ハリー・ポッターと黄金の君   作:◯のような赤子

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何か感無量です
思い付きで書いた作品がまさかここまで評価してもらえるとは・・・
いつかそうなればいいなと思っていたのですごくうれしいです
ありがとうございます!


サブタイは色々な意味でこれにしました
あと自分が書く魔法省って何でこんなに酷いんでしょう?(汗





黄金と衰退の影

カリカリとペンを走らせる音が部屋に響く

そこはエルドラド王国の中枢、大統領執務室

 

 

「__ふぅ」ギシっ

 

 

溜息をつき、一息入れるこの男こそ5期に渡り国を支え、ウィラが生まれる前からこの席に座る大統領その人である

歳をとったその身体はでっぷりと太り、パツンパツンになったカッターシャツ。エアコンを付けているというのにその額には汗がにじみ、二重顎へと滴り落ちていく。その様子はまるで陸に打ち上げられたセイウチを彷彿とさせていた

 

 

「よし」

 

 

しかしこの国で彼を侮る者はいない。現にウィラが臣と呼ぶ者達の中でも彼はそのひたむきな姿勢で彼女に変わり、国の方針を決めるという大役を担っているのだ

 

 

コンコンコン__「大統領、少し休憩なされよ」カチャ

 

「これはこれはシャドウ卿」

 

 

朗らかに目を細めながら、立ち上がろうとする彼をシャドウは手で座っていてほしいと伝え、コポコポと小気味良い音と共に芳醇な香りが執務室に響き渡る

 

本来シャドウはこのような場所に居て良い存在ではない。彼は政事(まつりごと)が行われる遥か上(・・・)に位置するクレーリア城。この国本来の主の騎士だ

だがシャドウは常にこう言う、己は動かねば死ぬ老害にして、マグロやサメと同じだと

 

屋敷僕の地位は本来かなり低い。それはイギリスの様子を見てもらえれば分かるだろう。だがこのエルドラド王国では違う

神代の時代からこの国の柱として在ったシャドウに敬語を使わぬ者など王族以外に無く、それは歴代大統領とて同じだ

 

 

「恐れ入ります」

 

「なんの、我等の仲ではありませぬか」

 

 

そう言って皺くちゃな顔に軽く笑みを讃え、それに釣られて大統領も口元に紅茶を運びながら笑ってしまう

この方はいつもそうだ。同じ主君を持つ身、ならば我等に身分などなく、ただ黄金たるお方を支えるのみと言っては気にするなとこちらを心配してくださる

 

 

「で、そろそろ行かれるのですかな?」

 

 

その為に今の今まで書類を片付けていたのでしょう?と聞かれ、今度は苦笑いが出てしまう

彼はここ最近、この部屋に缶詰となっていた。20年に渡り大統領を勤め上げている彼が仕事を急いで終わらせる理由などただ一つ

 

 

「私が運びましょうか?」

 

「いえ、貴方を動かしたとなれば私が彼女から・・・陛下からどやされます」

 

 

ウィラがすぐに来いと無茶ぶりをしてきたのだ

シャドウは軽く溜息をつき

 

 

「全く・・・もうすぐウィラトリア様も15歳、そろそろ夫を見つけ、お世継ぎを授かってもらわねばと言うのに・・・」

 

「ハハハ!まったくですなぁ。つい最近まで姫であらせられたというのに、いやはや、歳をとると月日の流れも速くて困りますわい」

 

「そういう言葉はせめて100年生きて言ってほしいものですな。ならば私や我が友、獣殿はどうなさいます?」

 

 

その言葉に再び笑いながら、大統領はジャケットに手を通す

 

 

「やれやれ、相も変わらずおてんばなお方だ。陛下の命とあらば向かう他ない・・・か。シャドウ卿、何か伝えることは?」

 

「早く爺やに子を抱かせてくだされと」

 

 

それは流石に勘弁してくれと手を振りハットを被る

行先はイギリス、ホグワーツ魔法学校である

 

 

 

 

その頃イギリス魔法省はまさに蟻の巣をひっくり返したような様となっていた

アズカバンの看守“吸魂鬼(ディメンター)”、イギリスに住む全てが何故か突如ホグワーツへ向かい、そこで絶滅

殺せぬと言われた彼等が死に絶え、そしてこちらの手綱から放れ好き勝手に動いたことは魔法省を焦らせた

しかしもっとも驚いたのは“死んだこと”だ。吸魂鬼を殺す術など無く、超高等呪文である“守護霊呪文”で追い返すしかないというのが常識だったからだ

だがそれを彼女はいとも簡単にしてしまった

 

 

「今すぐエルドラド側に謝罪を要求しろ!!」 「しかし以前から彼の国は言っていたではないか!今すぐ陛下の通うホグワーツから吸魂鬼を離せと!!」 「だがそれは脱獄犯シリウス・ブラックから守るためだとあれほど!!」 「なにが脱獄犯か!!結局それもまた、我々の勘違いだったではないか!!」 「それに彼の鬼人の王や極東のマグルが殺したとの報告もあったぞ!?」 「キサマは何を言っている!亜人や劣等(マグル)風情が魔法使いにできぬことができるか!!」

 

 

もし、吸魂鬼を殺されただけなら、ここまで議会は紛糾しなかっただろう。だが彼等はまたもや自らの驕りにその身を削られていた

 

十数年、アズカバンという最悪の監獄に無実であったシリウス・ブラックを投獄。更には最悪の時代、被害者の代表としてまつりあげたピーター・ペテュグリューこそがポッター家の悲劇の生みの親だったのだ。なんということだろうか、自分達はそれを彼女から言われていたにも関わらず、調べもしなかった

次第に紛糾の声は小さくなり、徐々に一段高い場所に座るこの魔法省のトップ__コーネリウス・ファッジへと視線が集まる

 

 

「っな、なんだお前達その眼は!?まさかこの私が悪いとでも!?えぇ!?」

 

 

机を思い切り叩き上げ、無能は自らの責任を棚上げしようとする

そんな彼を、まともな思考(・・・・・・)ができる者が問い詰める

 

 

「それでどうするので?吸魂鬼の件を問い詰めますか?それともお礼を?今回もまた、我がイギリスの恥辱を払って下さったのは陛下でありますよ?」

 

 

そんな中、スっと手を上げるのは闇払い局局長__ルーファス・スクリムジョール

 

 

「幸いにも吸魂鬼は再びアズカバンに集いつつあります。まぁ空き巣ができたので他の国から海を越えてやってきているのですが・・・どうでしょうか?この際、イギリスからヤツ等を根絶するのは」

 

 

なっ!?と驚愕の声が上がるが、スクリムジョールは涼しい顔だ。むしろ本気であのような悍ましい生物を看守という責任ある立場に置くのかが彼には以前から理解しかねた

しかしアレもまた、イギリスを強国たらしめる戦力の一角だ。何よりそれではアズカバンの守りはどうするのかと聞かれ、スクリムジョールはまたもとんでもない事を言い出した

 

 

借りればいい(・・・・・)___エルドラド王国から」

 

 

続けて彼は言う。国家には“レンドリース”というものがあり、国家同士で物を貸す制度だと

 

「彼の国ははっきり言って戦力過多も甚だしい、正直彼等の力を借りれるならば借りるべきだ」

 

 

何より同じ人間同士、考えから全て分からぬ吸魂鬼よりも遥かに信頼できるとスクリムジョールは言うが

 

 

「何を言うか!」 「そうだ!!それでは国家としての威信がッ!!」

 

 

このような声が上がることは想定済みだ、ゆえに

 

 

「でも、もし借りることが出来れば十数年前、闇の帝王はあそこまで力を持つことはまずなかった」

 

 

その言葉を聞いてシン__と静寂が広がる

全盛期ですら闇の帝王がエルドラドを攻めなかったのはあまりにも有名な話だ、更に今議題に上がるウィラ、今代の“黄金”、“偉大なる黄金”に傍着く騎士達は分かっている戦力の極一部だけでも“ブリテンの白き龍”に“山河を砕く鬼人の王”と、個で国とやり合えるメンツばかりだ。そして情報では円卓最強のみが名乗れる“黄金の獣”、彼もまた神獣であるということが分かっている

 

 

チャンス(・・・・)だとスクリムジョールは祖国の為、家族が住むこの国の未来の為にも、もっとエルドラド側と親密になるべきだと畳みかけるが

 

 

「__エヘン、エヘン!」

 

 

鈴を転がしたような甘ったるい、可愛らしい子供のような声が会議場に響く

 

 

「ミスター・スクリムジョール、貴方は一体何を考えているのかしら?エルドラドと協力?吸魂鬼を根絶?馬鹿言わないでちょうだい」

 

 

そこにはピンクに彩られた蛙がいた(・・・・)。いや、正確には蛙のような人間だろうか

ギョロリと目を見開き、ドローレス・アンブリッジがその大口から唾を吐き出しスクリムジョールを糾弾する

 

 

「そもそもこれは我がイギリスに対し、エルドラド側が不当な方法で内政干渉しようとしているに等しいのですよ?我々がせっかく贔屓にしてやっているというのに、厚顔無恥とはまさにこのこと。ファッジ大臣、いかがでしょうか?もうあんな国との貿易をお止めになっては?」

 

 

そうすれば自分の立場というものが分かるでしょう?というアンブリッジにたまらず貿易を担う部署の長が反論する。彼はその危うさをキチンと理解していた

というのも今現在、イギリスは表も魔法界も含めそのほとんどを輸入にて賄っているのだ。そしてイギリスに来る物資をいったん預けておく場所__これがエルドラド王国となっていた

 

 

「何を言っておられるのですかアンブリッジ上級次官!!彼の国を通さず物資を通せば莫大な税がかけられるのですぞ!?」

 

 

エルドラド王国はその頂点に座す“黄金”の家系、その恩恵によりかなり裕福な国だ。その為関税も他の国と比べかなり安く、遠く離れた国ですらエルドラド王国を通して輸入するほどだ

それを訴えかけるが両生類擬きにはそもそも言葉すら通じないらしく

 

 

「何故我がグレート・ブリテンが他国の要求に従わなければいけないのです?そもそもそんなの他国がおかしいわ。優れた魔法使い(上位種)たる私達に税をかけようなんて・・・なんてふざけた連中かしら」

 

 

絶句だった。特にとある国(・・・・)から今のままではイギリス魔法界がどれだけこのヨーロッパにおいて危うい立場か教えられたスクリムジョールは、改めてその認識を上方修正した

 

 

「とにかくだ、急いでホグワーツからピーター・ペテュグリューの身柄を引き取らねば。恥の上塗りなど辛抱堪らん!あぁ、そこの君達、急いで行ってきてくれるか?」

 

 

突然ファッジがそう指名したのは、まだ魔法省に入って数年の新人達だ。まさか勉強の為にこの場で話を聞いていた自分達にこのような大役が来るとは思わず・・・更に何を勘違いしたか、これで自分達はエリートだ!と意気揚々と特に準備もしないまま飛び出していった

 

 

「ファッジ大臣、確か今度シリウス・ブラックについてあの小娘から呼び出されていたのでしょう?なら、私も行きましょう♪いい加減身の程を小娘に教えてやりますわ♪」

 

「・・・そうだな。ではアンブリッジ上級次官、よろしく頼む。では私は先に失礼させてもらうよ。“国際魔法法務局”は向こうとの交渉に入ってくれ、いいか?くれぐれもこちらが不利益にならぬよう、弱気な所を見せるな!」

 

 

サァっとその場のごく一部を除き、皆が顔を青ざめるが、ファッジは気づきもせず、そそくさとその場を後にする

 

こうして役者は1つの場所に集結する

全ては彼女が思うままに__

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間を戻そう

“ホグワーツ大広間”__何かあれば寮関係無くドンチャン騒ぎが始まり、その時ばかりは教師達も眺め楽しむ・・・のだが

 

 

「・・・おいムーニー、君は教師だろう?止めなくていいのか?」

 

「・・・無茶言うなパッドフット、彼女は君に足を舐めろと命令したんだ。けっこう気に入られてるんじゃないか?」

 

 

捕らえられたピーターを今度こそ逃がさぬよう、今やダンブルドアでさえ舌を巻くレベルにまでなったスネイプが作った“生ける屍薬”で眠らせ拘束。最後までシリウスとセブルスは八つ裂きにと迫ったが、シリウスはハリーに、スネイプはウィラにそれぞれ説得されしかるべき場所で裁くこととなった

 

昔のように互いの友情を確かめ合った彼等に、十数年という壁など無いに等しい。その証拠に今は大広間の隅っこで、昔話に花開かせながら、目の前の光景に頭を抱えていた

 

 

「おい!学年なんか関係ない!!とにかく人間を集めろ!!」 「上級生は前へ出ろ!!」 「今こそ俺達の雄姿を陛下に刻み付ける時だ!!」

 

 

普段ならば小言を言い、軽い呪いを放ちあう4寮。彼等はたった二人(・・)を相手に杖を一斉に振るう

 

 

「__ング、ング・・・ぷはぁ!ヒャハハハ!!!いいねぇ!たまには魔法の撫で斬りも楽しいもんだ!!」

 

「がははぁ!!おうおうおう!!トグサではないがもっと本気を見せよ!!エルドラドの益荒男達との昂ぶりを思い出すわい!!」

 

 

互いに酒ビン片手に渡草は拾ったフォークで片っ端から斬り、アランは上半身裸で剛腕を振るい魔法や呪いを粉砕する

 

 

「嘘だろ!?」 「アレ人間じゃねぇ!!」 「ねぇロン!見てよあの筋肉!」 「ヒュー!まるで鋼みてぇだ!!」

 

 

多くの声が笑っていた

初めは生徒達だけで楽しんでいたのだが、どこからか持ってきた酒ビン片手に「俺達も混ぜろ」と乱入。その様子はまるで“砂場で遊ぶ園児達とそこに来たチンピラ”といった風貌だった

品もクソも関係無ぇと言わんばかりにそのままラッパ飲みを初め、何をやらかすか分からないマグルと鬼人を彼等は怖がっていたが、酒を片手に酔っぱらってゲラゲラ笑う二人を見て、彼等も馬鹿馬鹿しくなったのだ

 

ハリーやロン、更には優等生で知られるセドリック__つまり男連中が馬鹿丸出しで酒飲みに挑んでいく中

 

 

「貴女アレどういうこと!?女の子が簡単に肌を晒すんじゃありません!!」

 

 

飲み物が入ったゴブレットをガツンと机に叩き付け、ハーマイオニーがウィラに説教をしていた

結局シリウスは彼女の足を舐めなかった。義息子とも言えるハリーの前でそんなことをしたくなかったし、何より流石にこれ以上、人としての尊厳を失いたくなかったのだ。しかしウィラは勘違いしたらしく、「生足のほうがいいのか?贅沢な奴め」とその場でニーハイソックスまで脱ぎ始めた。その時競技場に響いた男連中(ダンブルドアも含む)の“ゴクリ”と喉を鳴らす音に辟易したのは何もハーマイオニーだけではない

 

 

「ハーマイオニーの言う通りよお姉様!良い!?男は狼なの!お姉様に汚らわしい視線が行くなんて私が耐えられないわ!!」

 

 

「狼なら普段から傍にいるんだけど・・・」という声は彼女達には聴こえない

 

 

「いや・・・だってあれってこの業界ではご褒美じゃないの?」

 

「・・・確かに」

 

「確かにじゃなぁい!!ジニー!しっかりして!!この世間知らずな王様に常識を教え込むのよ!!それとウィラ!貴女魔法界をどういう風に見てるの!?」

 

「むっ、失礼な。それに私は常識知らずではない、常識が私に合せるのだ!」

 

 

これはどうすればいいのと頭を抱えるハーマイオニーと流石お姉様!と目を輝かせるジニー、そして何が?と疑問符を浮かべコテンと首を傾げるウィラ

 

そんな彼女達を横目についには渡草まで上着を脱ぎ、何故かその相手をドラコがする相撲大会が始まっていた

 

一応「ウィラに感謝を伝える」という項目で始まったこの混沌極まる状況は、もうしばし続いた

 

 

 

 

 

 

「__ふぅ、さて・・・」

 

 

あのドンチャン騒ぎから数日、あの時は何だか色々とエライことになっていた(ドラコがトグサに投げ飛ばされて、大広間の天井スレスレまでネビルがアランに投げられて・・・最後はセブルスとシリウスによる殴り合いだっけ?リーマスが腹抱えて笑ってたのが印象的だった)

 

しかし今日はあの時と違い、ホグワーツは厳粛な雰囲気に包まれていた。まぁ当然だろうな、なにせ偽物とはいえ、彼等は今から王族を失うのだ(・・・・・・・)。そして__

 

 

「・・・無能とは、本当に何をやらせても出来んのだな」

 

 

ピーター・ペテュグリューが脱走した

騒ぎの翌日、自らの汚名をこれ以上、子供達に晒せるかと魔法省はアレの身柄を引き取りに来たのだ。その際ダンブルドア達がピーターが“動物擬き”であり、もう一度逃げ出せばもはや捕まえることなどどうやっても不可能で、この私のおかげ・・・つまり逃げたらどうなるかをあれほど一生懸命伝えたのに・・・聞くところによると身柄を引き取った職員は新人、ファッジ自ら指名したとか聞いたが・・・

 

 

(どうせ、焦って周りが見えず適当な職員に言ったと見るべきか)

 

 

「陛下、お召し物を獣殿が用意できたと」

 

 

トグサに呼ばれた為、いったん思考の海から帰ってくる。所詮もはや終わったこと、そしてアレが逃げようがヴォルデモートが復活しようが我が王国には何の支障も無い。何かあれば助けを求めてくればいい

友を助けるのに理由などないし、何より私は全てを愛しているのだから

 

 

(おっと、また考えてたな。いかんな、集中しないと)

 

 

これから行われるのは学校の行事ではなく、第79代エルドラド王国国王としての公務だ。ゆえにいつもなら飄々としている態度を潜め、トグサも臣としての態度で接して来る

 

 

「むぅ、偽とはいえ王家の退廃・・・か」

 

 

顎の手を添え何か考えるような仕草をするアラン

彼もまた、私がその王号を奪ったに等しい相手だ。何か思うところでもあるのだろうと聞くが

 

 

「いや、どうせなら余が滅ぼしたいと思ってな?己が強者であると勘違いしておる相手の阿鼻叫喚とする様は何度見ても痛快堪らん!」

 

 

・・・どこまで行ってもバトルジャンキーは中毒者(ジャンキー)だった

 

着替えをする部屋まで行き、取りあえず彼等を外で待たせ獣に儀礼用の召し物を着せてもらう

 

 

「あいつは、来たのか?」

 

「・・・そうですね、もうじき到着時刻となります。イギリス魔法省側も同じですね。御身の用意が終わり次第、迎えに行きますのでしばし部屋でお待ちを」

 

 

 

 

懐中時計に目をやり、再び髪を梳かし始める

それが終わり、軽い化粧を済ませた後、待つ間、私の為にと紅茶を用意し終え獣は彼を迎えに行った

 

 

「・・・全く、卿等は私を侮っておるのか?」

 

 

私はもう、“覚醒した黄金の瞳”を使うつもりもない。それでも推理する時間はたっぷりあるのだ。ならば極僅かな手がかりで、我が臣達の動きなど手に取るように分かる

 

 

「“確かな指導者足りえ、責任をしかと取ろうと覚悟が決まっている者”・・・まぁいい、今回でまた、イギリス魔法界が我が国に対しどのような行動を見せるか・・・卿等が用意した演目。あぁ、とくと楽しませてもらうよ」

 

 

 

 

 

 

“ホグワーツ魔法学校”、普段ならば広大な敷地を守る為、結界が張られているが今は影も形も無い。その代わり__

 

 

「相も変わらず・・・何と美しい」ボソ

 

 

黄金に輝く薄いヴェール。魔法使いの家に生まれ、しかし魔力を持たない“スクイブ”である彼は知っている

この薄く輝く幕が絶対とも言える防御力を持ち、普通のお魔法使いが展開しようものなら数百人が命を賭してようやく発動できる大魔法であることを・・・そしてこの大魔法をいとも簡単に発動している彼女の偉大さを

 

 

「ふぅ、ふぅ・・・!何だこれは!?聞いてないぞ!!何故ホグワーツの結界が再生もせずに壊れ果てているのだ!?」

 

 

密かに大統領は聴こえてきた無粋極まる声に、舌打ちをする。この美しさ、そしてあのお方の素晴らしさが理解できない無能など死ねばいいと

 

 

「久しいですな、ファッジ大臣。お元気そうでなにより」

 

「っ!これは、レゴラス大統領!そちらもお変わりないようで」

 

 

互いにその場で握手を交わすが、内心は罵詈雑言の応酬だ

 

 

(何がお元気そうで何よりだ、魔法省にすら顔を出さなかった礼儀知らずの“スクイブ”風情が。こんな家も生まれも使えぬ男を大統領に推すなどエルドラド王国の国民は節穴の集まりか?やはり上流階級ですら無い者など政治に関わらせるべきではないな。今度法案を上げてみよう!そうすれば“聖28一族”辺りが再び任期が終わった私を大臣に戻してくれるだろう!!)

 

(とか考えてんだろうなコイツ。私のことは別に良い。だがもし本当にあのお方が大切になさっている民を愚か者と嘲笑うなら・・・いいだろう。貿易摩擦がいかに恐ろしいか、表も含め勉強といこうではないか。何より陛下が上げられた首級を逃がすなど・・・信じられん。エルドラド王国ならばどんな手を使ってでも死刑にしているところだ)

 

 

ニコニコと挨拶を終えると、ファッジの後ろで控えていたアンブリッジが前に出て

 

 

「エヘン、エヘン!お久しぶりですわ大統領。おっと、挨拶が遅れて申し訳ありません。ウィラトリア陛下の此度、“偉大なる黄金”への襲名。大変うれしく思いますわ」

 

 

挨拶と共に握手をする__が、アンブリッジはまるで“スクイブ”に触れた手が腐るといわんばかりに目の前で、ハンカチで手を入念に拭き、これみよがしに杖を抜き「“スコージファイ”♪」と唱える

しかしそれを見せられてもレゴラスは眉一つ動かさない。20年“黄金”に変わり政界のトップに立ち続けたのは伊達ではない

 

 

「___ご両人、お待たせしました・・・おや?レゴラス殿、付き添いの者や騎士は?」

 

「ご苦労様です獣卿。いや、私より優秀な者などいくらでもいますからな」

 

「それはいけない、貴方は黄金の君の“お気に入り”。何かあっては彼女が悲しまれますよ?」

 

 

獣が到着すると共に、同じ主君を崇拝する者同士会話が広がる

「ではこちらへ」と途中で切り上げ、ファッジ達もまた黄金の獣の後を着いて行く

 

 

 

 

 

「その・・・どうかなハリー、似合うかい?」

 

「うん!すっごくカッコイイよシリウス!!」

 

その頃、今回のもう一人の主役とも言えるシリウスは着替えを終え、ハリーと談笑していた

 

 

「うわぁ、おったまげ!いったいそんな高そうな服どこから持ってきたんだい?」

 

「陛下が貸してくれたんだ。最後くらいらしくしろって」

 

 

それを聞いてハリーは少し暗い表情になる

今からシリウス・・・正確にはブラック家はこれから衰退していくことが決まった。他ならぬ彼等の恩人にして、絶対の王者ウィラによって

唯一ハーマイオニーだけは良く分かっていないという顔になる。ハリーは今まで色々と失ってきたシリウスが更に何かを失うのが悲しくて、そして一応とはいえ同じ“聖28一族”にしてイギリス魔法界の王族の失楽にロンもショックを隠し切れないようだ

 

 

「ハリーは分かるけど、貴方は何を悲しんでるの?」

 

「だって王族が!象徴が消えちゃうんだよ!?」

 

 

それだけではない。一度落ちた家が復興することがどれほど大変か、それはロンですら知っていた

ゆえにロンは同じイギリスの住む者として、更にはドラコまでもがそれだけはどうかとお願いし、大勢がウィラへ懇願しに行ったのだが、己を不快にさせた家など本来ならば根絶やしだと言われては引き下がるしかなかった

 

 

「別にいいさ、私は元々その名に陶酔する家族が嫌で、家を出た口だからね。今更貴族社会に戻るつもりは微塵も無い。今回も陛下がおっしゃった最後の務めとやらでこんな仰々しい服を着てやってるんだ」

 

 

最高級のサテン生地をつまみあげ、乱雑に伸ばした髪を後ろに束ねた姿はまさに王侯貴族だ。しかしその顔色は優れない、逃げたピーター・ペテュグリューのことを考えているのだろう、しかしそれもすぐに消える。逃げた男のことより、今はこうして幸せを噛み締めることのほうが大切だと感じたのだ

 

 

「ねぇシリウス、これが終わったらどうするの?僕・・・もう少し貴方と一緒にいたい!」

 

 

あまりの嬉しさにハリーを思いっきり抱きしめ、ハリーもまた名付け親を抱きしめる

血の繋がりなど関係無い、それは家族の抱擁だった

 

 

「もうしばらく私はホグワーツにいるよ。魔法省からも莫大な慰謝料が貰えることが決まったし、ムーニー・・・リーマスだね。彼の“防衛術”の助手が私のしばらくの仕事さ」

 

 

「さ、彼女が待っている」とシリウスは彼等と共に、大広間を目指す

 

 

 

 

 

 

“大広間”

そこではこのホグワーツの生徒達、そして教師陣が歴史に残るであろう瞬間を目に刻み込んでいた

 

 

「____よって私、ブラック家当主、シリウス・ブラックは御身の名において、永遠に王号を名乗らぬことを誓います」

 

 

大広間の中央。そこで跪き誓いを立てるシリウス。本来ならば魔法で作られた誓約書にサインでもするのだが、真の絶対者である彼女に対し嘘など付けるワケもない

 

 

「良い、許す。これで卿等ブラック家の罪は許されたと知れ」

 

 

その声を聞いてブルリと身体を震わせるファッジ。それと対照的にウィラの後ろに毅然と佇むセイウチを思わせる老人に生徒の注目が集まり、このような儀礼に慣れていない一般の家庭・・・正確には魔法族生まれの者はヒソヒソと声を上げる

 

 

「・・・あれ誰?」 「ウィラ様の後ろにいるってことは、かなり身分が高いんじゃ」

 

「ハリー、あれ誰なの?」

 

「えっ、ロン!あの人知らないの!?エルドラド王国の大統領だよ!?」

 

「・・・ふぁッ!?」

 

「しー!煩いわよロン!」

 

「だってハーマイオニー!大統領だよ!?ファッジと同じくらい偉い人じゃん!」

 

 

それだけではないとハーマイオニーはロンに言う。彼、レゴラスが20年に渡り国を支え続け、王家に変わり国を統治することを許された存在であることを

 

 

「マグルの世界ではかなり有名よ、以前テレビで彼の息子とウィラが実は婚約者同士だからずっと今の地位にいるとか言われてたけど・・・」

 

 

しかしその様子は見た限り無い。その姿は完全に従者と主であった

 

 

「これでいいな大統領、我がエル・ドラド家はこれを持って彼等を許す」

 

「はっ!御身の決定、それに逆らう者など黄金治める王国に存在しませぬ」

 

 

うむ、と頷きその双眸を今度はファッジへ向ける

 

 

「・・・私の予定ではこの後、卿等にアレを引き渡す予定だったのだが・・・で?アレ、ピーター・ペテュグリューは当然、アズカバンにいるんだよなぁ・・・?」

 

 

瞬間、ファッジはまるで鉛の塊を飲まされたかのような錯覚に陥り冷や汗が止まらなくなった

先程の厳かな雰囲気など微塵も無い、これから始まるのは彼女を不快にさせた狼を探すゲームだ

 

 

「そ、その件はその・・・初めから私の所まで話が上がっておりませんでしたので・・・」

 

「おや、おかしいですな。我々の調べではファッジ大臣、貴方が彼等に行くよう命令したと聞いておりますが?」

 

 

何故それを知っている!?と声を大にして言いたかった。しかしそれをこの場で言えようワケも無い

完全に公式の場、更には学生までもが見ているのだ。無能であれど誰よりもプライドの高いこの男は取りあえず

 

 

「し、知らない!私のせいではありません陛下!!その証拠にピーターを運んでいた者は全て打ち首にッ!!」

 

 

すっとぼけることにした。その言葉を聞いて更に幻滅したと表情を変える主従に気づかぬままに

もはや話すことなどないと言わんばかりにウィラが手の甲を向ける。元より彼等をこの場に呼んだのはブラック家の衰退を公けに発表してもらう為だ、それ以外に意味などない

 

ゆえにウィラはもう彼等を帰らせて、わざわざこちら側の意志表示の為に来てもらった大統領を労おうと思ったのだが

 

 

 

 

 

 

 

「エヘン、エヘン!陛下♪発言よろしいでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ピンクの気持ち悪いカエルの置物が喋った・・・だと!?」

 




いかがだったでしょうか?

最初の方はイギリスとエルドラドの政治の在り方を対比してみたいとあんな感じに
イギリスは兎に角まとめきる者がおらず、すぐ怒号が飛び交い
エルドラドはウィラという絶対者を崇め、彼女を象徴とし、まとめ上げられてます


シャドウ「15で子供はまだ早い?なんの、歴代では10代目の妹君であらせられる11代目様など14歳で気づけばどこの男か知れぬ種で身籠っていたというのに」←軽い伏線です


基本エルドラドの政治家はスクイブが多いです
と言うのも、お国柄マグルと魔法使いの両方が暮らす国なので
両方の気持ちが分かる必要がある為です
(この辺も追々書いていきたいですね)


そして酒ビン片手に馬鹿やる二人
彼等は盛り上げ役のような存在です
こんな感じですが、円卓の立場は基本大統領より上です
(ウィラに一番近い存在ですからね)


次回予告は今回無いです
まだ内容がとくに思いついていないので
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