この小説は原作の設定及び仕様を丸無視しております
そして原作キャラクターを独自の解釈で設定付けています。
いろんな設定がおかしいですがそれでもよければどうぞごゆっくり。
あとは特記事項なし、
まぁ、ごゆっくり
吹き荒れる嵐の中。
一人の男がいる
その男はある塔を目指してひたすらに歩いていた。
「見えてきたな…」
高くそびえたつ塔。
大きな門は開いたままになっていた。
周囲に気配はなく。男は無警戒のままの入り口に入っていく。
「やけにおとなしいな。」
先程までの嵐に比べると。
塔の中は静かで、かすかに聞こえる外の嵐の音と足音しかなかった。
「本当にいるのか…?」
度々疑問に思いながらも男は塔の中をひたすらに進んだ。
「つまらないなぁ…」
ある龍が呟いた。
玉座に座ってただ扉を見つめる。
「最近の人間は直ぐ諦めてどっか行っちゃうし。他の龍達は相手にしてくれないし。ほんとに暇だなぁ」
大きな広間でただ来訪者を待つのは。
【玻璃の風龍王リンシア】
「ここニヶ月くらい誰とも戦ってないや…」
ずっと来訪者を待っているが全く相手にしてもらえず暇をしていた。
そんなとき、扉が動いた。
「んっ?もしかして?」
扉が開いて現れたのは一人の男だった。
「ここが最後か。」
「もしかしてキミは、」
男は唐突に聞こえてきた声の方に向く。
「ボクに会いに来たの?」
「お前が、風龍王か」
「そうだよ、やっぱりボクを探していたんだね!」
リンシアは久々の来訪者に喜んでいた。
「なんだ、やけに嬉しそうだな。」
「それはそうだよ!だって…ずっと誰も遊びに来てくれないんだもん、」
「まぁ、噂じゃ結構嫌われてるからな。」
「ひどいなぁ、ボクはもっと遊びたいのに。」
「まぁ、いい、ここに来たからには、わかってるんだよな。」
「もちろんだよ!やっと楽しい試合ができるね!」
男はリンシアを睨んだ、
「試合か…」
「どうしたの?ボクに何かあった?」
「俺の兄はお前に挑んで命を落とした…俺はお前に復讐のつもりでここに来た。」
「んー…ボクは人間は殺さない主義なんだけどなぁ…確かにキミによく似た人間はいたけど、戦わずにどっか行っちゃったし」
「ならなぜ兄は死んで帰ってきた。」
「そんなぁ、ボクに怒られても困るよ。」
男は怒りを抑え込み。リンシアに問いかけた。
「人間は殺さないとはどういう意味だ。」
「ボクだって死ぬのは嫌だし、君達人間には大切な家族がいるでしょ?それに命を殺めたって何もいいことなんてないし。」
「…それだけか?」
「あとは自分勝手な理由しかないかなぁ、」
「例えば、」
「例えばボクと戦って負けたとして、強くなってまた来てくれるかもしれないし、」
「なるほど。」
「でもそうだね、キミには今までの人間とは違うものを感じるよ。」
「違うものとは?」
「今までの人間はずっと冷めてたんだよね、なんていうか、覇気がないんだよ。」
「…覇気か、」
「でもキミは違う、常に猛者の風格が溢れるように感じれるんだ。」
「怖じ気ずく気はないからな」
「そうだよ!それなんだよ!」
リンシアは楽しそうに話していた
「みんな死ぬ恐怖に怯えて全く強くないんだ。みんな逃げてばかりなんだよ。」
「そうだろうな。」
「もう言うことはないね、ボクも待ち遠しいからさ!」
男は身構えた、
それを確認するとリンシアも玉座から離れた。
周囲に風が吹き始める。
リンシアはその風を感じ取るとすぐに力を込めた。
「さぁ!たくさん遊ぼう!」
その言葉と同時に風力の球が男に向かって飛び交う。
男はそれを一つ一つ確実に避けていく、
それを繰り返していくうちに男の周りにいくつかの鏡が現れ始めた。
風力の球が鏡にぶつかると反射して跳ね返っていき男がそれを避けていくうちに球の数が増えていった。
そして男は腰にかけていた小刀の一閃を放つと、珠は消え去り鏡は真っ二つとなりその場で崩れた。
「おぉ!すごいねぇ!」
それを目の当たりにしたリンシアは驚きながらも愉しんでいた。
男も守りを徹するわけにはいかないと、
走ってリンシアに近づき武術で攻めに入る。
リンシアはそれを手足で受け止める。
しばらくはそれの攻防が続いたが
リンシアが受けとめきれず横腹に蹴りが入った。
それに返すように尻尾でなぎ払い足元を崩し転倒させた
「いてて…なかなかキツイ一発だったよ…でもこれでおあいこだからね!」
男はすぐ立ち上がるとまた近づいて攻めていく。
「流石に武力だけでは間に合いそうにない」
男は武術の合間に小刀を抜いての一撃を挟む。
リンシアはそれを風の刃で対抗する。
「いいねぇ♪楽しいよ!」
リンシアは男との攻防を愉しんでいた
だが、男の小刀の一撃がリンシアに斬り込まれる。
その瞬間リンシアは大きく引き下がった。
「流石に…手首の血脈を斬られたら…ボクも余裕が無くなっちゃうよ…」
「これで、こちらが有利に立ったわけだな」
「まあそうだね、でもまだ終わらせないよ!」
リンシアは男に向かって大きな風をぶつけていく。
飛ばされないように男が堪えると
リンシアは男を抱きかかえるように捕まえ、
窓から飛びだし塔の上に向かった。
「どうするつもりだ!」
「あんな狭いところじゃ、楽しみきれないからね!」
リンシアは飛び上がり、そして塔の天辺の大きな円状の場所に着いた
ゆっくりと男を降ろし、
向かいにそびえる、
「ここならもっと楽しめるよ!」
「…望むところだ」
男のその言葉を聞くとリンシアの中心に小さな嵐が現れる。
その嵐がリンシアを隠し次第に強くなる、
そして嵐が消えるとリンシアが瑠璃色の翼と紅暗の華片を纏って現れた。
「…グルーミィローズ…そういうことか」
「さぁ!まだまだ遊ぶよ!」
男に向かって風とともに鋭い華片が飛び交う、
男はその華片を斬り避けながらリンシアと攻防を繰り返した
そして男とリンシアとの距離が詰まったとき。また先程の攻防が飛び交った
長い攻防の末、ついに男の小刀がリンシアの腹部に届き深くまで入り込んだ。
「…うっ!うぅ…」
急にリンシアの周りの華片と翼が消え、風も収まった
「これでどうだ、」
「ボクの負け。初めてだよ。人間に負けるなんて…あぁ…こんなにも痛いんだね…」
「兄貴は戦わなかったのか…?」
「だから、ボクはキミのお兄さんは知らないよ。」
「…まぁ…仕方ないか。」
「でも楽しかったよ。久々にここまで本気を出したし、他の龍よりもキミのほうが面白いよ。」
「そうか、そりゃどうも。」
「終わっちゃったなぁ。ふふふ、でもいいや、」
そう言うとリンシアは腹部に小刀が刺さっているまま男に近寄った
「お前、まだ動けるのか、」
「これでも今結構ぎりぎりなんだよ、いてて…」
そう言うと、リンシアは小刀を自分で抜いて。男に返した
「殺さないんだね。ボクのこと」
「…殺したところで何もいいことはない。」
「ふふ、確かにそうだね、」
リンシアの腹部の刺し傷はすぐに塞がったがすぐに癒えることはなかった。
男が小刀を収めたのを確認するとリンシアは男に抱きついた。
「ふふふ、ちょっと惚れちゃったかも」
「いきなり何を言う…」
リンシアは男を抱きかかえ先程の玉座の間に戻った。
「ちょっと座らせてね…まだ体は痛いからさ…」
男も床に座り込む。
「惚れるとはどういうつもりなんだ。」
「簡単だよ、ボクはずっと、キミみたいな強いものに憧れていたんだ。」
「それだけか…」
「ふふふ、キミともっと遊びたいけど、ちょっとそれは惜しいなぁ」
「どういうことだ。」
「うんと、人間もそうだと思うけど、好きな相手を傷つけるのは嫌でしょ?そういうこと」
「まさかお前…本当に?」
「んー…まぁね」
「そうか、それは勝手にすればいいが…」
「そうだなぁ、キミって旅ってしてるの?」
「確かに俺は旅をしてる、ガイノウトやノルディス。他の龍王達にも会ってきた。」
「へぇー、それは今後が面白そうだね、ボクも連れてってよ。」
「何を言い出すか、お前は龍王だろう。ここで来訪者を待つのが仕事じゃないのか。」
「別に、特にそういうのないし。ゼローグさんは放任主義だし。いいんでしょ。」
「そ、そうか」
「それに、キミはボクと戦って勝ってるんだからその権利もあるんだよ?」
「いや…俺は別にどちらでもいいんだが…」
「じゃあ、ついていくよ。キミと旅をすれば暇しなくて済みそうだし!」
「まぁいい…勝手にしろ。」
塔を出ると先程までの嵐はすっかり消えており。清々しい晴天が広がっていた。
「うー…んっ!久々に外に出るなぁ!」
「引きこもりかよ…」
「そりゃ、誰も来てくれないし、特にやることもなければここから出ることもなかったからさあ、」
「あっそ、」
男は半分興味なさそうにしていた。
しばらく歩くと人の気配を感じ、あることに気がつく。
「…まて、リンシア。」
「どうしたの?」
「お前は仮にも龍王だ、今は俺の連れだが…そのサイズのその格好だと、他の人間に遭遇するのはやばい、なんとかならないか?」
2mを超えた獣人のような姿。
普通の人間なら怯えて、ひどいと逃げてしまうだろう。
「そうだね…人の同じような格好ならいいかな、龍契士達みたいな」
「いや、あれもさすがに…」
「うーん…わかった自然に変えてみるよ。」
そう言うとリンシアの周りに黒い風が起きてリンシアを隠した、
風が消えるとリンシアは緑が基調の服を着た竜族の女性のような格好に変わっていた。
「まぁ、そんなもんだな」
「これならいいでしょ?」
「そ、そうだな…」
男はリンシアの格好に一瞬目を奪われ焦るように視線をずらす。
それに気がついたリンシアは疑問に思う。
「なんか不安そうだなぁ、結構いいと思ったんだけど…」
「いや、それでいいぞ、」
それからまた歩き始めると、行商人達に会った。
「おや、旅人さんかな、」
「あんたら商人か。」
「あぁ、そうさ、」
「てことは、この先に街がありそうだな、」
「勘が鋭いね、街はある。治安の良いところだったよ」
「そうか、それは助かる。」
「それより、あんたら何か見ていくかい?」
「何を扱ってる。」
「基本的には素材食品衣服装飾物だね。」
「そうか、まあ、今はいい、また会ったときに伺うよ」
「そうかい、それじゃ、またな。」
行商人達はどこかに行ってしまった
「商売をするんだね。」
「まぁ、何もかもが手に入るわけじゃないからな。この小刀だって、知り合いの鍛冶屋にお願いして作ってもらった。」
「ふーん。」
そんな会話をしていると大きな街に着いた。
「おー、こんな感じなんだね。」
「まぁ、街だしな。賑やかもんだ。」
「なんだかいい臭いがするね。」
「丁度昼頃だな。」
男は向きを変えると食堂付宿屋に向かった。
「ここにするか。」
「美味しそうな感じがするね」
リンシアはメニューを眺めていた、
「ほら、中に入るぞ、」
宿屋の食堂はそれなりに人がおり。
賑わっていた。
席につくなり店員が話しかけてくる。
「ご希望のメニューはどうされますか?」
「俺はまだ決まってないが…」
「じゃあ、ボクはBメニューで!」
リンシアは即答した
決して安価ではないが高くはないメニュー。
男も同じものにすることにした。
「では、Bメニューを2つ、その他はよろしいでしょうか。」
「はい、それで、」
「かしこまりました。」
注文を受けた店員がいなくなると
リンシアはまた疑問を話し掛けた。
「覚えていられるのかな。」
「この程度なら覚えるだろ。それに、ほらあれ。」
男が指を挿した先にはまた別の店員が注文を受けていた。
「複雑だとあんな感じでメモを取ることもあるんだ」
「なかなか賢いね、でも、機械で統一できたりしないの?」
「まぁ、それは店によって違う。」
「ふーん。そうなんだ。」
「ここはさほど大きくないしな。それに、ほら宿屋でもあるから、食事はおまけみたいなものだ。」
「そんなもんなの?」
「そんなもんだ、」
「ふーん…」
話が一段落ついたところで注文が届いた。
「ごゆっくりどうぞ。」
「あっ、ライスと箸お願いできますか。」
「はい、お箸を一膳とライスでよろしいですか?」
「あぁ、一人分でいい。」
「かしこまりました」
注文すると、2分ほどで届いた
「その白いものは?」
「穀物の一種だな。麦の殻を取って洗って水で炊きだして最後に蒸す。」
「なんだが、難しそうだね。」
「まぁ、殻を取る工程までは麦を作ってる農家がやるから。実際は洗って炊いて、それ以降をやればいい。」
「なかなか美味しそうだね。」
「食うか。コメは食ったこと無さそうだしな」
「むしろ人間と同じものを食べる機会がなんて滅多にないよ」
「ちなみに今回頼んだのは牛のミンチと野菜を混ぜて焼いたものだ、ハンバーグっていう。」
「うんうん、話す前に食べたいな。」
「そうだな…食べるか。」
二人はランチを堪能していた。
リンシアは初めての人間と同じ食事を愉しんでいた。
二人は食べ終わると会計を済ませ。
宿の手配をしていた。
「二名様でよろしいですか?」
「あぁ、二人だな。」
「申し訳ございません、只今シングルのお部屋以外は埋まってしまっておりまして。」
「シングルか、まぁいいですよ。」
「かしこまりました、では二階9番のお部屋になります。」
鍵を渡され。受付の隣の階段を上がる。
上がってすぐ、一番手前の部屋だった。
「ここか、」
「ほんとにベットが一つしかないね。」
「まぁ、シングルだしな。」
部屋に入る手前で男の鼻にある匂いがした、
「…そうか。だからシングルしか空いてないわけか。」
「どうかしたの?」
「バレンタインだよ、女性が男性にチョコレートを送る日だ、」
「ふーん、そんな風習があるんだね、」
「つまり、ダブル以降は全部カップルで埋まっているわけだな。」
「なるほどねぇ」
二人は部屋に入ると。ソファでゆっくりしていた。
「一息つけたな…」
「なかなか暖かいね。」
「しっかり休めよ、俺は座ってでも休めるから。」
「でもキミも結構疲れてると思うよ」
「腹の傷は大丈夫か?」
「塞がってるからいいよ」
「痛いだろ」
「うん…」
「なら、俺はいいから休めよ」
「キミも休んでほしいんだ。だから、ベットには二人で休もう。」
「いや、狭いだろう。」
「ボクはいいよ。その方が安心して眠れるし。それにこの傷が治るまではキミから離れないつもりだし。」
「まぁ…お前がいいなら。傷のことは勘弁してくれ。まぁ、怪我してるやつを放置はしないから好きにすればいいさ。」
「強いだけじゃなくて。優しいんだよね。それも人なりの強さだろうけど。ボクはそういう強さが、ないからなぁ。」
「世の中不器用なやつだっているさ。でもお前は俺の心配をしてくれたからな。それだけでも充分だろ。」
そんな会話をしている内に眠気が襲ってくる。
「眠たくなってきたね…」
「そうだな。寝るか。」
リンシアがベットに入ると、手招きしながら声をかけた。
「ほら、」
「いざ、そういうことをされると。なかなか気がついていかないんだがな…まぁ、いいか」
リンシアの隣に寄り添うと二人は落ち着いたように寝入った
夕方ごろ男は目が覚めて
「…まぁ…悪くないか」
身動きが取れず目が覚めたまましばらくそのままでいた、
なぜ身動きが取れないのかは
リンシアが抱きついているからだった。
「まだ、起きてないか」
「ん…起きたよ…」
「寝てたとはいえ、案外がっついてくるな。」
「ひぇ?わわっ!」
リンシアは自分の姿勢に驚き慌てていた。
「まぁ、無意識のうちのことだからな、仕方ないだろ」
「なんていうか…」
「まぁ、いいさ。」
「うん、ごめん。」
リンシアは少し距離を空けてまた横になった。
「キミはずっと一人で旅をしてたの?」
「いや、前は相方が居たかな、腕のいい相棒だったよ、」
「それじゃ、別れて旅をしてるんだね」
「気がついたら居なかった。こればかりは仕方ない」
「ふーん…」
「聞いた噂だと今は俺と同じで五大龍王を目指しているらしい。」
「それじゃ、今頃ボクを探してるのかもしれないね。」
「まぁ、有り得るな。」
「でもまぁ、ボクはキミといるからね。」
「探しても見つかるわけ無いわな」
「だろうね。」
リンシアはしばらくはまだ休んでいた。
男はベットから降りて荷支度をしていた
「もうそろそろ出るの?」
「いや、準備だけする。もう夜になるしな。それに傷のこともある」
「そう…だね。」
「まぁ、夜に動いたほうがお前が安全かもな」
「どうして?」
「お前がリンシアだとバレたらどうするか」
「なるほどね。まぁ、それは大丈夫だと思うけどね。」
「まぁ、やっぱり出るか」
「わかった。」
二人は準備を終えて部屋の鍵を受付に返す、
「あれ、代金は?」
「ご利用が、約半日ですので。料金の方は今回は無料となっております」
「へぇー。そんなこともあるんだね」
男は受付の奥のチラシに目を向けた
「バレンタインサービス…そういうことか」
「またのご来店お待ちしております。」
二人は店を出ると。
夕日の強めな日射しが掛かっていた。
「結構眩しいな…」
「これからどこに行くの?」
「とりあえずゼローグ、まだ会ってないからな」
「そっか。やっぱり行くんだね、」
「最後だしな、来るか」
「…いくよ、」
「わかった。」
街を歩いていると広場に出た。
普段なら子供や大人達が集まっている場所だが、夕暮れになると人は少なくなっていた。
そこで一人の人間に足を止められた。
「おい、お前」
「なにか用事か、」
「まさか、啓介か」
「なんで名前を知ってるんだ」
「久々だな、映だ」
「なんだ、お前か」
「こんなところで会うとは」
「まぁ、そんな日もあるさ」
「隣は新しい相方か」
「まぁ、そんなところだな」
「さすが、龍王を相方に持つなんて大した男だ」
「……わかるのか」
「リンシアだな。まぁ、わかりやすい偽装だからな。」
「だそうだ、リンシア」
「まぁ、化けるつもりなんかないし」
「どういう経緯でリンシアが相方になったのか教えて貰えるか?」
「経緯も何もボクが勝手について行ってるだけだよ」
「なっ、それだけか?」
「あぁ、そうだな。」
「この人はボクと戦って勝ったんだ。それにちょっとした理由もあるからね」
「一つお願いがあるんだが…」
「なんだ?」
「リンシアと戦わせてくれるか。」
「無理だな。それは俺がさせない」
「な、なんでだ。」
「いまこいつは戦えるような状態じゃない。俺が怪我させてるから傷がまだ残ってるんだよ」
「そうか…」
「うーんと、そういうことだからボクは戦ってあげれないけど、もしこの人と戦って勝てたらボクに勝ったことにしてもいいんだけど。」
「だそうだ、そうする映。」
「まぁ、本人がそう言うなら。」
「ここだと人目につく、街の外に行くぞ。」
三人は街の外の広い草原に出た、
街からは離れているから人の気配は殆ど無い。
「始める前に一つだけ約束してほしい」
「なにがだ?」
「もし俺が勝ったらリンシアをこちらに渡してほしい」
「勝手にしろ、あいつ次第だと思うけど」
「やるか。」
「いつでもいいぞ。」
映が刀を構えて。少しずつ距離を詰めるが啓介は腰の小刀に手も掛けず立ったままだった。
「一応聞くが、やる気はあるんだろうな」
「ない、もとより戦う気もない」
「なっ、そうか。」
映は一気に距離を詰めて斬りかかる。
啓介はそれをすらすらと避けていく
啓介が隙をついて振り掛かった瞬間の刀の柄を掴みそのまま刀を奪い取った。
そしてそれを地面に刺し込んだ。
「反撃は?」
「くっ…」
リンシアはつまらなさそうにしていた。
戦っていた二人はリンシアのもとに戻った
「ボクはお遊戯をしてるのかと思ったな。」
「そうか、それは済まないことをしたな。」
「…俺の負けだよ」
「この人が負ける見込みはなかったし」
「それにお前にはまだ早いしな」
「どういうことだ?」
「お前。今まで何してた」
「何って、龍王巡りだが…」
「それは最近だろその前、俺と別れた直後だ、」
「…」
「お前のことだどうせ道楽に身を捨ててたんだろ」
「くっ…」
「それにそんな腕で龍王になんか挑んだって秒で負ける」
「かもな…」
「それに、さっきリンシアを渡してくれとも言ったな」
「あぁ…あれは無しだな」
「無しも何も渡す気もない、色眼鏡だけで旅をするお前なんかにリンシアを護れるものか。旅人を馬鹿にするな」
「そこまで言わなくてもいいだろ!」
「そこまで言うんだよ。覚悟も何もなく軽はずみにあんな発言をするやつに何を任せれるか、それに言っただろ、リンシア次第だと」
「例えこの人が負けてもボクはこの人についていくよ。だってボクはキミと戦って負けたわけじゃないし、唐突にキミについてこいなんて言われても興味ないよ。」
「なんだと…でも…」
「ボクはこの人が気に入ってるから。この人に負けたからじゃないし、この人がついてこいって言ったわけでもない、強くて憧れて。それで気に入ってるからついて行ってるだけだよ」
「あぁ、わかったよ。もういいさ。」
「開き直りたいならそうしろ。お前が変わらなければ何も変わりはしない」
「もういい、じゃあな。」
そう言うと映は街に戻って行った、
「いつもあいつはだらしない」
「腕がたつって言ってたよね。」
「昔はな。今はあんな感じだ」
「面白くないね」
「俺と旅をしてた時は必死だったが、俺と組手をすることになって。負けるといきなり消えて、あんな感じだ」
「ふーん…負けて悔しくてそれで止めちゃうんだね。」
「あいつはもう知らん。これ以上関わると面倒な感じがする。」
「さて、これ以上は気持ちが悪いし、さっさと忘れて、ゼローグのとこ行くか。」
「そうだね。久々だなぁゼローグさんに会いにいくの」
二人は会話をしながら道を進んでいた。
途中獰猛な龍や獣にも遭ったが。
うまく逃げたり。遭う前に避けたリして。
なんとかしていた。
道程の途中で森に着いた
その森の中に小屋が佇むように建っていた
「ここは…懐かしいな」
「知ってるの?」
「…ここはな。俺の両親の墓があるんだ。」
「そっか。」
「産まれの街を出て、環境のいいこの場所に住処を作った、でも…」
「でも…?」
「両親は…俺を置いて…亡くなった。」
「どういうこと?」
「俺が畑を荒らす獣を追っ払っている間に…薬を飲んだんだ。致死するほどの薬を」
「薬程度で死んじゃうんだね…」
「人の体を治すものでも。その養分は摂りすぎると体に猛毒だ。逆に体を壊しちまう。」
「そうなんだね…」
「あいつらは…薬を飲みすぎたせいなのか、人とは思えない奇行ばかり行う獣になってたんだ。」
「獣…?」
「目はコロコロと動き回って、口は開き続けて唾液が垂れ…足も覚束ない、終いには俺に襲いかかって来た。」
「グールみたいな感じだね…」
「生ける屍…か、そうだったかもな」
「それで…?」
「人ならざるそれを見て…俺は確かに怖かった。でも同時に自らを護ることしか考えれなかった」
「だから。両親はキミが自分で…?」
「あぁ、あれは…もう人じゃなかったからな…俺が最期を迎えさせた。」
「後悔はしてないの?」
「俺の知っている両親は薬を飲んだ瞬間に死んでいる。だから、屍になった獣なんて…」
「でも…両親は」
「いいさ…これしか道は無かった。だから、俺は動かなくなった両親を畑の土に埋めて墓を建てて。それからは持てるだけのものを持って。旅を始めた。」
「それで、五大龍王を巡っているんだね。」
「それで、今に至るわけだな」
「ねぇ、気のせいかな、なんか…音がするよ?」
「…なんだろうな…確かにさっきから聞こえるが…」
会話をしている二人はある物音に気づいた。
地震のような地鳴りと小屋の中からの異様な音。
近づくとその音は確かに大きくなっていた
「…まさかな…いや、そのまさかなのか?」
リンシアが畑の方を向いた瞬間異様な光景を目にした。
人の形をした何が地面から飛び出たのだ。
「えっ…何あれ…」
「どうした…?」
リンシアは畑を指差す
啓介はそちらを向いたそしてやはりそこには
「そのまさかなわけか…」
「死にきれてないよね…」
啓介の両親の片割れであろう人影が佇んでいた。
「逃げるぞ。」
「いいの、放置すると被害が…」
「…ここから次の街はかなり距離がある。その当時はまだ防衛能力すらなかったが、…今がどうなってるかはさておき、危ういか…」
木陰に隠れて様子を伺う。
すると。やはり街の方に向かって歩き始めた。
その直後小屋の窓から別の人影も出て来た、
「やっぱり…そうか…」
啓介にははっきりのわかっていた。
グールになった両親であった。
「手段を選んでる暇はないか。」
リンシアに隠れておくように伝えて、啓介はグールを始末するために小屋に近づいた。
二体のグールはすぐに啓介に気づき襲いかかる
啓介は何の躊躇もなく。そのグール達を小刀で始末した。
歩けぬように足を切り
襲えぬように腕を曲げ、
終いには首を落とした。
それでもなお、足りないと思い
体の各部位をバラバラに土に埋めた、
「終わったね。」
「これで、終わってくれるといいけどな。」
「体が繋がってないんじゃ、例えグールでももどうしようもないって。」
「まぁ、そうだな。」
一連の事は済み、二人は小屋をあとにした。
幾つかの街を通過して。
長い道程の末。
3日近くかけてようやくゼローグの根城まで辿り着いた。
根城にはいくつもの龍達が待ち構えていた。
本物ではないが実態を持つ龍。
海賊龍や戦国龍達。
伝説の大地に住まうとされるベビーメタルドラゴンすらいる。
時には囲まれて危うい場面もあったが…
いくつもの窮地を超えて、ゼローグのもとに辿り着いた。
「ようこそ。我が玉座へ。」
「久しぶりだね、ゼローグさん。」
「リンシア。まさか、この男と共に居るのですか?」
「そうだよ、でも命令されてるわけじゃない、ボクが好きでついて行ってるんだ」
「なるほど、わかりました。」
「ゼローグさんとこの人のやり取りのときは手を出さないから。」
「そうですか、」
「まぁ、その方がやりやすいしな。」
「一つ質問をしますが、」
「なんだ?」
「あなたは、啓介という名ですね?」
「そうだが、なぜ知っている。」
「先程一人の男がここに来て、お願いをしてきたのです。」
「映か、」
「そう名乗っていましたね、それで、お願いが、」
【啓介という男を勝たせるな】
「というものでした。」
「馬鹿馬鹿しいな。」
「知り合いなのはわかりますが、何か因縁でも?」
「ただの逆恨みみたいなものだ」
「なるほど、まぁ、貴方ならば、私も久々に力を振るうことができそうですね。」
「話が長いのはあまり好きじゃない。」
「そうですか、なら。」
ゼローグは玉座から離れた。
「私に少しでもダメージを与えてみなさい。」
「なるほど。そう来るか」
啓介は構えると、走って距離を詰めていった。
火の球や水の障壁、強風など様々な障害があるが。難なくそれを越えて。
手が届く距離まで距離が詰まった。
「やりますね。では、その小さな刀で私に傷をつけることはできるでしょうか?」
啓介は小刀を一振りしたが、歯が立たなかった。
「…そうか。面倒だな。」
一度下がるが。先程のような障害はなく再び距離を詰めた。
「その刀なしに私に傷はつけれない。でも、刀では傷はつかない、どうするつもりですか?」
「刀は使う。まぁ、すぐわかる。」
ゼローグは敢えて何もせずにいた。
啓介は小刀を逆手に持ち替えた。
体を大きくひねり、渾身の力を込めて大きく振り斬った。
その瞬間、甲高い音とともに、ゼローグの体には大きな斬り口ができあがった、
「なるほど。相当な力を持っているのですね。流石リンシアが認めただけはあるようです。」
「他の龍王にも挑んで勝ってきているからな。そう安々と負けて帰る負けにはいかない。」
「私もこの姿で傷を付けられたのは久々ですね。では、続けましょうか。」
ゼローグは光に包まれると姿を変えた。
「さぁ、キサマの力を試そう。」
ゼローグは様々な攻撃を繰り出した。
業炎や濁流暴風、
啓介はそれを一つ一つ対処していった。
啓介がゼローグとの距離を詰め始めると。
ゼローグは手元で力を溜めはじめた。
「あっ…ゼローグさんほんとに本気出しちゃうんだ…」
啓介がゼローグに届く前に力が溜まりきってしまった…
「この人は…ここで終わりかぁ…」
ゼローグは龍王砲を放った。
啓介は逃げ切れないと思い、小刀を構えて受けの姿勢に移った。
「幾らなんでも。龍王砲をそんな刀じゃ…無理があるよ。」
リンシアが呟いた直後。
放たれた龍王砲が啓介に届いて通過していった
啓介はその場に立っていた。
確かに龍王砲を受けており、幾つかの傷が見える。
「この龍王砲を受けて立っているとは。」
「今まで痛覚というものを意識したことがなかったが。これは流石に効くな。」
「ボクら龍王達でもあの攻撃で致命的な状態になるのに…キミは一体何者なの…?」
「さぁな。ほらゼローグ、続けるぞ」
「…」
ゼローグはもう一度龍王砲を溜めた。
しかし、啓介は正面から走って距離を詰める。
龍王砲が放たれたがそれに突っ込むように啓介は走っていき、龍王砲に呑まれて見えなくなった
そのすぐあと。
啓介は大きく飛び上がり。
ゼローグの頭に向かって小刀を一振り斬りつけた。
その一撃でゼローグの頭にある右の角が大きく欠けた。
「なんだと…」
「流石にへし折るところまでは無理か。硬すぎる。」
啓介はゼローグの目の前で小刀を逆手に持ち替えてまた斬りつけた。
今度は胴に大きく斬り口が出来上がる。
「さてと…次は…」
「まて、もうよい。」
その一言で啓介は小刀を鞘に納めた
「随分と力を使ったな…腕が取れそうだ…」
「もはや、人力などで比べるような力ではない。かなりの強者よ。」
「龍王さんにそう言われたからにはありがたいと思えるね。」
「キミは…一体何者なの?」
「何者だろうな。人間であることには違いないが」
「逆に怖くなってきたよ…あんな攻撃されたら…本当に真っ二つになっちゃう…」
「お前にはそこまではしないさ、肉質に対してあれは強力すぎる、昔、野生の猛牛にやったら本当に真っ二つになったからな、」
「うわぁ…やっぱり…」
「それ以来、本気という本気を出したことはない。」
ゼローグは姿を戻して玉座に戻った
「あなたはこの先どうするのですか?」
「そうだな、五龍巡りも終わったしな。」
「何か他の目的はないの?」
「考えてなかったな。」
「更に強さを求めてもいいとは思いますが。」
「この力はあんたと戦うためにつけた、あんたとの戦いが終わったら俺には無用だ、また来るとは思うが、そんときは別に戦いたいとは思わんだろうしな。」
「ここで旅は終わり?」
「そうなる、ただ、どこかに定住しないとな、そのまま放浪の旅でも悪くはないが。」
「ボクはキミについていくよ。」
「もう楽しいことはないぞ。」
「言ったでしょ、ボクはキミが気に入ってるんだって。」
「好きにしろ、」
それから、二人は放浪の旅をしていた。
特に目的もなく。永く終わりのない旅。
以上で、風龍王と五大龍王を巡る男の話を終えよう。
書き終えての感想。
まぁこんなもんでしょうね。
特にシリーズ化させる予定はないです
が、気が向いたらまた何かしら書くと思います