架空の財閥を歴史に落とし込んでみる   作:あさかぜ

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番外編:アジアシリーズ③

 1995年までアジアシリーズは盛況だったが、1997年からは冬の時代となった。同年7月のアジア通貨危機によって東アジア・東南アジア諸国が経済危機に陥った。特に被害が大きかった韓国とフィリピンでは、一時はアジアシリーズ出場が危ぶまれたが、この年は何とか出場した。

 しかし、1998年からの極東危機によって、1999年大会の開催は難しいと見られた。年が明けても落ち着く様子が見られなかった為、1999年4月に同年の大会は実施しない事がアナウンスされた。

 アジア通貨危機による経済危機だが、フィリピンは何とか持ち直したが、韓国は無理だった。アジア通貨危機を発端とした政変と周辺諸国の軍事的緊張に釣られる形で反日気運が爆発し、軍事的暴発の一歩手前まで行ってしまった(極東危機)。これに伴い、韓国は日米などから経済制裁を受け、国内の主要企業が軒並み倒産した。球団を保有していた財閥も例外では無く、1998年シーズンを以てKBOは事実上終了してしまった。

 

 この間、台湾プロ野球ではTPBLとPPBLを統括する台湾統一プロ野球委員会(TUBC)が組織され、両チームがTUBCの傘下に入った。これ以降、台湾の出場チームはTPBL優勝チームから台湾シリーズ優勝チームに変更となった。PPBLからの初出場は、2003年の第7回大会(1999年は行われなかった為、回次が存在しない)の台北ジャイアンツとなった。

 オーストラリアでは、1999年にプロリーグであるオーストラリアン・ベースボールリーグ(ABL)が経営難で消滅し、後を継ぐ形となったインターナショナル・ベースボール・リーグ・オブ・オーストラリア(IBLA)も経営難に喘いでいた。そこをTUBC・NPB・MLBが支援した事で、経営は好転した。

 現在は、名称をABLに変更しており、NPBや独立リーグ、社会人野球、マイナーリーグ出身者が加入したり、逆にABLから送り出すなどして技術の底上げを行っている。2010年にはエキスパンションが行われ、8球団から12球団に拡張された。

 

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 2000年は周辺の環境が収まってきたので、2001年の第6回アジアシリーズは実施する事が宣言された。だが、アジア通貨危機と極東危機で韓国が再起不能となり、大会への参加は不可能だった。その為、別のチームを呼ぶ事になるが、どの国にするかが問題だった。日本と台湾は他の東南アジア諸国、具体的にはタイかインドネシアを考えていたが、満州がロシアを挙げた。

 ロシアは、満州の影響で沿海州に限っては野球は比較的盛んに行われている。満州で行われている北亜都市対抗野球大会で何度も出場しており、何度か優勝している。MPBAに行った選手も多数存在し、もしMPBAがエキスパンションを行うのであれば、ウラジオストクかハバロフスクが最有力と見られている程である。

 

 太平洋戦争終戦直後の出来事から日本とロシアの関係は最悪だったが、極東危機によって日露が協力する事で軍事的衝突を抑えた経緯があり、その結果、日露関係が緩和に向かっている。日本としても、ロシアは東南アジア諸国に次ぐ候補と考えており、タイ・インドネシア両国が拒否したら声を掛ける事とした。

 タイとインドネシアだが、両国とも拒否した。マイナースポーツで競技人口が少ない為だった。また、暫くは国内の政治・経済を安定させる必要がある為、新たにスポーツをする余裕が無かった。

 一方のロシアは、経済危機を乗り切った事、満州の好景気に釣られる形で経済復興が進んでいる事から、アジアシリーズの参加に乗り気だった。日本としても、タイ・インドネシアが拒否した為、ロシアの参加を認めた。日本と満州が認めた為、他の国もロシアの参加を認めた。2001年大会からロシアも参加する事となった。

 

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 2001年以降も大会は続いている。第10回大会となった2007年は、今まで行われた日本や台湾では無く、満州で行われた。満州としては初めてのアジアシリーズの主催となり、盛大に行われた。大会は成功し、以降の開催国は日本・台湾・満州の順で行われる事となった。

 尤も、この3国ぐらいしか国際大会で使用出来る野球場が無い事が大きかった。他の国では整備する事は難しく、整備したとしても恒常的に運用しなければ無用の長物となる為である。

 参加国の方も増加した。第10回大会にはタイとミャンマーが参加し、第13回大会から北朝鮮とインドネシアも参加した。2019年現在、参加国は12か国となっており、予選の方法も第13大会から以下の様に変更となった。

 

・予選は4チーム×3ブロックに分け、2回ずつの総当たり戦を行う。

・ブロック内の1位のチームが準決勝進出となる。

・各ブロックの2位のチームの内、成績が良い2チームによるワイルドカードゲームを行う。勝利したチームが準決勝進出となる。

 

 この変更により、今まで以上に2位争いが熾烈になった。今までであれば、2位までに入れば準決勝に進めたが、この変更により2位でも勝利数が少なければワイルドカードゲームに進めなくなる為、良い成績を出す為に試合に熱が入った。

 ワイルドカードからの優勝は今まで1回しか無い。2017年に台湾で開催された第15回大会で、台湾の彰化エレファンツがワイルドカードとして準決勝に進出し(他の出場チームは日本・ベトナム・オーストラリア)、準決勝2位で決勝進出を果たした。決勝では日本の福岡ソフトバンクライオンズと対戦し、8-7で下して優勝した。

 

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 目的の一つである「アジア地域の野球振興」も進んでおり、フィリピンでは2005年からプロリーグが始まった。当初は6球団だが、2014年には8球団体制となっている(史実では2007年発足)。MLBやTUBCと連携しており、技術面の向上も見られている。プロリーグ発足前はタイやベトナムに遅れを取っていたが、2010年頃から成績が向上し、準決勝進出も果たしている。

 タイ・ベトナム・インドネシア・ミャンマーでは、プロリーグこそ発足しなかったものの、学生野球や社会人野球の発展が著しかった。経済成長による企業の隆盛に乗じる形で、企業の社会人野球進出が進んだ為である。学生野球や社会人野球のリーグも発足しており、将来的にはプロリーグも発足するのではと見られている。

 オーストラリアでは、2010年にIBLAの名称がABLに変更となった。TUBC・NPB・MLBによる支援以降、プロリーグや独立リーグ、マイナーリーグ、社会人野球出身者が加入したり、逆にABLから送り出すなどして技術の底上げを行っている。2016年にはエキスパンションが行われ、8球団から10球団に拡張された。

 現在参加していな国でも、マレーシアや香港、カンボジアでもアマチュア野球が徐々に広がりを見せている。アジア地域の野球振興は成功していると言っていいだろう。

 

 一方、2006年から始まったワールド・ベースポール・クラシック(WBC)だが、NPB・TUBC・MPBA共に既にアジアシリーズを行っている事、3月に行う事、アジア限定だが野球振興をしている事から、参加を拒否している。その為、WBCは米州とヨーロッパが中心となり、大本命だった日台満の参加は叶わなかった。

 その結果、興行的にはお世辞にも成功とは言えず、アメリカ国内でも盛り上がりに欠けていた。中南米や西ヨーロッパでの野球振興にはある程度繋がったが、当初予定されていた程の成功を収める事は出来なかった。

 アメリカの失敗は、当初はアジアシリーズに参加しようと打診した際に、MLB主導に持ち込もうとした事である。これに日台満が猛反発し、アジアシリーズの恩恵を受けている参加国も反対した。また、考え方の違いもあり、アジアシリーズはナショナルチーム又はプロリーグの優勝チーム同士の対戦であるが、アメリカの構想ではナショナルチームだけという事から、NPB・TUBC・MPBAの賛成を得られなかった。その結果、アメリカが反発しMLB主導の野球の国際大会を行う事となり、それがWBCとなった。

 しかし、アメリカに次ぐ野球大国の日本と台湾を呼び込めなかった事、アジアシリーズ参加国を呼び込めなかった事で「アメリカとその他」という構図となり、参加国のモチベーションが上がらなかった。MLBとしても、シーズン直前に行う事、張り合いが無い事で今一つ盛り上がらず、国内市場だけでも充分だった事もあり、スポンサーがコロコロ変わる事が多かった。

 WBCは現状、成功しているとは言い難い。MLBは参加国及び周辺国の野球振興の為に支援を行っており、ブラジルやスペイン、イギリスなどでは徐々に協議人口が増加しているが、まだマイナースポーツの域を出ていない。アメリカ国内の人気も今一つの為、廃止の動きも見られている。


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