仕の者が熱々の鉄板をそれぞれ置いていく。シェフが前持って説明してくれたが、どうやら本日はコース料理ではなくわざわざ日本から取り寄せた和牛のステーキらしい、何でも素材の味を楽しんでほしいとのことだ
ナイフを肉に入れれば軽く引いただけで簡単に切れる、口に運べば上質な肉の香りと芳醇なソースの香りが鼻孔をくすぐり舌の上で肉が溶ける・・・素晴らしい!パーフェクトだウォルター!(シェフの名前)
だがハリー達はまだ肉に手を出さず、何やら騒々しかった
「スゲェ!おい見ろよコレ!」
「これ・・・もしかして金か!?」
「凄く薄い金?ねぇママ、金って食べられるの?」
「ママに聞かないでジニー・・・」
「何コレ!?舌の上でお肉が溶けた!?」
「ウィラ達いつもこんな良いもの食べてるの!?贅沢すぎない!?」
「そうか?普通だろ?それとロン、金は食べれるぞ?老廃物を吸着してくれるから美容に良い・・・て聞いちゃいねぇ・・・」
人が折角説明してやってるのにコイツ等・・・ガッつき過ぎじゃね?
「フハハ!まぁ良いではないか」
「ハフ!ハム!・・・はっ!?す、すみませんマナーを守らず!・・・こんな美味しい肉、人生で初めてで・・・」
「フハハ!良いのだアーサー殿、そもそも友との語らいの場でマナーなど無粋の極み」
「うふふ、そうね!まだたくさんあるから、たぁんとお食べ?」
「「「ありがとうございます!!!」」」
__デザートまで食べ終わり、皆も満足したようだ。グラスを傾けながら雑談に今は興じている
「なぁなぁウィラ、あそこにいた人達がウィラの円卓なのか?」
「アルヴィーさんの他にさ、スッゲェ美人の人いたじゃん!お名前は!?」
「あぁ、アレはコチョウだ。言っとくが紹介はせんぞ、色々とめんどくさい。何よりアレもアルヴィーや獣と同じ人外だ」
「へぇ、あの人も・・・でも納得だね!すごく綺麗だったもの!」
(まぁ伊達にその身一つで国を滅ぼしてないからなぁ・・・)
「その言い方は納得できんなハリー、私がまるで負けているようではないか」
「ち、違うよ!ウィラもその・・・すっ凄く綺麗だし・・・///!」
「あら、ハリー君ウィラに告白?」
「そうなのかハリー?スマンが私と付き合いたければ最低でも私より強くなってくれ」
「だから違うって!!そしてハードル高すぎない!?」
「それ、絶対無理じゃん・・・」
「冗談さ、愛してくれればそれでいいよ。ハリー、卿は私を愛してくれるか?」
顔を近づけ瞳を除きこむ
勿論本気じゃない、軽い遊びだ(だって私にはてんてーがいるし、いつ落としに行こうか)
「~~~っ///!!」かぁっ!
「何故顔を背ける、何故耐えられん。さぁハリー、卿の瞳に私を映しておくれ。翡翠が如き卿の瞳に我が黄金を垣間見せろ、さぁ・・・」ニヤニヤ
「うわぁ、ウィラが悪い顔してらぁ・・・」
「悪いお姉様、ステキ・・・!」
流石にからかい過ぎたかな?ハリーの顔から煙が出そうなくらい真っ赤になってるし
あと・・・流石に悪いから言わないがハリーは私のタイプじゃない、それはこの場の男性全員に言える
私が今まで出会った男性の中でいいなと思えたのはスネイプと、自分でも意外だとは思うがネビルだ。彼は確かに臆病者だ、だが彼は男の中の男だと思う(結構やる時はやるしね)
冗談だと謝っているとメイドの一人が「そろそろ風呂などいかがでしょう?」と言ってきた
うん、確かにそろそろ良い時間だ
「お姉様!私、お姉様と一緒に入りたいです!」
「もちろんYes!!」___と言いたい所だが・・・
「申し訳ありませんジニー様。どのような理由があろうと高貴な身であらせられる陛下のお身体を見せるわけには・・・」
やはりと言うべきか、その提案にこの場にいる者は良い顔をしなかった。しかもその言葉は本気で私を思ってのことだから、私も声を大きくして言えない
「そういうことだジニー、悪いな」
「・・・いいえ、私の方こそ調子に乗って・・・」
「なに、卿が悪いワケではない。だが私も彼女達の主君として、ある程度は言い分を聞かねば」
ジニーの頬を撫で納得してもらう。途中大人組は場所を移し飲みに、子供組はそのまま風呂に向かいそれぞれの部屋に通すようだ
明日の予定を軽く打ち合わせ、私も残っていた用事を済ませようと席を立った____
◇
「___くぅぅ!マジサイコーだったな!」
「あぁ!あんなでかい風呂見たことあるか!?」
「見てよみんな!このベッド!凄いフカフカだよ!?」
風呂から上がり、部屋へ通されてもウィーズリー兄弟のテンションは上がりっぱなしだった
今まで見たことも無い調度品の数々、食事は最高の一言に尽き、今いる部屋もまた最高だ
だがハリーだけは少し浮かない顔をしていた
「おいどうしたんだよハリー!そんな浮かない顔して!」
「美味いモンの食い過ぎでハラでも壊したか?もしくはウィラからフラれてショックだったりして・・・!」
「違うよ!違うって!いやなんかさ・・・王様って色々大変なんだなって」
先程の光景を見てハリーは思っていた
どこに行くにしても必ず大勢の人間が付き添い、ウィラには心落ち着く時間など無いに等しいのではないかと
「ねぇ、みんなはどう思う?」
「どうって言われてもなぁ・・・羨ましいとしか」
「だな。綺麗なメイドを侍らせて美味いメシを食う!サイコーじゃん!!」
「はぁ~、僕も王族に生まれたかったよ。そしたらコイツ等なんか顎で扱き使ってやるのに!」
「くはは!諦めろ我が弟よ!」
「くはは!然り!むしろ今から俺達がロンを扱き使ってやるよ!」
じゃれ合うロン達を見てハリーは思い出す。確かに昼間街を散策した時、そこには笑顔が溢れていた
彼女はまさしく人の上に立つ為に生まれて来たと言える。しかし・・・
(ウィラだって女の子なんだ。もっとジニーとお喋りしたかっただろうし、自由な時間だって欲しいハズだよ)
だがこの考えは恐らく自分の勘違いだろうとハリーは思う。何故なら彼女は一度も今の生活を止めてみたいと・・・普通の生活を送りたいと言ったことは無いのだから
常に自分で考え、自分の定めた道を威風堂々と歩き、諸人の憧れであり続ける様は尊敬の念すら覚える
気付くと疲れていたのかロン達は静かに寝ていた
ロンの両脇をフレッドとジョージが固め、ロンの腹に仲良く足を乗せている。ロンも何やら魘されているようだが、ハリーはその光景を羨ましいと見つめていた
「・・・僕も寝よ、おやすみみんな」
◇
__喉を炎のように、しかし鼻孔にはまるで数十種類の果実を合わせたかのような芳醇な香りが駆け巡る
「~~っ!!美味い!!こんな美味い酒は生まれて初めてですよ!!」
「フハハ!それは良かった!これは私の秘蔵の酒でな?私自身これ以上に美味い酒など知らぬ」
場所を移したジブニール達大人組は、今は仲良く酒を飲んでいた
初めは戦々恐々としていたアーサーも、極上の酒に今は気分良くジブニールと共に歓談をしていた
「えぇ!?そうなのですか!?いやどうりで美味すぎるハズだ!ははは!!」
「もう!アーサー!!」
「うふふ、いいじゃないですか。お酒は楽しく飲むものですよ?」
それぞれの隣にモリーとオレンシアがつき、ジブニールはそんなオレンシアの腰に手を回し、優雅に酒を飲んでいた
初めは互いの馴れ初めや仲の良さを男同士で自慢し、モリーは顔を真っ赤に染め、オレンシアもまた顔を赤くしながらもジブニールにしな垂れかかる
そして徐々に話は子供の話題へと転換していった
アーサーとモリーは口々にウィラのことをべた褒めした。と言うのも二人もまたウィラの預言のことを知っており、今まで見て来てウィラの預言にある『偉大なる黄金』の一節が10代目黄金のような賢君になることを指していると思ったのだ
「どうやってあれほどまでに賢い子を育てたのです?やはり教育係など王室専用の子育ての仕方があるのですか?」
アーサーに悪気は無かった、ただ純粋に疑問を投げかけただけだ。だがその問いかけに今まで笑顔だった二人に陰がかかる
「あ・・・えっと・・・」
「あぁ、其方が気にすることではない。・・・レシー」
「えぇジル」
姿勢を正す二人を見て、アーサーとモリーは自分達が何やらとんでもないヘマや聞いてはならないことを聞いてしまったのではないかと酔いも瞬時に醒める
とにかくこちらも姿勢を正し、何を言われてもちゃんと答えられるよう身構える
これからの内容は決して誰にも話してはならぬとジブニールがアーサー達に告げ、ポツポツと・・・オレンシアがグラスを持ったまま語りだす
「私達は何もしていないわ・・・あの子は初めからしっかりしてたから」
「それは・・・親なら・・・王族ならば良きことでは?」
それは暗に手のかからない子供であったのだろうとアーサーとモリーは思った。しかし何故オレンシアはそこまで悲痛な顔で語るのだろうか
「えぇ、でも私はあの子に親らしいことをあまりしてあげれなかった・・・もっとキスをして、もっと抱っこをして・・・もっとイッパイ愛情を注いであげたかった」
ジブニール達はウィラに前世の記憶があることを知っている。そしてその記憶が時にウィラを苦しめていることも知っていた
勿論この場でこの話をするつもりは無い。これは国家機密以上、自分達家族とウィラの円卓のみが知る秘密だ
オレンシアは思う、何故あの子だけが苦しまねばいけないのか。何故誰よりも愛しく、優しいあの子だけがそんな苦しみを抱えねばいけないのか・・・何度思ったことだろう、その前世とやらに一度でいいから会って私の子を虐めるなと言わせてほしいと願ったのは・・・
「だが・・・あの子は王になった・・・なってしまった。わずか9歳で即位させてしまった・・・子供ではいられなくなってしまったのだ・・・」
何度ジブニールは自分を責めたことだろうか、愛しい娘の大切な時間を自分の歳のせいで奪ってしまったと。まだ抱えるべきでない重荷を抱え、更にあの子は様々な悩みを生まれながらに持っていたというのに・・・今でも思い出す、まだ幼いウィラが必死に泣くのを隠しながら自分達に謝り続ける姿を・・・
二人は思う。もっと自分達を頼ってほしいと・・・だが同時に分かってはいるのだ、ウィラは家族にすら弱味を見せない。そしてそれは意地を張っているのではなく、ただ心配をかけたくないのだろうと・・・自分達を愛してくれているからこその行動だと二人には分かっていた
「私はもっとあの子に甘えてほしいの。もちろんこれが親のエゴであることは承知よ?立派に一人で立っているのに、私達はその足を引こうとしている。でも・・・私はもっと母親らしいことを・・・もっと私達の愛を感じてほしいの」
「ゆえに汝等と話したかったのだ。前にウィラから聞いたがウィーズリー家ほど家族が多く、そして大切にする者はおらんと」
こちらを見据え問いかけてくる国王夫妻を前にアーサーは思う__何で私達なんだ__と
確かにウィラの評価はたいへん光栄であり、ありがたい。しかし自分達は庶民で王族の悩み相談をするような立場ではない。いくらこの場が酒の席だとしても相手は遥か殿上人、あまりにも荷が重すぎる。酔いなどとうの昔に醒め、アーサーはただでさえ薄い髪の毛が緊張で更に抜け落ちるのを感じた
どうしようかとアーサーが悩んでいると、今まで黙って聞いていたモリーが突然目の前の今まで手を付けなかった酒の入ったグラスを一気飲みし始めた
「モ、モリー!?何をしているんだ!?」
「んぐ、んぐ・・・ぷはぁー!!黙って聞いていれば何ですか!そもそも私達のような庶民!しかも他国の者に聞かせていい話じゃないでしょうこれは!?ですがえぇ!答えましょうではありませんか!!ジブニール様!!」
「むっ」
「聞くところによると陛下は自ら望んで王位を継承なさったのでしょう!?ただ漠然とした理由でなったのではなく、しっかりと未来を見据え!確かに陛下はある意味では子供らしくありません!えぇ、大人を顎で使う様があれほど似合う子供がいてなるものですか!!ですが陛下の笑顔!あれは子供にしかできない純粋無垢な笑顔です!貴方達とお話しされる様は見ていて仲の良い親子以外の何物でもありませんでした!!・・・オレンシア様!!」クワっ!!
「(ビクっ)は、はい!」
「陛下に甘えてほしい?だだ甘だったじゃないですか!!ずっとお2人に抱き着いて!えぇ!?お前はコアラか!?」
「も、モリーさん?流石に失礼では・・・てかコアラって」
「アーサー!!貴方は黙ってなさい!!」
「アッ、ハイ」
「で、でも・・・私はもっと悩みとかを打ち明けてほしくて・・・」ビクビク
「子供は基本親に隠し事の一つや二つあるものです!!パーシーなんか真面目な顔してベッドの下にあんな本を隠して・・・ママにバレないとでも思ったのですか!!」
「モリー、パーシーはここにいないから・・・帰ったら教えてあげよう」ボソ
立ち上がり、顔を真っ赤にしながらモリーは叫ぶ。相手が誰だろうと知らぬと言わんばかりに
最後にもう一口飲み、ガツン!__とグラスを机にたたきつけるように置き
「・・・ただ信じて待っていればいいのです。子供は必ず親の気持ちに気づいてくれますから。それでも不安なら相手が嫌がるくらい、たくさん抱きしめてあげればいいのです。もちろん行動だけじゃ駄目よ?人は話し合わないと分かり合えない生き物なんだから・・・お互いに思いやっているから多分どこかで、こじれてるんだと思うわ」
「・・・何故そう思うのだモリー殿」
「見ていれば分かります!お互いに愛情が深すぎるから心配し合って・・・もっとこう・・・えぇ、とにかく一度ちゃんと話し合いなさい!いいわね!?」
ジブニールはモリーに勢いに飲まれていたがオレンシアはひたすら目を輝かせていた
そうだ、足りないならもっと与えればいいのだ。もっと私達には貴女が必要だと、前世があろうが私達の娘は例え
そっと隣に座る最愛の人の手を握れば、あちらもしっかりと握り返してくれた
嬉しくてつい、目を合わせてはにかんでしまう。この二人の間にはそれだけで全てが伝わった
相談してよかった、ウィラの言う通り、この家族もまた素晴らしいものだった
ありがとうとモリーに言いたいが、すでにモリーは酔って寝てしまっており、アーサーもまた妻の無礼千万な態度に汗を浮かべこちらを伺っていた__その様子がすごく微笑ましく、何だか悩んでいた自分達が馬鹿に見えて来た
「フフっ!あはは!」
「オ、オレンシア様!!妻が大変な無礼を・・・この罪は妻ではなく、私に全て非が・・・」
「もう!悩んでた私が馬鹿みたい!アーサーさん?」
「はいぃ!!」ビクゥ!!
「__ありがとう、貴方達に聞いて正解だったわ。我が夫ジブニールに代わり礼を申し上げます。本当にありがとう」
「そ、そんなお礼など!!あ、頭を上げてください!!ホントにお願いします!!」
「いや、妻は悩んでいたのだ。汝等はそれを少しでも軽くしてくれた・・・感謝するアーサー殿」
ジブニールまで頭を下げたことにより、アーサーの頭はもう真っ白になった
何とかこの場を治めようと出た言葉は
「あ・・・はは・・・もう一杯いただけます?」
◇
朝になり、それぞれが付き添いの者に連れられ、広間へ朝食を取りに集まっていた
ロンは何故か頭の薄いスキャバーズに押しつぶされる悪夢を見たと言い、フレッジョ達はサイコーに愉快な夢を見たとロンを見据えニヤニヤしていた
ジニーはひたすらウィラにサイコーの一日だったと興奮して語り、その横ではアーサーが何故かゲッソリしながらモリーに何やら小言を言っている
朝食を食べ終わり、そろそろウィーズリー家がエルドラド王国を離れる時間となった。するとウィラが最後に見せたいものがあると彼等をとある場所へ連れ出した
そこには一枚の巨大な肖像画が描かれていた
ウィラ達エル・ドラド家と同じ金髪金眼、男性にしては長すぎる髪、しかしその顔はウィラやオレンシア以上に美しく、絵だと言うのに荘厳な気がその場を支配していた
「ねぇウィラ、この人って・・・」
「そうだハリー、私達エル・ドラド家の始まり・・・エルドラド王国の創始者にして初代黄金・・・『偉大なる黄金』であらせあれるヴァンシエル陛下その人だ」
その言葉にハリー・・・とくにウィーズリー家魔法使いの家に生まれた者達は驚愕する
この美しすぎる顔を持った男がヨーロッパを支配した史上最悪の暴君・・・しかし描かれたその顔は優しさに溢れ、とてもそう評価された者とは思えなかった。というのもヴァンシエルの存在はあまりにも古く、そして恐怖の対象だったのだ。ゆえに文字でしかヴァンシエルの存在は残っていなかった
何よりウィラが
「・・・やっぱり似てるよね、獣さんに」
そう、絵の人物はウィラの少し後ろにいる黄金の獣に似ていたのだ。理由は分からないがウィラがどれだけヴァンシエルを尊敬しているかは分かった
「あぁ、私がコイツに命じたんだ。少し恥ずかしいが・・・尊敬する方に誰よりも傍で見てほしかった・・・貴方様の子孫はこうして務めを果たしていますと・・・」
胸に手をあてそう告げるウィラの様子はまるで誓いを立てるかのようにも見えた
流石に港まで着いて行くワケにもいかず、ウィラ達はクレーリア城の正門前で見送ることとなった
「ではな卿等、またホグワーツで会おう!」
「あぁ!元気でなウィラ!」
「マジサイコーだったぜ!」
「また来るよ!」
「本当にありがとうございます!お姉様!」
「・・・アーサー、私・・・昨日の記憶が全然ないんだけど・・・何か知ってる?」
「あはは・・・モリー、思い出さないほうが幸せだよ」
「__・・・ねぇウィラ」
「ん?どうしたハリー」
「一つ聞きたいんだけどさ、王様ってどんな感じ?その・・・大変?」
「何だ今更、大変に決まっているだろう?私の背にはエルドラド王国全ての民が乗っかっている、彼等を導くことが大変でないハズがなかろう」
「その、ウィラはさ、普通の女の子になりたいなとか思わないの?」
その質問にウィラの隣に立つジブニール達も聞き耳を立ててしまう。それは彼等もずっと聞きたいことだったからだ
だがウィラはその質問を一蹴する
「無いな、我は生まれながらの王。エル・ドラド家に生まれ、父と母の娘であることこそが私の誇りだ」
そう言い切るウィラの姿はいつも通りだった。いつも通り、どこまでも傲慢不遜
だがこれこそがウィラだとハリーは思う。これこそが人の上に立つ者の正しい姿だと
「ふふ、あはは!だよね、ゴメンね変な質問して」
「まぁ構わんさ、大方昨日の私を見て窮屈な思いをしているのではと心配してくれたんだろう?」
「っ!・・・敵わないなウィラには」
「当たり前だろう?我こそは黄金___黄金の君である」
◇
ハリー達を見送り終わると母が私を後ろから抱きしめてきた
「寂しい?」
「えぇ、でもまた会えます。それに・・・」
私は王族、もともと彼等とは住む世界が違う
イギリスに通わせてもらっているだけでも家族にはすごく感謝してる
それでも心に湧き上がる寂しさを誤魔化す為、母にもっと抱きしめてと言いたい所だが、流石に恥ずかしい。なので母の腕に手を乗せてそれとなく仕草で催促してみる。すると母は分かってくれたのか先程よりもギュっとしてくれた
「ねぇウィラ、今日は久しぶりに家族3人で寝ない?」
その提案はすごく魅力的だった。王となったあの日から私は家族と寝室を共にしていない、甘えてはいけないとどこかで自分を戒めていたのだ
だが本当は一緒に寝たかった、初めの頃は何度寂しさで泣いたことだろうか
私もまだまだ子供、父と母の温もりにまだまだ甘えたいのだ
「よろしいのですか!?」
「うむ、もうじきお前はホグワーツに行ってしまう、こうして家族で過ごす時間も貴重なのだ」
「そうよウィラ、私達も寂しいの。迷惑かもしれないけど・・・甘えさせて?」
「もちろんです!・・・あの・・・その、お願いがあるのですが・・・」
恥ずかしさで手をモジモジしてしまう
(こ、子供すぎやしないだろうか・・・でも、折角母上達が甘えていいって言ってたし・・・うん、そうだ!これはご褒美なのだ!なら受け取るしかないな!うん!)
「その・・・ホグワーツに行くまでの間、毎日一緒に寝たいです!」
「もちろんよ!ねぇジル!」
「あぁ、ウィラ、私達ももっとお前と共にいたいのだ」
話ながら城へと戻る。右手を母と繋ぎ、左手を父の腕に絡ませて
「また今度一緒に買い物に行きましょうか。次は私行きつけのお店にウィラをエスコートしてあげる!」
「ホントですか!?~っありがとうございます!」
その会話はとても一国を背負う王のものではなく__
「愛してるよウィラ」
「私のウィラ、私達も可愛いウィラ、愛してるわ。心の底から誰よりも」
「はい!父上、母上!大好きです!愛してます!」
___どこにでもいるような仲睦まじい家族の会話だった
これにて閑話終了です
『アズカバン』は早めに終わらせたいですね