けど、彼は自分で言うほど、不幸ではないような?
なら、もっと不幸ににしてみては?
てな、感じで天啓をうけた?
他人の不幸は蜜の味、たぶん?
不幸と幸福の境界線って、人によって違うよね、的な話らしい?
上条当麻には、同居人が一人いる。
銀髪のシスター、ではなく。
茶髪の電気娘、でもない。
「あ、御帰りなさい」
自室に戻ってすぐのリビングに座ってテレビを見ている、ちょっと特殊な髪色の金色の瞳を持つ少女。
「ただいま」
「外は真夏日でしたから、暑かったのでは? すぐに冷たいものを用意させますので」
立ち上がりねぎらいの言葉をかけてくる少女に、悪意など一欠片もない。
最初に出会った時から、この子は常に自分を気にかけてくれて、色々と助けてくれる。
しかし、だ。そのやり方が少しばかり、いやかなり常識外のことが多い。
ホシノ・ルリ。自分を『当麻さんの巫女』あるいは。
「・・・・・・・財布がないようですね、どうしました?」
「落しました」
「・・・・・・・ほう」
スッと、瞳を細める少女に嫌な予感がしてくる。
「第六師団全軍、捜索開始」
『御意!!』
「ちょっと待っていただけますでしょうかぁぁぁぁ!!!」
「大丈夫ですよ。一万人ほど人員を動かしますので、すぐに見つかります」
「だからそんなに大げさでなくてもいいから! 本当に自分で見つけてくるから大丈夫!!」
動き出しかけたルリと、呼び出された軍団長はそろって首をかしげた。
「いいんですか?」
「はい、お願いします」
もう土下座しそうな勢いの当麻に、彼女は『解りました』と答えて、通信を開く。
「何してんの?」
「いえ、ちょっと学園都市の責任者を呼びだして処刑しようかな、と」
「しなくていいから!!」
「我が主に落し物をさせた責任をとらせるべきでは?」
「必要ないって! 止めなさい!」
「解りました」
渋々と彼女は従った。
彼女の名前はホシノ・ルリ。
何時からか当麻に従う少女であり、『狂乱と恐怖と暴力の化身』といわれる『サイレント騎士団』の団長でもある存在。
ついでに、上条当麻の不幸を加速させる人物でもあった。
彼女との出会いを上条当麻はよく覚えていない。
気がついたら自分の三歩後ろをついてきていた、程度。
異常なまでの忠誠心と、世界をガチで消滅させる戦力を持っているくらい、かな。
はい、ここの時点でおかしい。
そもそも、彼女はどうして自分に従っているのか、上条当麻には理解できないし、質問しても答えない。
「・・・・・・・チ、鬱陶しい」
時々、怖い発言して外を睨んでいるが、すぐに笑顔を見せてくれる。
普段は至って穏やかなで優しく、当麻をよく支えてくれる女の子。
普通の女の子。
ではないか。間違いなく。
「学校はどうですか?」
「普段と変わらないかな。何事もなく平和な毎日だよ」
「なら良かった・・・・・・・」
言葉の途中でルリが立ち上がった。
鋭く見つめる目線はベランダへ。
釣られるように当麻も目を向けた先、ベランダに何かがいた。
「なんだ・・・・・・」
「下がってください。カブト、ガタック」
名を呼んだ瞬間、青と赤の影がベランダへ突撃。続いて、何かを持って戻ってきた。
「女の子?」
「魔術礼装を纏った女の子なんて、何処の組織のものですか?」
カブトが手に持った少女は、小さく頭をあげて呟く。
「お腹すいた」
「・・・・・・・」
「ちょっっっっと待ったルリ! 捨てない! そこは捨てない!!」
「チ」
小さく舌打ちするルリに、本気で捨てる気だったと知る。
相手がお腹がすいているなら、食べさせてあげよう。
当麻の提案に渋々と、ルリは通信をしてのだった。
そして、溜息交じりに料理を作る褐色の肌と銀髪の男が一人。
「我が主は本当に優しいことだな」
「茶化さないでくれよ、バトラー」
「茶化したつもりはないが」
フライパンを振るう男は、溜息をまた一つ。
十人前は作ったはずなのだが、小さなこの少女は軽々と平らげた。
「で、彼女は何者だ?」
「さあ?」
「名前を教えてくれるか?」
「私の名前はインデックスって言うんだよ」
少女は答え、そして不幸は加速したと当麻は思い返す。
「彼女を返してもらおうか?」
人相の悪い赤い髪の男が襲来。
「は? 誰の前で頭を上げている、痴れ者が」
「ぶ?!」
一秒後には、モグラと友達になっていた。
「彼女を渡してください」
ジーパンのねぇちゃん襲来。
「は?」
「私は聖人です。貴方達の攻撃
は・・・・・・・」
「アインズ、ごー」
「よかろう、巫女よ」
骸骨のオーバーロードのよる超位魔法炸裂。
一瞬のうちに行われた暴力行為に、当麻は頭を抱えた。
きっと誰もが思う、君が悪いのではない、君の周りが悪いのだ、と。
良かったね、父親がといわれなくて。
ついに明かされるインデックスの謎。
彼女にかけられた『首輪』の発動に対して、上条当麻は右手を振るう。
「は? メディナ」
「はいはい、巫女は人使いが荒いんだから」
割り込んだ女性が持っていた奇妙なナイフで一件落着。
「・・・・・・・・あの、ルリさん?」
当麻が振り返る先、ルリは正装を纏っていた。
背中に『血の十字架』が描かれたマントを着た彼女は、小さく振り返り、やがて姿勢を正す。
「ちょっとイギリスを吹き飛ばしてきます。大丈夫です、きちんと地球の地軸に影響を与えないように、重力兵器と空間兵器を使いますから」
「何処に安心する要素があると?!」
「あ、それとも結界を展開して酸欠死とか。あるいは疫病とか」
「基準点があまりに違くありませんか?!」
「・・・・・・乖離剣か、次元回廊か、それとも混沌?」
「止めてあげてください」
土下座してまで止める当麻に、ルリは周り中を見回した後に、手を打った。
やっと解ってくれたかと安心する彼に、少女は華のような笑顔で告げた。
「波動砲で一撃クリアーですね!」
「違ぁぁぁぁぁぁう!!!」
その日、上条当麻は思う。
自分は周りにいる彼女や彼らにとても愛されている。親切にされている。
だから、その気持ちの一割でいいから自分以外にも向けてほしいと。
でないと不幸だなぁ、と。
彼の名を世界は震えを持って口にする。
神を討つ者。
悪魔を消す力。
血の十字架の主。
上条当麻、世界のすべてを支配するヒーロー、と。
続かない