ハリー・ポッターと黄金の君   作:◯のような赤子

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ペンが届かなかったのと、これ以上待ってもらうのも何なので投稿します

あと最近『1room 家出少女』にハマッてました
個人的には『Teaching feering』以来の良ゲーです
(もうね、シルヴィといい夕といい何であんな可愛いんですかね)

と言うか前から聞きたかったのですが、挿絵無い方が良いですか?あまり絵に関する感想が無いので正直みんな邪魔とか思ってないかと戦々恐々してます(実際絵のせいで投稿遅れたりしますし、どっちにしろ円卓の面々は描く気マンマンですが)

一応今回でアズカバン終了です
あと1~3話程後日談をやって、“3大学校編”に入る前の長い長い導入に入りたいと思います



黄金とおいたん

__黒い犬が森の中をひたすら駆ける。まるで何か恐ろしいものから逃げ出すように

実際、彼__“動物擬き”であるシリウス・ブラックはここ数か月、ただひたすら逃げてばかりの生活だった

ある時は自分を追ってきた吸魂鬼、ある時はイギリスの“闇払い”やマグルの警察(ヤード)等。その全てをこの姿で撒いてようやくこのホグワーツ、ハリーに出会えたというのに

 

 

(何故だ!?彼女はこの犬がまるで私であるといわんばかりに・・・ッ!!)

 

 

ハッ、ハッ!と荒い息を上げ、シリウスは森の中を疾走する。しかし・・・

 

 

(マズイマズイマズイ!!確実に距離が・・・どうなってるんだあの怪物は!?)

 

 

振り向かずとも分かる。確実に彼女の魔の手はシリウスを捕らえて離さなかった

ゆえにシリウスは更に足が千切れんばかりに、速度を上げていく

 

『ブラック家』__イギリス魔法界の王家と言われ、事実“聖28一族筆頭”という地位にあったその家を、シリウスは非常に嫌い、家を捨てた

だが、何と言う皮肉だろうか。シリウスはブラック家に生まれたが為に、真のヨーロッパ魔法界の王『エル・ドラド家』に誰よりも詳しかった

と言うのもブラック家は王を名乗りながらも恐れていたのだ

 

いつか彼の王族が報復に来ないか、いつか我等は滅ぼされるのではと

ゆえにブラック家はエル・ドラド家のことを入念に調べ、そして戦慄した。それは幼少の頃、暇つぶしで書庫に入り、エル・ドラド家についてまとめた書物を読んだシリウスも同じだ

 

1500年以上栄え続けた王家。言葉にすればすごいとしか言いようがないが、1500年以上前と言えばもはや神代に等しい。更にその間一度の敗北も無く連戦連勝?何の冗談だと言いたかった

 

だからこそ、シリウスはウィラのいなかったハロウィンにしかホグワーツに侵入せず、これが好機とアズカバンで読んだ新聞に載っていた指の無い鼠、つまりピーター・ペテュグリューを衆目の場に晒そうとしたのに失敗した

 

ウィラが“偉大なる黄金”になったと犬の姿でホグズミートを歩き、そのまま遠目にホグワーツを見た時は毛が逆立った

犬の姿となり、その獣の勘が告げたのだ。「あそこはもはや魔境である」と

溢れる魔力でホグワーツは常に軋み、木々はまさに神代に戻ったかのように生命に溢れていた

 

これ以上先に入れば間違いなく補足されると感じたシリウスは、ただひたすらに潜伏した。あたかも頭上に迫る災害に、ただ身体を小さくさせるかのように

 

だがそれも少し前、つい数時間前までだ

ハリーの親であり、シリウスの最愛の友であるジェームズと同じようにハリーはクディッチの天才だったらしく、その噂を聞いて名付け親としてはどうしても見たくなったのだ

 

 

ゆえにこうして犬に化け、競技場まで足を運んだのだが

 

 

「ハッ、ハッ、ハッ!」

 

「初めましてでいいのかな?あぁ、怖がってくれるな」

 

 

とうとう彼女は・・・怪物はこうしてシリウスの眼前に迫った

直に会ったからこそ分かる。ただそこにいるだけで、ウィラという存在はシリウスを圧迫し、押しつぶさんとしていた

 

 

「分かっていると思うが、バレてるぞ?この瞳の前では“動物擬き”など意味をなさん」

 

 

早く人間に戻れと言われ、シリウスは悩む

確かに家にあった書物にも、「彼の王族にはどんな欺きも通用しない」とあったしそれは事実だろう。でなければこうして直接の対峙などあり得ない、ならばどうする?

 

このまま彼女が勘違いだったと思うまで化けている?

駄目だ。彼女の目は間違いなくこちらの全てを視空かしている

では彼女に襲い掛かる?

駄目だ、どう考えても次の瞬間、自分が死んでいるヴィジョンしか思い浮かばない

 

 

(ならば・・・!!)

 

 

しばし唸り声を上げ、ジリジリと後退し__そのまま背を向け疾走

 

 

「ふぅん・・・」

 

 

何か聴こえた気がするが、そんなことはどうでもいい、とにかく今は彼女から離れ、誰にも見つからない場所まで逃げることこそがシリウスの選択だった

博打に等しかったが、ウィラは追わず、その場で足を止めていた

思わず安堵し、速度を落としそうになったが流石はヴォルデモートの時代から戦士であったシリウス。気を引き締めなお先程以上の速さで森を駆ける

 

速く、何よりも速く。永劫の円環を疾走するよう__!!

 

 

だが・・・シリウスは知らない。ウィラが足を止めた2つの理由を

一つは吸魂鬼の際にかけた『黄金領域』__ホグワーツを覆う結界のその上、その範囲はシリウスですら感知できない、ホグワーツ城を中心に半径数十kmにわたり、中から出ることも外からの干渉すらも完全に隔離していた。そして2つ・・・

 

 

「・・・遅いぞ我が獣。狩りの時間だ、殺すなよ?」

 

「____御意」

 

 

 

 

「____ッギャ!?」

 

突如シリウスの首を掴み、近くの木々へと頸椎が折れんばかりの力で押しやるその男

 

 

「・・・犬が、飼い犬ならまだしも野良風情があの方をお待ちさせているなどと考えると殺したくなる」

 

 

黄金円卓第2席次__黄金の獣が正真正銘の化け物であることを

 

 

 

こうしてイギリス魔法界を恐怖に陥れた最悪の脱獄犯にして、無実の罪を着せられた男__シリウス・ブラックは捕まった

 

 

 

 

 

 

 

 

__夢だ、これは夢だと分かった

 

 

__ふぅん、君がブラックかい?

 

その名が嫌いだった。本当は怖くてしかたがないくせに、それでも地位に縋り付こうとする惨めな様が

 

__何だよ、そんな顔するな。これでも君のことを認めてるんだぜ?グリフィンドールにやってきた王族よ、僕が君の友になろう!

 

いけすかない奴だと思った、やけに態度はデカイし自信家。でも・・・不思議と嫌いになれず、いつしか心からの友として互いに認め合っていた

そして気付けばいつも私達は共にいて、その周りに更に友達が集まって来た

いつも馬鹿をやって、それでもアイツは学校の人気者だった。私にとってそれは誇りでもあった

 

夢が場面を飛びながら続く

 

 

__・・・んだよ、この僕が話しかけてるのに、なんで彼女はあんなワカメの傍にいるんだ?なぁパッドフッド、ちょっとあの鷲鼻をからかってやろうぜ

 

__聞いてくれシリウス!僕・・・リリーと付き合うことになったんだぜ!

 

__シリウス、我が心の友よ・・・子供ができたんだ。それで・・・その・・・君に名付け親になってほしいんだが、どうかな?

 

 

 

 

__逃げろ○○○!決してシリウスに見つかるな!!

 

 

それを最後にジェームズは・・・私の友は・・・ッ!!

 

 

 

「__・・・ジェームズ!!」

 

 

起き上がり、友の名を叫んだ私の前には__

 

 

「・・・えっと・・・僕、ハリーって名なんだけど・・・」

 

 

 

 

 

シリウスを捕まえ、戻った私を迎えたのは沈黙だった。誰も一言も喋らずただただ私を見ていたが、分かるぞ。あんなクソ共が雲霞(うんか)の如く沸いていたのだ、ぶっちゃけ気持ち悪いよね

 

そんな競技場では教師陣が降りており、意識を取り戻したらしいハリーとロン達。そしてダンブルドアやマクゴガナルが放心していた

 

 

「ホ、ホグワーツが・・・千年持ちこたえた結界が・・・」

 

 

(そういえば私が呪文を放った時に、何か悲鳴じみた音が聴こえた気がしたけどそれか!)

 

 

確かにそれなら放心するのも分かる。だが__

 

 

「安心してください、マクゴガナル先生。何の為に我が『黄金領域』を解除してないと思いで?」

 

 

私に気づいていなかったのか、ギョっとこちらを見て来る教師達に続けて言う

『黄金領域』の真価はその強固さだけではない。『マグル避け』だけでなく、衛星からその気になれば動物ですら今のホグワーツに気づく事は不可能だ

気を持ち直したのだろうか、ダンブルドアが息をついたと思ったら、顔を真っ赤にして

 

 

「ウィラ殿、何ということを・・・シリウス・ブラック!?」

 

 

その声に教師達は瞬時に杖を抜き、獣・・・正確には獣が担いでいるシリウス・ブラックに向ける

するとその中からリーマスが飛び出し、まるでシリウスを守ろうとするかのように手を広げる

 

 

「違う!聞いてくれ!彼は何もしていないっ!シリウス・ブラックは誰も殺しちゃいないんだ!!」

 

 

咄嗟のことに殆どの者が動きを止める中、セブルスだけは構わず杖を振りリーマスごとシリウスを撃ち抜こうとする

 

 

「ッ!止めろスネイプ!!彼は何も・・・!!」

 

「退けリーマス!!コイツさえいなければ彼女は・・・彼女はッ!!」

 

 

徐々にリーマスを押して行き、ついにセブルスが獣の眼前にたどり着く

 

 

「渡してもらおうか、その男だけは吾輩の手で八つ裂きにせねば気がすまん」

 

「はっ、ご冗談を。コレは黄金の君の戦利品・・・それに爪も持たぬ人間風情が八つ裂きだと?成程、これがイギリス流のブラックジョークですか。実に下らない」

 

 

苛立たし気な雰囲気も隠さずセブルスが杖を獣に向けようとするが

 

 

「ッ・・・!?」

 

 

喉元に切っ先が当たり、音もなく近づき刀を抜いたトグサは絶対零度の視線で射抜く

 

 

「手前・・・良い度胸じゃねぇか。分かってんのか?コレは陛下の獲物だ。陛下が捕まえた獲物なんだよ・・・手前、戦の作法も知らねぇのか?」

 

 

その眼は指先を動かしただけで、首を刎ねると言っていた

しかし、セブルスにとってもこの男を殺すことはもはや悲願と言っていい

 

 

「この男が・・・この男のせいで彼女(・・)はッ!!」

 

 

“彼女”__その言葉の意味を私はようやく理解し始め

 

 

急激に何かの熱が冷める感じがした

 

 

 

 

それを理解したのはこの大勢がいる中で3人だけだった

黄金の獣はこのお方のお気に入り(・・・・・)の玩具に何か不手際をしたかと戦慄し

渡草は刀を向けたゆえにと静かに笑い

アランは動かなかったことかと牙を剥かせ、闘気と歓喜を纏う

だがそのどれも違う、それがこの騎士達ですら理解できなかったのは、彼女自身がこの感情を表に出すことが初めてだからだろう

 

それは“悲しみ”

 

何故私を見てくれない?何故・・・

こんなにも私の心は貴方だけのものなのに、何故死者であり、違う男と結婚したリリー(ハリーの母親)なんぞだけを見る

 

端的に言えばウィラは嫉妬し不機嫌になったのだ

 

 

「・・・下らん。ダンブルドア、キサマは本物の愚か者だな」

 

「何じゃと・・・?」

 

「私は確かに言ったぞ。“卿の知る真実が全てではない”と・・・どいつもこいつも・・・魔法使いとは無能の集まりか?」

 

 

続けてウィラは言う___その目を酷く冷めたもの(・・・・・)にしながら

 

 

「シリウス・ブラック、彼は無実だ。誰も殺しておらんよ」

 

「馬鹿な!!じゃがコヤツは友を・・・ピーター・ペテュグリューを殺して・・・」

 

 

面倒だと言わんばかりにダンブルドアの言葉を遮るよう、ウィラは杖をホグワーツに向け

 

 

「『アクシオ(来い)』___ピーター・ペテュグリュー・・・スキャバーズ」

 

 

スキャバーズ?と聴こえたままに呟くロンの隣には、意識を取り戻したハリーと追いついたハーマイオニーがいた

どういうことかと聞こうと近づこうとするも、教師達が気絶して、ウィラが捕らえているとはいえシリウス・ブラックに近づかせるワケなどない。ダンブルドアが手で近づくなと遮ると、城の方から何か近づくものが見えてきた

 

 

「ッ!スキャバーズ!?」

 

 

今度こそロンは叫び、飛んできた鼠__スキャバーズをウィラの手前でアランが握りつぶすように掴む

ロンとハリーがアランに離すように懇願するが、彼の主であるウィラはその鼠を冷めた目で見つめ、その様子を見ていたダンブルドアやマクゴガナルなどの聡明な者はブワリと冷や汗が出るのを感じた

 

先程彼女は何と言った?スキャバーズ・・・いや、その前に言った“ピーター・ペテュグリュー”。呪文は先に言ったこの名に反応したのであれば・・・ッ!?

 

「ギュエッ」と悲鳴に似た声を上げ、アランの手の中でジタバタ暴れるスキャバーズを前にリーマスは説明を始める

 

まず彼等が学生の時に作った“忍びの地図”。ハリーが持っていたこれにピーターの名が乗ったこと。それには生きた者しか反応せず死人は乗らない、ゆえにリーマスは今まで裏切者だと思っていたシリウスこそが本当の被害者であり、ジェームズ達を裏切らず、今の今まで独り孤独に戦い続けていたことを

 

しかし誰もが半信半疑だった、だがそれもしょうがないだろう

何故なら今、彼等の目の前にいるのは“鼠”だ。だからこそ、ウィラはその双眸をアランの手元に向け

 

 

「三流芝居は見飽きた、選べよ。このまま鼠として握り潰されるか・・・人として死を迎えるか・・・選びたまえ」

 

 

その場の誰もが身を震わせる声色で、ウィラはプルプル震える憐れな鼠へ話しかけ・・・

 

 

「ッ!?ぁ・・・馬鹿・・・な」

 

 

皆が見る中、鼠はその身を人へと変え

 

 

「ピーター・・・ペテュグリュー・・・!?」

 

 

死人はこうして生者へと蘇った

あのダンブルドアでさえ口を押さえ、あり得ぬ光景に言葉を失い、その鼠であった男に注目する中、ウィラだけは興味も何もかも失せた目で__

 

 

「何故だ・・・___セブルス」

 

 

自分に背を向けるその男の姿に悲し気な瞳を向けるだけであった

 

 

 

 

 

ピーター・ペテュグリュー

彼は今未曾有の混乱に陥っていた

 

シリウス・ブラックの脱獄を聞いた彼は、すぐさまその行動が自分を殺す為だと理解した。もとより自分の危険に目聡く、動物に長年化けていたことでその第6感は凄まじいものとなっていた

だが彼の第6感の警鐘はシリウス・ブラック以上に、危険を告げる存在がいた

 

最古の王族にして、自らのご主人様ですら、その全盛期ですら手を出すことがなかった存在__エル・ドラド家。その中でも歴代最高と名高い才を有するホグワーツに学びに来ている今代の黄金

自然界においても弱者である鼠の勘はこう告げてくる

 

アレだけは駄目だ、近づくだけで押し潰される。何よりアレの傍に常にいる騎士は何だ?何故あれほどの化け物が人に付き従うのか?

それはご主人ですら不可能だと思う他ない状況。ゆえにピーターはその身をほぼウィラの目前に晒すことはなかった

その勘が今年は最大の警鐘を鳴らしたのだ。ゆえにピーターはホグワーツに着くやいなや、ロンの下から離れ、まさに鼠としてこの嵐を乗り切ろうとした(途中、猫が執拗に追いかけてきた時はもう駄目だとも思った)

 

そしてようやく安寧を享受できると思った矢先___彼はダンブルドア達衆目のもとに身を晒していた

 

どうすれば乗り切れる!?と考えていると、懐かしい顔が向こうから走って来た

 

 

「ピーター・・・!!」

 

 

古い友人__リーマス・ルーピンはその普段は温厚な顔に怒りのみを乗せた表情でピーターを睨んでいた

 

 

「ピーター・・・それじゃあ・・・儂等は今までなんという勘違いを!?」

 

 

そう呟くのは今世紀最大の魔法使いにして闇の帝王ですら、おいそれと手を出せなかったダンブルドア。この時点でピーター・ペテュグリューは逃げることは不可能だと感じた

だがその考えは徐々に変わる。かつての親友であるリーマスが彼に対し、罵詈雑言を飛ばす中、今だに周りの人間は半信半疑といった感じであったのだ。何よりこの場はホグワーツ、その気になれば人質には困らない(・・・・・・・・)

何より__

 

 

(な・・・何故・・・何故私は今責められているのだ!?)

 

 

そう、ピーターには理解できない(・・・・・・)

 

あの当時、あの方に逆らうことがどれほど恐ろしかったかこの場の者は知っているのに

自分は助かりたい一心だったし、それが当たり前だった。それに・・・

 

 

__逃げろピーター!決してシリウスに見つかるな!!__

 

 

裏切り売った自分をジェームズは許してくれた(・・・・・・)。どれだけ醜くとも生きることを・・・何を犠牲にしても生きることを友は肯定してくれた!

 

ゆえに彼は考える。必死に考える

どうすればこの場を切り抜けられる?

立ち向かう___馬鹿な、それは自殺と変わらない。この場には今世紀最大の魔法使いと化け物ですら頭を垂れる正真正銘の怪物がいるのだ。自分はまだ死ぬワケにいかない

再び鼠となって逃げる?__無理だ、この包囲網・・・しかもシリウスの“動物擬き”は“黒い犬”。その俊足を持ってしても今気絶していることからそれすら不可能__

 

その時ピーターに天啓が降りた

そうだ、自分は何をしても生きて良いと死んだ友から許された(・・・・・・・・・・)のだ。つまり・・・

 

 

「ち、違う!私じゃない!今そこで気絶しているシリウスに手伝わされて・・・ッ!!」

 

 

なるべく惨めに、憐憫の目で見てもらえるよう怖がり震えながらシリウスを指さす

だが・・・彼は知らないのだろうか?

“その眼は全てを見通す”__どんな虚偽も彼女の前には通じない。そして___

 

 

「キサマァ・・・ッ!!どこまで堕ちるつもりだピーター!!」

 

 

シリウス・ブラックはついに目を覚ました

 

 

 

 

下らない三文芝居が繰り広げられている

鼠は生贄を求め失敗し、次の策を講じようとする・・・ハッ、これはこれで珍獣だ。ここまで意地汚い人間はさしもの私も見たことがなかった

 

これはこれで愛でようがある。安心しろペテグリュー。どれだけ堕ちようと・・・あぁ、私は卿を()そう___

 

 

 

 

 

__と思ったが、それは次のこのクソの行動で考えが180度変わる

 

 

酷く醜い渇望を抱えた声が、私を現実へと引き戻したのだ

 

どうやらシリウスとピーターは彼等が知りうる真実を全てこの場でぶちまけたらしい

ダンブルドアはウンウン唸り、教師達もまた告げられた真実が本当にそうであるか悩んでいるが、どうやら信じる方向になったらしい。まぁそれもそうだろう

 

 

「違う!信じてくれぇ!!ただ私は恐ろしかっただけで・・・ッ!!」

 

 

証拠がこうして喚いているのだから

初めは縋るような目をロンに向け、「可愛いペットを助けてくれ」と、とても尊厳を持つ生き物たる人間の言葉とは思えぬ言葉を吐き、教師達がロンを守るように杖を構える

次にハー子の下へ・・・あ、呪文で弾いた。まぁアレは女子としては無理だわ(うん)

そして最後に・・・

 

 

「あぁ!ハリー!ハリー・ポッター!!君なら信じてくれるだろう!?私は何も悪くない!!」

 

 

何を信じ、何が悪くないのかすら、今のアレには理解できないのだろう。そしてそれが自らの首を絞めていることにさえ

 

 

「ヒィ!?たっ、助けて!!助けてくれハリー!!き、君の両親は私を助けてくれた!なら君もまた・・・ッ!!君のお父さんは勇敢だった!君はジェームズに似て優しい子だろうハリー!?」

 

「ッ!!キサマがジェームズを語るな!!」

 

 

ピーターの身をシリウスとリーマスの二人が拘束し、ハリーから離す

 

 

「~~~ッ!!生きていいと言ってくれた!!ジェームズは確かに言ったんだ!!“逃げろピーター!決してシリウスに見つかるな”と!!あれはきっと遺言に違いない!私は・・・ジェームズの為にも生きなければ!!」

 

 

聞くに堪えないと思っていると、そっと汚物から私を隠すように獣が前に出てくれた

 

 

「・・・私は・・・人とはもっと高潔な生き物であると・・・神々に変わり、この世を統治するに相応しいと・・・そう、信じておりました」

 

「綺麗なだけのものなど存在せんよ。それは卿が慕うこの私とて変わらん。・・・女とは恐ろしいぞ?何せ死者にすら嫉妬するからな」

 

 

自覚し、「くはは」と力無く笑う私を前に、獣はその拳を握るだけだ。彼が何を感じ、何を思うのかは聞かないでおこう

 

(それに)

「そら、あれを見ろ」

 

 

そう言ってハリーへ視線を向ける

 

 

「あれもまた、様々な思いを抱え、それでもなお前へ進もうとする人の輝きの一つ・・・卿に見せたかったものの一つだ」

 

 

 

ピーターの言葉は聞くに堪えなかった。そこにあるのはただ自分が生きたいというとても身勝手な渇望だけ

 

ゆえにハリーは可哀想だと思った。目の前の男は虚構に縋るしか、もはや自己を形成できぬ存在だと・・・彼はただ夢の中でしか生きていないのだ

 

だから・・・その夢を覚まそう。無論ハリーにそのような考えなどない。ただ思ったことを口にしただけ

 

 

「違う・・・ピーター・ペテグリュー。父さんは別に貴方に為に生きろと言ったワケじゃない」

 

「へ・・・?」

 

「そこにいる彼を・・・シリウスを犯罪者にしたくなかったから・・・ッ!だから言ったんだ!!“逃げろピーター!決してシリウスに見つかるな!!”」

 

「___ぁ」

 

「貴方は父に愛されてなどいなかった!!裏切者には怯える生活が相応しいと、父は貴方にそう告げたんだ!!」

 

 

ピーター・ペテュグリューの夢が覚めていく。自らが望み、編んだ万仙の陣は夢の中核を担った友の息子の声、それが真実であると音を立てて崩れようとした___が

 

 

(~~まだだ!!違う違う違う違う違うチガウチガウチガウチガウ!!生きてほしいと望まれた!!だって!!そうじゃなかったら私は・・・私のしてきたことは!?)

 

 

十数年、夢を見続けた彼の前に、英雄の声は僅かに届かなかった

駄目だ、コレは私を救わない__そう断じたピーターは・・・

 

 

「陛下ァ!!」

 

絶体にやってはならない・・・そして言ってはいけない言葉を、その身と共に、絶対的な暴君へと吐き掛ける(・・・・・)

 

 

「お、お慕いしております!何と美しい!!この世の全ては御身の物!すべからく、地上に生きる者全てが御身の臣下でありましょう!!」

 

「・・・」

 

「お、お願いです!!私は何も悪くありません!!全てを見通す目を持たれた貴女様なら、我が身が清廉潔白であると証明できましょう!?」

 

「」

 

「今日よりこの身はエル・ドラド家に忠誠を誓います(・・・・・・・)!!な、何だったら足でも何でも舐めて・・・」

 

 

そこまでが彼女の限界だった

当たり前のことを、さも素晴らしいことのように・・・美しい?当然、この身は生まれた時より諸人の象徴である

全てが私のもの?当然だ、私は全てを愛しているのだから

エル・ドラド家に忠誠?・・・・・・ふざけるな(・・・・・)

 

ピシリ__と空間そのものが罅割れる音がした、だがピーターは気づかず不快な不協和音をその口から奏でるだけ

 

ウィラはとある従者を思い浮かべ、瞳の色を怒りと共に黄昏へと変えていく

 

 

1500年__その身は永遠の栄光を約束された王家の血を受け継ぐ揺り籠

だからこそ、その薄っぺらい忠義を何より許す気はなかった

 

かつてとある青年と共に野山を駆け、彼を王へと召し上げた始まりの騎士達

1500年の栄華を支え、たった一人残された真の忠臣__シャドウの忠義を思い出せば不愉快極まりなかった

まだ10にも満たぬ歳であった自分を信じ、皆ついて来てくれた。誰もが剣を盾を__その命を本気で自分に捧げてくれている。それだけではない

歴史に名も乗らぬ者がいた、だが彼等一人一人を今もなお・・・死して魂だけとなった今でも、ウィラの中に流れる血潮が彼等の忠を忘れることはない

だからこそ__

 

 

「へ、陛下!?な、何か言って「黙れよ(シレンシオ)」~~~~~ッ!?」

 

 

興味が失せた(・・・・・・)

全てを愛するウィラ。『愛情の反対は無関心』__マザー・テレサの言う通り、ウィラは視界からピーターを存在しないものとして扱った

そのままダンブルドアへ冷めた双眸を向け

 

 

「これは卿等イギリスの問題であろう?我等エルドラド王国は此度の件、一切の干渉はせん。獣、トグサ、アラン。ソレに触れるな、我が爪牙が穢れる」

 

「「「御意」」」

 

 

そのままピーターを放置するように、その場から離れるウィラを見て、急いで教師達はピーターを束縛する。先程まで殺気だっていたスネイプやリーマス、そしてシリウスでさえも、今となっては先程一瞬漏れ出したウィラの怒りを前にしてピーターに対する思いは霧散していた

 

 

 

 

その様子を今まで見ていることしか出来なかった競技場の応援席に座る生徒達、彼等はただひたすら先程までの状況の整理に追われていた

雨雲を吹き飛ばし、その身一つで宙に浮かび吸魂鬼を滅ぼしたウィラ。その際彼女が放った『混沌より溢れよ(Du__sollst)__怒りの日(Dies__irae)

相反するウィラの渇望、“壊すから壊れてくれるな”。まさしく災害に等しい魔法に恐怖もした__が

 

誰かが言い出した

「もしや彼女は吸魂鬼から自分達を守る為にあの呪文を放ったのでは?」 「箒も無しに宙を?だからどうした(・・・・・・・)、彼女が特別なのは当たり前のことではないか」 

 

それだけではない、彼女は無実の者を救い、こうして真の罪人たるピーター・ペテュグリューを衆目の前に晒したではないか__と

 

実際、彼等・・・去年バジリスクを殺した所を見た2年生以上の者はそこまでウィラを恐れることはなかった。むしろ彼女の周りであり得ぬことなどもはや存在せぬと

 

 

「ウィラ・・・」ボソ

 

 

誰かが呟き、それは徐々に伝染し__

 

 

『ウィラ!ウィラ!!ウィラ!!ウィラ!!ウィラ!!ウィラ!!』

 

 

その様はあたかも“本来感じた原初を超える恐怖を忘れようとする”かの如く・・・彼等は絶対の王の名を叫び讃えた

 

 

 

 

「・・・すごいな、これが貴女のカリスマかな?」

 

 

糞以下のドブ鼠が逃げられぬと分かり、シリウス・ブラックは一目散にハリーの下へ行っていた。その際、リーマスがやれやれと呆れたような、嬉しそうな顔をし、セブルスは兎に角気に食わないといった顔をしたが、流石に無粋と感じたのだろう、ロンとハー子もまた彼等を二人にして、話をさせていた

それがようやく終わったのか、ハリーもシリウスも互いに嬉しそうな顔をし、シリウスが私の下へと来た

 

 

「おう、敬語使えや手前。この方が誰か分かって使わねぇのか?」

 

 

いやお前(トグサ)だけには言われたくない。まぁ普段は別に良いと許しているのは私だが・・・

するとトグサがかなりアブナイ人種(まぁ千年近く同じ人種同士で殺し合いしてたからね、仕方ない)と分かったのか、私の前に雨で濡れた芝生も気にせず跪き

 

 

「・・・御身はおそらくご存じでしょうが・・・」

 

「知らん、名乗れ。家名も含めて・・・な?」

 

 

心底嫌そうな顔をするが知らんよ。生まれた家の業を背負うのも当主の務めであるぞと目で伝える

 

 

「・・・ブラック家。最悪なことにその当主をやっております。シリウス・ブラック御身の前に」

 

 

腐っても貴族といったところか、ボロを纏っていてもその所作は貴賓に溢れていた

 

 

「うむ、此度は大変であったな」

 

「いえ、陛下にこうして拝謁の栄感謝いたします。それと吸魂鬼、更には我が冤罪を晴らしてもらった御恩、どう返せばいいのやら・・・」

 

 

どう返せばと言われても困る。実際彼等ブラック家にはすごいお宝がわんさか眠っているのだろう

だが所詮は貴族。何より我がエル・ドラド家の宝物庫には無いものなど無いに等しい(実際本物の“不死鳥の涙”も腐るほどあるし)

それはシリウスも分かっていたのだろう、いらんと言うと明らかにホっとした表情をした

 

 

「正直御身に何か言われても・・・できる自信など無かったので」

 

「できぬことを卿は私にさせろと言ったのか?面白いな」

 

「ッ!いえ、その・・・」

 

「くはは!冗談だ、特と許せ」

 

(だがこのままというのも彼にとってはバツが悪いか・・・そうだ!)ピコーン!

 

「ではシリウス・ブラック、此度の件、卿にとっては辛酸極まる日々であってであろう。私としても思うところはある。よって褒美を与えよう!」

 

 

突然のことにシリウスは目を白黒させるが、私は構わず靴を脱ぐ(・・・・)。途中獣達やシリウスから「陛下!?」と声が上がるが、そのまま足を跪く彼の鼻先へやり

 

 

「舐めろ」

 

「・・・すまないが、もう一度」

 

 

思わずといった感じで下げていた頭を上げ、私へ一直線に視線を向けてくる

何故か私が靴を脱いだ辺りから、ピタリと生徒達の声が止まったのでよく聴こえたと思うのだが・・・しょうがないな

 

 

「王の言葉が聴こえんのか?やれやれ、聴く姿勢ができていないようだ___グラヴィタス(跪け)

 

ヒュっと杖を下に向け、ドシャ!っとシリウスが頭から芝生に突っ込む

その間に私はグリグリと濡れた地面に靴下を染み込ませていると、彼は必死に抵抗し

 

 

「な・・・ッ、何を!?」

 

「ん?何って・・・私の足を舐めるのだぞ?これ以上の褒美など無いではないか」

 

 

充分に泥が着いたのを確認し、もう一度ズイっと鼻先に足を当て

 

 

「二度は言わん。聞こえなかったのか?

 

 

 

 

私の足を舐めろ」

 




こんな感じで今回は終了です
実際ピーターってどんな気持ちだったんですかね?
今作では自分は救われているという夢に溺れた狂人として描かせていただきました

エル・ドラド家側からしたら「何かうっとおしいけど、いつでも滅ぼせるしまぁいいか」となぁなぁで見過ごされてました(実際やろうとしたらマジ簡単にブラック家はイギリスから消えてました)

そしてウィラ様、生まれて初めての嫉妬を覚える(ただし相手は人妻+故人+友達のママン)

ちょっと無理がありますが、こうでもしないとこれからウィラが学校でボッチめいたことになるので生徒達の反応はあぁしました
違和感あったらごめんなさい(汗)


ウィラ的には余りある褒美です

「臣でもないし民でもない、でも爪先とはいえ私にキスできる・・・うん、これ以上ない褒美じゃん!!」←ただし忠誠を誓うとか言った瞬間蹴り上げる模様


分かっているとは思いますが、ピーターには逃げてもらいます。でないとお辞儀さん復活ッ!!お辞儀さん復活ゥッ!!の儀式ができないので
そしてイギリス魔法省には更に胃を痛めてもらいます


次回予告


「私、ブラック家当主、シリウス・ブラックは御身の名において、永遠に王号を名乗らぬことを誓います」

内心早くハリーと暮らしたくてたまらないが、叶わぬ模様___シリウス・ブラック


「し、知らない!私のせいではありません陛下!!その証拠にピーターを運んでいた者は全て打ち首にッ!!」

吸魂鬼について色々言いたいけどそれ以上にこちらが冤罪という無様を晒したので何も言えないThe・無能__イギリス魔法省の汚点ファッジ


「貴女アレどういうこと!?女の子が簡単に肌を晒すんじゃありません!!」

作者はパブみを感じます、えぇ感じますとも__ハーマイオニー・グレンジャー


「いや・・・だってあれってこの業界ではご褒美じゃないの?」

ご褒美です__ウィラトリア







「___エヘン!エヘン!」

待たせたな!___カエル


「やれやれ、相も変わらずおてんばなお方だ。陛下の命とあらば向かう他ない・・・か」

エルドラド王国大統領__???
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